ヤフーの強みは「未来をデザインできる」こと

井上陽介氏(以下、井上):じゃあ小澤さんも未来に向けて成長戦略を考えて、その中で爆速っていうのを今どのように捉えて意識されていらっしゃるか。

小澤隆生氏(以下、小澤):ヤフーというのは、いわゆるAmazonとかGoogleと違って本国というのがない。向こうで作ったものをローカライズする会社ではない。日本の会社として、自分たちが思いついたものを作れるという状態ですね。

逆に言うと、未来をデザインできる。働いていて、もしくは生きていて、一番楽しいことの1つが未来を予測し、それに向けてユーザーの動き、社会がこうなるっていうのを自分たちで考えて、そういうプロダクトを作ること。

そして、実際にユーザーがそのサービスを使って、社会が変わっていくこと。PayPayを4年前に提供して、現金などで払ってたものが、コンビニエンスストアで「前の人がPayPayで払ってくれた」。それを目撃した時、本当に感激する。

私自体はEコマースを1999年からやっていて、23年やってるんですね。「Eコマースで絶対に大きくなる。絶対に大きくしてみせる」と言って、最初に売れた時は本当に、1円じゃないけど、1,000円か何かで本が売れた時はうれしかったけど、今自分の手元で3兆円やってると。

未来ってそんなに予測するのは難しくないと。現金って減るだろうなと。Eコマースで大きくなるよねって99年の時代でも言われていて、Amazonもありました。

あとはその一番先頭に自分が立ってるかどうかっていうところが、スピード、もちろんやる気、実力、そういうものの組み合わせで未来を予測するのは、正直、そんなに難しくはない。あとはそれでもやり切れるかどうか。

「去年」ではなく、「未来」に対して勝負する

小澤:PayPayをやってて思うのは、やりきれるかどうか。みなさん自身がフロントランナーに立てるかどうかっていうのは、スピードだけじゃないですよ。もちろん、ありとあらゆる手段を組み立ててという知力だったり、経験も必要かもしれないと。

ただ、よーいドンの競技なんですよ。スポーツと違うのは横一線じゃないです。自分がもうスタートしたと思えば、その時点でスタート。みなさん自体は将来どういうサービス作るとか、どういう業務に携わるかはどうかわからないですけど、去年に対して勝負するんじゃなくて、未来に対して勝負するっていうことがとても重要で。

「未来はこうなるよね」というのを自分で思い浮かべて、でも、それは同じ会社の中でも同じ業界でも、500人、1000人、1万人が同じことを思いついてるんだけど、それに対してなぜ「自分が勝てるんだ。自分がやってるものがなぜ勝つのか」というのをとことん考えつくし、「これならいける」って思った瞬間、全力で走れるかっていう、こういうことなんじゃないかなと思っております。以上です。

井上:ありがとうございます。拍手が沸きそうですね。

(会場拍手)

「どの社会課題に向き合うか」がないと、チームビルディングができない

井上:というところから、いきなり鶴岡さんに行くとちょっとあれですけど。

鶴岡裕太氏(以下、鶴岡):やりづらいですね。

井上:やりづらいですよね。

(会場笑)

鶴岡:(笑)。嘘です。

井上:すみません。順番間違えましたね。すみません。

出雲充氏(以下、出雲):もうちょっと怒っていいよ。本当に。

井上:これは私の責任ですので。

出雲:スタートアップで挟み込んで倒さなきゃいけないんだから。

鶴岡:嘘です。嘘です(笑)。そうですね。僕は2つ、けっこう最近意識してることがあって。僕、一昨日まで久しぶりに2週間海外行ってたんですよ。ニューヨークとかロンドンとかパリに行ったんですけど、もう社会問題がすごいなって思って。インフレもすごいし、円安もすごいし、アジア人のヘイトもすごいし、ニューヨークなんて生きるコストが上がりすぎて、メトロの運転手がいなくて動いてないとか。

「アジア人がホーム行ったら突き落とされるから、行くな」と言われたり、銃の発砲事件もすごい増えてるそうで。ロンドンも同じで、ストライキが起きてメトロも動いてなければ、けっこう社会問題が溢れている。

やはり1つ目はイシュー。自分たちが向き合うイシューをどう定めるかというのは、けっこう大事だなってあらためて思って。もう解決すべき社会問題に溢れてるわけですよ。

起業家としては、どの社会課題に向き合うか、どの社会課題を解決するかっていう、それはすごいあらためて大事だなって今回海外行って思いました。しかもそれがないと、今チームビルディングがけっこうできないなと思って。

それこそヤフーさんくらい大きければ、ガンガン、知名度もあるし対応できると思うんですけど、やっぱうちとかその企業ブランドっていう意味での採用競争力はまだないので、我々はどういうイシューに向き合っているのか。あなたの時間はどう社会に役立つのかを示せるかが大事。

強い会社を作るために、チームの「受容性」が必要

鶴岡:やはりそこはスタートアップとして戦うときに、徹底的に研ぎ澄まさないといけないと思っています。今エンジニアなんてめちゃくちゃ高騰してるし、ただ我々としてはプロダクトが一番のアセットで、そこに向けてどんどん良いチームを作るというのが大事で。なので全ての意味においては、良いイシューをちゃんと会社として立てるっていうのはすごい大事だと思います。

あとイシューが無数にある。解決すべき課題がたくさんあるから、ここはより一層研ぎ澄ましたいなって1つ思ったのと、海外を見てもう1つ思ったのは、やはりチームとしての受容性。多様なチームを作ることの強さって、出雲さんとけっこう僕も近いんですけど、相当次の武器になるなと思って。

BASEとかスタートアップなので、それこそ爆速じゃないけどスピード感意識すると、過去の10年ってすごい同質的なメンバー、めっちゃ僕大好きだったんすよ。僕が「1」って言ったら、みんな「1、OK! いこう!」みたいな。だけどもっと遠くに行こうとすると、多様なチーム作らないと会社として限界がすぐきちゃんですよ。

それこそ若い方みたいなことを出雲さんがおっしゃってましたけど、本当にチームとしてちゃんと受容性を作り出して、それがダイバーシティに繋がって、そういうチーム作っていかないと、D&Iとかけっこうバズワードですけど、実際に強い会社を作るためには超必要だなって、最近あらためて思っています。

バズワードだから向き合うんじゃなくて、それが本当の競争力になるだろうって徹底的に自分たちで理解して、そこに本当に猛進するというのは大事だから、イシューと受容性、インクルージョンは、個人的にはすごい大事だなと思って経営しています。

井上:なるほど。勝てる理由にもなるってことですね。

鶴岡:そうですね。じゃないと逆に勝てないというか強いチームにならない。やはりこれからは。ガンガンお金で叩いて勝てる時代じゃないじゃないですか。なので、やはり強いチームを作るためにはそうしないといけないなと思って。

井上:はい、ありがとうございます。

今の起業家の仕事は「利益を作る」だけではない

井上:残り6分ほどで、質疑に入るんですけれども、質問を、すでに60件以上いただいています。これから追加というよりは、ぜひ「いいね」ボタンを押していただいて、多いところからできる限り、おうかがいしていきたいなと思ってます。

3つ目のテーマは、経営者としての思想や考え、そして志、思い。こういったものをみなさん、現在どのように考えているか。そしてどのように育んでいらっしゃるのかということをおうかがいしたいなと思います。これはじゃあ鶴岡さんからいってもいいでしょうか。

鶴岡:そうですね。僕は最近はソーシャルインパクトをすごい意識してて、起業家の仕事って、売上高とか利益を作るだけの仕事じゃなくなっていると僕は思ってて、社会貢献するっていうのとビジネスを作るっていうのを、両方実現するっていうのがたぶん今の起業家の仕事だと思うんですよね。

もうべらぼうに利益を上げるだけで許される時代では、たぶんないというか、べらぼうに利益を上げながら、そのもう一方でしっかりとした社会貢献をするというのがセットで、ようやく起業家になれると僕は思ってるというか、その軸は相当最近は意識をしていて。

なので、自分が日頃思ってることがエゴになってないかとか、何かevilじゃないかみたいなのとか、社員の大事な時間が(経営の意思決定のせいで)無駄に使われてないかとか、その軸ではすごい考えるようにはしているなって感じですかね。クイックですけど。

創業社長ではないからこその「仕組みをどう残すか」への意識

井上:はい、ありがとうございます。じゃあ、小澤さんにも同じ問いでお願いします。

小澤:ヤフーって26年経ってます。そして、社長は、私で5代目なんですよ。孫さん、井上さん、宮坂さん、川邊さんと。唯一サラリーマン。偉そうなこと言ってるけどサラリーマン。つまり別に創業社長でも何でもない。

そういう人間がヤフーで経営者として何をやりたいかっていうと、これはみなさん、大企業に所属してる方々もちょっとそういう気持ちがあられるのかもしれないけど、ヤフーを通じていかに社会に良いこと、インパクトあることができるか。ヤフーを利用してということなんですね。

自分がヤフーを使ってて、気になる点はもちろんあります。それを直すのが仕事じゃなくて、Yahoo! JAPANトップページ、Yahoo!検索とか、ユーザーが何千万人も使っているサービスを活用して、いかに社会貢献できるか。

その企業のトップにいる時に、やはり従業員の方にもその喜び、未来を考え、それを実現するという経験を提供したい。自分1人では街にいたらできなかったかもしれないし、他の会社ではできなかったかもしれないですけど、ヤフーという、膨大なユーザーとリソースと、我々経営陣と一緒にやることによって、すごいいいことができたと。

PayPayを目の前で使ってくれて、現金を使わなくて良くなったというように、そういうことをやるためにはどうしたらいいかと。ここからがサラリーマン経営者として重要なのは、僕ってもちろん何年か経ったら辞めるわけです。クビになるかもしれないし自分で降りるかもしれない。

ただ、ヤフーの中で、それが持続的に行われるような仕組みを作れるかどうかというのがとても重要で、これはひょっとしたらみなさんもやらなきゃいけない。オーナーシップある経営者じゃないのならば、仕組みをどう残すかということは、すごく強く意識をしていて、今はその作業をすごくがんばっているところですね。みなさん、ヤフーはもっと良くなりますから、使ってみてくださいね。よろしくお願いします。

今までの世代とミレニアル世代・Z世代の、決定的な2つの違い

井上:では出雲さん。

出雲:未来ですよね。未来。いや、本当にもう鶴岡さんが一番大事な話をばらしてしまったので、私、途中で止めようと思ったんですけれども。

(会場笑)

井上:何かしゃべりたそうでしたもんね。

出雲:「ソーシャルインパクトを意識してます」と言うのに、今日聞いてくださってる方が、あんまり反応してなかったと思うんですよね。それを見てて、僕はちょっと「これは大丈夫かな」って思いました。2030年にはみなさんの会社なくなっているかもしれないんですから。

2025年に日本は、明治維新と同じぐらい大きな変化が起こるんです。鶴岡さんも私も、そしてここにいるみなさんも1980年以降に生まれて、2000年以降に大人になったミレニアル世代とZ世代だと思うんです。ミレニアル世代とZ世代って今までいた人たちとぜんぜん違うんですよ。

決定的に違うところは2つあるんですけれども、1つ目がデジタルネイティブ。2つ目がソーシャルネイティブ。

今までミレニアル世代とZ世代って、日本においては社会の中心にいなかったんですよ。私は昭和55年1980年生まれで、2000年に20歳になったミレニアル世代の最初なんですけれども、自分の同期である1980年生まれは約150万人います。私の親父は1949年生まれ、団塊の世代の最後で約270万人いるんですね。

去年、2021年、日本に産まれてきてくれた赤ちゃんはたったの約81万人。人口比でいったら、今の赤ちゃんを1とすると、ミレニアル世代とZ世代は2で、団塊の世代が4なんですね。現在、何か新しいことやろうと思っても、人口比が3対4なので、まだ団塊の世代が多くて、デジタルネイティブとか、ソーシャルネイティブなものがメガトレンドの主流になったり、マジョリティになったりすることは、人数的に今まであり得なかったんですけれども、これが2025年に変わるんです。

2025年までに準備すべき「視点」

出雲:今、日本の人口は1億2,600万人。そのうち社会の中核を担っているのが15歳以上65歳未満の生産年齢人口で日本の場合7,500万人なんですけれども、この2人に1人がミレニアル世代とZ世代に変わるのが2025年なんですね。

ミレニアル世代とZ世代が生産年齢人口の過半数を超えると何が起こるか。選挙の投票行動が、全部デジタルネイティブ、ソーシャルネイティブに変わります。お客さんの生活者の消費行動もデジタルネイティブ、ソーシャルネイティブに変わるんですね。若い優秀な人の就職先も変わる。デジタルネイティブでソーシャルネイティブな会社にしか、優秀な人は就職しなくなるんですよ。

みなさんの会社が、デジタルネイティブとソーシャルネイティブのビューポイントを入れた商品、サービスを提供してるのかどうかは、私は知りませんけれども、もしそういうことを、2025年までに準備できてなかったらお客さんにも選ばれない。優秀な人も採用できない。そういう会社になるんですね。

もう大企業にいくらアセットがあっても、ひとたまりもないですよ。こういう大きな変化に対応するために必要なものは、ソーシャルネイティブとデジタルネイティブの人たちの視点をできるだけ早く取り込んで、会社を変化に対応させるということなんです。

それをヤフーにされると困るので、私はちょっと言いたくなかったんですけれども、みなさんの会社にはぜひ潰れてほしくないので、2025年までにこの大きなメガトレンドの変化の前に、準備をされるっていうことは、未来については特にお勧めしたいと思います。

井上:ありがとうございます。