「ショート動画」への向き合い方

樋田洋斗氏(以下、樋田):おそらく今回のカンファレンスの中で、一番有益なテーマがやってきまして。知り合いの方も何人かいらっしゃいますね。

天野彬氏(以下、天野):あの、あまりハードル上げなくて大丈夫ですからね。

樋田:(笑)。けっこうおもしろい内容になってると思いますので、ぜひみなさん、30分弱ほどお付き合いいただければと思います。じゃあ「ショート動画時代に乗り遅れている人必見! 結局私たちはショート動画にどう向き合えばいいのか?」、始めていければと思います。

まずは自己紹介から始めていければと思います。まず簡単に僕から。現在、株式会社SAKIYOMIで人事責任者を務めております、樋田と申します。SAKIYOMIがSNSの事業を始めた時の立ち上げの責任者を、代表の石川侑輝と一緒に務めてきました。

そこから1回フリーランスのライターになったあと、もう一回戻ってきて、現在人事の責任者をやってるという略歴でございます。今回はファシリテーターを務めていきます、よろしくお願いします。

じゃあ次は、天野さんかな。

天野:天野彬と申します。SNSのリサーチとか、それをもとに広告のキャンペーンを企業さまと一緒に考える仕事をしております。なので今日は特にTikTokとかリールとか、ショート動画のリサーチの結果とか、そういう内容もお話ししていきたいなと思います。

1個だけインフォメーションですが、去年ショート動画をどうマーケティングに使うかという本(『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる ショートムービー時代のSNSマーケティング』)も出版しておりまして。その内容も今日はかいつまんでみなさまにお話しできたらなと思っております。

樋田:じゃあ次、GENさんお願いします。

コンクリのGEN氏(以下、GEN):はじめまして。今フォロワー6万人を抱える暮らし系のアカウントを運用しております、GENと申します。今まで100本以上リールを作ってきたので、そのノウハウを共有できればと思います。よろしくお願いします。

情報量が多すぎる今、「どう届くか」を考える重要性の高まり

樋田:お願いします。こんな3人で進めていければと思います。まず、今TikTokもそうですし、リールとかYouTubeのショート、あとはLINEのVOOMなど、いろんなショートムービー系のアプリケーションとか機能が出てきています。

そもそも、なんでこういった機能やアプリケーションが増えてきてるのか。天野さんにぜひおうかがいできればなと思うんですけど、いかがでしょうか。

天野:1つ有名なグラフで、マーケティング系のイベントだとすごくよく出るので、みなさんも5万回ぐらい見てるかもしれないんですが、総務省の情報通信白書のデータです。時代を経るにしたがって、どんどん世の中の情報量は増えてきているということです。

それこそ毎日、人が一生見切れない分の情報が世の中、特にネットを中心に生まれてきている。つまりそれだけ発信できる人は増えてるんだけども、それが届きにくくなっている。だから「どう届くか」を考えないといけなくなっていることを示しているグラフです。

どうしてそういう変化が起きたのかというと、世の中のメディアはこう変化してきたわけです。それこそ2023年の今は、さっきのセッションでも「あまりフォローしなくなってる」というお話がありましたよね。あれ、すごくおもしろいなと思っていて。

ショート動画の流行の背景にある「タイパ」の価値観

天野:この10年ぐらいはSNSで人とつながって、その人から情報を得ることが情報の得方としてメインだったんですが、今はそれこそ「おすすめ」。その人が何に興味を持っているのかをAIが判定して、みんなに見せてくれる。つまり情報が多いので、自分でさばききれないんです。だから機械の力をみんな借りて、日々良い情報を得るようになってきている。

去年2022年、世の中的にも「タイパ」という言葉がかなり注目されました。メディアやマーケティングの業界だと2019年ぐらいから「最近の人、タイパ重視だよね」という話はいろいろあったんですけど、(去年は)新語や日経のヒットランキングにも出てきたりしました。

つまりそれだけみんな効率よく情報を得たい。だからこそショート動画とか切り抜きとか、あとはまとめの記事、まとめの投稿を非常によく見るようになってきているんです。

樋田:テクノロジーの進化によって情報量が増えすぎて、必然的にショートとかを使わざるを得なくなっちゃった、というのが一番わかりやすいですかね。

天野:そうですね。もうみんなにスマホが行き届いて、今は簡単に動画も編集できて発信できるので。テクノロジーの恩恵もあるし、効率よく見たいということで、まさに今日のテーマのようなショート動画が重要になってきているんですね。

インフルエンサーの視点から見た、ショート動画の2つのメリット

樋田:なるほど。そうなってくるとやはり「Instagram×ショート動画」、今回で言うとリールになってくると思っています。コンクリのGENさんが、1.5ヶ月で3万人とかでしたっけ?フォロワーの増加でとんでもない成果を(笑)。いつの話ですか?

GEN:直近3ヶ月で1.5万人ですね。

樋田:3ヶ月で1.5万人か。ヤバいですね。GENさんの視点から見た時に、インフルエンサーに属するわけじゃないですか。リールって、率直にどう考えられてるのか、お伺いしてもいいですか。

GEN:メリットを2つお伝えします。1つ目が、フィードよりも圧倒的にリーチは獲得しやすい。そして誰が投稿したとかじゃなくて、割とコンテンツ単位で評価されている傾向にあるんじゃないかなと思っています。

初期アカウントでも100万回再生を取っているアカウントもありますし、そういう意味でリーチを取るならリールを活用するのは必須かなと思います。

とはいえInstagramのユーザーって、まだフィード投稿を求めてるんじゃないかなと個人的に思っていて。フォローするか否かも、フィードを見て「どうしようかな、フォローしようかな」って判断してるんじゃないかなと思ってます。

なので僕の戦い方としては、リーチを取るための手段としてリールを活用する。「フィードを活かすためのリール」のような形で考えています。

インスタグラムのリールは「自分を知らない人」に有益

GEN:もう1つのメリットは、アフレコ機能がついていることです。僕たちはいわゆるミニブロガーと言われる立ち位置で、テキストベースでものごとを伝えることが主流なんです。そういう意味でアフレコを使って、(テキストでは)伝えられない感情を声で伝えられる。これは大きなメリットかなと思ってますし、結果にもつながっているんじゃないかなと思ってます。

樋田:そもそもリールだけをガッツリ回してたら、インスタの運用がうまくいくという話じゃなくて。あくまでもリールはリーチを取るための手段であって、フォロワー獲得のためにはフィードとか、そういったものを組み合わせていかないとうまくいかないというイメージですね。

この辺りは天野さん的にマクロの視点から見たらどうなんですか。

天野:リールは、今自分を知らない人に知ってもらうためにはすごく有益だと思うんですけど、ふだんから有益な投稿をしてくれなかったら、フォローはしてくれないわけです。おっしゃることはすごくよくわかるなと思います。

リールが今後も重要である3つの理由

天野:このスライドに挙げたのは、リールが2023年に引き続きなぜ重要なのか、3点でまとめたものです。1点目としてInstagramの公式の発表によると、2022年の比率の2倍、つまり30パーセントほどを、通常のフィードでもレコメンデーションによってこれから補っていくんだと発表しています。

つまり今って、基本的にフォローしてる人の投稿が見れるのがフィードですけども、「これをフォローしてるあなたは、こういう人もどうですか?」とか「リールでこういうのを見たから、こういうのはどうですか?」というのが、フィードにもどんどん入ってくるようになってくるんです。つまりレコメンデーションが非常に重要っていうのが、まず1個。

2つ目としてデジタル広告市場です。広告業界に身を置いてると、やはりInstagramは、それこそYouTubeやTikTokのほうに広告主がデジタル広告を寄せないように、ガードしたいわけですよね。景気的にもリセッションして、広告市場全体があまり伸びなくなってくる。つまり他のプラットフォームに流れないように、リールを強化しないとビジネスが伸びない。

Instagram主語で言うと、そのグロースをするためにやはりリールを強化しないといけない、というのが2つ目としてあります。

仕様機能面から考えても、リールの運用は必須

天野:そして3点目としてリール枠ですね、これも増やしていく。つまり1、2の結論として、1があって2があるから「インスタは来年リールを絶対伸ばすはずだ」っていうのが僕の考えですね。

キーワードとかハッシュタグで検索した時、あるいは発見タブ、それから通常のフィードの投稿にもたぶん、これまで以上にリールで「あなたはこういうの好きですよね」っていうのを出すようになっていく。だから発見タブにだんだん寄っていくイメージかなっていうのが僕の見立てですね。

樋田:ここにいる方々はインスタを使われてる方が大部分かと思うんですが、発見タブとか、もういかついぐらいリールがバンバンバンって出てますし。ハッシュタグの検索のところも、今天野さんがおっしゃったように、まったく同じ状況が起きてると思います。

Instagramの仕様機能面からも「やっぱりリールをちゃんとやらなきゃいけないよね」ということがわかる。そういう内容だったかなと思ってます。