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週刊東洋経済3/13発売号 記事広告対談取材(全2記事)

2023.03.27

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日本の労働人口減少の本当の課題は、ベテランがいなくなること スキル継承のカギを握る、リスキリングとAI活用の道筋

提供:アステリア株式会社

アステリア株式会社 常務執行役員の熊谷晋氏、RPAテクノロジーズ株式会社 代表取締役 執行役員社長の大角暢之氏、AI inside 株式会社 Vice Presidentの髙橋蔵人氏による、ノーコードとリスキリングをテーマとした鼎談が行われました。前編では、企業がリスキリングに注力する背景や、30年来にわたって事業とITの“分業”状態が続く日本企業について議論しました。
※本記事は、東洋経済新報社にて行われた取材を全文でお届けします。

「国産ノーコードツール」を展開するアステリア

——まず最初に、みなさんの自己紹介と会社の簡単な紹介をしていただければと思います。まず、熊谷さんからお願いできればと思います。

熊谷晋氏(以下、熊谷):アステリアの熊谷と申します。今日はどうぞよろしくお願いします。

——よろしくお願いします。

大角暢之氏(以下、大角):よろしくお願いします。

髙橋蔵人氏(以下、髙橋):よろしくお願いします。

熊谷:アステリアは国産のソフトウェア会社という位置付けで、製品・サービスを作って販売を行っています。本日も少し出てきますけども、代表的な製品は「ASTERIA Warp」

あとは「Platio」「Gravio」「Handbook X」という、ノーコード技術を中心にした製品・サービスを販売しています。私は営業本部とマーケティング本部を担当していますので、対外的なマーケットの管掌をさせていただいています。

「日本のRPAの元祖」と呼ばれるRPAテクノロジーズ

——次に大角さん、よろしいでしょうか。

大角:RPAテクノロジーズの大角と申します。よろしくお願いします。僕自身は52歳の広島県出身の男でして、もともとベンチャーをずっとやってきたようなプロフィールなんですが、2000年に今の会社の母体となる会社を創業し、ちょうど22年間、事業活動をやっています。

今の主力のバリューはRPAということで、「BizRobo!」というソリューションを中心に展開しています。理念としてはデジタル労働者ということですね。デジタルレイバーと呼んでいるんですが、この10年間、それを全国に大衆化していく取り組みをしています。

RPAという言葉が世界的に誕生する前からこの事業をやってきたということで、手前味噌ながら、一応「日本のRPAの元祖」という言い方をされておりまして。デジタル労働者という取り組みを、全国の現場のみなさんと一緒にしっかりやっていくことで、日本が直面している人材不足の問題をダイレクトに解決していこうと、一生懸命活動している人間でございます。

——ありがとうございます。続きまして、髙橋さん、いかがでしょうか。

「AIの民主化」を目指すAI inside

髙橋:実は大角さんとは知り合いというか、支援いただいていたことがあります。私は一応まだ39歳で。

——39歳に見えないですよね(笑)。

髙橋:よく言われるんですが、39歳です。

熊谷:どっちの意味で?(笑)。

髙橋:一応39歳で、もともとコンサルに入って事業会社をやっていて、4年前に「AIの民主化」ということを掲げました。今はAI inside(という会社)なんですが、その前にaiforce solutionsという会社を今も一緒に働いている西川と2人で立ち上げました。

いわゆるAIの民主化。先ほど大角さんがおっしゃったように、生産年齢人口が減る中でいかに日本のGDPを維持していくかとなると、生産性を上げるしかない。その手段はAIですと。ただ、漠然とAIという話だけがあって、ビジネスでどれぐらい使われているかというと、そうでもなかったので。

当時の代表と一緒に「AIをもっと民主化して、現場で使えるようにしなきゃいけない」ということで、数字のデータをいかにAIに学習させるかを考え、それをノーコードで行うソフトウェアを作って販売していく中で、2022年の5月にAI inside と一緒になりました。今、私はAI inside という会社で、主にコンサルの部門を率いる責任者をさせていただいています。

売却の背景としては、我々のビジョンが一緒だったんですね。「世界中のヒト・モノにAIを届けて豊かな未来・社会に貢献しましょう」という、目指すところがAI inside と一緒でした。

彼らがもともと得意としていたのは画像データだったので、我々が得意とする数字のデータを一緒にお客さまが使えるような状態になれば、よりそれ(ビジョンの実現)は加速するだろうという思いをもとに、2022年5月に一緒になりました。

今はミッションを実現するために、AI-OCRの「DX Suite」という、手書き文字を文字認識技術でデジタル化する製品を主力としています。デジタル化したデータをどう使うかというところで実はもう1つ、ノーコードでAI開発・運用ができる「Learning Center」というものをプロダクトとして持ちながら、事業展開をしています。

日本企業の中で起きている、事業とITの“分業”状態

——ここから本題に入りたいと思うんですが、コロナ禍以降、「リスキリング」というキーワードが出始めて、「何だこれは」と思われた方もいると思うんですが、今企業の中で「リスキリングが大事なんじゃないか」という話になっていると思います。

こういった中で、なぜリスキリングが必要とされているのかを、みなさんにそれぞれお聞きしたいと思います。まず熊谷さん、いかがでしょうか?

熊谷:そうですね。やはり一番大きいのは労働人口がどんどん減っていく中で、他にも働き方改革やコロナ禍のニューノーマル対応も含めて、生産性の向上が非常に重要な課題になっている。あとはグローバル化によって、企業の競争力を向上させていくところが大きな課題です。

これを上げていくには、やはりITをいかに活用するかということが主になってきます。今はまるっと「DX推進」と言われますが、要はITをいかに使って企業価値や競争力を向上させるか、生産性を向上させるかが求められている。

ただ、日本でちょっと特徴的なのは、いわゆる専門業者のSIerさん、ソフトハウスにITを依頼して、自分たちは事業をしっかりやるという、分業のようなことが起きていることです。

——そうですね。

熊谷:そういう意味で、「事業はわかるけどITはよくわからないよ」という状態になっている。本当に今、「リスキリング」というキーワードが、日経新聞などの一般紙でも毎日のように出てきていますけれども。

大手企業はリスキリングを進めることはできるんですが、中小企業や自治体などではなかなかできていないかなと思っています。こういう非IT人材の方にITスキルを学んでいただくと。

「リスキリング」という言葉は幅広くいろいろなものがあるんですが、狭義で言うと、ITをどう事業サイドで理解して、それをうまく使える土壌を作るか。そのためにはリスキリングが必要だろうということで、重要視されていると考えています。

この30年の間に進行していった「分業の弊害」

——ご感想でけっこうですので、この点お二人はどうお考えですか?

大角:私がしゃべっていいですか?

——どうぞ。

大角:僕はけっこう現場型の人間なので、あくまで所感としてお話しします。僕が新卒で社会人になった1995年に、アクセンチュア(旧アンダーセンコンサルティング)に入ったんですが、その頃はいわゆるWindows 95ということで、まだ「IT」という言葉がなかったんですね。

そこから2000年のインターネットに至るまでに、「インフォメーションテクノロジー」という言葉がどんどんできていて、経営と情報技術が欠かせないようなモメンタムが世界中に起きたと思います。

さっき、熊谷さんが「分業」とおっしゃいましたけど。我々が業務やサービスの提供にデジタルを使って、例えば通信やデータベースやファンクションといった、圧倒的に生産性を効率化するITを一生懸命作ること、導入することにフォーカスしてきたのが、この30年だと思うんですね。

僕たちはみんなけっこうわかっていたんですけど、特に日本においては、その分業の弊害が出てきている。やはり日本の構造的な問題は、デジタルをハンドリングする人材が完全にIT産業の専業になっていることです。本当は、ビジネスパーソンのところに(IT人材が)いないといけないのに、(いたとしても)情報システム部とか。

例えば自動車メーカーのホンダでITをやるというと、どちらかと言うと人事考課上は低いとか。とにかくITというものが分業化されて、ビジネスとの距離が遠かったことがついに顕在化したと思っています。

ファクトで言うと、IMDさんの世界競争力ランキングでは、日本のソフトウェア開発は世界2位で、インターネットの普及も世界1位だと。ところがデジタル人材の活用というランキングは62位なんですよね。これがもはや日本のモメンタムになっています。

ノーコードやローコードによる、デジタル技術の大衆化

大角:とは言え、一方ではアステリアさんもそうですし、AI inside さんのAIの民主化ということでも、デジタル技術はどんどんノーコード、ローコードによって大衆化しているんだと思うんですね。なので、私が日本全国を回っていても、人もいないわ、じゃあデジタル人材を採用するかと言ってもけっこう大変(笑)。

——大変ですね。

大角:人件費も大変じゃないですか。だから、2年前からどんどん、特に地域においては内製化ということが言われてきています。

AI inside の西川(智章)さんがおっしゃるように、これまでは車に例えると作ることばかりでしたが、今度はちゃんと運転してビジネスゴールを達成するというモメンタムが、もう足元からどんどん起こっています。

だから「リスキリング」という言葉について、僕はスキルを身につけることは実はどうでもよくて、ちゃんと使う(ことが大事だと考えています)。デジタルをより実践的に使って、ビジネスイシューを解決したり、トップライン(売上高)を上げてビジネスゴールを達成していく。こういうところに、ようやく火がついたんだろうなという所感です。

自社のデータを活かすためには、社員のリスキリングが必要

——なるほど。いかがですか、髙橋さん。

髙橋:そうですね。

大角:すみません、しゃべりすぎた。申し訳ない。

熊谷:いえいえ。ぜんぜん大丈夫。

髙橋:いや、でも話したいことも背景も、たぶんみなさん一緒だと思います。ただ、「リスキリング」という言葉だけだと、先ほど熊谷さんがおっしゃったように広義なので、どう狭義に捉えていくかという中で、背景はやはりDXです。

DXの背景は何なのかと言うと、日本企業で一番時価総額がある会社でも(世界では)30位にも入っていないんですよね。どこを目指さなきゃいけないかという時に、GAFAMというのが一応、解として言われています。

この変革の時にどうするかというと、実はその中でもデータ活用が重要だと。そういった会社の時価総額が伸びているなら、そこを目指すしかないと経営者が捉えた時に、「じゃあ今、彼らはデータを使っていますか?」と質問したら、「絶対使っているでしょ」と言いますよね。「じゃあ他の某会社が使っていますか?」と言ったら、みんなわからないじゃないですか。

(生産性向上や業務効率化の取り組みを)「紙でならやっていますか?」と言ってもやっていないわけです。本業でデジタルを使うことで得たデータをいかに活用して、新たな事業創出や業務の効率化につなげていくかが、今のDXの本質だと捉えています。

「じゃあリスキリングはどういうスキルが必要なんだろう」というのをデータの観点から見ると、データは外部のベンダーのものではなくて、みなさんが一生懸命汗をかいて、自分の事業で培ってきたものです。

最終的なポイントは内製化ですが、やはり自社で活かすには、営業やマーケをやってきた人たちが、これをどう活かすかを自分たちで捉え直す。その時には、やはりリスキリングして、スキルをどう活用するかをしっかり自分たちが学んでいって、内製化することが重要なのかなと思っています。

IT知識がなくても、ITのメリットを享受できるのがノーコード

——DXを前提とした人材の内製化という中で、「リスキリング」という言葉が出ていると思います。リスキリングを進める上で課題に対してどう取り組んでいけばいいのか、そのポイントはどこなのかを、まず熊谷さんからお聞きできればと思います。

熊谷:そうですね。まず課題として、大企業ではけっこう進んでいるんですが、まだけっこうコストが大きいかなと思っています。それは費用的な面もあるんですが、時間的な制約もあります。

先ほどおっしゃっていたように、何かのスキルを身につけると言うよりも、事業に活用していく。「そのために必要なデジタルツールや知識は何なのか?」ということを理解するまでの時間軸も含めたコスト面が、まず非常に大きくて。

そこからまた、自社の事業に活用すればいいものが理解できたとして、実際にやってみると難しいこともあると思うので、まずそこ(難度)を測って、知識がないところはある程度体系的に学べるようなところがない。デジタル技術に対する知識がない方なので、どこを取っ掛かりにしていいかわからない。

そういう方が(DXを)進めるには、全般的なところを解決する必要があると思ったのが、「NoCode Gate」というものを立ち上げた背景にあるんですけども。

これをスムーズに進めていく上で、弊社はノーコードにこだわって約20年間ビジネスをしてきています。いきなりデジタル技術と言うと、どうしても言語を学んだりというのがあると思うんですが、今は本当に進んでいます。

両社も弊社もそうですが、ノーコードツールというものが出てきて、そこまでIT知識がなくても、容易にITの力を享受できるようなサービス・製品が非常に多く出てきています。まずはこういった、入りやすいところから進めるというのは1つ大きなポイントになるんじゃないかなと考えています。

——ありがとうございます。お二人、大角さんか髙橋さん、思いついたほうでけっこうです。

(一同笑)

課題は、ビジネスユーザーがAIの価値を正しく理解していないこと

髙橋:じゃあ今度は私からいきます。(リスキリングを進める上での)課題ということで、先ほどの話を付け加えると、「AIをビジネスのどこで使っていますか?」という問いに対して「私も私も」という会社さんがまだいらっしゃらない中で、「本当にそれ使えるの?」という風潮はあるんですけれども。

でも、一応ファクトとして、コンサルファームなどでも「トップライン(売上)を伸ばせますよ」「事業の中でちゃんと利益改善しますよ」ということで、すでに(AIを)導入した方々で(Yesと)答えているのは6割ぐらいに上ると言われています。

我々がAIと言っているのは機械学習なんですが、それをちゃんとビジネスで使うと、実は新たなビジネス価値が数百兆円出てきますよと言っているんですね。

我々がある総合商社さんと一緒にやらせていただいている時も、海外のある会社さんの販売予測を少しやっただけで、実は数百億円のコスト削減効果が出ましたと。これは1ヶ月程度の短期間で出るんですね。

なんでこんなにいいテクノロジーが浸透してないかと言うと、ちょっと話がずれていくんですが、私は今、東北大学の特任准教授ということで4年ぐらい前から教えています。

ただ、(東北大学でも)AIを教えてきた人はたくさんいるじゃないかと。何で困っていたかと言うと、経済学部などのいわゆるビジネスの世界に出ていくような人材が、AIを正しく理解していないこと。

これ(AIの有用性)は、ビジネスマンが理解すること(が重要なの)で、ある程度の解釈性を持って、シンプルに伝えられるんですね。私はたぶん延べで5,000人以上は教えてきていると思うんですけど、そこから見てわかった背景はシンプルです。

ビジネスユーザーが、こんなに価値あるものを正しく理解できていないというだけです。私はそこが課題だと思っています。

なので我々は今、まずシンプルにAIというものを伝える教育プログラム「AI Growth Program」を持っています。ちょっと講義を受ければ、2時間ぐらいで自分でAIも作れるようになるし、わかる。先ほどの内製化とつながりますけど、ビジネスユーザーが理解できるような体験プログラムとして整備しています。

まずはテクノロジーを正しく理解すること。そこには深い知識は要らなくて、大事なのはできることです。それも「ああ、わかった、わかった」と座学だけでわかるんじゃなくて、ノーコードツールがあれば体験としてわかる。こういった汎用的なソフトウェアが出てくることによって、深いところまで理解できるようになるのかなと捉えています。

手段が目的化してしまっているという課題

——大角さん、いかがですか?

大角:そうですね。「リスキリング」という言葉の課題なんですけど、これはリスキリングに限らず、働き方改革、それからRPAやAIもすべて手段なんですよ。なので、ゴールを表している言葉じゃないんですよね。

「リスキリングをやろう」「DXをやろう」というのはゴールではなくて、全部プロセスの話です。(でもそう思われていないことが)僕は、日本人全体の大きな課題だと思うんですよ。

——そうですね。

大角:「そもそもなんでやらなきゃいけないのか」というゴール設定ですね。業界やビジネスパーソンや会社でもそれぞれに違うわけですけど、マイナスをゼロにしたりゼロを1にしていくには、やはりあらためてきちんと考えて付加価値を出していくことがゴールであって、そのための手段なんですね。

「やはりリスキリングはやらなきゃいけないです」「DXはやらなきゃいけないです」というゴールなきことを進めていくので、結局やってみたはいいけど、「結果は何だっけ?」ということが(出てきてしまう)。

ITについては、いわゆる3文字バズワードで昔はCRMを入れることで、ちゃんと売上を上げるとか。そういうこと(CRMを入れるという手段の目的化)が大きな課題だと思っています。

でも、うっすらみなさんもさっきの(分業による)顕在化の問題を感じている。今一番そこをうまくやっている方々と、それから打破しようとしている方々で、私が思うのはやはり世代交代(の必要性)ですね。

やはり経営者がこれまでの習慣の中で考えていくと、デジタルもわかりませんし、そういったものを現場にやらせるところがうまくいかないので、次の若い経営の世代に転換していこうとか。

そういう解決を、今けっこう地方のみなさんもがんばっていらっしゃるなと思います。ゼロからちゃんとデジタルを手段として使って、「どう売上を上げるの?」「どうやって前に進むの?」という(目的を明確化する)のが1つですね。

もう1つは、やはり本質を貫かれているビジネスパーソンの方もたくさんいます。スタートアップでもそうですし、農業や漁業にしても、結局ポイントは人手がいなくなるということなんですね。単に量(働き手の数)がなくなるという話じゃなくて、因数分解するとまず熟練の方がいなくなっているということなんですよ。だから、漁師も熟練の方やスキルを持っている方が辞めていく。

スキルのあるベテラン人材が辞めていく「経営リスク」

大角:例えばAI-OCRの話で、僕がびっくりしたのは、AI-OCRがなかなか(企業に)入りませんと。(別にツールとしては)いいんだけど、パートのおばちゃんのほうがスキルがあるみたいな。

(一同笑)

熊谷:なるほど。

大角:そこ(AI)のコストに比べると、そっち(人)に任せたほうがいいよということで、トライアル倒れになることがけっこうあるんですよね。だけど、今起こっていることは、そのパートのおばちゃんが辞めちゃうんです。

今まで5人で担当していて1日200枚手打ちしていましたと。でも、そういうスキルのある方が辞めていく。要するに、一気に経営リスクになってきている。あとは、若者がいないということだと思うんですよ。

例えば農業だとより……。寿司もそうです。職人さんもそうですけど、デジタルを使ってハードルを下げる。今までみたいに職人の背中を見て、魚を捕ったりイチゴを作るんじゃなくて、デジタル技術を使って誰でもそういうアウトプットができるような仕組みにしていく。

こういう考え方がどんどん発芽しているのもやはり事実なので、リスキリングは何のためにやるのか、誰のどういう問いを解決していくのかということを、やはりまず起点として考えて、ちゃんと向き合っていく。

逆に言うと、「リスキリングをやらなきゃいけないから、何のスキルをつけようか」というばかげたことをしていると、リスキリングも所詮1つのブームになって、いつの間にか消えていくように思っていますけどね。

——わかりました。ありがとうございます。

日本の労働人口減少の本当の課題

髙橋:ちょっと加えていいですか? いや、すごくおもしろい。大角さんと付き合いが長いので、言っていることはたぶん変わらないんですよ。目的に対して手段をどうするか。DXという言葉は名詞なのか動詞なのか。大事なのはDXを実現した後、どんな姿を描きたいかという時に、やはりテクノロジーが理解されていないといけませんよという補足ですね。

さっきおもしろいことを言っていたんですが、熟練スキルの人がいなくなることが本質的に課題なんですよ。単純な人のカウントの問題ではなくて、スキルフルな人がいなくなることが本当の課題です。

彼ら(ベテランの方)であれば、1のものを100として出せるわけですね。100出すために0.5の時間でできるんですけど、新卒であれば100時間かかるというのが課題であって。

大角さんは今、熟練工の現場の話をしましたけど、これをちょっと生産性の高い大企業に戻してきた時に、例えば、ある自動車会社の知的財産の部署の人がいたと。日本企業は特許が命という中で、そろそろ特許が切れそうだから維持するかと。でも、維持するにはお金がかかりますよね。

そうしたら「そろそろ破棄しようか」「新興国の(特許)は破棄していいか」といった判断を誰がするかと言うと、特許部です。しかも新卒で特許部なんて人は、まずいないじゃないですか。(いろいろな仕事が)回ってきて、ようやくわかってきてから特許部なんですけど。

こんなスキルフルな人もいなくなってくる中で、AIの登場です。例えば、これまで人がやってきたような判断や、数値を何か導き出すなど、「この人じゃないとわからない」と言われる業務を想像すると、人が何かの基準をもとに判断しているわけですよ。

これらの業務は、AIによって簡単にモデル化して再現性を導き出せるんですね。なので、いかに生産性の高いスキルフルな人材を企業として継承していくか。初めから100は無理でも、80でも、この人が休んだりいなくなったとしても同じ生産性レベルを企業として作れることがけっこうポイントだと思っています。

熟練のスキルと、経験のある人のスキルフルなものをどう継承していくかが、非常に深いところの本質的な課題なのかなと思ったので、補足しておきます。

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