自動販売機を主力販路とするダイドーグループ

青野慶久氏(以下、青野):みなさま、あらためましてこんにちは。サイボウズの青野でございます。「Cybozu Circus 2022 大阪」も2日に渡って開催してきましたが、こちらが最後のセッションになります。

こちらの特別講演には、すてきなゲストをお迎えしております。ダイドーグループホールディングスの髙松社長です。

『カンブリア宮殿』という番組がございまして、実は2022年の春にダイドーさんが取り上げられているのを見てびっくりしました。ハイテクなすごい自販機にたくさんチャレンジされていて、「おもしろいな」と思ったところです。

なんと2022年の夏にkintoneを導入いただきまして、「うわ、すごいぞ」「これはぜひお話を聞いてみたい」ということで、お声がけをさせていただきました。今日は、事業の変革、組織や風土、さらにはDXまでお話をうかがえればと思っております。

それではお呼びしたいと思います。ダイドーグループホールディングス代表取締役社長の髙松富也さまです。大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

髙松富也氏(以下、髙松):よろしくお願いします。

青野:お願いします。

『東京リベンジャーズ』とのコラボ企画も実施

青野:じゃあ、いろいろとお話をうかがってみたいと思います。もうダイドーさんの会社の説明はいらないと思いますけれども、まず『カンブリア宮殿』でびっくりしたのは、ダイドーブレンドコーヒーの売上の8割方が自販機からなんですよね。

髙松:はい、そうですね。

青野:だからスーパーとかで売ってる感じではなくて、販路としては自販機がメイン。

髙松:そうですね。8割方。

青野:8割方というのは、以前からそうなんですか?

髙松:そうですね。長らくこれぐらいの比率でやってきていますね。

青野:今もいろいろコラボされて、いろいろな企画をされていてすごいなと思って。いつもお世話になっております。

髙松:はい。2022年は『東京リベンジャーズ』とコラボしております。

青野:『東リベ』のやつ、やってますよね。

髙松:ぜひ、よろしくお願いします。

青野:はい。僕、カフェオレ派なんで(笑)。

髙松:ありがとうございます。

青野:「珈琲抗争(ダイドーブレンドと東京リベンジャーズのコラボキャンペーン)」という、おもしろい企画をされていますね。よろしければ、ぜひ自販機で買っていただければと思います。

自販機は飲料メーカーにとっての「店舗」

青野:自販機のお話からおうかがいしてみたいんですが、逆にどうしてそこまで自販機にこだわりをお持ちなんですか? 飲料メーカーでしたら「販路をどんどん広げたらいい」とか思っちゃいそうなんですけれども。

髙松:そうですね。結果として自販機が主力の販売チャネルになっている、ということです。もちろん、コンビニやスーパーにも営業をしています。

『東京リベンジャーズ』の商品とか、できるだけ我々の商品を置いてもらえるように営業もしてるんですが、競争が非常に厳しい中でなかなか棚が確保できないのが現状です。

自販機というのは、各飲料メーカーにとって「自分たちの店舗」という位置づけなので、自分たちが売りたい商品を自販機にセットして、常に販売できる。自分たちで管理できるので、自販機さえ増やしていけば販売数量も増やしていけます。

もちろん手間もコストもかかったりするんですが、(自販機は)安定したチャネルなので注力しています。我々も特化してやってきたので、8割方そちらに集約してやっています。

業界全体では、だいたい自販機は売上の4〜5割のメーカーが一般的なんですが、我々はどこかで違いを出して、差別化して競争していこうということで、できる限り自販機に集中してやってきた結果8割になっている状況ですね。

青野:なるほど。ある意味、自分たちでコントロールできる流通チャネルとして自販機を重んじておられると。

髙松:そうですね。

各地域の方言を話す「おしゃべり自販機」を展開

青野:先ほど「自販機は店舗である」とおっしゃったんですが、店舗という位置づけになるんですか?

髙松:そうですね。最近ではいろいろな無人店舗も増えてきていますが、社員たちもみんな当たり前のように「自販機は店舗である」というのが、以前からの我々の位置づけです。

自販機を管理してる担当者もみんな「担当している自販機は自分のお店だ」という思いで、品揃えから清掃から商品の管理、金銭の管理をきめ細かくやってきています。それは文化としてすごく根付いていますね。

青野:なるほど、おもしろいですね。私も『カンブリア宮殿』で、地方ごとの方言を話す自動販売機を拝見しました。

徳島に行けば阿波弁だし、愛媛に行けば伊予弁。(お金を)入れたら、地域ごとの方言で「お釣り、忘れんように持っていってな」みたいなことを言うてくれるわけですね。ああいうところも、(「自販機は店舗である」という)その発想から来ているんですか?

髙松:そうですね。おしゃべりできる自販機というのも、当社がいち早く目をつけました。どううまく活用できるかいろいろ考えた挙げ句に、方言をしゃべる自販機だったり、英語や中国語をしゃべらせたりしています。

青野:多言語でいけるんですか?

髙松:はい。そういったこともやっています。

お客さまをもっと楽しませる、未来の自販機の姿

髙松:本当に注力している自販機を、いかに最大限に活かすか。お店として来ていただくお客さまに、いかに楽しんでもらえるか、喜んでもらえるかを考えて、いろいろなアイデアを実装しているのがうちの自販機の特徴ですね。

青野:そうしますと、行き着く先は本当に「お店」というか。例えばインタラクティブに会話ができるようになったり、「これを出して」と言ったら(商品を)出してくれるようなイメージをしておられるんですか?

髙松:そうですね。あとでお話しするかもしれないんですが、社員提案で「未来の自販機はこうあるべきだ」というアイデア出しをやった中でも、いろいろ出てきた中の1つに「オカン自販機」というアイデアがあって。これは『カンブリア宮殿』の時も言ったかもしれないんですけれども。

青野:(笑)。

髙松:毎日自分のことを気にかけてくれて、「今日は元気か? 寒いで。ちょっと暖かいものでも飲んでいきや」「今日は疲れてるやろ。元気が出る缶コーヒー飲みや」というコミュニケーションができるような自販機があったらいいよねというアイデアが、いっぱい社内で出てきて。将来は本当にそんなことができるといいなと思っています。

青野:すごい、そこまでこだわりを持っているんですね。

約10年前から、自販機市場は縮小している

青野:ただ、今の日本という国は人口も減りつつあります。また、自販機というと、正直日本だとどこにでもあるというか、地方に行ってもあったりします。ちょっと飽和市場な面も感じたりするんですが、そのへんの大変さはおありですか?

髙松:おっしゃるとおりです。昔は町の商店や酒屋さん、たばこ屋さんの軒先に自販機を置かせていただいていました。

そういった商売をしている方々に(自販機を)置いていただいて、我々は商品を納品して、お店の方が自販機で販売することで一気に全国に広がったんですが、どんどんそういう商店がなくなっています。

そういったお店がコンビニに置き換わり、大型のスーパーが出てきて、小さな商店はどんどんなくなっていく中で、自販機を置いてる場所がどんどん少なくなってきました。

青野:そうですか。

髙松:10年ちょっと前ぐらいから、業界としてはなかなか台数は増えずに、だんだんと下がり続けているのが自販機市場全体の現状ですね。

青野:うわー、大変ですね。そうしますと、ビジネスモデルも切り替えていかないといけないですし、新しいチャレンジもしていかないといけない。

停滞感を打破するため、まずは「社風」から変革

青野:なかなか社内の改革をされるのは大変じゃないかなと思うんですが、髙松さんが社長になられたのは2014年ですよね。

髙松:2014年です。

青野:今から8年前ぐらいになりますが、どういうことに取り組まれたんですか?

髙松:まさに10年前ぐらいから、業界全体としても自販機ビジネスが少しずつシュリンクしていきました。だんだんと売上も頭打ちになって、収益性も少しずつ悪くなってきている状況だったので、社長に就任しました。

その時の社員の大半には、良かった時期の「過去の成功体験」みたいなものがあって。「今までどおりのやり方でがんばっていけば、必ずまた自販機は良くなる」という変な安心感があったりだとか、「新しいことをしたり、やり方を変えなくても大丈夫だ」という停滞感みたいなものがあったんです。

実際業績は少しずつ厳しくなってるし、もう一度成長していくためには何か現状を打破しないといけない、ということがありました。社長に就任した時に、まずは社風や風土をいかに変えていくかに着手しましたね。

青野:このままいくと、シュリンクしていく市場に引きずられてしまう。でも、ダイドーさんぐらい歴史のある会社でしたら、社風を変えるといったら本当に大作業だと思うんです。どういうところから、どういうふうに変えていかれたんですか?

髙松:社長に就任する前からも、やはり「ちょっとずつ変えていきたいな」と思っていて。マーケティングの部門で少しずつチャレンジしてみたり、営業部門を少しずつ変えていたんですが、なかなか浸透しきらないところがあって、社長に就任した時に企業理念やグループビジョンから作り変えようと思いました。

青野:一番上からいこうと。

髙松:はい。

「変わらなければこの先がない」という思いで企業理念を制定

髙松:我々にとってグループ理念は、社員にとっての原理原則、大原則みたいな位置付けなんです。昔から「共存共栄」を掲げてやってきていたんですが、そのグループ理念の中に「チャレンジ」を入れました。

人と社会とともに喜び、ともに栄えるという「共存共栄」とともに、その実現のために我々はダイナミックにチャレンジを続けるんだということを、グループ理念として制定をしました。それを全社に一斉に浸透していく活動から取り組み始めました。

青野:すごいですね。やはり、企業理念に手を加えるって相当勇気がいるというか、それはそれで創業者の思いが詰まっていますから。

髙松:そうですね。

青野:いかに髙松さんが創業家だとしても、創業の方の思いが詰まったところに(企業理念を)足していくって、かなり勇気がいることだと思うんです。

髙松:それぐらい、やはり危機感を覚えていたというか。

青野:もう、やらないといけない。

髙松:変えていきたい、変わらなければこの先がない、という思いもありました。中心になって、新たな理念を策定するメンバーたちとも一緒に議論して作り上げていったんですが、熱い思いを持ったメンバーもいたので「やろう」ということで取り組み始めました。

全国にある約100ヶ所のオフィスを巡回

青野:「チャレンジ」を入れてみても、いきなり「よし。じゃあ、これでみんなチャレンジしよう」という感じにはならないと思うんですよ。

髙松:そうなんです。

青野:「チャレンジ」を(企業理念に)入れましたけど、その次はどうされたんですか?

髙松:「お題目を掲げただけでは、ぜんぜん変わらないな」ということで、そこからがまた苦労の連続だったわけなんですけれども、まずは掲げたことを徹底して言い続けていこうと決めました。

まず最初に取りかかったのは、当時我々は全国に100拠点ぐらいオフィスがあったんですが「まずはそこをぜんぶ回ろう」ということで、半年か1年弱ぐらいかけて100ヶ所ぜんぶ回りました。

そのエリアにいる社員に集まっていただいて、1時間か1時間半ぐらい「今回、理念をこういうふうに変えた。こういう思いで変えたんだ」「もう一度成長に向かって、いろいろなことにチャレンジ精神を持って取り組んでいくんだ」と訴えて、100ヶ所行脚して回ることからスタートを始めました。

青野:すごいですね。でも、やはりみんなびっくりしたんじゃないですか?

髙松:そうですね。

青野:まさかぜんぶ回るとは、っていう。

髙松:「その時に社長の顔を生で初めて見た」とか(笑)。

青野:そうなりますよね。

髙松:そういう社員がけっこういました。それだけでも、すごく(距離が)近づいた感じはしましたね。

企業理念の変更で、社員からは不満の声も

青野:半年か1年弱ぐらい、それだけめちゃくちゃ時間をかけて(全国のオフィスを)回られて、反響はどうでしたか? 

髙松:影響力というか、直接対面で話して伝えることのインパクトはすごく実感することができました。「コロナでオンラインになったけど、リアルな良さもある」っていうのと同じような感覚かもしれないですが、直接会って伝えることの大事さはすごく実感しました。

ただ、その時は20〜30人に集まってもらって、8割ぐらいこちらから話をする機会だったんです。どうしても一方的に伝えて、どこまで相手が理解しているのか、もしかしたら相手が少し疑問に思ってることがあるのかとか、そのへんの感覚はまだ伝わりきってなかったかなと思います。

その時は良かったけれども、「あまりこの効果は長続きしないな」と思って、その翌年からはもうちょっと少人数の規模にしました。

「オフサイトミーティング」と言って、食事とかをしながらインタラクティブにコミュニケーションを図る機会を設けていました。今度は100ヶ所は行けないので、年に20ヶ所か30ヶ所ぐらい。それを2〜3年継続していきましたね。

青野:なるほど。そうすると、まずは掲げて方針を伝えるけれども、これだけだと一方的になっちゃうから、ちゃんとみんなの意見を吸い上げていく。そうすると、やはりみんなも不平不満をいろいろ言ってくるんじゃないですか?

髙松:言ってきます。

青野:そうですか(笑)。どんなことを言われたんですか?

髙松:「新しいやり方をしたくない」というか、「今まではこうやって成功してきたのに、違ったやり方をして失敗したらどうするんだ」とか。

青野:そうなりますよね。

消極的な意見に対しても、丁寧にコミュニケーションを継続

髙松:はなから「そんなのうまくいくはずない」とか、どうしても消極的というか。ネガティブな質問だと、「会社はこう言っているけれども、そんなの本当に誰も理解できないですよ」とかですね。

青野:「現場は違いますよ」とか言われますよね。

髙松:はい(笑)。(ネガティブな意見が)たくさん出てきてましたが、一つひとつ丁寧に聞きながら、時にはお酒の力も借りながら、「でも、こうあるべきだよね」と粘り強く。その場ですべてを理解できるわけじゃないんですが、コミュニケーションとしては続けていましたね。

青野:そうですか。それに3年ぐらいかけられたわけですが、少しずつ変わってきた手応えはおありでしたか?

髙松:最初の2〜3年は「ぜんぜんまだまだだな」という感じでした。そうやってコミュニケーションを続けていきながら、腹を割ってざっくばらんにいろいろ話をすると、社員から少しずつ前向きなアイデアもちらほらと出てくるようになってきて。

「実は思ってたけど言わなかった」「言っちゃいけないと思ってた」という(声が社員から上がって)、そういうことだったんだなと思いました。

社員のアイデアを拾い上げ、チャレンジできる場所を作る

髙松:社員のアイデアをもっと表に出すような仕組みを作ろうということで、今でも続いてるんですが「チャレンジアワード」というものがあります。年に1回社員から提案をあげていただいて、書類審査や社員投票をして良いものを選抜して、プレゼンテーション大会をやっています。

青野:おお、そこまで。

髙松:役員プレゼンをして「これは良い」となったものは、翌年に予算をつけてプロジェクト化したり。そういったことを毎年繰り返していくことで、「自分のアイデアを会社に提案してもいいんだ」と社員が思えるようになる。

「(アイデアを)言ったらちゃんと実現できるんだ」という事例がちょっとずつ出てきたら、そこから少しずつ、また1段階雰囲気は変わってきた感じはしていて。そういう活動は、今でも毎年ブラッシュアップしながら続けています。

青野:めちゃ丁寧ですよね。現状に危機感を持ち、そして「チャレンジ」という方針を掲げた。でも、方針を掲げただけでは組織なんか動くはずもなくて、ちゃんと直接(社員に)「本当にやりたいと思ってるんだ」と話しかけていく。

じゃあそれでチャレンジできるかというと、やはりチャレンジできる場所がないとならないので、ちゃんとチャレンジの場所を作る。それも見た目だけじゃなくて、本当にそこから(アイデアを)拾い上げて、次のチャレンジにお金も投資していく。

髙松:そうですね。

青野:この一連の丁寧な流れ。「なるほど、これが風土改革なんだ」と思いました。

髙松:簡単に理念なんて変えられないですからね。ある意味、ブレないメッセージとして作って、それを継続していく。これに尽きるかなということで、今でもずっと手を変え品を変えていろいろやり続けていて、ようやく変わってきた感じがしていますね。

社員から「DXに取り組んでみたい」という提案が

青野:おもしろいですね。理念を変えるといっても、コロコロ変えていたら「じゃあ来年は何になるんだ?」と、ついていけませんからね。「チャレンジ」と掲げたら、もうとにかくチャレンジ。それをやり続ける。そうすると、だんだん浸透してくると。

髙松:だんだんと。本当に時間がかかりますからね。

青野:そうですか。それは3年、5年とか、そういう単位になってくるわけですか?

髙松:そうですね。2014年ぐらいからスタートしているので、6年、7年、8年と経ちましたが、やはりその当時と比べたら本当に変わってきたなとは思います。

後でまたDXの話もあると思うんですが、社内提案の中から「DXに取り組んでみたい」という発案があって。翌年にDX推進委員会が立ち上がって、2年ほど前から取り組んでいます。それがまた、今回は新たな組織になったりしました。

青野:すごいですね。今、僕が知っている会社のほとんどは、経営者が「なんかDXがブームっぽいからDXやれ」と言って、DX部門が勝手に作られて、やる気もない人が集められて「俺たちは情報システム部門と何が違うんだ?」と言っているのが、どちらかというと典型なんです。現場から「DXしよう」と上がってきたんですか?

髙松:上がってきましたね。

青野:すごいですね。風土レベルが2段階も3段階も上がった感じがしますね。

髙松:まだまだそんなすごいレベルではないとは思うんですが、日頃メッセージとして言い続けています。(現場からアイデアが)上がってきて、一部の社員には響いてるんだなと思います。相乗効果という感じで、少しずついろいろなことが動いてきたかなとは思いますね。

粘り強く、社員のチャレンジ精神を育む

青野:やはり、社員の方にもいろいろな方がいらっしゃいますよね。そうなってくるとちょっと心配なのが、チャレンジ精神を持って「よしやろう」と、どんどん提案してくれる社員がいる一方で、「今のまま変わりたくない」という社員の方もいらっしゃる。

このあたりのマネジメントの難しさというか、「それはそれでいい」というふうにほっといてもいいですし、「いや。こっちの人にもぜひ変わってきてほしいんだ」という思いもあるんですが、どういうふうにマネージされてきたんですか?

髙松:それも非常に難しい点だと思うんですが、徐々にこの(チャレンジ精神を持つ人の)比率を上げていくというか。そこはできるだけ丁寧に、時間をかけてやっていて。あまりドラスティックなことはせずに、粘り強くやるしかないかなと思っています。

青野:チャレンジする人が1割だったのが2割になり、3割になり、だんだん増えていくと多数派になってくる。そうすると「チャレンジするのが当たり前」と、社風としてはずいぶん変わりますよね。

どうしても受け入れられない人は、そのまま自分の仕事をがんばればいいのかもしれませんが、社風としてはかなり「チャレンジする組織」に変わってこられたんですね。

髙松:だいぶ変わってきたんじゃないかと思ってはいます。

青野:すばらしいですね。

コロナ前からトライアルでリモートワークを実施

青野:DX以外にも、みなさんからはどんなチャレンジアイデアが湧いてくるんですか?

髙松:先ほど言っていたおしゃべり自販機みたいに、「もっとこういうふうに活用したらいいんじゃないか?」というアイデアもたくさん出てきます。

自販機の横に「レンタルアンブレラ」というものを置いて、無料で地域の人に傘を貸し出すアイデアは、実際に実現しました。

そういったものもありましたが、人事制度や福利厚生制度だとか、意外と働き方に関するアイデアがけっこう多くて。コロナの前からリモートワークはトライアルとしてやっていたんですが、それも社員の提案の中で上がってきたものです。

家族の事情で引っ越しをしないといけなくなったり、例えば旦那さんの転勤で引っ越しをしないといけなくなって、やむを得ず退職する人がけっこういて。

惜しいなと思っていたんですが、「もしかしたらリモートワークでもできるんじゃないか?」ということで、5〜6年前ぐらいから1人、2人と(リモートワークを始めました)。その時は特例だったんですが、とりあえずやってみようと。

本社は大阪なんですが、家は名古屋にあるから月1回だけ出社をして、ふだんはリモートワーク。やってみたらできるじゃないかということで、事例を1件、2件と増やしていきました。コロナ以前からやっていたので、(コロナ禍でも)一斉にスムーズに広げることができました。

コロナ禍で変化した働き方にも、柔軟に対応

髙松:営業も、効率を上げるために「直行直帰でやろう」という提案があって。それもやってみたら、訪問件数が確実に上がりました。

青野:出社しなくていいので、どんどんお客さまのところを回れる。

髙松:その機会に、営業には全員モバイル端末を持たせるスタイルでやっていましたので、コロナになってもそのまま継続できました。そうやって、上がってきたいろいろなアイデアをちょっとずつ試していまいた。

ここ数年で大きく世の中も働き方も変わりましたが、我々の社内では非常にスムーズに対応できた。「チャレンジ」と言い続けていて少しずつ社風が変わって、スピード感も出てきた成果かなと思っています。

青野:本当ですね。リモートワークも、先に実績を作ってノウハウを得ておけば、あとは横展開するだけですからスムーズですよね。

あと、調べさせていただいたら副業も解禁されていますが、大企業で「副業を自由にやっていいよ」と言い切ってる会社はあんまりなくて、これはけっこうめずらしいんですよ。どっちかというと「認めたくないけど、まあこっそりやっとき」ぐらいの感じなんですが、大々的に認めておられますよね?

髙松:そうですね。コロナのちょっと前ぐらいに、先ほどの「チャレンジアワード」で(副業解禁の)アイデアが上がってきたので、やはり社員はそういうことを求めてるんだと思いました。

副業を解禁した、もう1つの理由

髙松:先行事例として、大阪の会社でロート製薬さんがけっこう早くからやられていたのを見て「こういうのがあるんだな」と思っていたところに、社員から提案がありました。「それもやってみようか」ということでまずは始めたらコロナになって、リモートワークも一気に広がって、時間に余裕がある。

一方で切実な理由としては、自販機をオペレーションしている社員は、コロナになって一気に2割ぐらい売上が下がった時に、全員出社しなくても対応できるようになったので交代で休業を取っていました。

売上に応じて手当もあるので、(コロナ禍の売上減で)手当もちょっとミニマムになってしまうことがあって。じゃあ、ちょっと空いた時間でバイトとかをできるようにしてあげたいという思いもあって、一気に制度として導入しましたね。

青野:柔軟ですね。すごいですよね、これだけ歴史がある会社がどんどん風土改革をしてチャレンジ精神を引き出せるのは、本当に希望を感じます。