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米菓のリーディングカンパニーから唯一無二のグローバル・フード・カンパニーへ(全2記事)

来日以降「このインド人は何かをしてくれる」に応え続けCEOに 亀田製菓会長が語る、自分のキャリアを大きく伸ばすヒント

事業創造大学院大学が開催した「特別オンラインセミナー」に、インド出身で亀田製菓のCEOに就任したジュネジャ・レカ・ラジュ氏が登壇。国内シェア40パーセントの米菓のリーディングカンパニーから唯一無二のグローバル・フード・カンパニーを目指すジュネジャ氏が、プラントベースフードをやる理由や、サステナビリティに向けた取り組みなどを語りました。

亀田の柿の種以外にもある「すばらしい種」

ジュネジャ・レカ・ラジュ 氏:次のキーワードですが、私は、「価格」から「価値」に変えましょうと言っています。

日本では、食品はすごく安いですよね。アメリカなどでは、食品や菓子はもっと高い価格で販売されています。もっと商品を磨き、「価格」から「価値」への訴求を図っていきたいと考えており、今は「ミライベイカ(未来米菓)」を作ろうとやっています。「ミライベイカ」とは独自性・新規性・持続性・収益性を重要視した商品のことです。

亀田製菓グループには、スーパーマーケットで売っているものや百貨店で売っているもの、EC、または地域限定のものがあります。(スライドの)これはアジカルという会社ですけど、百貨店ならとよすというグループ会社を持っているし、いろんなチャネルを持っています。

それぞれのチャネルで、米菓または食品の会社をやっていて、亀田製菓グループとして世界中に出ていく。あんまり食べたことがないかもしれませんけど、実はいろんな地域にいろんな「亀田の柿の種」「ハッピーターン」があるんですね。

今は東京駅の東京おかしランドの中にアンテナショップを展開しています。

八重洲口から地下1階に降りると東京おかしランドがあるんですね。もし機会があったらぜひ行っていただければと思います。できたてのハッピーターンを食べられます。

新しい魅力を届けるということですね。会社の創業からのミッションですけれど、子どもにも、大人にも感動とおいしさ、新しい魅力を届けることに挑戦しています。

海外事業は、先ほど言いましたように1億人の日本人から世界の80億人に向けて事業を育てていくということです。太陽化学やロート製薬時代は、カテキンとかテアニンとか食物繊維とかシアル酸など、ゼロからものを作りました。

自分で開発して世界に出すということをしていましたが、亀田製菓はすでにすばらしいものを持っています。「亀田の柿の種」だけじゃなくて、いっぱいすばらしい種を持っている。

(スライドの)上はMary's Gone Crackers、右側はTH FOODSですね。

アメリカに会社があり、ライスクラッカーの製造・販売をしています。他にはTHIEN HA KAMEDAというベトナムの会社で「ICHI」という商品があります。

中段右側は中国。下段はカンボジアとインド。インドでも「柿の種」を製造・販売しています。日本と同じ「亀田の柿の種」をインドで売るのではなくて、例えばスパイシーとかわさび味もあるんですけど、インドの方に合った食感、味わいに変え、その文化に合わせた新しい「柿の種」を販売しています。新潟で生まれた会社のお菓子が、今では世界中の棚へと少しずつ広がっています。

「Better For You」を実現するためのパートナー探し

(スライドの)これらは先ほど言った「Better For You」のキーワードです。

「Low」というのは、例えば減塩、ローソルト。塩が少ないということですね。あとシュガー、砂糖や脂肪が少ないというのを「Low」と言っています。あと、「Free From」「Organic」「NON-GMO」「Vegan」「Whole Grain」といったものが世界でブームになっていて、私たちもそこに向けて商品を作っています。

ただ、これが亀田製菓だけではできないということですね。今日聞いている方たちも、事業化する時にすべて自分でやるのはたぶんものすごく難しいですよね。

私たちも世界中にパートナーを探していて、例えばタイだったらSinghaという大手のビール会社とアライアンスを組んでパートナーとしてやっています。インドではLT Foods、またカンボジアはPepsiCo、いろんな企業とアライアンス、パートナーを組んで企業を大きくしていく方針です。

新しい社会ニーズを解決する、持続可能なビジネスモデル

ここからが3番目のセグメントの「食品事業」についてです。(スライドのように)亀田製菓は新しい社会ニーズを解決する、持続可能なビジネスモデルを作ろうとしています。

例えば日本は災害の国で、地震とか火山とか津波とかいろいろある。その時、人間には必ず食が必要になります。水と空気も要りますけど、食がないと生きていけないんですね。なので食を届けようとしています。

それからプラントベース(植物ベース)フード。先ほどインドの話をしましたが、人口増や環境、サステナブルの面で、たぶん動物が食べられなくなって、タンパク質クライシスになると予想しています。世界80億の人口が100億人になることで、食糧が足りなくなるだろうということですね。それをどう解決するか。

また、アレルギーのある小さい子どもは10年で倍ぐらいになっていて、世界中で増えている。

ニュートリションを中心に乳酸菌となどいろんなことを今亀田製菓の研究所で研究しています。そこから免疫を中心にいろいろやろうとしています。それらはすべての国、社会でニーズがあるんですね。

地域の環境や健康、人生100年時代とかコロナ禍とか、災害のリスク、アレルギーとか、プロテインクライシスとか、SDGsとかを解決するために、今、亀田製菓グループではいろんな食品を開発しています。

長期保存食、プラントベースドフード、米粉パンとか乳酸菌。また、腎不全で困っている人のための低タンパク食品。それぞれの人に合わせたニーズを満たせるようにしています。目指すべきは、おいしさ、健康、アレルギーフリー、環境対応、グローバル化です。

私は入社してから食品事業を直接管轄して、ブランドを立ち上げました。

プラントベースドフードは「JOY GREEN」というブランド。「Happy Bakery」は米粉パンですね。100パーセント国産の米を使って、28品目のアレルゲンフリーパンを作っています。

そして乳酸菌や長期保存食、災害食も作っています。米菓の工場はほとんど新潟県にありますけど、「JOY GREEN」は福井県にありますし、長期保存食の尾西食品の工場は宮城県の大崎市という場所にあります。「Happy Bakery」は新潟県です。

プラントベースフードをやる理由

私たちがなぜプラントベースをやるか。

先ほど言いましたように、人口が100億人になると、動物の肉を食べ続けることができなくなるので、サステナブルな食品のチームを作らないといけないとなりました。

今、プラントベースフードはどんどん増えてきています。モスバーガーもそうですね。私たちも今、福井県の工場や亀田製菓でいろいろ作っていて、いろんな面で新しいプラントベースフードを届けようとしています。

プラントベースドフードは「JOY GREEN」というブランドですね。非常においしいです。ドライとか、ウェット、ミンチタイプなどいろんな形があります。

栄養的にもすばらしく、100グラム摂ると約50グラムのタンパク質が採れ、17グラムの食物繊維が摂れる。健康環境と栄養問題を解決した新しいおいしさ、食感を届けようとしています。

(NSGグループの)池田(祥護)先生にはお世話になっていて、亀田製菓とイタリア軒で共同開発したメニューを出しました。

もし機会があったら、ぜひ食べに行ってください。おいしいですよ。ホテルなども含むいろんなチェーンで新しいプラントベースを届けようとしています。

「Happy Bakery」は、小麦の不耐性で、年々子どもの小麦アレルギーが増える中で誰でもパンを食べられるようにと、米粉パンを作っています。

これを作っているのがタイナイというグループ会社です。いろんな種類や形のパンを作っていて、丸パンに食パン、ベーグルもあります。もちもち食感のおいしい、28品目アレルゲンフリーのパンを世界中に届けようとしています。

この前、東京都の小池都知事が来られました。すごく米粉パンに興味を持っていて、日本の米からこんなにおいしいパンが作れるということで、わざわざ新潟の亀田製菓、タイナイまでお越しいただき、「日本の農業を東京から世界に発信したい」とおっしゃっておりました。非常に心強く感じています。

災害時だけでなく、宇宙でも食べられる食品

もう1つは、長期保存食。コロナはここ3、4年のことですが、近年地震や津波、台風などの災害が多いです。何かあった時も食は絶対に必要なので、それに応えられるように亀田グループの商品を出していきたい。

(スライドの)これはスペースフード、宇宙食になったということですね。

5年保存で、電気もガスもないところで、水だけ入れたら「携帯おにぎり」という、おにぎりになるんですね。皿も要らないし、5年保存できる。

私の2人の子どもは、留学でアメリカ、カナダにいました。和食が大好きで、私がアメリカやカナダに行く時、いつも「何を持ってきてほしい?」と聞くと、「おにぎりを持ってきてください」と言うんです。でもすぐに腐っちゃうんですね。当時はこういうおにぎりを知らなかったんですけど。

いろんな方が宇宙に持っていかれて、宇宙食にも認定されました。この前は、前澤(友作)さんがうちのアルファご飯を持っていってカレーライスなどの料理を作っていました。

災害時だけじゃなくて、海外へ行く時でもアウトドアでも宇宙でもこの食品は食べられるということですね。新しい挑戦、新しい事業開発をこれからもやっていこうと思っています。

(スライドの)こちらはお米由来の乳酸菌です。

肌にいいとか整腸作用があるとか、アトピー、アレルギー(に有効)とか、いろんなデータを取って、いろんな会社とパートナーシップを組んで商品を作ろうとしています。

これからは国内だけではなく世界中に出ていかなければということで、アイルランドのKerry社とライセンス契約しました。

海外の企業と一緒に組んで、世界中の国に新しい乳酸菌の商品を体験してもらう。亀田製菓が二十数年間研究所でやってきた仕事をやっと役立てられる時代が来たんじゃないかと思います。

健康、味、環境を含めた、こんなおいしいものはなかなか世界にもないですね。競争力もある。だから、これからいろんな商品を作って世界中に届ける、グローバル・フード・カンパニーになろうとしています。

サステナビリティに向けた取り組み

今日はこのあと、サステナビリティをテーマにした講演もあると思いますが、やはり会社というのは誰のために、何のためにやるのかということ。先ほどちょっとパーパスの話をしましたけど、会社は誰のためにあるんですか。

先ほど言った従業員、それから株主、お客さま、取引先。それもありますがやはり社会、地球への対応は欠かせないですね。これを私たちが守る。新しい大きなミッションです。

これまでの会社は財務情報が重視されていました。会社の売上・利益などが見られた。今は本当に社員を大事にしているかとか、環境に対して取り組んでいるかとかが見られる。

若い人たちも、今はいろんな会社のホームページを見ていて、この会社は本当に社会貢献しているかどうかとか、サステナビリティ、持続可能なビジネスを持っているかとか、いろいろと見ています。私たちもこれに取り組んでいます。

ものづくりの会社ですから、今はプラスチックをいろんなパッケージとして使っている。でもミッションとして、プラスチックトレーをなくしたり、プラスチック自体を減らすことに取り組んでいます。あと、CO2の排出削減ですね。それぞれ、CEOプロジェクトとして、明確なミッションを持って、環境に優しい会社を作ろうと取り組んでいます。

環境もそうですし、先ほど言った多様性ですね。亀田製菓も女性の管理職を含めて、女性が働きやすい環境を作るということに取り組んでいます。

また、グローバル・フード・カンパニーになるということで、やはりいろんな国のいろんな国籍の方が働いています。日本人だけで経営するのではなくて、私自身もそうですし、異文化・異分野のいろんな人財がないとたぶん会社は大きくならない。そういう文化をリスペクトしようと心がけています。

「私は日本人だから、日本が世界一」「インド人ですからインドが一番」じゃなくて、お互いに文化がある。国籍が違っても同じ人間ですし、言葉が通じればいろんなことがわかってきます。多様性を尊重し、お互いにリスペクトしましょう、お互いの文化をリスペストしましょうということで、いろんなイベントも一緒にやっています。

自分のキャリアを大きく伸ばすヒント

先ほど言いましたように、この3年間で一番苦労したことは人に会えなかったことです。亀田製菓にはコロナのピークで入社しましたが、この2年半は人に会えず、ビデオ越しとマスクの顔。フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションがなかった。今は在宅もけっこう増えて、それはいい点もあるんですけど、悪い点はやはり人の顔を見て対話したり、触れ合いという大切なものがないこと。

私がCEOになってすぐに決めたことは、とにかく全社員に会いたい、全社員の声を聞きたいと思い、ほぼ全社員に会ってきました。

インド生まれの人が新潟の会社のCEOになって、いろいろ不安感もあったでしょうし。工場へ行くといろんな触れ合いがあって、いろんな質問もあります。「朝起きて何を食べたんですか」とか。

社員と会って対話をする。社員のマインドセットですね。お互いにどういうふうにやっていこうと伝えることを私はすごく重要だと思っていますし、それが新しいCEOとして最初にやったトップキャラバンという仕事でした。いろんな人、いろんな方がいろんなことを言ってくれる。それらを受け止めて、これから会社をいろんな面で改善したいと思います。

「なぜインドの人がCEOになったのか」と、マスメディアからいろんな取材も受けていますし、今がチャンスですね。変化を起こさないといけない。今日私の話を聞いている方も、チャンスがあったら変化してください。誰もやっていないことをやっていただきたいということです。

最後にエールを送るなら、「キャリアを作る時は枠を越えた仕事をやるんですよ」ということ。最初に時間をかけて太陽化学での話をしましたが、「このインド人は何かをしてくれる」と思って、みんなが見ていたということでしたよね。

企業で働いている方々もいらっしゃるかもしれませんが、指示待ちの人間で、言われたことをやっていたら、絶対にキャリアは大きく伸びないと思いますね。誰もやっていないことに挑戦する。枠を越えたことに挑戦する。ということを1つ、みなさんに言いたいなと思います。

好きなことをやったらいいと思います。「Do whatever you want.」。好きなことをやらないと、たぶんやりがいがないし、働きがいがない。亀田製菓はこれから、日本からグローバル・フード・カンパニーになろうと思っていますから。

何度も言っていますが人財ですね。いろんな面でのスキルもそうだし、いろんな国籍の方もそう。その人財に、パッションがないと、モチベーションや働きがいがないと何もできないということです。

いろんなことを言いましたけど、失敗と成功から学ぶこともたくさんあります。コミュニケーションも大事です。

最後に言いたいのは「夢を持つ」ということですね。私は夢と笑いの現場を作りたい。夢と笑いの会社を作りたい。夢を持てば必ず実行できる。みなさまにお願いしたいことは、ぜひ夢を持って仕事をしていただきたいということです。これで私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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