2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
【手放すTALK LIVE#35】「規則も命令も上司も責任もない!」 のに業績が伸びるひみつ ゲスト: おふくろさん弁当前社長係 岸浪龍(全6記事)
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岸浪龍氏(以下、岸浪):(ヤマギシ会を退会し、不動産屋で働き始めて)そんなのをやりながら僕がけっこうおもしろいなと思ったのが、例えば好きな人ができて結婚したりするじゃないですか。家族になったりしますよね。「私たち家族です」とか言って、でも、ちょっと前までは赤の他人だったわけじゃないですか。突然、「私たち家族だよね」って、めちゃくちゃ思い込みじゃないですか。
坂東孝浩氏(以下、坂東):確かにね。
岸浪:思い込んでいる人同士は家族と言って、それ以外の人は他人と言っているのはめちゃくちゃおもしろいなと思った。
その時、「じゃあ、例えば『100人家族です』と思い込んだらいけるんじゃない?」と思ったんです。100人とか200人で「私たち家族です」みたいなの。家族なんてあまり根拠はないんじゃないかなと思って(笑)。本人同士がそう思っているという以外にあんまりない。
坂東:(笑)。なるほど、おもしろいですね。
武井浩三氏(以下、武井):すごい本質だ。血縁とかじゃないと。
岸浪:血縁とかじゃないですよね。だって夫婦は血縁がないですものね。
武井:本当にそう。
岸浪:僕も26歳の時に結婚したんですが、その時に奥さんは子どもを2人連れていました。その子どもと僕は血縁はないじゃないですか。でも、「私たち家族だよね」「そ、そ、そ、そうだよね」みたいな。
武井:(笑)。
岸浪:それで家族になるんですよね。だから意外と簡単に家族になるなと思った。
武井:すげえ。「意外と簡単になるな」ってやばくないですか?(笑)。
岸浪:(笑)。例えばスマホを作るとかパソコンを作るとなったらわりと難しいですが、家族を作るのはめっちゃ簡単じゃないですか?
坂東:マジか。「スマホより家族を作るほうが簡単だ」というのはなかなか新鮮ですね。
武井:確かに。
岸浪:じゃあ、100人とか200人で本当に「自分たちは家族だよね」という関係が作れるんじゃないかなと思ってね。そういうのを試してみたいなというので、だんだんとやってきた感じです。
坂東:その時にはお仲間と考え方がだいぶ近しくなっていたんですね。
岸浪:そうですね。「本当に人が幸せに生きるというのはどういうことだろう」とよく話していました。やはり、1つのキーワードとして「安心」がすごく大きいんじゃないかな。
坂東:安心ね。
岸浪:ええ。もし自分が働けなくなった時に家族が食べていけるかとか、そういうプレッシャーはものすごく大きい感じがする。
例えば、家族が200人いたらお父さんが1人くらい倒れても、「あと50人のお父さんがいるから大丈夫だよ」という感じで暮らせたら安心して休めるし、そもそもそういうプレッシャーに苛まされながら働くことも、ものすごく軽減されるんじゃないかなと思った。
今の、お父さん1人、お母さん1人で、子どものことは全部責任を持って面倒をみるのは、本当に理にかなっているのかなという疑問というかね。
坂東:なるほど。それはそうですね。
岸浪:かなり無理があるんじゃないかな。
坂東:すげえ大変ですね。
岸浪:そうですね。すごく大変ですよね。そりゃ少子化になりますよ。だって、お父さんとお母さんでなんとかしなきゃいけなかったら、子どもが2人や3人いたら大変ですもの。
坂東:いや、そうだわ。負担が大きい。
岸浪:大きいですよね。「じゃあ子どもは1人にしておこう。この子だけにかけよう」という感じになるし、今みたいに大学や高校にめっちゃお金がかかるとなったら、「やっぱり1人にしておこうよ」となると思うんですよね。
さっき坂東さんにも話していたんですが、うちも大学とか高校で子どもが「私立に行きてえ」とか言って、「いくらかかると思っているんだよ」という感じだった(笑)。
そういうのも一緒にやっている家族のような仲間と話をする。「こういうのを学びたいと言っていて、行かしてやりたい気持ちはあるんだよね」とみんなで話しながら、「まあ、みんなで出したらなんとかなるんじゃない?」という感じで、他の人たちがけっこう応援してくれて、経済的にも子どもたちが大学とかに行けたり。
坂東:いや、ちょっとごめんなさい。さらっと話しているけど、すごくやばい話をしていて、150万円とか200万円の学費を他の人たちが出してくれているということですよね。
岸浪:そうです。
坂東:貸してくれているんじゃなくて。
岸浪:うん。もうね、貸したとか返したとか、わりと面倒くさいので。
坂東:それは血がつながっていないというか、家族という思い込みの中のコミュニティということですよね(笑)。
岸浪:そうそう。みんな思い込んでいるから(笑)。
坂東:家族だったら自分の子どもの学費を払ったりするのは当たり前なんだけど。
岸浪:そうですよね。お父さんが出したりお母さんが出したり、「私も家族だ」と言っておばあちゃんが出したりするじゃないですか。
坂東:それを、近所の人たちが出してくれているということですよね。
岸浪:そうです。
坂東:めちゃすごい話なんですが、返すとかじゃないんですよね。
岸浪:ないです。だって、例えば家の中でお母さんがご飯を作って、子どもたちに「はい。じゃあ今日は700円だよ」とか言わないじゃないですか。
坂東:言わないな。
岸浪:家族ってそういう感じですよね。何かしたからといって、それに対する金銭的な報酬とか物理的な何かを求めたりしないですものね。
坂東:そうなんだけど、結婚契約とかをするわけでもないコミュニティということですよね。
岸浪:そうですね。
坂東:家族的なコミュニティで、相当安心感があったり、信頼関係が強いということですよね。
岸浪:そうですね。
坂東:前提の話をお聞きしたいんですが、鈴鹿市の中で今何人くらいおられるんですか?
岸浪:今は150人から200人くらいと言われているんですが、そこもあまりはっきりしないんですよね。
坂東:はっきりしていないんだ(笑)。線引きはないんですね。
岸浪:線引きはないんです。あまりメンバーシップとか名簿とか契約書とかないので。
坂東:ないんですね。
武井:それがいいですよね。
坂東:すげえな。
岸浪:例えば、うちの子どもは普通に暮らしているから、「私はコミュニティの子です」とかあまり思っていないんですよ。
坂東:だから、さっきのヤマギシ会みたいに「お金を見たことがない」とかじゃないんですね。
岸浪:ないです。普通に学校へ行ったりもしている。
武井:みんな町に分散して暮らしている。
坂東:そもそも共同生活じゃないんですよね?
岸浪:そうですね。みんなそれぞれアパートとかマンションとか、家を建てたり、シェアハウスに住んでいる。
坂東:近いところに住んでいるだけということでしょうね。
岸浪:ほぼ徒歩5分圏内にみなさんいます。
坂東:スープの冷めない距離だ。
岸浪:そうですね。移住してきた人で、最初は「私は車で10分くらいだったらわりとすぐ近い感じだから、こっちのほうが物件が安いし、このへんに住みます」という人も、だいたい漏れなく半年以内に徒歩5分圏内にもう一回引っ越してきます。
坂東:(笑)。親戚がそこら中に住んでいる感じですね。
岸浪:そうです。そこら中に住んでいるし、同じアパートに何軒も住んでいる。
武井:あと、コミュニティスペースがあったり。
岸浪:そう。コミュニティの中心的なセンターみたいなのがあって、そこにいろんなコミュニティの機能が集約されている。公民館みたいなイメージですが、そこにだいたいみんな毎日ふらっと現れる。
そこにはお金の要らないお店や美容室、食堂もある。コミュニティのメンバーはそこでお金を払わなくても、物を持っていったり食事ができるシステムもあります。
坂東:それはみんなの費用負担で運営されている感じですか?
岸浪:そうですね。みんな会社に勤めたり、コミュニティの産業で働いたりしているので、それぞれ一応口座には振り込まれるんですが、あとは余っているところから使う感じですかね。
武井:すごいのが、アズワンは株式会社とか農業法人、NPO、社団法人、財団法人、全部あるの。法人をいっぱい持っていて、その時々で最適な法人格を使ったり、個人を使ったりと自由自在なの。
岸浪:そうですね。自分らでもどれを持っていたかがだんだんわからなくなってくるんですけどね。
坂東:マジで?
岸浪:(笑)。
坂東:コミュニティの150人から200人の人たちは、そこで働いてもいいし、働かなくてもいいんですよね。
岸浪:そうですね。
坂東:そもそも縛りはないんですね。
岸浪:ないです。
坂東:だから、すごく緩くつながっている。
岸浪:緩いと言うのか、強いと言う人もいます。
坂東:さっきのお金の話はめちゃくちゃ強いんですが、はっきりとした線引きがない。例えば親戚だったら「あなたは他人。彼は親戚」というのがわかっているじゃないですか。
岸浪:それは何を基準にしているんですかね。
坂東:まあそれは血ですね。
岸浪:でも奥さんとは血縁がないですものね。
坂東:奥さんは契約があります。戸籍、戸籍。
岸浪:戸籍だって思い込みですものね。
坂東:いや、そうなんですが、緩い感じなのにお金を貸し借りするんじゃなくて、「いやいや、学費出すよ」というのが普通にできる。なんでかなり濃い信頼関係ができるようになるんですか?
岸浪:例えば、それぞれはアパートやマンションで暮らしていますが、僕らの感覚としては1つの大きな家の自分の部屋くらいのイメージなんです。自分の部屋を出て、家のリビングに行く感じがコミュニティスペースという感じなんですけどね。
だから、1つの大きな家でみんなで暮らしている感覚はあるんですよ。さらに仕事もわりと一緒にやっているわけじゃないですか。
坂東:実際には大半の人が一緒に仕事をしているという感じですか?
岸浪:そうですね。今、コミュニティの産業に従事している人が9割以上。
だから、一緒の家に住んでいるような感覚と、仕事も一緒にやっているような感覚で、それを何年も続けていたら「これ、家族じゃね?」と、理屈じゃなくなっていくんですよね。
坂東:「これ、家族じゃね?」(笑)。確かに昔はだいたい家族や親戚のみんなで農業を営んでいて、子どもも何かの農業をしていて、そこから2次加工品を作ったりしていた。その範囲がすごく広がっている感じですかね。
岸浪:今でこそ「そんなのできるの?」という印象になっちゃっていますが、例えば、この間来ていた人が言っていたのは、九州の炭鉱の村で育って、お父さんたちみんなで炭を掘って、「お金なんてうちになかったら隣からもらってきな」という感じで、ご飯もどの家でも食べる。誰が誰の子かなんて、外から来た人には一切わからない。
坂東:炭鉱は男女関係もすごかったですよね(笑)。本当に誰の子かわからないみたいな。
岸浪:そうそう。だからたぶん、そんなにめちゃくちゃ昔じゃない頃に、そういう暮らしをしていたと思うんですよね。
坂東:そうか。今のほうがイレギュラーという考え方もあるのか。こんなふうに分断されている。
岸浪:今はなんでこんなに細切れにしたんだろうなというのはありますね。みんなの融通性がどんどんなくなって、狭い、苦しいところで自分たちだけでなんとかするところに追い込まれていますよね。
僕らも「それが正しい」「答えだ」と思っているわけじゃなくて、自分たちで社会実験をしてみているんです。
坂東:「どうやったら幸せに生きられるんだろうね」と、そこを目指している。大事にしたい。
岸浪:そうですね。個個別別というベースが幸せなのかを見ていった時に、どうもそうでもないかもしれないなというあたりから、「みんなで力を合わせて1つの家族のような暮らしをしてみたらどうなるんだろう?」というチャレンジというか、社会実験みたいな感じです。わからないですよ。やってみたら失敗するかもしれないですよ(笑)。
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