2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小田桐正治氏(以下、小田桐):さっそく本題に入っていきたいと思います。
まずは呼び水ではないですけれども、これまで「リーダーシップ」の概念について、研究もしっかりと進んできています。ちょっと乱暴なまとめ方で恐縮ですが、大枠の部分で確認していきたいと思います。
まずは紀元前から19世紀。これほど前からリーダーシップは議論がされておりました。最初は国を率いるための政治家ですとか、軍人ですね。いわゆる偉人と呼ばれた人物には、優れたリーダーとして共通する特性があるのではないか。その「特性理論」からスタートをしております。
そして1940~1960年代に入って、第2次世界大戦後。産業が活性化していく中で、企業でリーダーを育成するために、リーダー行動に注目したのが「行動理論」です。
その後1960年代に「状況適合理論」が広がります。これはリーダーが必要とされる行動を実践しても、うまく機能するケースとそうでないケースが見られることに着目し、その要因をリーダーが置かれている状況の違いにあるとした理論です。
そしてさらに進んで、「交換理論」。リーダー個人のリーダーシップは、リーダー個人のものではなくて、リーダーとメンバーの間に交換されるものがあるからこそ生じるのだと捉えられるようになってきました。リーダーとメンバーとの関係性に着目が進んでいます。
そして1980年代に入りますと、アメリカ経済の貿易財政赤字もあり、従来のような決められたことを決められたやり方で行うだけでは、持続的な成長が見込めなくなったということで、「変革」というキーワードが出てきました。変革型のリーダーシップ理論です。
そして今、「VUCA」や「人的資本」といった時代背景の中で、どんなリーダーを育成しなければいけないのかという議論が進んでいます。今日はそのヒントになる議論ができればと思います。
小田桐:では早速ですが、「リーダーに求められるものは何か」について、今日みなさんに3つのキーワードをご用意いただいております。まず最初に有山さんから、ご紹介いただけますか。
有山徹氏(以下、有山):かしこまりました。この3つのキーワードを4分でということで、本当に簡単にさっとお話しさせていただければなと思います。
まず先ほどの「プロティアン・キャリア」でキーワードに出させていただきました。実はこのプロティアン・キャリアで重要視されてるキーコンピテンシーが、「アイデンティティ」と「アダプタビリティ」というものです。
つまり自分らしくありながら、変化に適応する力。これが主体的なキャリア形成には必要ですよというところです。
あと先ほどお伝えさせていただいた「キャリアを関係性で見る」というところになっております。
まさにその3つが重要なポイントですね。キャリア自律は、まず自分自身がリードする「リード・ザ・セルフ」が最初の1歩ですし、そこから周りを巻き込んでいくために、この3つを挙げさせていただきました。
簡単に説明させていただきますと、パーパス、アイデンティティのところで、やはり自己理解であり、今のリーダーでいうと組織のパーパスと自分自身のパーパスを結びつけて、接点を作って。そこで自分自身のモチベーションをしっかりとコントロールしていく。
それから、メンバーのパーパスと組織のパーパスをちゃんと結びつけてあげる。そこをしっかり言語化できる力が必要なんじゃないかなって思っています。
有山:2点目が関係性構築力。先ほどダイバーシティの話もありましたけれども、その多様な価値観を受け入れるところです。その多様な価値観を受け入れつつ、どうやってその方の可能性を広げるか、可能性を広げるための関係性の構築力が重要になってくるって思っています。
3点目はアダプタビリティ。変化適応力とイノベーションの想像力と書かせていただいたんですけれども。
ここはまさに変化の時代ですので、変化に適応するマインドセットですね。過去に執着しない、過去は過去として、未来起点で過去をしっかりと意味付けすることによって、ポジティブに変化を受け入れることができる。
そして新たに学ぶ、挑戦するところが、当然リーダーには必要になってきます。そのマインドセットを持って変化に適応していく力、そしてそこを適切にジャッジする意思決定スキル。そういったところも必要になってくるかと思い、こちらの3点目を置かせていただきました。簡単ですが以上3点を上げさせて頂きました。
小田桐:ありがとうございます。キーワード満載でしたけれども、特に今、「リード・ザ・セルフ」という言葉が私の中に入ってきました。リーダーシップを発揮するにあたって、自分自身を鼓舞するキーワードも出てきました。ありがとうございます。
有山:ありがとうございます。
小田桐:では、続いてジョンさん。お話しいただけますか。
ジョン・リンチ氏(以下、ジョン):ありがとうございます。まずグローバルリーダーとして考えたいと思います。駐在員だと、目標に対して日本人組織のリーダーは、例えば根回しとか稟議とかいろんな方法で意思決定するんですが、海外のニーズを理解するために多様な方々と「事前ディスカッション」することが必要です。
共通の目標を作る時は、みなさんのいろいろなアイデアを聞くのが大事です。その時、企業の戦略と、各海外拠点のニーズに合ってるような国別での戦略を作ることが大事かなと思うんです。
その目標を作った時、締め切りの理由など、本質の理由・利点をみんながきちんとわかるようなスマートな目標を作る。そしてコーチング風にそれを話すのが大事かなと思います。
それから目標を一緒に作る時、さまざまな働き方の価値観がありますので、何度も何度も「なぜそう思っているか」とかを聞く必要があるんですね。企業としてできることとして、アンケート、ワークショップなどのインタラクティブなミーティングがおすすめです。
そういったみなさんのさまざまなキャリアが企業の目標に合うように管理することが、リーダーの仕事なんですね。
もう1つはグローバルチームワークなんですが、みなさんがダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンにちゃんとやる気があるように、「このチームのメンバーになりたいな」と思えるような雰囲気を作るには、心理的安全などを作ったりとか。
あとは、インタラクティブなコミュニケーションが大事かなと思うんです。みなさんの動機付けをうまく理解して、みなさんのやる気が出るようなプランを作る。ちゃんと達成したら賞賛をするようにする。最近外国人社員の離職率が高すぎるんですが、うまくチームワークをして、みなさんがずっと残りたがるようにすればいいかなと思うんです。
ジョン:最後にはポジティブコーチングスタイルで、外国人の部下や同僚のしゃべる量が20パーセントから80パーセントになるような質問でリードする。
何が大事かっていうと、違う文化、違う価値観、違う働き方の方はどう思っているかって、本当に想像しづらいですね。だからコーチング風の(質問を投げかけるコミュニケーションが)一番安全です。
「どういう課題ですか」「どのように解決したいですか」「どういうヘルプが欲しいですか」「それ、いつまでにどのように解決するか」。全部質問で指導するといくつかの利点があります。
1つは、外国人のやる気のあるプランを作ってくれること。やる約束になるんですね。それから全部彼らに任せると、お互いに誤解がない目標による管理ができます。そして360度のリーダーシップサーベイとか、社員満足アンケートとかいろいろやりながらすると、大成功するかと思います。
それが最後のまとめです。よろしくお願いします。
小田桐:ありがとうございます。コーチングスタイルも、具体的な質問でリードしていくという視点ですね。本人が話しているうちに約束もしていくことになり、自律を促せるんだと言及していただきました。ありがとうございます。
小田桐:では、続いて篠田さん、お願いできますでしょうか。
篠田:私からは「セルフアウェアネス」、2番目が「クリティカルシンキング力」。3番目に「聴く力」と、3つ挙げさせていただきました。
まず、セルフアウェアネス、つまり自己理解の力です。これはなぜ大事かというと、まず自分を知ることを通して、人間のダメさとか、指示するとむしろ反発してしまうこととか、わかってくるところがあるわけです。これがまず1点大事かと思います。
セルフアウェアネスが高いことが、自分と周りがつながっていく、あるいは社会とつながっていく第一歩になるんだと思うんですね。
次、2点目にクリティカルシンキング力と書きました。私たちが現在も今後もリーダーとして仕事をしていく状況は、過去の経験とだいぶ違うことが多いんだと思います。初めての状況に直面した時に、過去の経験であるとか、かつて学んだことだけを無意識に使ってチームをリードしようとすると危ないと思うんですね。
なので、クリティカルシンキング力をもっと平たく言うならば、「発想を変える」という姿勢であったり。常に考えを改める、変える気満々の学ぶ姿勢。こういったところも含まれてくるのがクリティカルシンキング力かなと思っています。
最後、3番目。聴く力ですね。先ほど「心理的安全性」というキーワードが出てきていますけれども、あれって実際実践しようと思った時には、リーダーだけでなくそのチームメンバー同士も聴きあっている。実際行動レベルで見ると、そういうことが起きてるんですよね。
「心理的安全にしろ!」って言ってもならないんですけど、「聴こう」って言ったらできるじゃないですか。
リーダーとメンバーでは、通常の組織の構造の中でいくと、リーダーのほうが影響力が強い。なのでまずリーダー自らが、メンバーの話を聴く力を発揮するとことが、結果的に心理的安全性の高い組織につながります。
なんで心理的安全性が高いことが大事かっていうと、心理的安全性が高い組織はパフォーマンスが上がると、もう科学的に証明されているからです。
ということで、以上3点。セルフアウェアネス、クリティカルシンキング力、そして聴く力を私からは出させていただきました。
小田桐:篠田さん、ありがとうございます。クリティカルシンキングの力が、いわゆる「過去の経験を疑っていく力」にも通じているんですね。有山さんのキーワードにも出てきましたけれども、成功体験に捉われない思考にどう変えていくのかは、人事の方も難しさを感じているテーマなのかもしれません。ありがとうございます。
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