ひとりマーケターが考える、2人目を増やすタイミング

大澤心咲氏(以下、大澤):ちなみにですが、2人目のメンバーを増やすとか、チームメイトを増やして自分がチームのリーダーになってキャリアを歩むパターンもあると思います。人を増やすタイミングは、どういうふうに考えていましたか? 黒澤さんはいかがですか?

黒澤友貴氏(以下、黒澤):人を増やすタイミングは、純粋に人が2倍になるので、目標が2倍以上に置けるタイミングです。まずそことちゃんと連動しているかが重要かなと思います。

そこを達成するためには、だいたいBtoBのマーケティングだとリードを獲得していくところです。顧客獲得のチャネルを作るのは大きな役割だと思うので、「顧客獲得チャネルを太らせていく」「予算を増やしていくことができれば立っていける」というところが見つかっているタイミングで、その専門性が高い人を入れる。

もしくは、例えば今広告で獲得できていて、「オウンドメディアのコンテンツの強化をしていけば、そこはそこで違う優位性を出していける。顧客を獲得していける」という仮説が立っているところで、そこのチャネルをチャレンジして、人を入れる。このどっちかになると思います。

前提の目標のトップラインがちゃんと上がるのかがイメージできているか、狙えているかが軸になります。

自分の兼任を解かずに、先にメンバーを入れたわけ

大澤:なるほど。河村さんも拡大される時、そんな感じの考え方でしたか?

河村和紀氏(以下、河村):そうですね。結局ROI(投資利益率)が合わないと人を入れる意味がないので、おっしゃるとおり、ある程度成功パターンができてからのほうがいいと思っています。僕の場合はちょっと特殊で、人の増やし方でいくと、実は僕の兼務を解かずに先にメンバーを入れたんですよ。

よく専任になる方が多いと思うんですが、僕は営業と営業企画、属に言うマーケティング領域をやりながら、スタッフだけ増やしてもらいました。なぜかというと、理由は先ほど言ったとおり検証したかったのと、言っても僕はユニットリーダーだったんで、僕が完全に離れると営業の売上が落ちるのはわかっていました。

これを落とさずにどうすればいいかと思った時に、上司に伝えたのが「僕よりもジュニアの子が営業から営業企画に異動した時に売上が「100」落ちます。だけど、マーケティング施策をやることで全体の受注率を20パーセント上げます。ということは、営業マンが5人いるとしたら、ジュニアの子が1人営業をやめても、全体のアベレージが20パーセント上がったらトントンかむしろ売上が上がりますよね」

「僕が抜けたらまずいから僕は抜けないけど、ジュニアのこの子をマーケティング業務の専門にさせてください。必ず全員のセールスパーソンのパフォーマンスを20パーセント上げます」ということで、許可してもらいました。

大澤:そうなんですね。河村さんはけっこうしっかり社内交渉して動かしたんですね。

河村:言ったからやらざるを得なかったというのもありますけど、社内交渉しました(笑)。

大澤:そうですよね。異動させたら20パーセント上げると、そこまで数字にコミットしていますもんね。

決裁者と数字で握っておくと理解して動いてもらいやすい

大澤:私も2人目の採用に関しては、「1年で数字を1.5倍に伸ばしたらこのメンバーを私のチームに入れてください」と1年以上前から社長に直談判で交渉し続けていました。実際に数字が伸びたので、そのメンバーを異動させてもらうことに成功した感じでしたね。

なので、決裁者と数字で握っておくと、外からの採用でない場合は理解して動いてもらいやすいかなという感じはします。

河村:今の話だと、大澤さんはバイネームで「この人に来てほしい」と指名されたわけですね。

大澤:そうです。自分の苦手なことが得意な社内メンバーを知っていました。その人が自分のチームにいてくれたらもっとチームが伸びるとわかっていたので、その人は名指しで1年以上前から交渉していました。

ひとりマーケターのキャリアの話を10分くらい話してみました。もしこのテーマでなくても質問などがあれば、視聴者の方はQ&Aから匿名で送れるので、送ってみてください。

じゃあ、もう1回くらい投票をやって、その後Q&Aをお答えしていこうかなと思っています。今、キャリアの話と1番の「パネラーの『ひとりマーケター』時代」の話をやったんですが、2回目の投票をやらせていただくので、もし他に聞きたいテーマがあれば選択していただければと思います。30秒くらい待ちますね。

河村:ちなみに、今日のお申し込みは150人を超えたらしいです。

大澤:そうでしたね。

河村:その150人の人たちが何を聞きたいか。気になりますね!

大澤:そうなんですよ。30秒ほど経ったかと思いますので、ここで締め切りたいと思います。

社内にはその業務に詳しい“隠れマーケター”がいる

大澤:結果を共有すると、5番の「誰に相談したらいいか」が多かったですね。

確かに私もひとりマーケター時代、けっこう悩んでいました。社内の人に相談しようにも、チームの状況を100パーセントの解像度では当然伝えられないですし、上司に相談しようにも、はじめの頃は営業マネージャーの人が私を見てくれている感じだったので、誰に相談しようかなと悩んでいました。

河村さんは、ひとりマーケター時代はどういった方に相談されていましたか?

河村:おすすめは、みなさんが今見ている画面に映っていらっしゃる「黒澤さん」という方が、そのあたり詳しいかと......。

(一同笑)

黒澤:そこでこっちに話を振るんですね(笑)。

大澤:ちなみに、TwitterのDMとか、私にもめっちゃ来ますよ(笑)。

河村:黒澤さんの会社では、専門の教育プログラムなどもありますので、みなさん、黒澤さんに聞いていただくのが一番いいかもしれません。が、司会の大澤さんからご指名いただいたので、僭越ながら僕がお答えします!

社内にマーケターはいないけど、絶対にマーケティング業務はあるんですよね。先ほど黒澤さんがおっしゃったとおり、経企(経営企画)にあるのか、総務にあるのか、営業にあるのか、事務にあるのかわからないんですが、絶対にどっかにあるし、そこの業務をやっている人が絶対にいるんですよ。

だから、「マーケターの人は誰かいないかな?」と考えるよりも、「この業務の詳しい人、社内に誰がいるねん」と考えて、まず社内から情報を集めるのが一番手っ取り早いかなと思っています。

意外と隠れマーケター、隠れキリシタンみたいな人がけっこういるんです。「マーケティング業務比率は100パーセントではないけど、20パーセント持っています。10パーセント持っています」という人はいるので、そこから社内における過去のノウハウや事例をぜんぶ吸収する。SEOならこの人、広告ならこの人、ホニャララならこの人と絶対にいます。

ちなみに、うちわのな話になるけど、弊社はSEOなら青木、広告なら長崎、マーケ全体なら僕の師匠です。あ......師匠の名前を忘れちゃった(笑)。

大澤:師匠の名前をど忘れするんですか(笑)。

河村:忘れました(笑) その人たちに1個1個聞いていって「ぜんぶかき集めたらマーケティングができました」というかたちで僕はやっていましたね。

やりたい施策を提案する時の情報収集の工夫

大澤:なるほど。ちなみに、私は正直ほぼ本でしたね。

世の中にある施策の本をけっこう読んだり、河村さんとか黒澤さんもそうですが、ありがたいことにSNSで情報発信してくれている方がいるので、そういった方のnoteとかをめっちゃ読んで、これいいなと思った施策はメモっておいて、自分でやろうと思ったら何が必要か、何が足りないかをまとめて、上司にも持っていきました。

まず上司に、例えば河村さんの書いた記事を見せるんです。上司に「これいいね。やったほうがいいと思います」「いや、俺はやったほうがいいと思うよ」と言わせたら、よしという感じです。

そう上司に言われてから、こちらが「それをやりたいんですが、これが今足りないんですよ」と言うと、上司はすでにやる気になっているので、「じゃあ、俺はこういうのを協力するよ」「これをこうやってみたらどう?」という話に発展しやすいというのを、けっこう数えきれないくらい1on1でやってきました。

相談相手はやはり本とか、こういうウェビナーに来て情報を集めたり、SNS上の会ったこともない方々から一方的に情報をいただくのが、相談相手というか勉強の機会になっていました。あとはそれをどうやるかのカスタマイズは自分でちょっと工夫して、上司とコミュニケーションを取るのが、私は圧倒的に多かったですね。

社内の人に「こういう施策をやろうと思っているんだよね」と話して、「そんなのうまくいかないと思うよ」と言われたらマジでへこんじゃうタイプなんですよ。例えそれが成果が出そうなことであっても、けっこう影響を受けやすいタイプなので、あんまり社内の人にたくさん相談するよりは、そういう情報収集の仕方をしていました。

施策に詳しい人はいないが、顧客に詳しい人はいる

大澤:黒澤さんだったら、ひとりマーケターで相談相手が社内にいませんという方がいたら、どんなふうにアドバイスされていますか? 

黒澤:これは社内にマーケティングに詳しい人がいないのが前提だと思います。ただ、多くの中小企業にとっては、「施策ベースの詳しい人はいない」というケースがけっこう多いなと思っています。その場合だと、社内で顧客のことを一番理解している人に聞いたり、話をするのが鉄板かなと思っています。

大澤:確かに、それはいいですね。

黒澤:営業で一番成果を出している人だったり、CSで非常に評判がいい顧客対応をする人たちは、だいたい顧客価値をすごく深く考えているので、どうやってその価値を届けていくのか、どうやったら伝わるのか、顧客が動くのかを一緒に話すことで、けっこう解決することは多いんじゃないかなと思います。

そこでコンテンツのヒントが見えてきたりすることはあるので、まずそこからやっていただくのを一番おすすめしています。

大澤:確かにそうですね。私もひとりマーケターだった時から営業のメンバーに「お付き合いが長い関係値のいいお客さんでいいので」とお願いして、顧客ヒアリングは毎月2社とかを2年くらいずっと続けました。

アシスタントに頼んで、それを一言一句書き起こしてもらうんですよ。「えーっと」「ははは」みたいな笑い声も、すべて書き起こしてもらいました。

黒澤:めちゃ大事だと思います。

「相談相手=外部のコンサルタント」という発想に囚われすぎない

大澤:それをあとで読んだ時に気づいたこととかをコメント欄にひたすら入れていくと、施策を思いついたり、「もしかして、うちの会社の良いところはここだったんじゃないか」と新しい強みというか、便益が見つかったりする。確かに相談相手がいないなら、お客さんにヒアリングしまくるというのは、けっこういい方法かもしれないですね。

黒澤:そうですね。底なしに「相談相手=外部のコンサルタント」という発想を持っちゃって、「予算が難しい」「諦めるしかないな」となっちゃうのは、けっこうもったいない。

大澤:もったいないですね。お客さまへのヒアリングは、お金も基本かからないですしね。

黒澤:仮にちょっとお金をかけられて、まずは戦略の壁打ちや方向性を見出したいのであれば、スポットのコンサルや副業の方で、同じ領域で事業会社でマーケティングをやっている方に壁打ちしてもらうとかから始める。それであれば、5万円かからないレベルでできると思います。

ひとりマーケターの場合は、数十万円を払ってコンサルタントを雇うという発想に囚われすぎないほうがいいと思います。自分の仕事はなくなりそうな感じですけどね。

河村:(笑)。でも、僕はひとりマーケターの時、普通にマーケティングトレースしましたよ。

黒澤:マーケティングトレースじゃなくてもいいんですが、全体戦略をまず描いて、その戦略を整理して社内に相談していくとけっこう議論しやすい。

河村:マーケティングというよくわからないものを落とし込むので、社内の理解を得るのにすごくいいと思います。

大澤:確かにそうですね。マーケティングトレースは、そういう活用の仕方もあるんですね。