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【転職前提のZ世代】『退職広報』で差をつける次世代の新卒採用(全4記事)

あえて「退職者の声」を公開することが、会社を守る“盾”になる 就職希望者と企業のミスマッチも防ぐ「退職広報」のやり方

TalkCampが主催するイベント「『退職広報』で差をつける次世代の新卒採用」に、一般社団法人プロティアン・キャリア協会CGOの栗原和也氏と、退職学®研究家の佐野創太氏が登壇しました。これからの時代の新卒採用のポイントや、退職者を活用した広報など、人事担当者向けのアドバイスを送ります。本記事では、退職者インタビューを採用コンテンツにすることの強みや、学生に選ばれる広報活動のポイントを解説します。

採用ブランディングで大事なのは「供給1」になること

佐野創太氏:ここからは具体論にいきますが、採用ブランディングになる退職者の活用方法。「『採用ブランディング』って何だ?」という感じですよね。この中で、採用広報や採用ブランディングをやっているよという方はいらっしゃいますか? もしいたら、この話はけっこう盛り上がっちゃうんですけれども。

「採用ブランディング」がどんなふうに定義されているのかを調べてみました。みなさまはどんなイメージでしょうか。「採用活動において自社を『ブランド化』する採用戦略」「良いイメージを構築していく」「『働く場』としての自社のブランド力を高める」。

全部それっぽいし、全部正しいと思うんですが、今日集まっていただいている採用を実務でやっている方々からしたら、ちょっと物足りない気がするんですよね。「教科書的な」で留まっているというか。

採用ブランディングをもっと具体的に言うと、「供給1」になることがすごく大事なんです。マーケティングとか、ポジショニングが好きな人はいませんか? 僕は仕事がマーケや新規事業のほうなので、すごくそっち側です。

SEOの考え方で言うと、キーワードを上位表示することがSEOの戦略に見えるんですが、それよりも「自分だけを指名検索されるキーワード」を作った人が勝ちなんです。「YouTuber」と検索されるよりも「ヒカキン」で検索されるほうが勝ち、みたいな感じです。

「ITスタートアップ」と掲げている会社さんがあったとして、「ITスタートアップ」だと紛れちゃうんですが、「株式会社○○」で指名検索されるようになったら勝ちなんですよね。

社風を気にする学生にも、退職広報は効果的

社名で検索してきてくださる方はかなり志望度が高いし、会社のことを調べてきてくれます。僕の中での採用ブランディングとは何かと言うと、「○○と言えば○○株式会社」という「共有1」になることですね。

例えば「カステラと言えばどこですか?」というと、文明堂かな?(笑)。チョコレートと言えば、ロッテ?(笑)。わからないですが、そういうのってあるじゃないですか。

もっといいのがあったわ。「清涼飲料水と言えばポカリ」とか、(採用ブランディングにおいても)第一想起されることをめがけて全部のコンテンツを作る感じです。

じゃあ、なんで退職広報が採用ブランディングになるかと言うと、シンプルに言うと他がまだあまりやってないからなんですよ。退職というと「やっぱり退職は悪い」「定着率を上げなきゃ」となっちゃうんですが、健全な退職もあるんですよね。

そう考えると、退職広報をやっているところはまだぜんぜんないので、ターゲット学生の中で「あの会社だけやたら退職者の声を出してたけど、社風に自信があるのかな?」とか、社風のブランディングになったりすることが退職広報の大きな特徴です。

退職広報をやれば、もしかしたら「あの会社は包み隠さずにすべてを話す会社」というブランディングになるかもしれないんですよね。社風を気にする学生って、けっこう多くないですか?

「とりあえず」「もったいないから」で就活を進める学生たち

じゃあ、退職広報や採用ブランディングをやらなかったらどういうことが起きているかと言うと、こんな感じです。「とりあえずエントリーしておくか」「受かったらとりあえず選考を受けようか」「もったいないから内定も受諾しておくか」という感じで、なあなあで選考が進んでいくんですよ。

今の学生は本当に賢いので、「とりあえず3つくらい内定を取ってから比べようか」と普通に思っている学生はめちゃくちゃ多いです。優秀な学生ほどそういうところがあるのですが、ここに付き合わされる私たち採用担当は、そんなに暇じゃないじゃないですか。

内定してもあまり温度感が高くなかったり、選考途中で「やはり行かないです」と普通にブッチされるとか、採用担当をやっているとそんな苦労があると思います。

そういうことが起きちゃうのは、ブランディングができてない、つまり「供給1」になってないということなんです。「○○と言えばこの会社」とはなってないので、「まあいっかな。また似たような会社はあるっしょ」と思われてしまう。

退職者の声をオープンにすることで、学生に選ばれる企業に

しっかり採用ブランディングできて、退職者の声も集めて、正直に話してくれている会社だと思われると、「すごくいい会社だな」とか、うまくいけば選考に乗る前から「第一志望だわ」となっているので、こっちが魅力づけしなくてもよくて。

学生側がしっかり企業の研究もしてきてくれるし、「最後に質問はありますか?」って聞いたらけっこう食い気味で聞いてくれたりするので、採用ブランディングを一緒にやると(採用担当者が)「今年の学生はいい学生だな」と思っていただけると思います。

内定した時から卒業するまで期間があるので、「アルバイトはないですか?」と言ってくる人も増えたりします。

入社後も「結果を出そう」ってなるし、万が一退職が起きたとしても「アルムナイってないんですか?」「(退職者でも)集まれるところはないんですか?」とか。これもけっこうあるんですが、「お客さんを紹介したいんです」と言って、紹介してくれる元社員の方もいらっしゃったりします。

こういったことができるのが採用ブランディングであり、そのためのツールの1つとして退職広報があります。

退職広報は、マネージャーの負担軽減にもつながる

退職広報に力を入れている企業は、今はほぼない。外資系とリクルートとか、あとは僕が力技で退職広報を入れたぐらいのところなので。みなさんの知り合いで「退職広報をめっちゃやっている」「退職者の声を集めているよ」という人はいますか? あんまりまだ聞かないんじゃないかな。

退職者アンケートを作っている会社はたぶんあると思うんですが、それだと後追いがなかなかできないじゃないですか。

今はまだ、がんばっている採用担当の方や人事の方がSNSでつながり続けて、「あ、こいつ所属先が変わった」とメモしているぐらいです。確かに、退職していくのは寂しいし悲しいんだけれども、これを仕組み化していけると「なんか使えるかも」と思えてくる。

マネージャーの評価で「離職率が低い」「定着率が高い」という企業さまもあると思うんですが、退職広報をすることで「いい退職」と「悪い退職」の指標を作れるようになるんです。

「いい退職だったら、別にとがめる必要はないんじゃないか」というふうになってくると、辞めた後にその元職場が暗くならないんですよ。「『退職』ではなくて、あの人は『卒業』です」と言えるかもしれない。マネージャーの負荷を下げるという意味でも、退職者の活用は大事だったりします。

マネージャーをやっている方やプレイングマネージャーの方って、けっこう大変じゃないですか? 「この社員、辞めそうじゃないかな」と、退職に気を遣うとか。その負荷を下げるという意味でも、退職広報は使えたりします。

社員の前職を調べることで、会社の“強み”がわかる

今日ここへ来てくださった方には具体的にやれることを見つけていってほしいので、今日はTipsを書いてきました。現職の社員の前職とか、前々職の会社って調べていますか? これ、けっこう使えますよ。

社名は出さないほうがいいかもしれないですが、僕が普通に新卒の時に受けていたある大手IT企業は、元社員がいた会社のロゴをめっちゃ出していました。すごくないですか? たぶんあれは怒られるんですが、まだネットがあまり普及してなかったからなのか、普通に出していました。

例えば「リクルートから来ています」「競合から来ています」「大手総合商社から来ています」「外資系から来ています」というのを全部ばーんと出して、「だからうちはすごいんです」と、はっきり言っていましたもの。あの使い方ができちゃうんです。

「いやいや。うちはそんな有名企業出身者ばっかりじゃないよ」と思う方もいらっしゃると思うんですが、その場合は有名というポジションでないならば逆にその会社が業界の中でどんな立ち位置を取れているかを調べていくんです。マーケティングに強い会社だったら、マーケッター集団が集まっている会社と言えるかもしれない。

「いや。ぜんぜんスタートアップとかのキレッキレの会社じゃないんだけど」という会社さんもいらっしゃったんですが、調べてみたら(従業員が)老舗企業から転職者が集まっていたんですね。そしたら、「老舗の100年企業の人たちが集まる堅実な会社」「経営力がある会社」とアピールできるかもしれないですよね。

なので、今の職場の社員の方の前職、前々職を調べてみてください。普通にアンケートをとれば、意外と答えてくれます。

退職者インタビューは、会社を守る“盾”になる

あとは、なるべく退職者の転職先を調べて傾向を出してほしい。ワンキャリアでは、「この会社にいた人が、この会社に行きました」を出すサービス(「ONE CAREER PLUS」)をやっているんですよね。あれ、めちゃくちゃいいですよね。それを自社でもやっちゃうということです。

退職者インタビューを採用コンテンツにすると、会社は変わりますよ。退職者インタビューをやることの守りの効果としては、退職エントリーで変なことを書かれなくなるんです。ネガティブキーワード対策になります。

今って「株式会社○○ 口コミ」「株式会社○○ 評判」「株式会社○○ ブラック企業」とか、絶対に調べられるんですよ。

自社の退職者インタビューで「ブラック企業でしたか?」に答えるコンテンツを作っておくと、「○○株式会社 ブラック企業」で調べた時に、自分たちのコンテンツが検索結果の上に来るんです。こういうところで守る、という感じです。

あと、面白法人カヤックでは会社説明会に退職者が来ます。さすがですね、彼らはやはりおもしろいですよ。変なところで自分たちの会社の変な評判を流されるくらいだったら、「うちへ来い」とやったほうがマネジメントできるので、退職広報にはそんな使い方もあります。

アルムナイを作る会社が増えたので、最初は会社公式にしなくてもいいんですよ。非公式で、元部署が同じだった人からやっていって、辞めた人から「アルムナイを作らん?」という雰囲気を作るのが、たぶんアルムナイの一番の成功パターンだと思います。

退職は「裏切りだ」とか「蓋をするものだ」と考えられてきました。実は採用ブランディングにもなるし、会社のネガティブな評判対策にも使えます。こんな感じで、私の退職広報のパートを終わります。

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