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在宅8割継続中!情シス部長が解説するハイブリッドワークを無理なく続ける、セキュリティ対策とオンボーディング(全2記事)

2023.02.14

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“開発依存”から脱却できれば、バックオフィスはうまくいく 少ない情シスで自社の管理業務を回すポイント

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社が主催するイベント「Cybozu Days 2022」が開催されました。今年のテーマは「宝島〜DXの勇者たち〜」。クラウドサービスを活用したDXにより、新しい道を切り拓く“勇者たち”が登壇しました。本記事では、サイボウズの情シス部長・鈴木秀一氏が登壇したセッションの模様をお届けします。オンボーディングの「動画マニュアル」を作るメリットや、サイボウズで毎日「棚卸し」ができる理由などを語りました。

オンボーディングの「動画マニュアル」を作るメリット

翠氏(以下、翠):具体的にオンラインオンボーディングを実現するための仕組みがどうなっているかを見ていきたいんですが。

鈴木秀一氏(以下、鈴木):kintoneの中に、スレッドと呼ばれる掲示板をたくさん集約できる「ポータル」という機能があります。

サイボウズでは、オンボーディングに関するすべての情報を、この「オンボーディングポータル」に貯めています。この中の1個1個のスレッドに、「こうやってパスワードを設定してください」「どういうことをやりますよ」ということを書いた手順書があります。

:動画のマニュアルもあるということですね?

鈴木:はい。オンボーディングをやっている情シスのみなさんにはぜひお勧めしたいんですが、サイボウズはオンボーディング内容を全部動画に撮ってアップしています。

:動画を作るって工数がかかりそうだと思うんですけど……。

鈴木:と思うんですが、実はすごく簡単で、TeamsでもZoomでもオンラインオンボーディングをやる時に一度録画しておけばいいんですね。あとは細々と切るだけで動画はできるので。

:なるほど、手順ごとに切っておくだけということですね。

鈴木:これは、利用者にも情シスにもいいことがあります。利用者にとってのいいことは……翠さん、オンボーディングの最中に、情シスが「次のボタンを押してださい」と言ったのにボタンが出ない時、どうします?

:テンパりますね(笑)。

鈴木:そうなんですよ。そうなると、ついていけなくなるんですね。たぶんみなさんも経験したことがあると思いますが、情シスが作ったマニュアル通りにやっているはずなのに、謎の画面が出てくるという不思議な現象が時々あります。

そうなった時に動画があると、一時停止もできるので、「あれ? 違う画面が出ちゃった。どこのボタンを押し間違えたんだろう?」と戻ることもできるんですね。

:巻き戻せるのはいいですね。

鈴木:そうなんです。

:普通に会場に集まってやっていると、「ちょっと戻ってください」は言えないですからね。

鈴木:動画の良さは、自分のペースで進められるんですね。「ここまでできたから止まっておこう」とか「もう1回見直そう」ということができるので、利用者もとても便利に使えます。

情シスにとってもすごく便利なのは、動画を見てもらうので情シスが説明をする必要がないことです。オンボーディングをやっていると、毎月同じことを伝えていると思うんですよ。でも1回撮っておけば、その工数をゼロにできるんですね。なので、ぜひとも動画を撮ってそれを見てもらうことをオンボーディングをされる方にお勧めしたいと思います。

オンボーディングの“あるある”の防ぎ方

:他にも工夫をされている部分があるということで、この3つを挙げていただきました。

鈴木:これが、その他のオンボーディングで工夫している点です。1個目がアフターフォロー会です。セットアップの翌日になると、「セットアップの時はマニュアルを見ながらやったからできたけど、何のパスワードを設定したか忘れました」ですとか。

:あるあるですね。やります(笑)。

鈴木:「何を設定したのかがわかってないです」みたいなことがあります。1日置くと出てくるんですよ。なので、次の日にアフターフォロー会をやります。

2つ目が追加コンテンツです。IDに慣れている人だと、オンボーディングがすごい速度で終わったりするんですよ。その人たちが終わった後に何をしていいかわからなくならないように、早く終わった人向けに、サイボウズの風土などがわかる動画を用意しています。

:「サイボウズ・ダイジェスト」という、社内の今のホットトピックを動画にしたものを作っていますが、それを公開して見ておいてもらうという感じですね。

鈴木:最後の3つ目は、お伝えした通り、このオンボーディングの仕組みにすると、情シスは待機時間が増えるんですよ。説明は全部動画がしてくれるし、障害報告も見張っておく必要はないんですね。時々kintoneアプリを見て進捗情報を確認したり。あと、kintoneモバイルで通知が来ますよね。

:そうですね。携帯にぽんって通知が来ますね。

鈴木:なので、通知が来た時だけオンボーディングのフォローをしてあげればよくなるので、スキマ時間で窓口の処理をしたり。

:片手間でオンボーディングができるということですね。

鈴木:そうですね。「おもてなし」と言っていたのに「片手間」って出ちゃうとちょっと困りますが。

:(笑)。最初は温かく。

鈴木:そうですね。効率良くオンボーディングができるようになっています。

オンボーディング中の困りごとを登録する「要望箱」

:私が入社した時は3人の情シスの方が回遊して「大丈夫ですか?」と声をかけてくださって、申し訳ないという気持ちが強かったので良かったですね。

鈴木:kintoneアプリには要望箱もあって、情シスメンバーだけでなく、翠さんたちオンボーディングを受けた人も見られるようになっています。オンボーディング中に困ったことがあったら、ここに登録すればいいんですね。

情シス側も要望箱に登録します。ここにすべての情報が集まるので、これを見ながら改善していくことができます。改善箱には現時点でたぶん400個ぐらい登録があって、今380個ぐらいの改善が終わっている状況です。

:けっこう進んでいますね。ということは、今のアプリはかなり改善された最終形態に近いものという感じですね。

鈴木:そうですね。今あるのは380個の改善の結果です。

:実は昨日、「THE HYBRID WORK」というサイボウズのハイブリッドワークのメディアに人事側から見たオンボーディングの記事を公開していますので、よかったらサイトを見ていただけると幸いです。

kintoneとRPAによる自動化

:続いては、RPAの改善のお話をおうかがいしたいと思います。

鈴木:先ほどお伝えした通り、ハイブリッドワークになって、PCなどの端末の台数やクラウドサービスの数が増え、情シスの仕事量が増えました。でも情シスの人数を増やすのは難しく、このままでは仕事が回らなくなりそうになったと。

:さっきも「人数が少ない中でがんばるのが情シス」とおっしゃっていましたものね。

鈴木:そうなんです。なので、3番目にやったのが「kintoneとRPAによる業務改善」です。

:実際に効率化したのが、この2点ということですね。

鈴木:そうですね。「システムアカウントの発行」と、先ほどお伝えした「棚卸しの自動化」です。

:システムアカウントの発行業務は、今までどういうふうにされていたんでしょうか?

鈴木:今までは、情シスがIDやパスワードを聞いて手作業でアカウントを1個1個作っていました。

:現在はRPAとkintoneで自動化されたと。

鈴木:そうなんです。

:どういう仕組みになったのかについておうかがいしていきますが、発行の仕組みはこんな感じになっています。

鈴木:これは情シスによるアカウント発行のフローですが、オレンジ色の部分がkintoneアプリで、ロボットくんがRPAの部分です。まず、人事の人たちがkintoneアプリの中に、入社する人の名前やID、メールアドレスなどの「配属情報」を登録します。そして、アプリ上のボタンをぽちっと押すと、「CSV生成」アプリというのに飛びますと。

kintoneにはアプリとアプリの間でデータのコピーを行う「アクションボタン」という機能があります。

今まで情シスのみなさんは配属情報をもらうと、そこからアカウント名とパスワードだけ紐づけたり、配属のグループだけ引っこ抜いてCSVに落としたりしていたと思うんですが、kintoneだとこのボタンを押すことで、CSV生成というアプリに情報を転置してくれるんですね。

サイボウズではアカウント発行をCSVの読み込みで行っていて、CSV生成アプリはそれに適したかたちのCSVを作るためのアプリになります。続いて「作成指示」アプリのボタンが、CSV作成アプリにありまして。

:同じような感じのボタンをぽんと押すと(笑)。

鈴木:ぽちっと押すと、今度は作成指示アプリに飛びます。ここにレコードがあって、「確認オッケー、これで作ってね」と指示すると、RPAくんが作ってくれるんですね。

アプリが3つも存在する理由

鈴木:なぜ「配属情報」「CSV生成」「作成指示」と3点もあるのかと言うと、「配属情報」は人にとって見やすい情報なんですね。「CSV」はシステムを作る時に見やすい情報、「作成指示」はRPAが処理するために見やすい情報です。

今までだと1つのデータを手作業で(それぞれの見やすい情報に)加工していたのを、アクションボタンを使ってうまく加工していく仕組みになります。

:なるほど。これまでだとどういう作業になるんですか?

鈴木:人によると思いますが、がんばって配属情報からCSVで引っこ抜いていろいろなアプリやシステムに合うかたちに、Excelにコピペするとか。

:でも、コピペだと誤転記があったり、間違えが起こりがちですけど。システムにやらせることで、変なものは引っこ抜かないと。

鈴木:そうですね。

:これでかなり楽になったということですね。実際に、こんな感じのアプリになっています。

鈴木:そうですね。これは最後の「作成指示」という、RPAが動く部分になります。「サビデロボ」というのがうちのRPAくんのアカウントですが、こんなかたちでロボが「どこのアカウントを作りましたよ」と書いてくれて、最後に「以上で作業完了です」と。

:「確認をお願いします」。ちょっとかわいいですね(笑)。

鈴木:こんなかたちでアプリに入っている情報をロボが見て、アカウントを作って、人間が最終的に確認するというのが、今の情報システム部門のアカウント作成のやり方です。

サイボウズの端末・アカウントの棚卸しは「毎日」

:もう1つの、端末・アカウントの棚卸しですが、通常棚卸しは年に1回かなと思うんですが。

鈴木:普通は年に1回ですが、先ほどお伝えした通り、サイボウズはPCを2台配布しているので、年に1回だと業務量が倍になり、棚卸しだけで下手をしたら数ヶ月かかるのではないかという恐れもあって。

:なるほど。

鈴木:でも、年に2回やれば半分で済んだりするわけですね。なので、「なるべくいっぱい棚卸しをしたほうがいいんじゃないの」ということで、サイボウズは今は……。

:毎日!? けっこうな頻度だなと思うんですけど。

鈴木:RPAとkintoneを組み合わせて、今は毎日棚卸しができるようになっています。

仕組みですが、アイコンは先ほどと一緒で、灰色が社内システムの部分で、黄色がkintoneです。

例えばkintone側の「社員名簿」の中には、入社や退社、休職などの情報や、PCが「利用中」や「返却済み」など管理上でどうなっているかや、その人のアカウントが今どうなっているべきかという情報が入っています。

一方の灰色のシステム側では、MDM(企業などで利用されるモバイル端末を一元的に監視・管理するサービスやソフトウェア)を見るとアカウントの有効・無効や、どのアカウントでどのPCを使っているのかなどがわかります。

なので、実際に管理上どうなっているのか、設定がどうなっているのかが突合できればいいので、RPAを使って実際の情報を引っこ抜いて、kintoneアプリに入れて、kintoneアプリ内で突合させて見ています。

実際どんなふうに見えるかと言うと、1枚の長いページで見えています。

:縦に長いのでここでは分割して載せているんですが、実際は1画面になっています。

鈴木:何かあったら情シスが上から下まで見ると、何が起こっているかがわかります。退職アカウントが5件も残っていたらインシデントですが、これはデモ画面で、リアル画面じゃないので安心してください。

:(笑)。そうですね。今日のために作った画面です。

鈴木:こんなかたちで、いちいち実際のシステムを調べにいかなくても、kintoneで上から下まで見ることで、アカウントもPCも棚卸しができ、作業漏れも確認できるようになっています。

少ない情シスで自社の管理業務を回すポイント

:今回サイボウズでこの3点をやったわけですが、最後にまとめをいただけますか?

鈴木:2022年にサイボウズの情シスが取り組んだ内容をお伝えしました。ポイントが1つありまして、まずは自分たちのできる範囲で小さく始めて、その結果何が起こったかを見て、改善点を挙げて直していく。

セキュリティも、自分たちのできる範囲から入って良くしていく。オンボーディングも、自分たちのできるものからやってより良くしていく。改善のサイクルを回せるかがすごく大事になります。

このサイクルを回そうと思うと、情シスが簡単に変更できるシステムじゃないといけないんです。すべてを開発してしまうと簡単には直せないじゃないですか。

:そうですね。要望箱などに溜まったものを(自分たちで)改善できるのが大事ということですね。

鈴木:そうなんですよね。そのためには、やはりローコード、ノーコードで、あまりスキルがなくても、現場のメンバーでも改善できるシステムを入れることがとても重要です。

サイボウズだとkintoneを使って、PCのセットアップをする現場のメンバーやオンボーディングを受けるメンバーが問題点を洗い出して、それを情シスが直してしまうと。

なので、ハイブリッドワークや先が見えない状況で情シスが波を乗り越えるには、開発者にお願いをしたり、新しいシステムを入れるという発想ではなく、自分たちで直せるような仕組みを入れて、改善のサイクルをうまく回していくことが大事だと思います。

:ありがとうございます。では、本セッションはこちらで終了させていただきます。みなさま、ご清聴ありがとうございました。

鈴木:ありがとうございました。

(会場拍手)

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