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サイボウズでインターンをして、パナソニックに持ち帰ったら、変化が起きた(全2記事)

2023.01.27

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パナソニック社員がサイボウズから“持ち帰った”2つのこと インターンで学んだ、大きな組織を「変えたい」人に必要な行動

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社が主催するイベント「Cybozu Days 2022」が開催されました。今年のテーマは「宝島〜DXの勇者たち〜」。クラウドサービスを活用したDXにより、新しい道を切り拓く“勇者たち”が登壇しました。本記事では、サイボウズでの2週間のインターンを経験した、パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社の多良奈那子氏と五反田屋慧氏が登壇したセッションの模様をお届けします。インターンを終えて自社に戻った2人の取り組みや、組織をアップデートする上で大事な2つのポイントなどを語りました。

サイボウズのインターン後の自社での取り組み

松川隆氏(以下、松川):ここからが肝心なお話ですね。お二人は2週間のインターンを終えて、それぞれの職場に戻ったわけですが、分報や実況スレッドの取り組みは実際にされたんでしょうか?

五反田屋慧氏(以下、五反田屋):はい、本当にやらせてもらいました。

松川:五反田屋さん、ちょっと待ってもらってもいいですか?

五反田屋:はい。

松川:みなさんもひょっとしたら気になっていたかもしれませんが、これは「Cybozu Days」というサイボウズの自社イベントですが、残念ながらkintoneがぜんぜん出てこない(笑)。(実はパナソニックさんで)お使いになっているのは別の会社のコミュニケーションツールなんです。

サイボウズは「チームワークあふれる社会を創る」というスローガンを掲げていまして、サイボウズ製品をツールとして使っていただいたらそれはうれしいんですけど、そうじゃなかったとしてもオッケーです(笑)。ということで、ひるまず続けていただきたいと思います。

五反田屋:ありがとうございます。まず小さいことからやってみたかったので、kintoneの導入というよりは、今パナソニックで使っているTeamsで、こういう「つぶやきスペース」を作らせてもらいました。

これは多良さんがつぶやいているシーンですが、仕事のことも日常的なことも含まれています。本当にその時に思ったことをつぶやいているんですね。

パナソニックオートモーティブシステムズの人事センターのメンバーは100人ぐらいいますが、我々2人で100人分の「つぶやきスペース」を作って、「みなさん、ぜひつぶやいてみてください」と言ってスタートしました。

松川:Teamsにメンバー分の、100人分のスレッドを立てて「よかったらどうぞ。あなたはここですよ」とやってあげたということですね。

五反田屋:逆にそれだけですね。

松川:なるほど。もう1つの実況スレはどうだったのでしょうか?

多良奈那子氏(以下、多良):こちらも人事センターの中で始めました。人事センターには「部長会議」という、部長のみなさんが連絡事項の共有や決定をする会議があります。

部長会議は人事センターの社員であれば誰でもオブザーブできる会議なので、部長会議を見ながら、実況スレッドに「今の部長の意見はすごくいいなと思いました」とコメントしたり、「今のはちょっとわからなかったんですけど、誰か教えてくれますか?」と聞いたら、他の人が「このリンクを見たらどうですか?」と教えてくれたり。そんなふうに活発に実況スレを使っています。

新しい取り組みに対する社内の反応

松川:「部長会議」というのは人事センターの中にいらっしゃる部長さんの会議ですね。コロナの前は横浜などに集まったりして行われていたけど、コロナ以降はZoomで行われるようになり、メンバーであればオブザーブできるようになったということですね。

多良:その通りです。

松川:ただ、そこにコミュニティというか実況スレッドはなかったと。

多良:そうです。なので、実況スレを持ち帰る前までは、PCで部長の声を聞きながら必要ならメモを取るという感じで、各自が1人で見る状況でした。

松川:なるほど。そこに実況スレッドを立ち上げられたということですね。ありがとうございます。

ただ、「なかったものを始める」というのは、抵抗勢力と言いますか(笑)。「えー?」みたいな反応や、「失礼なんじゃないか」といった意見とか、いろんな声が出たのではないかと思いますが、そのへんはどうでしたか?

五反田屋:例えばつぶやきスペースだと、抵抗勢力というより、「これって何のためにやるんですか」みたいなことを言われることはありましたが、我々としては「みなさんに強制はしません。やってみたら、何か変わるかもしれないので、まずはやらせてください」とお伝えしました。

苦労した点は、「つぶやきをしましょう」と始めても、1ヶ月ぐらいは多良さんと僕しか、たぶんつぶやいていなかったことですね。100人いる人事センターの中で、2人だけがつぶやいていると(笑)。

松川:(笑)。

五反田屋:そういうことが続きましたが、やっているうちに「多良も五反田屋もなんかおもしろいことやってるやん」と共感してくるメンバーが徐々に現れて、「自分もちょっとつぶやいてみようかな」とか「多良さんのつぶやきにちょっと反応してみようかな」となって、今では多くのメンバーがつぶやくようになっています。

最初は心が折れそうになりましたが、今はすごく周りのメンバーも後押ししてくれている状態です。

共感者や参加者は「徐々に」増える

松川:最初は「これ、みんなでやらなきゃいけないの?」といったコメントをされた人がいたということですね。

五反田屋:そうですね。でも「本当に強制じゃないんで」と(笑)。「やりたい人だけやってみてください」と伝えました。

松川:ちなみにお二人しかつぶやいてない時は、どんな感じでやっていたんですか?

五反田屋:「今日はあれを食べておいしかった」とか(笑)。最初は仕事のこともつぶやいてたんですけども、もっとハードルを低くして、みなさんに興味を持ってもらえるように、「昨日はドラマを見ておもしろかったです」とか「今日はこの人とご飯を食べました」といったつぶやきを1ヶ月ぐらい2人で続けました。

松川:そして、ちょっとずつ「いいね」が増えてきたり、絡んでくる人が増えてきたりといった感じだったんですね。実況スレはどんな感じでしたか?

多良:実況スレも最初は同じで、私たちが「実況スレやりますよ」と言っても、「えー? それ何?」みたいな。五反田屋さんと私はインターンで実況スレを見て、実際に使ったので、その良さも体感していたんですけど。ほかのメンバーは知らない状況なので「なんだこれは」と、未知のものに出会った感じでした(笑)。

最初は私と五反田屋さんで部長会議の内容についていろいろ書いてるうちに「あ、こういうことを書けばいいんだ」とみんなに伝わって、徐々に書いてくださる方が増えていきました。

松川:私は、部長会議をオブザーブできるところがけっこうすごいなと思って(笑)。クローズの一般の会社よりは少し有利な状態だなと思ったんですけど。それでもやはり書く人はそこまでいなくて、2人がやっているうちに周りの人が乗ってくるようになった感じなんですね。ありがとうございます。

小さく始めたことが生んだ「大きな変化」

松川:これがおそらくインターンが終わった直後の、今から半年ぐらい前の出来事だと思います。それから半年以上が経過して、じわじわといろんな変化が起きているのではないかと思いますが、いかがですか?

五反田屋:一言で言うと、組織と人の中でちょっとずつ壁がなくなってきているのかなと思います。これはつぶやきスペースのスライドですが、部長が最初につぶやいているんですね。上の立場の人が、最初に何気ないことをつぶやいてるんです。

松川:確かに何気ないことですね。「最近、心に火を灯された言葉」(笑)。

五反田屋:仕事にぜんぜん関係のないことを言っているんですけども(笑)。そこから部長2人目、部長3人目と反応して、下のほうにいくと担当者もこれに対して乗っかって反応しているんですよね。

部長と担当者のふだんの会話でこういう話題はほとんどありませんでしたが、つぶやきスペースを始めたことで、部長と担当者というレイヤーの離れた人たちが日常的に気軽に会話ができるようになったところが1つ。始めたのは小さなことだけど、こういう大きな変化が生まれたと感じてます。

松川:事前にお話をうかがったんですが、ここでやり取りのあった部長と担当者の方は拠点も違うと。

五反田屋:そうですね。部長1、2、3はみなさん、パナソニックオートモーティブシステムズの本社がある横浜にいる方ですが、担当者1は私と同じ長野県の松本市の工場にいる人事の人です。拠点もぜんぜん違いますし、業務上も関わらない。そういう関係性でしたが、つぶやきスペースを通して、徐々に何気ない会話もできるようになりました。

実際に担当者同士の会話の中で、次に会議で部長さんと話す時は「何々部長って確かサッカーが好きだったから、サッカーの話を振ってみて、場を和ませてから会話してみようかな」とやりとりをしたこともありました。そういったことが起きたり、レイヤーの垣根を越えたコミュニケーションが生まれるきっかけになったのではないかと思っています。

松川:なるほど。これがなければ交わることはなかったかもしれないみたいな。

多良:部長は私から見てもすごく遠く、畏れに近い感情を抱く存在でしたが、その部長が「『鬼滅の刃』がすごいおもしろい」とかつぶやいていると、「私も『鬼滅の刃』が好きなんです」みたいな感じでちょっと話ができたり。本当に顔が見えるし、距離が近くなったなと思います。

部長会議の「実況スレ」を始めてわかったこと

松川:部長会議の実況スレには、どんな変化がありますか?

多良:実況スレも、組織と勤務地を越えたなとすごく思います。中途で入社した方が部長会議の実況スレにたくさんコメントをくださったんですけど、「あぁ、こういう考えの人なんだ」とか「こういうことに興味があるんだ」というのが1回の実況スレッドでわかったんですね。

その方は私と組織も違うし、勤務地も違うし、1回も会ったことがないんですけど、実況スレのコメントを見て「こういう人なんだろうな」とわかったり。つぶやきスペースでお子さんのことをつぶやかれたりしていると「こういうプライベートなんだな」というのもわかって。

入社して間がなく、1回も会ったことがないし接点がぜんぜんないんですけど、すごく「仲間だな」と感じることができました。

松川:事前に聞いたお話では、パナソニックホールディングスの 楠見(雄規)社長の経営基本方針の全社アナウンスも実況スレを立ててやったら、けっこういろんな人たちが集まってきたということがあったらしいですね(笑)。

多良:そうなんです。今までお話しした内容は部長会議とか、人事センターの100人の中でのことですが、全社の会議でも実況スレをやったらより多くの人に良い効果が生まれるのではないかなと思ってやりました。

松川:小さく始めたことが伝播していくということが、今パナソニックの社内で起きているということですね。ありがとうございます。

「それをやったらどうなるの?」への答え

松川:ちょっと意地悪な質問をしますと、職場のつぶやきとか、部長会議の実況スレというのも、まだまだ小さな取り組みに見られると思います。

「それをやったらどうなるの?」「具体的に何か変わったの?」と聞かれると、どう答えるべきか。「そんなの意味ないよね」と言う人も若干いると思いますが、お二人はこの一連の出来事をどう捉えていますか?

五反田屋:はい。そうですね。やったことは本当に小さなことだと思います。つぶやきスペースを作ったことと、実況スレを立ち上げたことの2つだけです。でも、それをやったことで会話のなかった部長と担当者の間でコミュニケーションが生まれた。実況スレを立ち上げただけで、部長会議の中での意見交換が進み、パナソニック全社の経営会議でも使われるようになりました。

小さなことが積み重なって、大きな変化になってきた。逆に大きなことをしようとすると抵抗も大きいと思います。小さなことからだから始められる。それがいつの間にか大きな変革につながっているなと私は実感しています。

松川:ありがとうございます。多良さんはどうですか?

多良:私も小さくやったことが逆に良かったなと今は思っています。小さく無理なく楽しく継続したことで、文化というか風土になってきたなと思いますね。

組織をアップデートする上で大事な2つのこと

松川:半年前にインターンに来ていただいて、自社に戻って持ち帰ったものを実行し、いろんな変化を今感じられていると思いますが、組織をアップデートする上で大事なことは何だと思われますか?

五反田屋:繰り返しにはなりますが、私は小さなことからでも「まずやってみる」ところを一番大切にしています。大きいことをやろうと思うとスピードも遅れますし、自分の中で壁を作ってしまって大きな変革を起こせないと思うんです。

このぐらいの小さなことなら積み重ねて何かを起こせるかもしれないと思って、まずは小さいことから始めていくことを大切にしていきたいと思います。

多良:私は「1人でもいいから仲間を見つける」ことがすごく大事だと思います。実況スレもつぶやきも、最初は2人だけでしたが、五反田屋さんがいたから心が折れずにがんばれたと素直に思うので。

松川:ありがとうございました。最後に、「もう諦めよう」「無理かも」と思っている人たちに、何かメッセージがあったら一言お願いします。

五反田屋:ありがとうございます。(マネジメントの立場の方には)メンバー一人ひとりがやってみたいことってそれぞれあると思うので、そういったところを否定せず、ぜひ前向きに応援をしていただきたいなと思います。

また、何かを起こしたいと思っている我々のような担当者の方は、その思いを大事にして、小さなことから取り組んでいってほしいと思います。

松川:多良さんはいかがでしょうか?

多良:今から何かを変えたいと思っている方にはその思いを大事にして、スモールステップですらない「ベイビーステップ」と聞いたんですけど、0.5歩でも0.1歩でもいいから、小さいことから何かやってみる。

できたら「こういうことやりたいんです」という思いをオープンに発信すると、「それいいね」と思ってくれる人が必ず1人は見つかると思うので。その方と一緒に活動を大きくしていったらいいと思います。

何を諦めて、何は諦めないのか

松川:2週間のインターンに参加いただいて、五反田屋さんは「たった2週間だったけど、一部署を経験したぐらいのインパクトがあった」とおっしゃってくれました。多良さんはサイボウズで見たいろんなものがとても新鮮で、「正直うらやましかった、こんな職場で働きたい」と言ってくれたんですけど。

「じゃあサイボウズに転職するの」と言われたら「いや、私はしません」と。パナソニックで一緒に働いてるメンバーが好きだから、「戻って少しずつ変えます」と言ってくれたんですよね。

大きな組織で一つひとつ行動していくのは、すごく勇気がいることだと思います。今年のCybozu Daysのテーマが「DXの勇者たち」に決まった時、私たちチームワーク総研はお二人の一つひとつの行動がまさに勇者ではないかと思って、ぜひ一緒にこのセッションでみなさんにお話ししたいと思いました。そのオファーをお引き受けいただいて今があると思っています。

みなさんは何を感じられたでしょうか。私なりにまとめますと、私たちは変革を求める時、自分以外の人を変えようと思っていろんなことをやりますが、動いてくれないし、変わってくれない。難しい。だから諦めるということになるんだと思うんですね。

他人を変えることはもう諦めていいのかもしれません。ただ「何を諦めて、何は諦めないのか」ですね。お二人は「自分ができるレベルの小さなことは諦めない」と言ってくれた。これは諦めなくていいわけです。

例えばTeamsでも、kintoneでもいいんです。小さなことの積み重ねが、情報共有ができるグループウェアで伝達されていくと、今までよりも速いスピードで仲間が見つかるということだと思うんですよね。

多少の時間はかかるかもしれませんが、大きなうねりになって、共感してくれた人たちが行動を変えてくれるわけですから。組織変革は、一定の時間をかけながらじわじわとやっていくものではないかという気づきを私は得ました。

最後にちょっと宣伝ですが、私たちサイボウズ・チームワーク総研では、こういったインターンを受け入れていますし、企業研修や組織開発プロジェクトなどの並走もやっています。もしご興味がありましたらお問い合わせいただければと思います。

本セッションはこれで終わりになります。最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。多良さん・五反田屋さんもお疲れ様でした。ありがとうございます。

多良、五反田屋:ありがとうございました。

(会場拍手)

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