2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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ーー今の20代は生まれた時から景気が悪い状態を見てきているため、「景気がいいほうがいいんだろうけど、正直、景気が良くなったところで私たちの生活がどう豊かになるのか?」というイメージがあまり湧きません。環境問題もありますし、この先も経済成長を追っていていいのでしょうか?
高井浩章氏(以下、高井):「景気が悪かった」とおっしゃったんですが、日本の景気には波があって、すごく景気がいい時もありました。今も悪いですが、少し戻ってきています。
景気がいい・悪い時期はあるんですが、「景気がよかった時にいいことがあったっけ?」とみんなが考えちゃうのは、景気がいい時にも給料が上がっていなかったからです。本当に景気がいいと給料が上がるんです。
「給料が上がる」というふうに考えたら、わかりやすいですよね。日本の景気が拡大しているとかは我々にとってはどうでも良くて、実質賃金が上がるかどうか。有り体に言うと「物価以上に給料が上がるかどうか」なので、だったら上がったほうがいいよね、というのはわかりますよね。
ーー「本当に景気がいいと給料が上がる」というのは、シンプルですごくわかりやすいですね。
高井:マクロで経済成長を求める・求めないという話になると、「経済成長を求めるということは、資源を使って環境に負荷をかけることになるのだから、我々は低成長に甘んじるべきだ」「成長を求めるのはやめたほうがいいんだ」という議論があるんですが、私はそれに対してはすごく反対しているんです。経済成長が足りないからいろんな問題が起きている、と思っているので。
高井:日本がずっと成長していないことが、社会のいろんな問題を引き起こしている。それこそ少子高齢化も、経済成長が足りなかったことがすごく大きいんですよね。
私は今50歳ですが、私の世代はいわゆる「団塊ジュニア」です。この団塊ジュニアの世代の時は景気がめちゃくちゃ悪くて、いわゆる「氷河期世代=ロスジェネ」です。この時に景気が悪かったために、決定的に少子高齢化しちゃったんですね。
私はもの好きなので娘が3人もいますが、周りを見渡しても子どもが2人くらいで、子どもは1人だけという家庭もすごく多いです。そもそも結婚していない、子どもがいないというのもぜんぜん普通で、3人って相当珍しいです。
子どもが3人いると言うと、「すごっ」と言われるわけですね。でも当たり前ですが、1組の夫婦が子どもを3人以上作らなかったら人口は減ります。うちもそうですが、もし給料があと5割多かったら、4人目を生んでいたかもしれません。
マクロで見ても、経済成長が足りなかったから、子どもの数を1人、2人に抑えた人はたくさんいる。その結果少子高齢化になって、「大変だ、どうしよう」って言っているんですが手遅れですよね。
あと、今回コロナで世界中が大変なことになった時に、死亡率が高い国は、アメリカ以外は所得が低い国なんです。1人あたりのGDPが低い国はそれだけ医療システムが整っていないので、コロナに医療が対応できなくなっちゃうんですよね。
高井:あるいは今、ウクライナとロシアが戦争していますが、両方ともまともに経済成長ができなかった国です。国のGDPは増えているかもしれないけど、一般的な国民の所得はぜんぜん伸びていないので、両方とも貧しい国なんですよ。
国の富を一部のエリートが盗んでいるタイプの国ですよね。紛争が起きているアフリカとか、中東の一部の国もみんなそうですよ。
みんなが豊かにならないと、社会問題の多くの部分が片付かない。とはいえ、20年前、30年前に比べると、世界はだんだん豊かになってはいます。これをデータで示したのが『ファクトフルネス』という本です。
経済成長はしていないけれど、もともと日本はとてもマシな社会なので、日本社会で育った人が「経済成長って要るんだっけ?」と思うのは、それだけ日本がいい社会だということですよ。
ふだん生きていて、命の危険は感じないですよね。不治の病とかでない限り、「病気で医療にアクセスできなくて死ぬ」というのは想像がつかない。「夜歩いていたら強盗に襲われるかも」という心配も必要ないですよね。
お金持ちだけで固まって住んで、城壁のようなものを建てて、門をちゃんと付けて、門の外にはマシンガンを持った人間が立っていなきゃいけない社会ではない。アメリカですらそうなので、我々はラッキーな社会に生まれているということです。ただ、地球全体だとまだまだ人間は貧しいので、経済成長は必要なんです。
高井:日本で「失われた20年、30年」と言われているのは経済政策の失策だと思いますが、「こんなにインフラも整っていて、人材のレベルも高くて、勤勉なのに、なんでこんなことになったのか?」と、欧米で研究対象になっているくらいです。
「謎だ」と言われているくらいなので、これは何らかの失策があったんだろうなという気がします。この「なんで?」という話は、3時間あっても足りませんが(笑)。
でも、経済成長していないことによって、すでに日本でいろんな問題が起きています。この状態があと20年続くと、たぶんインフラに影響が起きます。
私は2年間ロンドンに住んでいましたが、イギリスも財政がかなりガタガタでインフラにきています。道路の穴が修理されていなかったりするので、普通に道路を走っていても危ないんですよね。でも、いずれ日本もそうなると思いますね。
地方の道路は、多少ガードレールが壊れても直さないですからね。橋も架け直すのは無理だから、「危なくなったら閉鎖する」というふうになってくると思うんですよね。水道や下水道とかもそうです。それを避けたかったら、やっぱり経済成長は必要だなと思うんですよね。
ーーこの先も経済成長することで、単に暮らしが豊かになるだけではなくて、たくさんの問題を防いだり解決できるということですね。ただ、かなりスケールの大きな話なので、目の前の仕事と経済とのつながりはなかなか意識しづらい気もします。
高井:本(『おカネの教室』)の中でも「持ち場を守る」という表現でお伝えしたんですが、人間1人にできることなんてそんなに大したことではないので、「1人の人間が生きているだけで立派なものだ」という考え方をしています。
生きていく上で、働ける人は働いたほうがみんなの負担が減ります。「人の荷物まで持てるくらい働ける人」と「自分の荷物で手一杯の人」、それから「自分1人では無理な人」も含めて、ちょっとでも働けるのだったら働いたほうがいいし、働けないんだったら休んだほうがいい。大事なのは生きていることです。
「みんなが生きていくためにはどうしたらいいの?」「経済って何か?」と言ったら、結局は付加価値を生むことです。付加価値をどう測るのかというと、「誰かにとって必要かどうか」「誰かが欲しいものを作っているか」「誰かが必要としているサービスを提供しているか」です。
今までは誰も「欲しい」とすら気づかなかったものを発明するとか、世の中に何らかの新しい価値を加えることが、経済学で言う「付加価値」という概念です。
「AとBを組み合わせることによって、今までと違う価値を生む」というのが、経済活動、経済成長です。働くというのは、極端に言うとこのためにやっているんです。
高井:新しいものを生むだけではなくて、同じパンをずっと作っていてもGDPにカウントされるわけだし、経済成長にはならないけど、経済のレベルを保つことには貢献します。1人抜けても大丈夫な社会ではあるんですが、全員が辞めたら成り立たないので、みんなで社会をうまいこと回るようにするのが経済活動なんです。
政治の参加もそうだと思うんですが、経済活動や政治を「自分1人で何ができるんだろう?」というすごく大きな単位で考えてしまうと、わからなくなっちゃう。巨額のお金のことを考えてもしょうがないので、まずは自分の財布の中から考えたほうがいい、ということです。
大きな画を考える前に、自分のお給料とか、ギリギリ住宅ローンを組んで借りられる金額とか、あるいは自分プラス周りの人の人生が回るように経済活動をする。それくらいの範囲内で、まずは仕組みを知ることが一番大事です。
その集合体が市場経済なので、「全体で見るとこういうことよね」という画を理解しておく。全体の画の中で、自分の手が届く範囲内で持ち場を守る。
「働くことって意味があるんだろうか?」というのは、「働かなかったらみんなが食えないし、俺も食えないよね」という話なので、意味がないわけがないんです。
高井:本の中でも、「ぬすむ」というちょっと厳しい書き方をしたんですが、お金は儲かっても世の中にマイナスになっている仕事って、実はいっぱいあるんですよね。例えば、麻薬ビジネスや詐欺とかです。「働いている」のうちに入らないというよりも、盗んでいる行為なのでダメでしょう、ということです。
人間社会が前に進む方向にちょっとでも貢献する。あるいは後退しないために貢献するだけでも、「働く」というのはとても立派な行為なんですね。
我々の社会には、もう働けない、まだ働けない、あるいは何らかの理由で働けない方もいらっしゃるので、そういう人たちも含めて人間社会を回さなきゃいけません。それを回すためのリソースを生んでいるということは、働いている人たちは「ちゃんと船が進むように漕いでいる人」なわけです。
当然ですが、船に乗っている人みんなに生存権はあるので、「働いているから偉い」「働いていないからダメだ」という話ではなくて、生きているだけで偉い。なので、働ける人が働くのが「持ち場を守る」ということです。
プラス、そうは言っても資本主義市場経済はなかなかトリッキーな社会なので、ルールは知っておいたほうがいいと思いますね。
ーー実際に自分の身近な例で「お金」について考えた時、どうしても将来への漠然とした不安が浮かんでしまいます。貯金や投資などの一歩目として、まずは何から始めるのがおすすめでしょうか?
高井:行動としては、もうほとんど答えは決まっています。「つみたてNISA」でインデックスファンドを買えばいいんです。月に1,000円でも2,000円でもいいので、できるだけ早くやることですね。
よくわからなくても、やればいいんです。大丈夫です。つみたてNISAにリスクの高い商品は入っていないですし、名前を見たら「これは日本株ね」「これは世界株ね」ってわかるので、なんとなくで買っちゃっていいです。
2,000円やったって、年間で2万円です。世界経済危機が来ても半値になるくらいですから、どんなにやられても年間で20パーセント、30パーセント程度の損失だと思うんですね。
「早く始めたほうがいい」というのは、早く始めればそれだけ経験値が積めるからです。お金がもっとたくさん貯められるようになった時に、経験値がなくて始めるよりも、少額でもやっておくと「これで損したことがあるな」「これくらい儲かることがあるよな」というのがわかります。
「つみたてNISAという財布はこう使うんだな」ということも、人よりもわかるようになるので、早めに始める。投資という行為については、つみたてNISA一択です。
つみたてNISAは2024年から使いやすくなるので、来年から始めて練習しておいて、2024年からちゃんとやるのがいいと思います。
ーー著書『おカネの教室』は、もともとはご自身のお子さまに向けて書かれた本だったとのことですが、高井さんが経済の知識を持つことの大切さを発信し続ける理由や、その思いをお聞きしたいです。
高井:もともとあの本は娘に書いたものなんですが、ものすごくぶっちゃけたことを言うと、別に「日本人全体の金融リテラシーを上げよう」「経済リテラシーを上げよう」とか、そんな大それたことはまったく考えていないです(笑)。
まったく関心がないかと言われるとそんなことはないですが、「みんなもこれくらい知っておいたら?」くらいの温度感でやっているので、使命感みたいなものはございません。それよりもモチベーションになっているのは、「これ、おもしろいんだけど聞いてくれない?」という思いですね。
経済っておもしろいんですよ。世の中のことのほとんどの裏側にはお金や経済が隠れているし、「経済がくっついていないけれどもやったほうがいいこと」も、経済をくっつけないとできないんです。
例えば従来の経済の仕組みだけだと、超マイナー言語の辞書を日本語で作ることが難しくなると思うんです。日本では研究者が数十人しかいない、場合によっては数百人いても、辞書を作るのって難しくなると思うんです。紙の辞書を作るのって、ものすごく手間と時間がかかっている世界なんです。
経済活動の真逆にあるような行為や、「その言語、本当に研究する必要あるの?」というものでも、DAO(分散型自律組織:ブロックチェーン上で世界中の人々が協力して管理・運営される組織)やクラウドファンディングといった新しいお金の仕組みを使えばできるかもしれない。
高井:しかもこういうものって、いつ役に立つかがわからないんですよね。でも、確か海外では「ある特定の言語の研究をずっとやっていたおかげで、暗号解読に役立った」という例があったと思います。
どこで何が役に立つかなんてわからないし、たとえ役に立つ日が永久に来なくても、そういう営みがあるということは、それだけ社会が豊かだということです。でも、そのためにはやっぱりお金が要るんですよ。
大富豪がバーンと儲けて「お金を出すわ」でもいいんですが、その大富豪が儲けるためにもお金の仕組みが要るんですよね。そればかりではないですが、世の中の裏側にはお金が必要なことがとても多い。
なので、お金の仕組みがわかること自体がおもしろいし、「おもしろいから聞いてよ」というのが、僕の本質的なところです。「私が知り合った範囲内の人は、知っておかないと危ないことくらいは知っておいたら?」という、親切心でやっているということですね(笑)。
ーー今回は「社会人1年目のためのお金と社会の話」ということなので、若い世代のビジネスパーソンに向けて、高井さんから最後にアドバイスを頂戴できればと思います。
高井:若い人へのアドバイスとしては、「一番いい投資先は自分だ」という話です。自己投資は簡単に計測はできないんですが、例えば入社1年目、2年目だったら、がんばれば毎月1パーセント、2パーセントずつ能力が伸びるはずなんですよ。もしかしたら、もっと伸びるかもしれない。
例えば、毎月ものすごくがんばって自分を7パーセント成長させたら、1年経ったら2倍、3年続けたら能力が8倍になっているんです。能力が8倍になったら、給料は倍くらいになりますよ。
しかも、自己投資には税金がかからないんです。自分に投資して、自分の力を複利で増やすことがすごく大事です。ここで重要なのは、複利で能力を伸ばす時の最大のリスクは「元本が毀損すること」なんですね。
これはお金の話ですが、例えば100万円を持っていて、最初にものすごくリスクを取って50万円になった。もとの100万円に戻すためには、倍にしなきゃいけない。これは自己投資でも同じで、自分の能力が大きく下がるリスクを取るのは良くないんです。
だから、無理して体を壊すとものすごく損するんです。複利でじわじわ伸びるんだと信じて、元本が毀損しないように自己の健康を管理する。人生で事故らないようにすることは、若い人にとってはすごく大事ですね。
高井:私も人生で何回か元本を大きく毀損するようなことがありました。過労で倒れたり、1年くらいろくすっぽ働けない状態になったことが何度かあったので、無理をしない。
それと、つみたてNISAだったら(生涯の投資上限が)1,800万円までいけるらしいんですが、自己投資だったら何億円もの価値がある。ただ、実は所得税が上がるんですけどね(笑)。でも、一生モノなので残ります。
能力に投資をするのが一番効率がいいし、ハッピーになれる投資先ですよね。ただ、「自己投資がいいよ」と言っても難しくて、何が自分にとって本当にプラスだったのかは、何年か経ってみないとわからないところもあるので、単純ではないんですけどね。
自己投資というと「資格の勉強のためにテキストを買う」「セミナーを受ける」という発想になりがちなんですが、自己投資の一番大きなリソースは「時間」です。
別に趣味でもいいですし、あるいは「トレーニングで体を鍛える」でもいいんですが、お金をかけるよりも、時間をマネジメントしてうまく投資する。
若い人はお金があまりないので、ジムに行くくらいだったら筋トレの本を買ってきて、「真面目にコツコツ1日15分やる」という時間に投資するほうが大事です。タイムイズマネーですからね。
ーーなんとなく経済の話に苦手意識を持っていましたが、蓋を開けてみるとすごくシンプルで、実は身近でおもしろいものなんだなと感じました。高井さん、ありがとうございました。
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