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連携サービスもフル活用。約1,000名でkintoneを導入した因幡電機産業の現場主導の業務改善(全2記事)

2023.03.01

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便利なはずのシステムが「入れてもらったはいいけど…」に陥る理由 現場主導のDXで直面する“壁”の克服法

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社が主催するイベント「Cybozu Circus 2022」が開催され、クラウドサービスを活用したDXによって新しい道を切り拓く勇者たちが登壇しました。本記事では、大阪に本社を置く電設資材の専門商社・因幡電機産業株式会社の田中健太郎氏と井上勝史氏が登壇したセッションの模様をお届けします。kintone導入後に直面した課題とその乗り越え方や、紙からアプリに変えて現れた効果などが語られました。

kintone導入後に直面した課題

大谷イビサ氏(以下、大谷):続いて、kintoneの連携サービスのお話に移りたいと思います。まずkintoneを導入されたのはいつぐらいですか?

田中健太郎氏(以下、田中):情報システムへの導入は、2020年の1月か2月ですね。

井上勝史氏(以下、井上):電材カンパニーは、その4月です。

大谷:そこからアプリを作り始めたというところですよね。(スライドに)「めちゃくちゃアプリ作りました」と書いてありますけど、これは何が起こったんですか?

井上:先ほど帳票類のお話をしましたが、いろんな返品や修理などのフローをアプリ化したんですね。業務フローのぶんだけアプリが出てきますので、最初からめちゃくちゃアプリを作りました。

大谷:「プラグインだらけ」とも書いてありますが、標準アプリだと難しかったということですか?

田中:親心じゃないですけど、情報システムも「現場に作ってほしい」という気持ちがあったので(笑)。無料から有料のものまでいろんなプラグインを入れて、「どうぞ使ってください」という感じでやっていたんですけど。

井上:複雑な業務フローをアプリ化したので、なかなかkintoneの標準機能ではできないことが出てきたんですね。そこで、田中にプラグインを入れてもらったんですけれど、選定に時間がかかったり覚えるのに時間がかかったりして。

またプラグイン同士が干渉することもあって、半年くらいで「入れてもらったはいいけど、どないしよう」という課題にぶち当たりました。

大谷:確かにkintoneに関わらず、ブラウザやWordPressもそうですが、プラグインは入れれば入れるほど干渉したり、うまく動かなかったり、速度が遅くなるといった問題がある。そういうところにぶち当たったというのが、導入直後の状況ということですね。

kintoneと他のプラットフォームサービスの違い

大谷:一つひとつのアプリはそれなりに良いけど、伝票だけじゃなく伝票のやり取りなどのワークフローも含めて全部kintoneでのアプリ化を目指したということですよね。どのへんが大変だったのでしょうか?

井上:1つのフローの中に登場人物がいっぱい出てくるんですね。A担当者、B担当者、C担当者……そういったプロセス管理を組むのが大変でしたね。

大谷:複数の人がいたり、あとはさっき言われたように伝票が30種類もあることですよね。それを現場でアプリにしようと思うと、複雑化してしまったというところですね。

(スライドの)ここに「現場主導で作るアプリたち」と課題が書いてあります。

kintoneの標準機能ではできないことを補おうと思ってプラグインを選定すると、「プラグインがいっぱいになった」「プラグインで干渉することが多くなった」「管理も大変だ」という壁にぶち当たったということですね。

ちょっと補足すると、これはkintoneユーザーによくある話なんですね。私も記者なので、他のIT系のクラウドサービスを見ていますが、いろんな機能をプラグインやカスタマイズで補うという考え方がkintoneの特徴です。サイボウズさん側でできることは、最小限の基本機能であると。

拡張機能を使うためには、いろいろなプラグインやカスタマイズが必要になるところが、他のプラットフォームサービスやクラウドサービスとの違いです。そこをどう補うのか。

そこで「Customine」という商品を使われているんですね。では、このCustomineの導入の経緯を教えていただけますか。

井上:業務フローの中でkintoneでのアプリ化ができないということが多々出てきました。プラグインの選定に壁があったり、プラグイン同士が干渉したりというところで、アプリ開発にすごく時間がかかるという課題です。

そこでたどり着いたのが、アールスリーさんが提供されているCustomineというサービスです。Customineを導入することで、プラグインの選定の悩みがなくなり、プラグインの干渉もなくなるため、短時間でのアプリ開発が可能になりました。

紙からアプリに変えて現れた効果

大谷:これ(スライドの書類)は30あった伝票の1つですか?

井上:これは伝票とは違って、営業の方が上司に報告する週報と呼ばれる書類の1つです。

大谷:では、この事例をご説明いただけますか。

井上:Customineさんとはちょっと話が逸れますが、kintoneを入れる前は、スライド左の形式の週報を営業の方がWordで書いて、それを紙ベースで上長に提出していました。でも上長は忙しく社内にいないケースもあって、返信までに3週間ぐらい時間がかかったりしていました。

上司がチェックする週報ですが、よく見ていただくとわかるとおり上長の回答欄もなく、本当に読んでもらえたかどうかがわからないという課題もありました。

大谷:これがビフォアだと。そして、どうなったかというと……。

井上:これが最初に作った週報アプリで、営業の方が報告内容を記載して、課長・部長がコメント欄にコメントをするというすごくシンプルな仕組みです。

こういったシンプルなフィールドを設けるだけでも、部下の報告内容と上長のコメントが増えたというケースが実際に出ています。何より返答までのスパンがすごく短くなり、この週報1つとっても良いサイクルが醸成されたと思っています。

大谷:今までの週報はある意味で書くことや報告が目的化していたのが、週報アプリを作ったことで、上長のコメントももらえるようになったし、返答も短くなったということですよね。

井上:早くコメントをもらったり、上長がちゃんと見ているかがわかったほうが、書いた本人のやる気につながると思うんですね。そういった点では、このアプリはエンゲージメントの向上に寄与しているのかなと思います。

大谷:そうですよね。すぐに返事をもらって、どうすればいいかというアドバイスをいただいたらやる気も出るし、組織の活性化にも非常にいいですよね。

現場が情シスに教えるという“逆転”

大谷:ちなみにCustomineではどういったところをカスタマイズしているんでしょうか。

井上:ちょっと見にくいんですが、アプリ画面の上のほうにタブがあります。

このタブはkintoneの標準機能ではなく、Customineさんの機能を使ってタブ化しています。

大谷:本当だったら1ページが長くなるところを、Customineでタブにして、1画面できれいに収まるようにしていると。

井上:はい、そうです。この週報アプリの場合は、一番左のタブが作成者の情報で、真ん中が週報の内容、一番右が誰がどこに訪問したかという訪問先の情報です。このようにタブを分けて、上司が管理しやすいようにしています。

大谷:情シスの立場から見ると、Customineみたいなアプリはどうですか? これが普及すると「現場でどんどんアプリを使えるな」みたいに、好意的に解釈しているんでしょうか。

田中:めちゃくちゃ好意的に思っています。今までは情シスが何かをしないといけない状態でしたが、こういうのを先に現場の井上さんがやってくれて、逆に僕たちが使い方を教えてもらうとか。「こんな発見あったよ」という交流や共感ができるのがすごくいいなと思いますね。

大谷:おもしろいですね。今まではITに詳しい情シスの人が現場の人たちに教える立場だったのかもしれないですけど。むしろ現場のほうがノウハウを蓄積して、情シスが教わるみたいなこともあるんですね。

田中:ぜんぜんありますね。

アプリ作りに興味を持ってくれる現場の人の探し方

大谷:現場の人たちは、kintoneやCustomineの使用にすぐに慣れましたか?

井上:Customineは1ヶ月ぐらいかかったと思います(笑)。

大谷:でも1ヶ月なんですね。

井上:1ヶ月ぐらいで慣れたと記憶してます。

大谷:ちなみに2020年の4月がkintoneの全社導入とお聞きしましたが、Customineを入れたのはいつですか?

井上:Customineはわりと早いタイミングで、その年の9月か10月ぐらいには入れた気がします。

大谷:kintoneを導入してから半年ぐらいで、自分たちでプラグインをいっぱい入れてアプリを作るのが大変だと感じて、Customineみたいな選択肢があることを知ったと。

井上:そうですね。

大谷:今井上さんのところで、kintoneとCustomineを使ってアプリを作れる人は、何人くらいいますか?

井上:電材カンパニーですと、kintoneを開発できるのが15人ぐらいで、Customineを触れるのは5人ぐらいです。今後もっと増やしていきたいと思っています。

大谷:現場でアプリを作る人は、どうやって探すんですか。

井上:社内で30人ぐらいを集めた説明会を開くと、興味を持って「教えてください」という人が3〜4人出てくるんですね。そういったやる気のある方にkintoneの開発ライセンスとCustomineのライセンスを付与しています。

大谷:私が聞いているところだと、kintoneのライセンスを付与して「現場で作ってね」と言っても「現業が忙しいからできない」「時間が足りないからできないんです」という悩みが必ず出てきますが、そのへんはどうですか。

井上:幸いうちの場合は、カスタマイズがいろいろ作られたり、わりとみんな能動的にやってくれているほうかなと思います。

大谷:特に井上さんがやいやい働きかけるとか、現場の人たちから「必ずkintoneを作る人を1人出して」みたいなことはしていないということですよね。

井上:そうですね。自分から手を挙げてくれた方にライセンスを付与している感じです。

大谷:なるほどね。情シスはkintoneにどういう関わり方をしているんですか? 現場を生暖かく見つめる感じで、特にタッチしてないのか。アプリが増えすぎたら「ガバナンス効かせなきゃ」「セキュリティ効かせなきゃ」という話になると思うんですけど、そのあたりはどうですか。

田中:アプリが多くなったら棚卸ししたり、開発権限を申請制にしたりしていますが、基本的には自由にやってほしいという気持ちが強いですね。

kintoneの社外連携で生まれた効果

大谷:このスライドはビフォアアフターで、工事関連の書類ですね。

井上:我々は広い意味で建築業に属していまして、工事関連の書類がいくつかあります。これは国交省が定める再下請通知書という書類です。

左に自社のこと、右に下請け会社のことを記載しますが、今までですと、手書きで書いたものを下請け会社に郵送して、また郵送で戻してもらい、紙で保存するというオペレーションでした。

こちらは、kintoneと連携サービスのトヨクモさんの「kViewer」と「フォームブリッジ」を活用して効率化を図りました。kintoneのレコードをkViewerで外に出して、フォームブリッジで下請けさんに必要な項目を入力してもらうページを設け、下請けさんが入力するとkintoneのレコードに登録される仕組みです。

大谷:これはどういった導入効果がありましたか?

井上:郵送するのも、郵送で送り返してもらうのも手間ですし、当然切手代もかかります。

大谷:急かさなきゃいけないしね。

井上:そういった無駄な郵送作業がなくなりましたし、下請けさんも1回の入力でレコードを使い回しできるので、何回も書類のやり取りをしなくてよくなりました。このあたりが目に見える効果かなと思います。

大谷:kintoneは社内システムだけでなく、広げると社外とも連携するようになりますが、下請けさんや関連会社は前向きに対応してくれるものですか?

井上:前向きにやっていただいているほうだとは思います。

大谷:協力を仰いで、やってくれる会社が増えた感じですかね。

井上:そうですね、増えてきていると思います。

大谷:(スライドの)これが実際の画面ですね。

井上:kintoneのレコードをCustomineの機能を使ってマッピングして、「Excel」ボタンを押すと工事書類ができる仕組みです。

大谷:帳票が30種類と聞いてけっこう量があると思ったんですが、Customineのようなサービスを使うことでほとんどアプリ化できているのでしょうか。

井上:まだ残っている帳票もありますが、ある程度はCustomineさんの機能を使ってkintoneのレコードに帳票を溜め込んでいます。

kintoneの良さは、素人でも扱えるわかりやすさ

大谷:残り3分ぐらいになりましたが、kintoneの今後の展開をお聞きしたいと思います。今は4つのカンパニーのうち2つで全員が登録されていると思いますが、これを全社展開にするということも必要かなと思いますが、このあたりは何か進んでいるのでしょうか。

田中:ちょっとずつ、スモールスタートでやってくれる部署が増えており、全社で使ったほうがより効果が出るので、情シスとしても推進していきたいと思っています。

よく情報システムの中で、「現場部門に任せっきりにするとエンドユーザーコンピューティング(情シス部門の担当者ではなく、現場がシステムやソフトウェアの開発や運用・管理に携わること)みたいにぐちゃぐちゃになるのではないか」と言われますが、基本的にkintoneであれば僕はあまりそうならないと思っています。

ぶっちゃけ素人でもできるぐらいのわかりやすさだと思っていますので、そういう不安は今のところはないかなと思いますね。

大谷:井上さんは、今のカンパニーの中での利用をもっと促進する立場になりますかね? もしくは他のカンパニーへの展開のお手伝いもされるんですか?

井上:他のカンパニーへの展開も一応サポートしていますが、基本そこは田中に任せています。

大谷:でも大きい会社で、それこそカンパニー制になっていると、上司の方の考え方にもよると思うんですけど、それぞれのカルチャーが違ったり、温度差みたいなものがあったりするんですかね。

田中:最初はもちろんありましたね。でも徐々に「使いたい」と言う人や、「自分たちで業務改善するならまずkintoneだろ」といった意識がちょっとずつ社内で芽生えつつあると思います。そこを後押ししてあげるのが情シスの役目かなと思っていますね。

大谷:社内展開を広げていく時、例えば勉強会や先ほど言われた説明会などいろいろな施策があると思いますが、情シスさんとしてこういう方向性でやっていこうというものはあります?

田中:やはり最初は触らないとわからないと思うので、入門編的な会を開いて、実際に触って簡単なアプリを作ったり、ちょっと慣れてきたら井上さんに来てもらって「こういうアプリを作ったよ」という共有会みたいなことをしていますね。

業務改善に必要なのは、情シスと現場の「仲の良さ」

大谷:今回お二方に来ていただいたのは、情シスと現場がどうやったら仲良くなれるかというテーマがすごく自分の中にあったんですね。

kintoneのアプリは今後現場が作ることが増えると思うので、やはり情シスと現場は仲良くなるべきだし、協力し合うべきだと思うんですよ。それのために何をしたらいいかを、お二方にコメントいただいてまとめようと思います。まず田中さんから、どうやったらうまくやっていけますかね?

井上:難しいですね。

田中:……飲みに行くとか(笑)。

(一同笑)

大谷:ベタですね(笑)。一緒にサッカー観戦するとか。

田中:けどやはり情報システムとして、共感してあげることが一番大切かなと思っていまして。「現場が勝手にやってるわ」ではなく、逆に「どんなことをやってんの?」と教えてもらうような気持ちが大切かなと、僕個人は思っています。

大谷:現場の部門に関心を持つとか、そういう場を設けることが重要かもしれませんね。井上さんはいかがですか。

井上:先ほども申し上げましたが、僕は現場のことは現場の人間しかわからないと思っているので。情シスさんのせいにせず、主体的に、サポートしてもらうという立場でふだんからコミュニケーションをとることが大事かなと思います。

大谷:ありがとうございます。ということで、因幡電機産業さんのkintoneのアプリの社内展開の仕方や、連携サービスの使い方についていろいろお話をうかがいました。

みなさんもkintoneを導入し展開するにあたって、たぶんいろいろと壁に当たっているところがあると思いますが、今日のお話が何かしら参考になればいいなと思います。本日はご清聴いただきましてありがとうございました。

田中・井上:ありがとうございました。

(会場拍手)

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