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提言!つみたてNISAの恒久化【藤野英人×渋澤健 ①】(全1記事)

渋沢栄一の玄孫が、15年前に投資信託会社を設立したわけ 村上世彰氏と澤上篤人氏という2人の「かみ」から学んだこと

レオス・キャピタルワークス株式会社のYouTubeチャンネル『お金のまなびば!』は、ふだんは語りにくいお金や投資、経済の話について、ひふみシリーズの最高投資責任者の藤野英人氏や、ひふみシリーズのメンバーと一緒に学んでいくチャンネルです。本記事では、藤野英人氏と渋澤栄一の子孫で岸田内閣が設置した「新しい資本主義実現会議」の委員も務める渋澤健氏の対談の模様をお届けします。「実現会議」のメンバーとして渋澤氏が考える一番即効性のある政策や、ステージの真ん中に立つことで抱く「危機感」などが語られました。 ■動画コンテンツはこちら

造幣局で紙幣の印刷を見た経験

ナレーション:今回は、岸田政権の「新しい資本主義実現会議」有識者構成員の1人でもある、渋澤健さんをお招きしました。渋澤栄一の子孫でもある渋澤さんは、自らも投資信託会社を創設するなど、活躍されています。

藤野英人氏(以下、藤野):今日は、私の大先輩。

渋澤健氏(以下、渋澤):いやいや(笑)。

藤野:ようこそ、おいでいただきました。

渋澤:ありがとうございます。よろしくお願いします。

藤野:造幣局で、先祖の渋澤栄一さんの貨幣の写真をちらっと見たという噂を聞いたんですけど、本当ですか?

渋澤:それは噂ですね(笑)。

藤野:そうですか(笑)。

渋澤:王子にある国立印刷局に行ったことがあって、かなりおもしろかったですよ。すごい技術で、ある意味芸術みたいな感じで何回も何回も重ね刷りしていくんですね。

最後の工程は、1枚の大きな紙にたぶん20枚くらい印刷してあって、それを切断する。それまでの紙切れが、だんだん「あっ、これお金なんだ」って(笑)。

よく我々の業界だと、何十億円、何百億円と動かすこともあるじゃないですか。

藤野:はい。

渋澤:藤野さんもその1人だけど。

藤野:いやいやいや。

渋澤:だけど、この人たちは本当に毎日それをやっているわけ(笑)。日銀に送る大きな束が、たぶん1つで20億円くらいなのかな、よくわからないですけど。

岸田内閣が設置した「新しい資本主義実現会議」の委員に

藤野:自分のご先祖さんが将来、その1万円札になるということですけど、渋澤さんは渋澤栄一さんの子孫であること以上に、投資家として、私も長期投資の仕事を一緒にしています。最近だと、「新しい資本主義実現会議」の委員の1人としてお話をされています。

「新しい資本主義実現会議」は、渋澤さんや僕の友人がメンバーになっているので、ずいぶん期待していたんですけど、当初の岸田さんのトーンはどちらかと言うと、アンチ資本主義っぽいメッセージがあったので、「『新しい資本主義実現会議』はどうなのかな?」「ちゃんと良いアウトプットが出るのかな?」と不安だったんですが。

結果的に自分の目から見ても、非常に安定的なものが出てきました。このあたりの過程はどんな感じだったんですか?

渋澤:実現会議には15人の有識者メンバーがいます。僕のイメージでは4人くらい「指定席」みたいな方々がいて、あとは多彩な方々がいました。半分が女性で、30代の代表も2〜3人くらいいるイメージだったんですね。

僕はあれを見て、初めて岸田カラーが出たなと思ったんです。ちゃんとしたことをやりたいという意思表明だと思うんですよね。

去年の年末に我々が集まった時は、政策的なタイムスケジュールで補正予算を決めなきゃいけなかったんですね。今までの政府の取り組みに予算をつけないといけない流れがあったので、緊急提言と言いながら「え? 何が新しいの?」という最初のつまずきがあって。その次のつまずきは、例の金融所得課税。 

藤野:はいはい、課税が。

渋澤:課税を「検討します」という言葉を使ったんですね。あとで事務局に聞いてみると、これも政策カレンダーみたいなのがあって、秋に自民党の税調会から出る提言に書いてあるんですよね。

当然、自民党の総裁なので、それを受けて「わかりました。検討します」と言いますよね(笑)。その「検討します」というのがバーンと出ちゃったので、「この人は税金を上げることしか頭にないんだ」みたいになって。

藤野:そういうラベリングをされましたよね。

渋澤:そう。そのラベリングが「成長と分配って言うけれども、分配政策でしょ」から始まっちゃったんですよ。

一番即効性がある政策

渋澤:海外向けの発信も何もなかったんですよ。海外にもちゃんとしたメッセージを送らなきゃいけないということで、5月にロンドンで岸田首相が基調講演をしました。

藤野:あれ、良かったですよね。

渋澤:ね、良かったでしょ?

藤野:めちゃくちゃ良かったと思いますよ。

渋澤:実現会議のメンバーの中でも「あっ、これは良いよね」となった。特に英語版がすごく良く書かれていたの。

藤野:なるほど。

渋澤:だけど、現実として6ヶ月の討議で、次の年の政策を決める文章に落とさないと予算がつけられない。

藤野:そうですね。

渋澤:何が一番即効性があって、一番早く政策効果が出てくるかと言うと、やはり資産所得倍増プランだと思うんですよね。

藤野:はい。

渋澤:僕はどっちかと言うと、つみたてNISA一本化です。一番簡単だから。

藤野:そうですね。

渋澤:だけど、証券会社さんとかは現物の株式もやりたいので、NISAも残したいというのがある。ポイントはNISAの恒久化です。これは我々がずっと言っていたことですよね。

藤野:そうですね。まずは恒久化が一番大事ですね。

渋澤:金額を増やすのも大事かもしれないけど、恒久化のほうが大事なのかなって。

藤野:そうですね、長くやるっていう。

渋澤:あとは、ジュニアNISAという、すばらしい制度もあったんだけど、あまりにも複雑で。

藤野:わかりづらいですよね。

渋澤:じゃあ、つみたてNISAというシンプルなものを0歳からでもできるようにしようと。

藤野:恒久化であれば、ジュニアもへったくれもないですからね。

渋澤:そうなんですよね。だから0歳から100歳から、フォーエバーみたいなことを期待しているんですね。

村上世彰氏と澤上篤人氏という2人の「かみ」から学んだこと

ナレーション:藤野さんは渋澤さんと12年前、草食投資隊(渋澤氏と藤野氏、セゾン投信社長の中野晴啓氏の3人で結成)を結成したそうですが、いったい「草食投資」とは何なのでしょうか?

藤野:僕らの草食投資隊って、始めた時はほぼ冗談みたいなものだったんですよね。

渋澤:どう見ても草食系に見えないってこともあって(笑)。

藤野:まさに(笑)。私が一番草食に見えない」といじられていたんですけど、今日は渋澤さんにフォーカスを当てる回なので、渋澤さんのバックグラウンドに触れたいと思います。渋澤さんが(2007年に)コモンズ投信を設立したきっかけはどういうことだったんでしょうか?

渋澤:たぶん22年くらい前に、子どもが生まれたことがきっかけですね。この小さい赤ちゃんが成人になる時には、新しいことにチャンレンジしているはずだという親バカの夢を描いて、いずれ大人になる子どもを応援する資金を積み立てたいと思ったんですね。

貯金でもよかったかもしれないけど、子どもの成長を応援するという性質から、株式投資かなと思ったんです。私は2つの「かみ」と出会ったという話をよくするんですけど、1人は澤上(篤人)さんなんですね。

藤野:そうですね。

渋澤:長期積立投資、個人からというのが頭にあって、コモンズ投信を始めたんです。もう1つ、きっかけとなる「かみ」がいたんですね。これが、実は村上さんだったんですよ。

藤野:村上世彰さん。

渋澤:はい、村上ファンドの村上さん。村上さんと一緒に企業訪問をしたことがあるんですけど、村上さんがおっしゃることはある意味でロジカル、理屈が通っている話だったんですけど、企業側のシャッターがザーッと降りているんです。

一方的にものを申しても長続きしないし、埒が明かない。大事なのは、こういう対話だなと思ったんです。そこで、対話をすることで、長期的なお金と長期的な資本を求めている企業とのマッチングができるんじゃないかなと思い立って、仲間たちと一緒に立ち上げたという話です。

藤野:そうすると、今、一番上の息子さんが22歳くらい?

渋澤:そうなんですよね。

藤野:やっぱり時間が経ちますね。

渋澤:経ちますよね。我々もおじさんになっちゃいましたね。

藤野:いやいや、おじいさんっていう感じで(笑)。

渋澤:(笑)。この年齢になってくると、だんだん孫の話が出てくるから、「そっかー」みたいな(笑)。

ステージの真ん中に立つことで抱く「危機感」

藤野:でも、長期投資ってそういうことですよね。1回チャレンジすると、気がついたら僕らももう20年くらいやっているわけですから。

渋澤:そう。

藤野:草食投資隊と言ってこれだけ長くやっていると、必ずしも僕らの政策を受け取ったわけではないと思うんですけど、僕らの想いが結果的に国の政策としてかたちになっていくことが、とても感慨深いんですよね。

渋澤:そうですよね。感慨深いと同時に、ちょっと危機感も覚えていて。なぜかと言うと、あの当時、長期投資、積立、日本株なんて誰も言っていなかったじゃないですか(笑)。

藤野:そうですね。

渋澤:だから、かなりステージの端にいる存在だったんだけど、気がついてみたら、我々がやっていることがど真ん中に来ちゃったんですよね。

藤野:そうですね。

渋澤:ど真ん中にいるということは、そこから変化が起こらないと思っているんですよ。

藤野:確かに。

渋澤:変化って、いつもエッジから亀裂が入って行くけど、真ん中はなかなか変わらないじゃないですか。

藤野:確かに。ロックですね、その考え。

渋澤:いや、偉そうなことを思ったけど(笑)。

藤野:いや、いや。「僕は端だったけど真ん中になった。どうだ見てみろ」じゃなくて、逆に真ん中に来ちゃったから、むしろ危機感で、「もっとオンザエッジに」「ロックで行こう」という話なんですね。すごい、今日イチって言うか。

渋澤:今日イチ(笑)。

藤野:渋澤さんのお話を聞いた中でも、しびれる話だった。

渋澤:いやいやいや(笑)。

藤野:でも、それはそうかもしれないです。自分も、今のでなんかちょっと良いショックがあって。「ここまで来たぞ」みたいな感じじゃなくて、「いや、もっと辺境に行かなきゃ」という気持ちになりましたね。

渋澤:うん。特に創業者は気がついたら守りに入っていて、周りが見えなくなる状態って、けっこうマズいと思っていて(笑)。

藤野:いや、マズいよ。もっとオンザエッジに行かないとね。いや、もっと、もっと辺境に。なんかめちゃそう思いました。さすが渋澤さん。

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