地域づくり・街づくりにITを活かす社会学者

青野慶久氏(以下、青野):それでは最後のゲストをお招きしたいと思います。武蔵大学・庄司昌彦先生になります。大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

ようこそお越しくださいました、ありがとうございます。

庄司昌彦氏(以下、庄司):よろしくお願いします。

青野:どうぞお掛けくださいませ。おもしろいお話でしたけど、どうでした? いきなり先生にすみません(笑)。

庄司:(笑)。いいですよね。(さくらインターネット代表取締役社長の)田中さんのお話にあった、ソフトウェアがどこにでもある「Software Everywhere」も本当にそうだなと思いましたし。信幸プロテックさんのお話は、やはり現場の声を活かして業務を変えていくところ。

直接聞けることはなかなかない機会だと思うんですが、経営者層と(現場が)コミュニケーションして初めてわかることがいろいろありますし、そういう会社っていいなとすごく思いましたよね。

青野:やはりリアルですよね。理屈や頭ではわかっていても「こういう感じなんだ」とびっくりしますよね。おもしろいです。

では、まずは庄司先生のお話をおうかがいしたいんですが、もともと社会学部の先生ですので、いわゆるコンピューターサイエンスではないわけですね。

庄司:そうですね。私自身はもともとビルメンテナンスを手掛ける中小企業経営者の息子ですし、どちらかというと街づくりに関心がありました。

地域づくりや街づくりの研究や手伝いをしていく中で「ITは使えるな」という感触を得て関心を持ち、利用者側の目線で、ITを使って世の中がどう変わっていくのか、変えていけるのか、ということをテーマにしてきました。それに名前をつけたら情報社会学ということになり、そして社会学部に所属するようになって……という感じでキャリアを重ねています。

日本社会全体に「デジタルを使おう」という機運が生まれている

青野:今、先生をされながらもいろいろな地方自治体のアドバイザーをされたり、それこそ政府のDXのアドバイザーもされてるじゃないですか。これはどういういきさつなんでしょうか?

庄司:もともと街づくりに関心があったんですが、若手の研究者だった頃に、民主党政権への政権交代があり、政府の会議に当時30代の僕なんかも含めて何人も抜擢されたことがありました。

そこからITを使って、地域社会全体をどうするかということや、行政をどうするかという、より大きな視点で政府に関わるようになっていった。やっているうちに、自治体のお手伝いにもかなり深く入るようになっていった感じですね。

青野:今やもう第一人者で、いろいろなところで庄司さんのコメントを拝見しますけどもね。

庄司:いやいや(笑)。

青野:いかがですか、取り組みをされるようになって少しは変わってきましたか?

庄司:コロナが大きかったと思うんですよね。接触を避ける必要があったり、移動が困難だったりして役所に行けない高齢者の方にも、デジタルでいろいろな給付金の手続きをしていただかなきゃいけなくなったり。あとはハンコの問題もありましたよね。ハンコを押すために出社しなきゃいけないけど、どうするのかとか。

あちこちで身近な問題について「これはオンラインでできないか」というものが出てきて、やっとちょっと火がついたと言うんですかね。社会全体で「デジタルを使おうよ」という雰囲気が出てきて、やっと変わってきたと思います。逆に言うと、それまでの20年ぐらいはあまり変わっていなかったということでもありますけれども。

青野:(笑)。そういう意味では、コロナも自治体の方が「そろそろリアルだけじゃダメなんだ」と気づくきっかけにはなったのかもしれませんね。

庄司:そうですね。ただ、東日本大震災のあとも、いろいろ変えようよという機運が1回高まりましたが、私たちはすぐ忘れちゃうんですよね。なのでやはり今、コロナで生活の仕方や仕事の仕方が変わったことを忘れずに、ちゃんと形にしていく必要はあると思います。

青野:1回、震災の時でもこれはまずいぞと、ちゃんとデータはバックアップしなきゃという話になりましたけどね。一瞬盛り上がって戻っちゃったみたいな(笑)。

庄司:そうなりがちなんですね(笑)。

青野:そういう意味ではコロナ(感染症対策でリモートワークが)がじわじわと長く続いているのも、ある意味ありがたいのかもしれませんね。

庄司:オンラインの会議も増えましたから、やはり定着したと思うんですよ。これが完全に元に戻ってしまうとちょっとどうかなと思います。維持していければと思いますね。

「デジタルやるぞ!」の前に、まずは仕事の棚卸し

青野:ただDXを進めようと思っても「どこからやればいいのよ」とか、押印をなくそうと言っても「何をどうするんだ」とか。DXに取り組もうと思っている自治体や企業に、庄司さんはどういうアドバイスから入られるんですか?

庄司:信幸プロテックさんのお話にもありましたが、まず「仕事の棚卸し」というのはよくありますね。「どういう仕事の仕方でやってるんだっけ」とか「この人はここでこんなことをやっていたんだ」ということも含めて、まずはみんなで確認する。

あとは数字で測る。測ることで、その数字は多いのか少ないのかということが気になってくるので、やはり大事だと思うんですね。そういう積み重ねでいろいろ見える化して「これをもっと良くできないかな」と考える。

今までやってきたことをもっと良くできないかなと考える。今までのやり方を維持するんじゃなく、そういう目で見ることがたぶん一番大事で、そこからスタートかなと思います。

青野:おもしろい。そういう意味では「デジタルやるぞ!」ではなくて、「ちょっと1回、まず仕事を見てみない?」と。

庄司:確認しましょうと。

青野:今すごく良いことを教えてもらってますよ。デジタル化は目的じゃないので1回置いておいて、まず仕事を書き出してみて、それに今どれぐらい時間を使っているのかとか、どの人がどれぐらい取られているのかを確認してみると。

他社の成功事例を真似するだけではダメな理由

庄司:逆にダメなのは、どこかの会社や事例の話を聞いて「あれをやろう、あれを入れよう」というパターンですね。

青野:あるあるですね(笑)。事例を真似するのはダメですか。

庄司:それをやる時にちゃんと「これを良くしたい、この無駄をなくしたいからやろう」というものがあればいいんですけど。単にどこかの話を聞いて「うちもあれをやろう」だと、やはり目的意識などが共有されないので、なかなか難しい。

組織の中では、担当者が変わってしまうと「この設定は何のためにやったんだっけ」ということが引き継がれなかったりするんですよね。そういう意味では単にコピーするんじゃなくて、「このためにやってるんだよね」「目的はこれだよね」ということがしっかり共有されていれば、ツールは別に変わっても構わないわけです。そういうところは常に大事だと思いますね。

青野:手段から入らずに目的から入ると。

庄司:両方がんばりましょうという感じですかね。

青野:両方。でも僕もけっこうやりがちです。何か他社の良い事例があると「うちでもやったらいいんじゃないの?」とかすぐ言っちゃう(笑)。

庄司:他社の例を入れようとすると「まぁでも、あそこはああいう会社だからさ」「うちとはちょっと違うからさ」というふうに、諦める理由が見えちゃうこともありますね。

青野:導入の途中で「うちはあそこと違いますから合わないです」というようなね。

庄司:そうですよね。やはり「何のためにやるんだ」「何を実現したいんだ」ということが先にあれば、「あれは合わなかったから、別のことを考えようか」というふうにやれると思うんです。なかなか難しいですけどね。

青野:確かに。先に「ほかの会社の真似をしよう」と言ってしまうから、手段が先に出てしまう。それで(自社とは)違うところが出てくると、「それはうまくいかねえよ」という反発が生まれて、だんだん何のためにやってるのかわからなくなって失敗していく。

大きな絵を描いて、小さなことから始める

庄司:これは私がよく聞く自治体の例ですけど、やはりどこかの自治体の例を聞いて「うちもあのサービスをやろう」とするわけです。そうすると、現場の方が「仕事が増える」と言って反対したりする。「DXをやろう」と言ってるのに、なぜ現場の人が反対するかというと、やはり仕事が増えるからなんですよ。

おかしいじゃないですか。特にこれから少子高齢化で人手が不足していく社会に向かっていくのに、仕事を増やしてどうするんだということなんですよね(笑)。なので、やはり現場が喜んだり、きちんと納得できるような導入の仕方を考えないといけないと思うんですよね。

青野:そういう意味では、先ほどおっしゃったように、まず業務を書き出してみて「ここを減らすためにやるんだよね」「減らしたらみんなが楽になるよね」と、積み重ねるように確認しながら進めていくのが1つのコツなんですかね。

庄司:「減らしたいよね」も「増やしたいよね」もあるかもしれませんけど、ビッグピクチャーと言われる、“大きな絵”をちゃんと共有しておく。ただ、最初から大きな設計図を描いて、「全体的にシステムを全部入れるぞ」というのも、なかなか大変なので。大きな絵を描きつつ、小さいことから始めていくのがいいかなと僕はよく言っていますね。

青野:メモポイントです。「全体の仕事をこうしたいよね」という、ビッグピクチャーがあるんだけど、実際にそれを一気にできるわけじゃないので「今回はこのへんからやってみる?」とか。「これができたら、次はこっちをやってみる」という感じですかね。

でも、小さい成功だけを見ていると、どこに向かっているのかわからなくなるので、そこはビッグピクチャーと小さな成功の両方(を見ていく)。

現場の否定やコミュニケーション不足が、抵抗勢力を生み出す

青野:ただ、これは「DXあるある」だと思うんですけど、必ず納得いかない人が出てくるじゃないですか。「抵抗勢力」という言葉を使うと、ちょっと申し訳ないんですけど。なかなか協力してくれない人たちにどう向かっていくかをアドバイスいただくと、いかがですか。

庄司:まず、抵抗以前に「困ってないよ」という人もいるんですよね(笑)。

青野:そうですよね。「今のやり方で何が悪いの? 俺ぜんぜんできてますけど」と。

庄司:だから、まずは問題を共有するところから始めなきゃいけないし、ビッグピクチャーという大義ですよね。「あなたが真面目にやっていることはわかっています。だけど、この目的とはまだけっこう距離がありますよね」とか「これは実現したいですよね」と。

そういうことをどうやったらわかり合えるかという意味では、本当にコミュニケーションが大事だと思うんですよ。

いわゆる抵抗勢力と言われる方も真面目に仕事をしていて、やはり慣れたやり方だから、間違いも起こりにくいし、ある程度の自信もあってやってらっしゃるわけなので。「それをもっと良くしましょうよ」というふうに握ると言うんですかね。そういう話の持っていき方が一番良いんだろうなとは思います。

青野:否定することなく「今、真面目にやってくれてありがとう」から入る。そういう時に「やり方が古いよ」と言ったら、これは(笑)。

庄司:僕は行政の方にお話することが多いんですけど、行政は本当に典型的です。やはり人の人生を預かっていらっしゃいますから。あと教育や医療もそうです。みなさん非常に真面目なんですよ。そして、多少残業や休日出勤が生じてもがんばろうとまで考えていらっしゃる方も少なくなくて。

真面目であることは否定しないけど、「もっと良いやり方がありますよ」「もっとたくさん(仕事が)できて、もっと人を幸せにできるやり方ありますよね」というふうに、なんとかコミュニケーションするということですね。

技術や正しさだけでは、人はついてこない

青野:なるほど。FAXを使っている人に「お前、今時FAXなんか使ってるんじゃねえよ」と言いたくなるのは置いておいて(笑)。まず、市民の方々のために真面目に働いておられる方に「本当にありがとうございます」と。

そして、「もっとたくさんの市民を幸せにできるやり方が実はあるんですよ」という会話にしないと、まさに余計な対立や分断を生んでしまうと。

庄司:そうですね。もちろん、トップダウンで「やるぞ!」と大きな変化をする必要もあると思うんですね。時々はそういう大きなトップダウンも必要ですが、そういう時に忘れられがちなのは、現場は真面目にやっているのに「否定された」となってしまうことです。

「最終目的 - みんなを幸せにする」ということに関しては、抵抗勢力がないほうがいいわけですよね。そういう意味では、目的に向かって必要なことを詰めていくのがいいんじゃないかなと思いますけどね。

青野:お話をうかがっていて、なぜ庄司さんのような社会学の先生が地方自治体や政府によく呼ばれているのか、今よくわかりました(笑)。やはり技術から入って「これが正しい」というコミュニケーションをした瞬間に、それは正しいけどうまくいかない。世の中はそんなに簡単にできていないし、みんながいろいろな思いを持って働いている。

庄司:私たちの社会のデジタル化ってわりとミーハーというか、その時々のはやり言葉に振り回されてきた部分があって(笑)。国もナントカ計画とか戦略を作るわけですけど、毎年変わっちゃうわけですよ。

そうすると「本当にやるべきことは何だっけ」というよりは、「今年のこれを成功したことにしておこう」という短期的な視点で物事を動かしてしまって、ビッグピクチャーを見失いがちになると思うんですよね。

「導入したらすぐ変わります」という思い込み

青野:毎年新しい方針が降ってきて「またどうせ来年変わるんだろう」という感じだったらねぇ。

庄司:腰が入らないですよね。やはり物事を変える時にずーっと粘り強くやっていくという意味では、少しゆったりと言うかですね。時間をとって変えていくのも必要かなとは思いますね。けっこう時間がかかると思うんですよ。

青野:今ちょっとなんか……。

庄司:今、良いこと言いました?(笑)。

青野:めっちゃきました。「時間がかかる」というのは、僕ら業者側からはなかなか言えないんですよ。「導入したらすぐ変わります」と言いたがるんですけど、実際に思い出したのは、例えばサイボウズ Officeを導入されて変わった企業がいらっしゃって。この間、僕の講演会に来てくださって少しお話ししてたんですけど、「どれぐらい時間かかりました?」と聞いたら「10年です」と言われたんですよ。

僕たちからすると「すぐこの会社を変えられる」と思って、あっという間に効率化できると思ってやっているんですけど、お客さまの中では一歩一歩進めながら。でも「10年経ったらここまで変わりました」という言い方をされて、これがもしかしたら正解なのかなと。

最初は時間がかかっても、やがて加速度的な変化につながる

庄司:DXはいろいろな定義があって、もちろん何かツールを導入するのも大事なわけですけど、僕は組織の文化や風土を変えていくところがけっこう大きいと思うんですね。ずっと「もっと良い方法がないか」ということを試行錯誤し続けていくとか、デジタルに対応した組織に変えていく、文化を変革することはけっこう大きいと思うんです。

そういう意味では、何かツールを導入して行動を変えることはすぐできるわけですけども、ちゃんと組織に根づくまではそれなりに時間がかかるし、それに合った組織に変えていくには、いろいろなところを変えなきゃいけない。

ですから、ある程度時間がかかると思うんですね。でも、そういうことをやり続けていると、加速度的に変わっていくところはあると思うんですよね。

青野:やはり社会学者の方の視点はおもしろいですね。僕らもドッグイヤーとかでデジタルをやっている感じなので、なかなかその感覚はないですけれど。確かに、どうせ技術なんてどんどん変わっちゃうから、やはり本質的な変化は便利な道具をうまく使えるような組織の風土を作っていくこと。

庄司:そうなんですよね。組織の風土に合わせて、組織の体制を変えていく。サービスや製品を変えていくのは、それを背景にして現れてくるものだと思うんですよね。

青野:なるほど。私も営業トークの時に「導入したらすぐ使えます!」と言うのをやめようかなと思いました。「10年かかりますけど、コツコツやってたらいけます」と。

庄司:(笑)。それが積み重なっていって、いわゆる複利で変わっていくみたいなね。

青野:こういう(最初はなだらかで後から伸びていく)カーブになりますよね。最初は本当に「一部の人しか使えませんでした」ですけど、現場が盛り上がってきた瞬間に、ずいぶん加速していく。どこかで谷を越えた瞬間に、そっちが多数派になっていく。

庄司:やはり風土や考え方の根っこの部分を変えるのは、なかなか難しいと思うんですよ。抵抗勢力と言われる方も自己否定のようになるわけですから、けっこうつらいことでもあるので。少しずつやってみて、確信を積み重ねていくことが大事かなと思いますね。

ITが苦手な人が取り残されないために

青野:想像するとこう、だーっと良い感じなんですけど、それでもまた途中でもう1つぐらい山がある気がするんですよね。みんな(ITが)得意じゃないし、正直キーボードをあまり打ちたくない人や、高齢者の方もいらっしゃるし。

いわゆる(ITが)苦手な人たちが、取り残されてしまうようなことにもなりかねないと思うんですけれども。そういう人たちに対してはどういうアドバイスをされますか。

庄司:いくつかあるんですけど、まずは「技術側ががんばりましょう」という部分もあると思います。僕はお役所系のものをよく見ることが多いんですが、やはり使いにくいものが多いじゃないですか。なので、作る側がインターフェースやデザインでがんばりましょうというところもあります。

それから、これはもう行政も企業もそうですけど、高齢の方々に対しては「若いやつがやってろ」ということではなく、みんなで勉強しましょうと。みんなで新しいものに変えていく体験をしてみましょうと。

Web会議もそうですけど「やってみたらけっこう簡単じゃん」ということもあるわけで、「自分たちごと」と言うんですかね。みんなで自分ごとにしていくのも大事だと思います。

それから僕は「支える人を支える」という言い方をしています。保育園の先生の話をよく例えに出すんですが、子どもたちがお昼寝している間に、先生たちが一生懸命に手書きでノートや連絡帳を書くわけですね。

それは、子どもたちを支える先生たちにとっては、あんまり本質的な仕事じゃないというか。別に手書きじゃなくてもいいわけですよね。そこをもっと効率的に、例えばスタンプ1つで(連絡帳のコメントを)入れられるようにしてあげると、もっと子どもたちのことを見られたり、もっと休憩がとれるようになりますね。

いろいろなものを組み合わせて、支える人たちを支えてあげることによって、高齢者や子どもたち、あるいは苦手なことがある人たちも、うまく対処できるようになる。結局、目的は「みんながハッピー」にあるので、誰も苦しむ必要はないというか(笑)。そういうところはあると思いますね。

「一番大事なこと」に注力するために、テクノロジーを利用する

青野:そういう意味ではやはり、苦手な人たちの気持ちや立場に立って思いをはせるというか。キーボードでみんなパカパカ入力できるわけじゃなければ、タブレットにペンでポンポン(書けるようにすればいい)という発想も出てくるし。

庄司:今は音声でもいろいろできるし、「技術でやれることがいっぱいあるじゃん」と思います。

青野:保育園の入力もそうですよね。「〇〇公園に行きました」と先生が書いてくれるんですけど、そんなことより、なんとなく遊んでる写真を1枚送ってくれたほうがぜんぜん説得力があったり。

庄司:全員向けのレポートでいいのかもしれないですしね。

青野:写真を何枚か撮って「うちの子写ってる、元気に遊んでるわ」っていうほうが、もしかしたらはるかにリアルに感じられる報告にはなるかもしれませんね。

庄司:そうですね。だから本当に保育なら保育、あるいは介護でもなんでもいいんですけども「一番大事なことって何だっけ」ですね。子どもたちをちゃんと見ること、そのために間に入ってる余計なことは減らす。自分がデジタルに長けなきゃいけないというプレッシャーからは、ちょっと解放してあげてもいいんじゃないかなと思います。

青野:大事ですよね。技術側もがんばらないといけないなと思いました。時間が迫ってきましたので、もしよろしければ最後、今日ここでDXにチャレンジされているみなさまにアドバイスなどいただけたらと思うんですけれども。よろしいでしょうか。

DXを進める時は「人に優しいデジルタル化」を

庄司:あえて言うなら、デジタル庁も言ってますけど「人に優しいデジタル化」。デジタルって冷たいイメージを持たれがちでしたけど、デジタルを人に優しく使うことはできるはずなわけですね。

キーボードが苦手だというなら、(入力するための)インターフェースをスタンプや音声にしたり。字が小さくて見えない人にもデジタルだったら拡大できますし、読み上げることもできるわけです。デジタルを人に優しく使うことはぜんぜんできると思うんですね。そういうことをちょっと心に留めて、DXを進めていただければなと思います。

青野:DXは人に優しく、ありがとうございます。庄司先生にお話をうかがいました。今日はどうもありがとうございました、大きな拍手でお送りください。

庄司:どうもありがとうございました。

(会場拍手) 青野:金言の数々でしたね。どうしても私はIT側なので「この最新技術を食らえ!」となっちゃいますけれどもね。やはり苦手な人に寄り添い、時間をかけていくんだという。

これは単に技術を使おうという話ではなくて、技術を使える組織風土にしようということなので、そこには5年、10年かかって当たり前なんだと。そういう発想を教えていただきました。

ということで、基調講演をそろそろ締めさせていただきたいと思います。みなさま、それぞれお宝になるようなヒントを得られましたでしょうか。まだまだこの会場にはお宝が眠っております。展示エリアでは今回、過去最大77のブースが出ていまして、たくさんお宝がありますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。

それでは基調講演はこちらで終了させていただきます。みなさま、お気をつけて宝探しにご出発ください。ご清聴ありがとうございました。