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サイボウズ代表青野が聞く!「うちの会社にはDX人材がいない…」を解消できるリスキリングとは?(全2記事)

2023.03.14

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「うちの社員にデジタルは無理だ」と思う会社がまずできること 中小企業のDXで「リスキリング」が強みになる理由

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社が主催するイベント「Cybozu Days 2022」が開催されました。今年のテーマは「宝島〜DXの勇者たち〜」。クラウドサービスを活用したDXにより、新しい道を切り拓く“勇者たち”が登壇しました。本記事では、リスキリングを研究するリクルートワークス研究所の大嶋寧子氏と、サイボウズ青野慶久氏が登壇したセッションの模様をお届けします。2022年の流行語大賞にもノミネートされ、今注目を集める「リスキリング」。実際社内でのリスキリングはどうやって進めればいいのか、そのポイントが解説されました。

リスキリングは「移住」のイメージ

青野慶久氏(以下、青野):みなさんいかがですか? (今までの話で)僕は「リスキリング」のイメージが少しずつ湧いてきました。今あるビジネスがダメという話ではなくて、デジタル時代(に合わせたビジネスモデル)に変わっていかないといけない。その中で、今ある“お家”と(は別に)、もう1個“新しいお家”を建てて、まずは経営者が自ら住んでみる。

「ここ、なかなかおもしろそうだよ。来たい人いますか?」ということで、主体的な人を集めていく。そうすると、少しずつ新しいビジネスに人が移るようになる。移住のようなかたちで、気づけば全体がトランスフォームできている。こんなイメージですかね。

大嶋寧子氏(以下、大嶋):そうですね。例えば西川コミュニケーションズさんの場合であれば、そのような大きいイメージの上に、スキルマップや推奨資格を作ることで、社員の方が「自分が目指すべき資格は何なのか」がわかりやすくなるような環境を作られたり。

青野:なるほど。

大嶋:あとは育成会議をきちんと開催すること。「このぐらいの人には、こういうスキルを持っていてほしいよね」と考え、その上でご本人と丁寧に(コミュニケーションを取っていくんですが)、「そこはアナログにしています」とうかがっています。機械的にではなくて、アナログな良さも使ってコミュニケーションしながら、少しずつ動機付けされています。

青野:丁寧ですね。「デジタルを学べ」という感じではなく、ちゃんとスキルマップを作る。デジタルと言っても、範囲は広いですからね。「どの分野で、どんなスキルがあればこんな仕事に役立ちますよ」というマップを作って、丁寧にコミュニケーションをする。時間をかけられますね。

学んだものをどう使うのかまで設計することが重要

大嶋:よく「リスキリングは、リスキリングのためにするものじゃない」と言っています。新しい仕事に移行するための学びがリスキリングですので、そこで学んだものをどう使うのかまできちんと設計していないと、ただのお勉強になってしまうんですね。

仕事転換のリスキリングも、「ここに行くんですよ」ということを、いかに腹落ちできるかたちで社員の方に示すかが大事なんだろうと思っています。

青野:なるほど。(今日のここまでの話が)今つながったんですが、「このスキルを学べばこんなビジネスができるよね」と示すためにも、経営者が(リスキリングを)やらないと(いけないですね)。単にデータベースに詳しい人がデータベースを教えたところで、「それは何の仕事になるんですか?」という話ができない。

経営者がそれを学ぶから、「うちのメンバーがこんな知識を身につけたら、こんな仕事ができるようになるんじゃない?」と言えて、そこに動機付けがされて、丁寧にコミュニケーションができて、次の人が続くのかなと思いました。

大嶋:おっしゃる通りです。その絵を描けるのは、経営者の方だけかなと。

青野:ビジネスの話ができる人になりますよね。なるほど。

新しいスキルにチャレンジする人のための工夫

青野:他にも(西川コミュニケーションさんが)工夫されているところをご紹介いただいていいですか?

大嶋:はい。それ以外に、例えば脱落する人がいないように「学習チーム」を作ったり、表彰制度を作って、学ぼうと思えるような機会を作ったり。あとは学びの時間をどう作るかは、すごく大きな問題だと思うんですね。働き方の柔軟性を高めることで、学習時間をなるべく確保できる環境を作っていらっしゃるという話をうかがっています。

青野:すごいですね。新しいスキルにチャレンジする人が出てくると、次に気になるのが、言っても移ってこれない人がいること。なかなかリスキリングが進まない人たちに、どうやって寄ってきてもらうのか。そのためにチームを作って孤立させずに、「大丈夫だよ」と励ましながらやっていく感じですね。

大嶋:そうですね。

青野:表彰制度も丁寧ですね。これを考えると丁寧に進められますね。あと、やはり「働き方」も大事になってくるんですか?

大嶋:はい。これは西川コミュニケーションズさんの事例だけではなく、全般的に言えることだと思うんですが、リスキリングの時間をどう確保するかはすごく大きな問題だなと思っています。

「会社のための学び」だからこそ、学びの時間も会社でデザインする

大嶋:特に中小企業においては、1人の余剰人員もいない中で日々仕事をされているところがとても多いと思います。業務効率を少し上げて時間を作るんですが、時間ができるとつい生産性の低い仕事に手を回してしまったりするので、「そこは学びに使うんだよ」ときちんとディレクションしてあげる。

デジタルで少し生産性が上がって時間の余裕ができたところを、どう使うかというところまできちんと配慮していかないと、なかなか学ぶ時間を作るのは難しいかなと思っています。

青野:「仕事が忙しいから、土日に自分で学んでおけ」というはダメなやり方ですね。

大嶋:そうですね。基本的には「会社のための学び」ですので、そこは会社がどうするか考えるべきかなと思っています。

青野:そうすると、業務時間中に学びの時間を作ってあげるくらいの感じでいくと、みなさんはついてきやすくなる。

大嶋:そこは会社の設計にもよると思うんですが、理想的にはそうだと思います。そのためには「業務の効率化をして時間を作るから」とか、「ここの仕事は外注するから」とやっていらっしゃる会社さんもいます。

青野:おもしろいですね。

経営者がコミットしたツール導入は成功しやすい

青野:西川コミュニケーションズさんはもともと電話帳の印刷業ですから、言ったら本当にアナログビジネスじゃないですか。今はAIソリューション、3DCGと、ぜんぜん違うところに進出されている。すごくないですか?

大嶋:私も企業さんから、本当に試行錯誤されてきたことをうかがっているので、本当に尊敬の思いを抱きながらいつも紹介させていただいています。「これが必要なんだ」と経営者の方が語りながら、社員の方と一緒に大きな転換を図っているのがすばらしいと思います。

でも、いろんな企業さんで同じことができると思うんですよね。

青野:そうですね。ここにすばらしいお手本がありますので、これをトレースするだけでも相当前進するのではないかと思います。大嶋さんに西川コミュニケーションズさんのお話を聞いて、「すごい会社があるな」と思って、「グループウェアは何を使っておられるんやろう?」と思って、調べてみたら......。

大嶋:そうですね。西川コミュニケーションズさんに「サイボウズさんのイベントで、御社のお取組みをご紹介していいですか?」とおうかがいしたら、「実はkintoneを使っているんですよ」とおっしゃっていました。狙って出したわけではぜんぜんないんですが。

青野:(笑)。偶然なんですが、kintoneをかなり大規模で使っていらっしゃいます。経営者がコミットしてkintoneを導入すると、やはり成功する事例が多いんです。

現場でも触れるツールですから、「kintoneでこんなアプリを作ったらどうだろう?」ということで、みんながだんだんデジタルに慣れてくる。先ほどの「1+3」の話で、みんなが1をクリアして2に行くと、だんだん「こんなこともできるんじゃない?」と。

僕たちのkintoneは、比較的詳しくない人でも使えるように設計しているので、ファーストステップを踏むにはいいツールかなと思い、紹介させていただきました(笑)。ありがとうございます。

デジタルを学ぶだけでは終わらない、リスキリングの価値

青野:話を聞いて思い出したのですが、高輪のほうに八芳園さんという、結婚式場などを運営されている会社さんがありまして。宴会場ですから、コロナになって仕事がなくなってしまった。「しょうがないから、とにかく今のうちにデジタルをやろう」と言って、来る日に備えてデジタルをやろうと、kintoneを導入していただきました。

それで(kintoneパートナーの)ジョイゾーさんに支援されながらやっていたら、だんだんみんなが上手になってきた。そして何が起きたかと言うと、「俺たち、これをビジネスにできるんじゃない?」と言って、今や八芳園さんがDXを提案する事業を始められたんですよ。すごくないですか?

まさにビジネス転換、仕事転換が起きて、なんと今日「Cybozu Days」に初出展されているんですよ。展示側ですよ? すごいですよね。DXはすごいなと思いました。

大嶋:すばらしいなと思う事例を教えていただきました。これは「変化創出のリスキリング」にも関わるなと思っています。

デジタルは、昔のシステム投資のイメージだと投資に必要な金額も大きく、専門家しかわからない、となってしまうと思うんです。でも今は、ITやデジタル技術、サービスの中にはランニングコストを抑えられたり、使う人の側にものすごく降りてきてくれているものもありますので、学びやすくなっているし、使いやすくなっているし、仕組みを変えやすくなっている。

その中で、「変化創出のリスキリング」と言いますか、「デジタルを使ったらこんないいことができるんじゃないか」と、社員の方が発想できるようになってきている組織があるんです。

その中から新しいデジタル化の種が生まれたり、もしくは新規事業のかたちになっているところもあるので、単に「使いこなしのリスキリング」だけではなく、デジタルの価値を知り、その提案ができるようにしていくことが、おそらく単にデジタルを学ぶには終わらない「リスキリング」の価値なのではないかなと考えています。

デジタルの学びと並行して重要なのは、社員の提案を生かす組織づくり

青野:そういう意味では、ちょうどテクノロジーがいいタイミングで足並みが合ってきたのかもしれませんね。

大嶋:そうですね。

青野:以前はシステムを学ぼうと言ったら、相当本格的に、プログラミングやコンピュータの基礎から学ばないといけなかったのが、使いこなしのリスキリングをやっていたら、「あれ? これ、俺たちでもできんじゃね?」というくらい、技術が寄ってきている。

別に、今やサーバーとかメモリーとかネットワークとかほぼ知識がなくてもシステムを作れるので、そのへんもあっての1(使いこなしのリスキリング)、2(変化創出のリスキリング)、3(仕事転換のリスキリング)の流れなのかもしれませんね。

大嶋:おっしゃる通りですね。その中で1つだけ重要だなと思っているのは、社員の方の提案をなるべく活かす組織を作っていくことです。デジタルの学びと並行して大事なんだろうなと思っています。

「変化の種」は、現場で「これ非効率だな」と思っていることがある社員の方や、「お客さんはこれで困っている」と感じている営業の方が一番知っている。なのでその人たちの提案をちゃんと拾い上げて活かす。

さらにその人たちがデジタルの知識を持って、そこと組み合わさった時に、企業のDXが本当に進んでいくんじゃないかなと感じます。

青野:なるほど。今、若干難易度が上がりましたね。やはり風土ですよね。「ちゃんと現場の人が発案したのを拾う組織になっていますか?」ということですね。

現場の意見を拾いやすい中小企業こそ、リスキリングの強みがある

青野:現場の人がデジタルを提案できるようになっていい。現場で困っているお客さんがいて、「こういうサービスをやったらいけるかも」「これだったら作れるかも」と思っても、その上司がそれを「いいんじゃね? やってみようよ」と言える組織じゃないと、3(仕事転換)までは行かない。

大嶋:そうですね。提案制度などいろんなやり方があると思いますし、特に中小企業はそこに強みがあると思っています。社長がコミットすれば意見を拾い上げることもできるという意味では、大企業より有利だと思いますね。

青野:確かにそうですね。大企業でヒエラルキーが固まっちゃうと、中間管理職の人たちが「お前でしゃばり過ぎや」と言ってきたり。

大嶋:途中で止まってしまうんですよね。

青野:こうなるとね、せっかく1(使いこなし)、2(変化創出)まで行っていても、また1に戻っちゃいますよね。

大嶋:そうですね。本当にいつも言わせていただいていることなんですけど、中小企業こそリスキリングの強みがあるし、そこを活かしてやらない手はないと思っています。

青野:なるほど、おもしろいですね。

中小企業は、働く人の「心」を考えたリスキリングを

青野:残り時間が少なくなってきてしまったんですが、大嶋さんからこれからリスキリングに取り組まれるみなさんに何かアドバイスをするとしたら、どういうところを意識しながらやるといいとか、ありますか?

大嶋:先ほどの繰り返しになってしまいうんですけども、やはり中小企業こそリスキリングが大事であり、中小企業こそ強みがあると、念頭に置いていただくことがすごく大事かなと思っています。

中小企業の場合、柔軟に「外から人を採ってくればいい」というのがなかなか難しかったり、これまでずっと同じやり方で仕事をしてきた組織の場合は、変えることに対して抵抗も大きくなりやすい。特に現場が重要な役割を担い、そこを動かすことが難しい企業さんも多いと思います。

その中で、時間がかかることも含めて「リスキリングがすごく大事なんだ」と丁寧に向き合えると、逆に中小企業ならではの機動的なリスキリングができるのではないかと考えています。

青野:なるほど。諦めている中小企業も多いんじゃないですか。

大嶋:そうですね。「最初は『うちの社員にデジタルは無理だ』と思いました」という企業さんもいらっしゃるんですけど、そういった企業さんの中には、まずは会社の始業時間・終業時間を変えたり制服を変えるなど、「変化することが当たり前だ」という(認識を作る)ところから着手されたところもあります。変化に慣れたところで、次にとても使いやすい初歩的なデジタルツールを導入する、というステップを設計されてました。

もちろん急いで進めなければいけないものでもあるんですが、人間そんなに急には変われないので、働く人のタイムスパンや気持ちといった、「心」を考えたリスキリングがきっと重要になるんだろうなと思います。

中小企業に向けた、国からの支援も拡大

青野:中小企業の方々には、諦めている人が多いような気がするんです。デジタル人材を採用しようと思っても、大手と取り合いになったら勝てない。社内を見ても、そんなに詳しい人はいないし、誰が教えるんだとなるけれども、諦める必要はないと。時間はかかるかもわかりませんが、丁寧にやっていけばブレークスルーしていけるというイメージですね。

大嶋:おっしゃる通りです。実は国も中小企業に対して支援をしていまして、私がすばらしいと思っている仕組みがあるんです。「生産性向上支援訓練」という堅苦しい名前の支援が、国の在職者向け、働いている方向けの訓練として、各都道府県で提供されています。

相談に行くと、200くらいのメニューの中から「あなたの会社に必要な訓練はこれですよ」と提案してくれて、一流の講師の方とマッチングしてくれて、会社の会議室で座学中心に(訓練を)やってくれます。中小企業の目線に立ったデジタルの講座もたくさん出てきているんですね。

今、中小企業の方のリスキリングに対する追い風が吹いていますので、そういったものをぜひ活用していただきたいと思います。

青野:意外でした。国もやる気なんですね。

大嶋:ここ1〜2年でデジタルの講座を大きく拡大しています。

青野:予算もちゃんと付いているんですかね?

大嶋:そうですね。安価な価格で利用できますし、商工会議所の方からも、企業に非常に評判のいい仕組みだと聞いています。

青野:そうですか。みなさん、いかがでしょうか? こういった仕組みも利用しながら、リスキリングにチャレンジしてみていただければと思います。

デジタルで仕事を変えていくための知識を身につけるのがリスキリング

青野:僕の中での復習も兼ねてですが、やはりリスキリングは、単に「新しい職を覚えなさい」という話ではなく、まさにデジタル化を背景に、デジタルによって仕事を変えていくための知識を身につけないといけないんだということなんですね。

それをするには時間もかかるし、無理やり引っ張ってもうまくいかないので、まず経営者自らがやってみて、どんな知識をどんなビジネスに活かせるのか開拓をして、そしてスキルマップを作って、丁寧に移住してもらう。こんなプロセスで進めていくと、シュッと離陸して、気づけばDX企業になれる。そんなイメージですか?

大嶋:そうですね。丁寧に進めていくことが本当に大事だと思います。

青野:ありがとうございます。それでは時間となりましたので、大嶋先生によるリスキリング講座はこれで終わりにしたいと思います。また大嶋さんのお話をうかがいたければ、ぜひリクルートワークスさんのほうに。

大嶋:ありがとうございます。「中小企業のリスキリング」というテーマで、どう始めたらいいか解説している冊子を出しておりますので、もしよかったら検索して見ていただければと思います。

青野:ぜひご活用いただき、みんなでチャレンジしていきましょう。それでは、こちらのセッションは以上で終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。

大嶋:ありがとうございました。

(会場拍手)

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