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第754回 「期限を書かずに仕事を頼む人」がいるのはなぜか?(全1記事)

なぜ仕事を頼む時に「締め切りを設定しない人」がいるのか? 期限を書かないことで起こる2つの不都合

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、仕事を頼む時のある「当たり前」について語られました。 ■音声コンテンツはこちら

仕事を頼むときに期限を設定しないと起こる2つの不都合

本山裕輔氏(以下、本山):今日は仕事の期限についてお話できればと思います。お伝えしたいことはすごくシンプルで、「人に仕事を頼むときは必ず期限を設定しましょう」。これだけです。

こんなことを言うと、「何を当たり前のことを言うんだ」「食後に歯を磨くのと同じくらい当たり前じゃないか」とツッコミを受けそうですね。

ただ日頃仕事をしていると、期限や納期が書かれていない依頼が飛んでくるケースが、意外と多いのではないでしょうか。仕事を頼む時は締め切りを設定する。ある種当たり前の基本動作を、つい怠ってしまうのは一体なぜなのか。今日はこんなテーマで話してみたいなと思います。

まず、考えられる1つ目の理由は、「そもそもなぜ期限を設定しなければならないのか。期限を設定する意義がわからない」というのが考えられます。

「なぜ期限を設定する必要があるのか」。この論点を解くためにも、期限を設定しないと逆にどうなってしまうのか考えてみます。

期限を設定しないと、2つの不都合があります。まず1つ目は、むだなやりとりが1往復増えてしまうことです。納期が書かれていないと、「これはいつまでに対応すればいいですか?」「4月15日までにお願いします」という感じで、ラリーが1回分増えるんですね。

思いを寄せる人とのやり取りであれば、チャットやメールを何往復してもオッケーなんですが、仕事のやり取りでは、こういったやりとりはなるべく最小限の手間で済ませたいはずです。つまり、先ほどの1往復分がむだになってしまうんですね。

「仕事の優先順位付け」という大事な仕事を相手に委ねている

2つ目は、期限を書いていないと、「仕事の優先順位付け」という大事な仕事を、相手に委ねてしまうことになります。

期限は、仕事の優先度によって決まります。重要かつ緊急であればすぐ処理しないといけませんし、逆に重要でも緊急でもない仕事は後回しにすべきでしょう。

このように期限は優先度を表しているんですが、その中で期限を書かずに相手に仕事を頼むと、言ってしまえば、仕事の優先順位付けを相手に押し付けることにもなってしまっていないか。これが1つ問題意識としてあります。それくらい期限を決めるのは大事な仕事なんじゃないかなと思います。

期限をなかなか設定しない人がいるのはなぜか。2つ目の理由は、「期限を設定するのはおこがましいと、気をつかってしまうから」。これもありますよね。納期を一方的に指定するのは、何か相手に失礼に当たるんじゃないかという解釈です。

確かに一理あるかもしれませんが、それでも私は、期限を設定しないのは気づかいでもなんでもないと思います。先ほどお話ししたように、期限を書かないとむだなやりとりが発生して、かつ優先順位付けという負担を相手に押し付けることにもなります。そっちのほうが失礼ですよね。

なんでもかんでも気づかいをすればいいわけではなく、気づかいの方向性をどこに定めるのかが大事になってくるんじゃないかなと思います。

工数の見積もりができない中でも、仕事を頼む人が示すべき誠意

そして、期限を設定しない3つ目の理由は、「工数の見積もりができないから」。これも考えられます。よくあるのが、複雑で専門的な仕事を相手にお願いする時です。例えばシステムの不具合の調査やシステムの改修をお願いするという時ですね。

この時は、依頼する人と作業をする人、この両者の間の知識差が大きいんです。依頼する側からすると、システムの不具合を調査するのに、どれくらい時間がかかって、どれくらい難しいのかが、よくわからない。

ただその中でも、やはり優先度を決めるのは、依頼する側が責任を持ってハンドルを握るべきなのではないかと思います。

工夫の仕方はいろいろあります。例えば「この作業、できれば4月15日までにお願いできますでしょうか。ただし、私の想像が及んでない作業もあると思うので、納期が厳しい場合は遠慮なく言ってくださいね」と一言添えるだけでも、全然違いますよね。

納期が見積もれないから期限を設定しないのではなく、納期が見積もれない中でも、なんとか期限をハンドリングする努力を見せること。これが仕事を頼む人が示すべき誠意なのではないかと思います。

相手の時間をリスペクトする精神があるか?

そして期限を書かない4つ目の理由は、「私の時間のほうが他人の時間よりも大事なんだと、心のどこかで思っているんじゃないか」というパターンです。

よくあるのが、期限も書かずに依頼してきた割に、その仕事を半日くらい放置すると、「これ見落としてないですか。早くやってくださいよ」と催促がくる。こんなこともありますよね。「え、それ急ぎだったんですか? じゃあ、期限書いておいてよ」とツッコミたくなるやつです。

依頼する側からすると、「こんなの期限を書かなくても、緊急だってわかるでしょ」と思うかもしれませんが、受け手は必ずしもそういう前提を共有できているとは限らないので、「え、これ急ぎなの?」と思うこともあると思います。

特に休みの日に期限が書かれてない連絡がこようものなら、受け取った本人からすると、「これ今日中にやらないといけないのかな? でも、今日休みなんだけどな」と、ちょっと不安になりますよね。

もし本当に相手の時間をリスペクトする精神があるのであれば、「期限を設定する」という基本動作を怠らないほうがいいんじゃないかなと思います。

以上、仕事の期限についてお話ししました。言葉にすると、非常に当たり前のように聞こえるのですが、お互いの時間をリスペクトし合いながら、気持ちよく、そして生産性高く仕事をするためにも、「仕事を頼むときは期限を設定する」という当たり前の動作を、今一度大事にしていきたいなと思います。

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