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コミュニティマーケティングの提唱者、小島 英揮氏に学ぶ! コンバージョンとLTVの双方に効くコミュニティ活用術(全5記事)

「ピザとビール無料」で人を集めてはいけない理由 参加者が自発的に「ファン」を広げてくれる場の作り方

業界業務の経験豊富な「その道のプロ」に、1時間からピンポイントに相談できる日本最大級のスポットコンサル「ビザスク」。そのビザスク主催のセミナーに、コミュニティマーケティングの提唱者で、『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』の著者・小島英揮氏が登壇。本記事では、企業がコミュニティで作りたい「流れ」や、コミュニティ作りの初期フェーズで大事なことなどが語られました。

企業がコミュニティで作りたい「流れ」

小島英揮氏(以下、小島):ここからは、具体的にコミュニティが成長するメカニズムについてお話ししたいと思います。人を集めて「コミュニティです」と言って、勝手に大きくなるんだったら苦労しないわけですが、どういうことに気をつけてコミュニティを成長させていく必要があるのでしょうか。

コミュニティを図式化するとこんなイメージです。もともとサービスや製品のことをいいと言っている人がいる。うちの娘が僕にBTSの話をしたように、身の回りで言っている状態です。

でも、いろんなタイミングでばらばらに言っているので、この人たちを束ねて、声を大きく遠くまで届ける仕組みにしたのがコミュニティだとご理解いただくとわかりやすいと思います。

自分より一歩先を行っている人が、これからやる人にうまくいっている話をする。何かにつまずいている人にそれが解決した話が伝わって使い始めるとか、トラブルを解消するという行動につながる。そういう流れを作りたいわけです。

コミュニティにはいくつかの分類があると思っています。コミュニティを辞書で引くと、地域とか土地のつながり・集落と書いてあり、こういった共同体をコミュニティと言います。どちらかと言うと(スライドの)左下ですね。所属組織で、そこに住んでいる人でできているものをコミュニティと呼んでいます。

最近はそうではなくて、上のタイプですね。住んでいる場所とか所属しているところには縛られず、「どんなことに関心がありますか?」「何をしたいんですか?」「どこに行きたいんですか?」ということで集まるものです。左上は、ある関心軸で集まっているんだけど、限られた人数だけで集まるクローズドなもの。

もちろんこうしたコミュニティもあっていいのですが、今日お話ししたいのは右上なんですよね。

関心軸でオープンで、どんどん賛同者が集まってくる。みなさんに会社で、ビジネスで作っていただきたいのは「関心軸」と「オープン」で、お客さまがどんどん増えたり、お客さまがお客さまをどんどん紹介したり巻き込んだりする仕組みのコミュニティです。

失敗する企業のファンコミュニティによくあるタイプ

このコミュニティで「Sell Through the Community」というモデルをぜひ作っていただきたいんです。「Sell To」じゃないところがポイントですね。

よく失敗するモデルがまさに「Sell To the Community」で、例えば先ほどの、初めてやったAWSの勉強会では、100人くらい人が来てくれましたよね。もし、来てくれた100人に、セミナーみたいにどんどん製品の良さを言って、「使ってよ、使ってよ」とアピールして、アンケートでも「使ってくれたら〇〇の特典があります」とかやったら、むしろ引かれる。参加人数以上に広がらなくなるんですよね。

今までのマーケティングのやり方と一緒で、100人が母数で、そのうちの数人が興味を持ってくれて、さらにもっと少ない人が使い始めるかもしれないというファネルを作るだけになってしまう。

そうではなく、来た人に「どうもこれはおもしろそうだ。うちはまだ使うタイミングじゃないけど、そう言えば誰々はこういうので困っていたな」とか、「自分はまだ使うタイミングじゃないんだけど、後学のためにブログを書いておこう」「うちもこれを使い始めてちょうど良かったので、みんなにも知ってほしいな」という動きが広がると、来なかった人にも広がるモデルになるわけです。これをやりたいんですね。

前述したBTSの話とか、機械のトラブルシューティングの話もそうですけども、メーカーやベンダーから話を聞くよりも、同じような立場のユーザーサイドの人から伝わった話のほうが、ものすごく人を動かす力があります。

僕はよく「倒す力」と言っています。人に伝わるだけじゃなくて、その人の行動につながりやすい。なので、実際に来た人数以上に広がって大きなムーブメントになる。その人たちがまた、このコミュニティに参加して発信側に回るというサイクルができるんです。

つまり、来ている人に売るより、来ている方にいろんなお話やユースケースとか「なぜこうなのか」みたいな話をして、満足をしていただくことが非常に大事です。「満足度」=「オススメ度」ということになるわけです。

参加者の満足度の高いコミュニティの作り方

では、満足していただきやすい状況を作るためにどういう器を作ればいいのか。誰もが滑らない話をするのが難しいのと同じように、誰もが満足する話をするのは難しいんですよね。

なので、ある一定の同質性が必要じゃないかと思います。JAWS、AWASのコミュニティであれば、クラウドの力をすごく信じているというか、それに良さを感じていて、「もっといいやり方を知りたい」という人が集まっているからクラウドの話をしても響くわけです。

「クラウドなんかあんまり使いたくないな」という人がたくさん集まっている場合、クラウドの話をしても、あんまり波及効果はないんですよね。なので、どんな人に集まってもらうか。そして、みんなが情報をやりとりする上で心理的安全性が高い場所なのか。これが非常に大事です。

まず「コンテキストファースト」。横文字で申し訳ないですが、コンテキスト=文脈です。つまり、「ここはどんな場ですか?」「何をする場ですか?」がちゃんと共有されているのが非常に大事です。

集まるだけじゃなく、最後の「アウトプット」につながる上で大事なのが「トラストファースト」です。信用できる、安心できる場所であることはすごく大事です。先ほども申し上げましたが、心理的安全性が高い場所であることは非常に鍵になると思います。

その上で、「ここはこういう場ですよ」「お互い話しても大丈夫なんですよ」とあれば、「僕はこう思います」とか「これを聞いてすごくいい話だったので誰かにお伝えしたいです」とアウトプットを促すことができます。

アウトプットにつながらないと、「Sell Through the Community」にならないんですよね。集まっている人の外に情報が流れていかないとスケールしません。そして、アウトプットをもたらすために必要なのが「コンテキスト」と「トラスト」になるわけです。なので、間違っても、人にたくさん来てほしいからといって「ピザとビール、フリーですよ」みたいな会にしてはいけないということです。

もちろんピザとビールは効果的です(笑)。懇親会でよりスムーズにコミュニケーションをする潤滑油としてのピザとビールは非常に大事だと思いますが、「ピザとビールがありますよ」で呼びかけると、本当にピザとビールが目的の人が集まっちゃうので、それはコンテキストにはならないということです。

みなさんのサービスとか製品によって、コンテキストの作り方はいろいろ変わってくると思うんですが、「まずは来てくれ」だとなかなか難しいです。来てから方向を決めるのは非常に難しいので、初めにコンテキスト、「どういう場なんですか?」を決めましょうということです。

3タイプのコミュニティ参加者

そして、同じようなことに興味がある方を集め、そこがいろんなことを話せる安全な場所だとしても、なかなか発火しないというかムーブメントが起きにくいことがあると思います。そのためには、どんな人に来てもらうかもすごく大事です。

そこでみなさんに次に理解していただきたいのが、「リーダー」と「フォロワー」の概念です。

さっきは「コンテキスト」「トラスト」「アウトプット」の3つのファーストについてでした。今度は、どんな人に来てもらいたいかという3種類の人の話を、中でもリーダーとフォロワーの話をまずしたいと思います。

リーダーがフォロワーを作るという話は、みなさんも聞いたことがあるかもしれません。TEDというプレゼンテーションを聞くカンファレンスがありますが、ここでデレク・シヴァーズという方が2010年にした話が非常におもしろいので、これをお見せしたいと思います。こちらはYouTubeの画面なので、いったん画面を切り替えます。

これは、あるミュージックフェスみたいなところですね。音楽に乗って踊り出す人を真似する人が現れます。裸の人が初めに踊っている人で、Tシャツを着ている人が最初のフォロワーです。

シヴァーズさんは、「1人目のフォロワーを過小評価してはいけない」と言っています。最初に踊った人は、真似する人が出てきたことでリーダーになったということですね。この2人に対して、もう1人真似をする人が現れます。1人のリーダーに対してそれより多いフォロワー。こうすると、拡大の構図になってだんだん真似をする人が現れるということです。

人がどんどん集まっています。おもしろいのは、初めに踊った裸の人は中心からどんどん外れていくんですが、どんどん人が集まる構造が見て取れること。大事なのは、みんながこの運動を見ているということです。みんなは、「いつ参加すればいいんだろう?」と考えている。こうなるとムーブメントになっていると言えます。

コミュニティ作りの初期フェーズで大事なこと

もう1回スライドに戻ります。このリーダーは、初めに世界にアピールした人と言えますが、この人に対して複数のフォロワーがついた時「ムーブメント」になりやすいんです。さらに、人がどんどん集まる状態が可視化されると、より大きなムーブメントになります。

これを分類すると、コミュニティの参加者は3つに分類できます。「リーダー」「フォロワー」。そしてそれを遠くで見ている人。僕は「ワナビーズ」と呼んでいますが、「あれは何だろう? おもしろそうだな」と見ていて、まだ行動していない人ですね。

リーダーは我々のコミュニティ、ビジネスの世界で言い換えると、商品とかサービスのファンです。かつ、アウトプットができるロールモデル。AWSであれば、クラウドがいいなと思っていて、実際に使えていて、その良さを話したりブログに書ける人です。

ヤッホーブルーイングさんであれば、ヤッホーブルーイングのクラフトビールのファンであって、実際飲んでいらっしゃって、「これいいよ」と周りに薦めている人。大事なのは、この人の話を聞いて「飲んでみよう」「試してみよう」と思う人が周りにいるかどうかなんですね。これがフォロワーです。

つまりクラウドの話を聞いたら、「じゃあちょっとAWSを使ってみようかな」とか、よなよなエールの話を聞いたら、「じゃあ僕もそれを飲んでみようかな」と真似をして、新しい動きを見ている人がいる構図が大事です。ワナビーズの方は後からいくらでも入ってくるので、初めはリーダーとフォロワーをどう集めるかが非常に大事だと思います。

リーダーとフォロワーは、大きなコミュニティでも全体の20パーセントに満たないくらいが普通です。

この貴重な方々がいることによって、さっきのAWSのコミュニティのような、そしてヤッホーブルーイングさんの大きなイベントのような、熱量のある動きができます。

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