2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小島英揮氏(以下、小島):みなさん、こんにちは。コミュニティマーケティングに興味を持っていただき、本当にありがとうございます。これから1時間ほどお時間をいただいて、コミュニティマーケティングに関する基本的なお話と、みなさんのビジネスにどのようにコミュニティマーケティングが寄与できるかを、私なりにひもといていきたいと思います。
まず私からプレゼンテーションさせていただき、その後に理解を深める上で非常に大事なQ&Aも活用いただき、今日のセッションを楽しんでいただければと思います。
今日のお題は「コンバージョンとLTV(ライフタイムバリュー)」です。お客さまにどれくらい長期間、サービスや製品をお買い求めいただくのか。その価値をLTVと言いますが、この双方に効くコミュニティの活用術をお話をさせていただきます。
こちらの写真(黄身が2つ入った卵の写真)のように1個で2度おいしいということで、スケールするコミュニティマーケティング手法をご理解いただければと思います。
はじめに自己紹介ですが、小島(おじま)と申します。今は複数の会社のマーケティングのご支援や、ヌーラボやprimeNumberという会社の社外取締役をさせていただいています。複数の会社のマーケティングをご支援するということで、自分のことをパラレルマーケターと紹介しています。
今日のお題であるコミュニティマーケティング((『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』)、それから「DevRel(デブレル=デベロッパーリレーション)」と言われる領域(『DevRel エンジニアフレンドリーになるための3C』)の2つの書籍を出しています。
そして、コミュニティマーケティングそのものをコミュニティで広げる「CMC_Meetup」を主宰しています。
とはいえ、初めから複数の会社のご支援をするキャリアをやっていたわけではありません。もともとは日本のメーカーから始まり、外資、そして直近で一番長く所属していたのが、Amazonのクラウドサービス事業AWSになります。こちらに2009年から2016年まで所属していました。そして2017年からはパラレルマーケターとして活動しています。
私は一貫してマーケティングの人間であり、B2B/IT分野に携わってきています。ただ、どんどんいろんな要素が積み上がり、最近はコミュニティという軸から、IT以外の方とかB2Cの方のご支援もさせていただいています。
私のキャリアに「コミュニティ」の言葉が入ってきたのはAWSの頃からですが、コミュニティを通じてテクノロジーを広げていくやり方は(AWSの前職の)アドビの頃からトライをしています。それを「コミュニティマーケティング」という名称にしたのがおそらく2014年。まだAmazonにいる頃です。
「ログミー」という書き起こしのメディアがありまして、この時初めて「コミュティマーケティング」をテーマに、今日の講演内容のエッセンスをお話しさせていただきました。
日本では、コミュニティマーケティングという言葉が、今日の文脈で語られるようになったのは、この記事が出てからではないかと思います。もし、お時間があれば、こちらの記事も見ていただくと、今日聞いた話とこの頃の話が、基本的には同じことを言っているとご理解いただけると思います。
先ほどお話ししたように、私はAWSの時にAWS Users Group – Japan、「JAWS-UG」というコミュニティを立ち上げました。新しいテクノロジーや概念、ビジネスのやり方を、ユーザーの方が、コミュニティを通して広げていく。この手法をやったのが、JAWSという仕組みのおもしろいところです。
それまでは、口コミ的な活動は、どうしてもB2Cというか、コンシューマ製品にしか通用しないと思われていたんです。ですが意外と、B2Bの商材にも効くんだなと、世の中的にも理解されたのではないかと思います。
それを受けて、Amazon卒業後に「もっとコミュニティマーケティングの話を聞きたい」というお話がたくさんありました。じゃあみんなでそれを学ぶ場を作ろうと言ってできたのが、コミュニティマーケティングコミュニティ、「CMC_Meetup」です。
スライドではメンバー数が3,100名以上となっていますが、先ほど見たらFacebookのグループは3,300名になっていました。かなり大きな活動になっています。
ここでお話をしている内容やAWSの時の経験値を、コミュニティマーケティング書籍にまとめて(『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』を)2019年に出させていただきました。
今日はこのエッセンスを1時間弱にぎゅっと凝縮し、大きく4つの話をしたいと思っています。
まず、コミュニティの話をする前にマーケティングのお話をしたいと思います。特に大事なのは「想起」という言葉ですね。何か行動したり、お客さまが動く時に一番初めに思い出されること。これがすごくマーケティング的に大事な要素です。
この想起の重要性をお話しさせていただいた後、なぜコミュニティが想起に効くのか。それも顧客獲得(コンバージョン)の部分や、長くお客さまに使っていただくLTVの部分の両方になぜ効くのか。
そして、成長するためのコミュニティの作り方やメカニズム、コミュニティの設計に役立つフレームワーク「OWWH」。Objective・Who・What・Howの略ですけれども、これも最後にご紹介いたします。
今日のお話を聞いていただければ、なぜコミュニティがみなさんのビジネスに役立つのか、成長するコミュニティを作るためにはどうすればいいのか、そして設計図はどんな観点で作ればいいのかまで、おわかりいただけると思います。
その上でわからない部分や、わかりづらいところは、Q&Aで回収していきたいと思います。
いきなり「はじめに」と(スライドに)書いていますけれども、ここがすごく大事です。
コミュニティは、まず非常にスケーラブルなマーケティング施策であり、費用対効果も高いということをお伝えしておきます。
ここは非常にややこしくて、「安くできるんだ」とご理解いただくのは、間違ってはいないんですが、逆に言うと、お金を積んでもできることは少ないんですよね。
広告とか、イベントとか、キャンペーンは、ある程度お金を投下して、代理店を使うとか、外部のリソースを使うことで、内部のリソースがなくてもけっこうできてしまうことがあります。ですがコミュニティは、かなり中の人がプランニングをしていく必要があるんです。そして、お金を積んでもなかなかコミュニティをアクセラレート(加速)させることが難しい。
「じゃあ、うまく回すためにはどうすればいいの?」ということですが、まさに今日お話をする基本原則に則って、みなさまのお客さまに合ったコミュニティ構築をするのが大事です。
事例として私がAmazonの時にやったJAWSというコミュニティのやり方や、具体的な話をいくつかしますが、やり方だけを真似てもうまくいかないこともある。もちろん、うまくいくパターンもあるんですけれども、大事なのは、みなさまのお客さまにとってどんなコミュニティを作るのが、一番コンバージョン(成果)とLTVに効くのかをきちんと理解すること。
つまり、コミュニティマーケティングと言っても、別に特別なことをやるわけではなく、マーケティングの原則そのものを実践することになるのではないかと思います。
はじめに、ビジネスの構造から見る想起の重要性のお話をさせていただきます。
これはいろんな資料によくある図ですね。
認知から始まって、実際に使っていただく。なんなら他の人に推奨していただいたり、紹介・発信までしていただきたい、という流れがあると思います。みなさんの商品も、多かれ少なかれお客さまは必ずこのステップで移っていくと思います。
今日は、コンバージョンとライフタイムバリュー(LTV)の2つの話をしますが、認知から始まって、比較・検討で購入の手前まで行くのがコンバージョン。購入後、これを継続したり、他の方に推奨したりも含めるところをライフタイムバリュー、とご理解いただきたいと思います。大きくこの2つに分かれているんですね。
みなさまが欲しいのはたぶん、ライフタイムバリューですよね。買っていただき、それを継続し、そして、他に薦めていただく。ビジネスをする上で、ここはすごく大事なわけです。もちろん、「買っていただく」でも十分ですが、紹介とか発信をしていただければベストですよね。
じゃあ、これを大きくするために、「認知」「興味・関心」「比較・検討」のどこから入るのが一番いいでしょうか? もちろん、認知から始まらないとその先に行かないという話はよくあるんですが。
スライドでは「認知」から「紹介・発信」までの6個のステップを、同じ大きさの矢印で書いていますが、イメージ的には実際はこんな感じです。
認知を取るには、ものすごくたくさんの面積が必要です。そこから、一定の方が興味・関心まで進み、そこで初めて比較・検討される。逆に、購入のところは初めは小さいけど、継続していただくことでLTVが上がる。さらに、紹介・発信していただくことで、他の方にまた買っていただいてLTVが増えるという図になるわけです。
認知とは、初めの一歩のように見えますが、実はみなさんが本当に欲しいLTVから最も遠いエリアで、かつ範囲が広いんです。
本当に広く認知を取るところから始める必要があるのでしょうか? 私は、これはB2BもB2Cも同じではないかと思います。もちろん、いろんなマーケティングの本を見ると、「広く認知を取りましょう」と言っている。ですが本当に大事なのは、認知ではなくて想起ではないかと思っています。
認知とは、いわゆる聞いたことがあるとか、名前を知っていることです。想起とは、何かやろうと思った時に、一番初めに思い出されるブランドですね。マーケティングでは、この部分が非常に大事になります。
今日はオンラインなので、みなさんからインタラクションをいただくのがなかなか難しいんですが。例えば具体的に、クリスマス前だからみなさん何か欲しいものがあるのではないかと思います。「すぐ欲しい」と思った時に、どこから手に入れるか、思い浮かぶサービスやブランドはありますか?
最近の若い世代に聞くと想定とはちょっと違う答えが返ってきて、なるほどなと思ったんです。例えば、我々の世代だとモノを買うときにはAmazonが良く思い浮かびます。でも若いヒト向けのセッションだと、洋服だったらZOZOTOWNとか、かなり細分化された返答が返ってきたんです。相手が変われば想起も変わる、という良い例だと思います。
スライドに記載したように、すぐ欲しいモノがある時はAmazon、連絡したい時はLINE、そして持っているものをお金に変えたい・売りたい時にはメルカリ。これがいわゆる想起ですよね。
みなさまに質問したいのは、「じゃあみなさまのブランド、みなさまのサービス、みなさまの製品は、どんな時に想起されますか?」ということです。いろんな会社のマーケティングのご支援をして、この話を初めにするんですけど、意外にこれがふわっとしていることが多いんですよね。
これがクリアであればあるほど、その後のマーケティング施策とか、誰に訴えないといけないか、が決まりやすいんです。逆に、これが決まっていると、細かい説明をしなくても指名されたり、検討時に第一想起されることで、ビジネスに非常にプラスになるということです。
その想起はどう作られるのか。もちろん、コマーシャルや宣伝もあるんですが、実際はこういう(スライドの)シーンが多いんですよね。これは実際に、小島家、私の家で起こったことです(笑)。
「BTS」は、若い子に非常に人気です。みなさんの中でもファンの方はいらっしゃいますでしょうか。失礼ながら僕は、BTSがアイドルグループだということぐらいは「認知」はしていたんですが、いわゆるジャニーズとか、日本にいる男性グループの韓国版かな、ぐらいの認識だったんですよね。
それを聞いた娘は、「何を言っているの。こんなにクオリティが高いのは、日本のアイドルとは違うのよ」と僕に言うわけです。
ただ、娘はBTSのファンなので、「まあまあ、若い時はみんな、自分の”推し”を一番だと言うものだよね」と思って聞き流していたんです。でも母親、私の家内が、「いやいや、そう思って私も聞いたんだけど、ぜんぜんクオリティが違うの。私たちが若い頃に聞いていたのとぜんぜん違うよ」と、僕に説得に来るわけです。
まあ、女性から見ると男性グループはそんなものかなと思っていたら、大学生の息子も、「いやいや、ぜんぜんレベル高いよ。知らないの?」みたいな感じで。彼も、男性なのに普通にSpotifyとかで聞いているんですよね。
そうすると、だんだん僕の中で、「ただのアイドル」から、「すごく実力のあるアーティストなのではないか」とイメージが変わってくる。「想起」ができてくるわけですね。
そう思って、流し見ではなくて、ちゃんとビデオを見たり音楽を聞いたりすると、すごく入ってくる。もちろんクオリティが良いからではあるんですけれども、もしこの家族からのインフルエンスがなければ聞き流していたものが、「すごくいいな」ということで、実は仕事中に度々かけるぐらい僕の中に入ってきている。
これはみなさんも、いろんなところで体験することがあるのではないかなと思います。ファンとかロイヤル顧客、今風に言うと「推し」ですかね。推しのお客さまの声が届くことで、商品とかサービスに接する前に、すでにポジティブな想起、状態を構築できるんです。
これができると、「認知」からではなく、いきなり「興味・関心」から入れる。これが非常に強力なんですよね。認知は広い分野にまず名前を知ってもらい、それから興味を持ってもらおうというステージなので、興味・関心に行く前に、膨大な時間とお金が消費されてしまうんですが、これをショートカットして、いきなり想起を作りやすい。
次の例は、ITの世界でよくある話です。新しい製品とかツールを導入してみた。でも、使ってみると、「なんか思ったようにいかない」「これは製品が悪いのではないか」と思ってググってみる。
すると「いやいや、こうやったらちゃんと動くんだよ」「この設定をこうするといいんだよ」「こう組み合わせるといいんだよ」と聞いて、「なるほど」となり、そのようにやってみるとちゃんとうまくいく。こういうことがあると思います。
これは同じ顧客の声でも、使い始めた後に響くやつですね。成功事例とか、うまく使っている人がいると、商品やサービスの継続利用に非常に前向きになります。
私の経験値ですけど、商品やサービスを導入後、はじめに思ったようにいかない時、どうしてもお客さまは、自分の使い方の前に「このツールが悪い」「商品が悪い」と思われるんですよね。
だけど、目の届く範囲にうまく使っている人がいらっしゃると、「必ずしも製品が悪いわけではなさそうだ」「サービスが悪いわけではなさそうだ」とわかってくるわけです。
で、それを参考に使っていくと、「こう使えばいいんだ」「ここをこうすればいいんだ」と、ネガティブな要素が一掃されて、さらにポジティブになっていく。成功している人をこれから使う人の近くに置くと、非常にポジティブな状態になるんですよね。
この2つを組み合わせて、例えば、使う前にある程度ポジティブな想起を獲得できれば、興味・関心のステージにショートカットできる。使った人の発信した声がどんどん届くようになると、さらにポジティブな想起がループする。ライフタイムバリューが継続的に向上する。
使い始めの人はもっと使おうと思ったり、使っている人は周りにおすすめをしてみたり、使い始めた人に教えたりできることになるわけです。
つまり、ここでお話をしたいのは、想起は、お客さまが使い始めるまでの「コンバージョン」の部分と、使い始めた後に長く使ったり、多くの方におすすめする「ライフタイムバリュー」(LTV)の双方に効くということです。
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