2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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今井広夏氏(以下、今井):では、Q&Aにまいりたいと思います。事前にいただいたご質問の中から、一部ピックアップしておうかがいしたいと思います。1問目ですね。「フィンランドの中でも、イノベーションの特質や組織化の様子、海外企業とのつながり方などに地域差はありますか?」というご質問をいただいております。いかがでしょうか?
堀内都喜子氏(以下、堀内):はい。すごく良い質問だと思います。フィンランドも、ヘルシンキや周辺のエスポーと呼ばれている土地には、大学もたくさんありますし、企業の本社がたくさんあるので、やはりイノベーションの場所として注目されがちです。でも実は意外に、地方都市にも有名なゲーム会社のスタジオがあったりします。
フィンランドの場合、特徴として産官学の協力が非常にオープンに行われています。企業もすごくオープンですし、大学側もそれに協力して、研究開発をしています。なかなか自社だけで研究開発していくというのは難しいので、大学だったり、周辺企業やスタートアップも含めて取り込んで、輪を作っていくのが非常にうまいんですね。
フィンランドのおもしろい特徴として「北欧のシリコンバレー」と呼ばれたりもします。非常にオープンなところなんです。
閉鎖的ではなく、新しい人たち新しいアイデア、企業、大学をどんどん受け入れますし、それから公的機関もそういったサポートをすごくしていますので、場所に関係なく、今は良いビジネス環境ができているなと感じています。
例えばオウルという、本当にラップランドの入口の街は大学もすばらしいですし、ノキアの研究施設もできていますし、最近では6Gの研究拠点として、非常に日本でも注目されています。
タンペレというフィンランドの真ん中のあたりの街ではAIの開発も行われていますので、本当にそれぞれの地方自治体もがんばっている感じがありますね。大きな差はないです。
今井:地方でも、非常に先進的な取り組みが行われているということで承知いたしました。ありがとうございます。では次の質問にまいりたいと思います。
今井:「生産性はともかく、ウェルビーイング、幸福、自己実現を実現している根本的な要因はどこにあるのでしょうか? 幸福研究が示唆するような健康、婚姻、宗教といったところが大きいのでしょうか? 現代日本を覆う新自由主義と真逆の思考なのでしょうか?」というご質問ですが、こちらはいかがでしょうか?
堀内:フィンランドは宗教的にはプロテスタントのルーテル派ということで、非常にゆるいんですね。幸福に宗教は関係はしていないかなという感じはします。
婚姻に関して言うと、今、婚姻関係を持たないカップルが非常に増えています。フィンランドは半分くらいの人たちが離婚して、共同親権を持って子どもを一緒に育てていくんですけれども、生まれてくる子どもの4割は事実婚の夫婦から生まれてきていると言われています。再婚も多いです。
ライフスタイルもそうですし、人との関係も非常に多様化しています。
健康に関しては、フィンランドはだいぶ公的な資金で医療をまかなっている分、物事が深刻になってからだといろいろお金がもっとかかってきてしまうので、予防支援に非常に力を入れています。その一環として、ウェルビーイングが昔からあるコンセプトなんですね。
最近、日本でもウェルビーイングってすごく言われるようになりましたけど、フィンランドでは昔から考えられていて、学校のウェルビーイング、子どもたちのウェルビーイング、大人のウェルビーイング、会社のウェルビーイング、いろんな言われ方をしています。
長時間働く、それから仕事の環境を整えるっていうだけでなく、一人ひとりの幸福感とかやる気を高めるにはどうしたらいいかということは、非常に考えています。
堀内:フィンランドは自殺率が高いというイメージを持っている方もいらっしゃいます。実際低くはないですし、ヨーロッパでも高いほうではあるんですが、一時期に比べるとだいぶ下がってきました。メンタルヘルスというのを重視して、メンタルケアをたくさんするようになったからです。
幸福感に関して言うと、よくフィンランドでは「自分が主人公として考えられると、幸せにつながりやすい」と言うんですね。
例えば、フィンランドでは選択肢も自分の価値観に合って選んでいくことができる。それが例えば年代とか性別とかにとらわれることなく、自分に、価値観に沿った選択ができるということで、主人公として考えられる。さらに、成長、人間は成長することでやっぱり幸せを感じられると言われています。
そういった意味で、学び直しだったり、いろいろな機会を持っていくことで成長を感じられる。で、フィンランドは冬がものすごく暗くて長いので、ちょっとした青空ですとか、ちょっとしたこと、自然の移り変わりが、またその幸せな気分を与えてくれるということで、こういったことがウェルビーイング、そして、幸せにもつながっていると言われています。ちょっと直接的な答えになっていませんが、はい、以上です。
今井:いろいろと要因はありつつも、やはり一人ひとりを大事にするというような文化があるのかなと思いました。ありがとうございます。
今井:ではまた、次の質問にまいります。働き方、医療機関の働き方についてですね。
「フィンランドの医療機関での働き方はどのような感じなのでしょうか? 医療以外で、24時間対応が必要な職種、警察、消防などの例でもかまいません。一般企業でなく、そういった職種がどのように仕事と休みのバランスを取っているのか知りたいと思っています。教えていただけると幸いです」というご質問ですが、こちらはいかがでしょうか?
堀内:はい。フィンランドの場合は、基本8時間勤務というのは職種に関係なく、すべての人たちに徹底されているところではあるんですね。例えば医師も、医師の勤務時間という、働いている時間というのは実は1日6時間とか7時間とか、週40は切っていますし。
教師においても、もう昼間の2時、3時でだいたい家に帰るという働き方をしています。これはすべての人にとって、やはり長時間勤務というのは体力的にもそうですし、ウェルビーイング的にもそうですし、効率も良くないという考えがあるので、その人たちの権利も守られていますし、あと、組合が非常に強いのでブラックなことはできないというのはあります。
ですので、消防とかも、職種に関係なくっていうところです。例えば医師なんかでも、日本ではあり得ないですけど、自分、お医者さんで、次が自分の患者さんの手術だっていう時に、前の手術がのびてしまったら、「じゃあ、あなたは帰っていいから、次のシフトの人がやるからいいわよ」っていって、帰されたという話もよく聞きますし。
それだけ徹底しているっていうことですね。誰か他の人でできることであれば、とにかくその人の勤務時間というのをきっちり守っていくというのがフィンランド流です。
今井:ありがとうございます。うまく分担したりなどしてやっているというかたちで承知をいたしました。
今井:では、また次にまいります。
「米西海岸のシリコンバレーとのスタートアップエコシステムの違い、主にカルチャー、人材、集客力についておうかがいしたいです」というご質問ですが、いかがでしょうか?
堀内:はい。これはさっきちらっと触れたんですけれども、やはりフィンランドの大きな特徴というのは、すごくオープンにノウハウを語り合って、共有も、情報とノウハウを共有して、そして、新しい人たちが入りやすいということだと思いますね。それは国籍に関係なく。
私自身はちょっとシリコンバレーの経験がないのでなんとも言えないんですけれども、多くのビジネス系の人たちの話を聞いていると、あちらは、どちらかというともっと閉鎖的だったり、とてもコネクションが重要なんですけれども。
フィンランドはもともと狭い世界というのもあるので、1人を知っていくと、次に、次々と紹介してもらえて、で、あまり日本のように、誰かに知り合うために誰かの紹介が必要だとか、間に仲介が必要ということもほとんどなくて、フィンランドはもうダイレクトにどんどんコンタクトを取って、ダイレクトにつながることが可能な国です。
そういう意味では、ネットワークを築きやすいというところがありますし、オープンになんでも助け合い精神が意外にあることで、なんていうのかな、おもしろいんですけど、一緒に国を盛り上げていって、一緒にビジネスを盛り上げていきたいという気が強い人たちですので、そういう意味ですごく、新規の人が入りやすいなというのは思います。
人材も、最近は問わず、本当にいろんなところから募集したいということで、すごく柔軟に動いています。はい。
今井:ありがとうございます。そういったオープンな風土があるということで、承知をいたしました。
今井:いったん、今リアルタイムでいただいているご質問も一部ピックアップしていければと思います。
堀内:はい。
『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』 (ポプラ新書)
今井:「外的要因に左右されにくく、自律を貴ぶ(たっとぶ)働きやすい環境や意識がコロナ前から整えられていたとすれば、コロナ禍による動揺も相対的には小さくて済んだと言えるでしょうか?」というご質問をいただいておりますが、こちらをよろしければおうかがいしてもよろしいでしょうか?
堀内:はい。おっしゃるとおりです。もちろんコロナのストレスというのはフィンランド人も感じてはいますけれども、ウェルビーイングの調査を見ていても、ヨーロッパでデンマークに次いで最も影響が少ない、ウェルビーイングが高い国という結果も出ています。それから、在宅勤務に移行したスピード、それから割合というのはヨーロッパで一番多くなっています。
もちろん業界によっては、古い体質の業界だとか、どうしてもものづくりをやっている会社なんかは今のコロナ禍の状況に合わせていくのは難しかった部分があります。けれども、それでも比較的大きな変化や大きなストレスなく移行できて、反発も少なく、スムーズにいったというのはありますね。
おかげさまで、コロナも感染者も他のヨーロッパに比べると少なく、割合的には(低く)済んでいるというのもあります。
コロナがあって1回規制がゆるくなって、在宅をやめてオフィスに戻ろうってなっても、意外に在宅を続けていきたい人が多いというのもフィンランドの特徴です。
今井:ありがとうございます。けっこう未来を行っているというか、変化に強い文化があるのかなって。
堀内:そうですね。とりあえずやってみようという精神が強いなと、今回、私もはたから見ていて思いましたね。
今井:ありがとうございます。では、また次の質問ですね。「フィンランドはSDGs達成度が世界1位ですが、達成度を高めるために制度的に何か行っていることはあるのでしょうか?」。もしよろしければ、こちらをおうかがいできますでしょうか?
堀内:はい。SDGsなんですけれども、SDGsとして謳ってやっている制度として、外務省が国の目標ということでキャンペーンはしていますけれども、もともと一つひとつの目標が、フィンランド人が目指しているものと合致しているというところがあると思います。
例えばSDGsって、教育だとか男女平等も含まれていますけれども、それはフィンランドが本当に前からやってきていることなんです。気候変動対策に対してもSDGsうんぬんと言われる前から、みんな環境意識が非常に強かった。
グレタ・トゥーンベリさんは隣のスウェーデンの方ですけれども、同じような人たちがフィンランドでもだいぶ前からいました。環境活動家の人もそうです。
2019年の総選挙の時に、やはり大きな注目となったのが気候変動対策だったんですね。ですので、ここ10年くらいは気候変動対策として、サーキュラーエコノミーもそうですけど、消費者として、企業としての責任だとを非常に大きくやっています。
この2019年の総選挙で気候変動対策を各党が訴えて、今の与党が2035年のカーボンニュートラルという目標を掲げたことで、今は省庁や各企業がそれぞれできることを目標として提出して、それに向かって動いています。
もっともっと努力していかないといけない部分はあると指摘されていますが、いちおう目標は達成できるのではないかという見込みです。
今井:SDGsや脱炭素という観点でも、日本にとって参考になるのかなと思いました。ありがとうございます。
今井:では、また続いての質問ですね。
「スタートアップが多いとのことですが、ワーカホリックのような人はいないのでしょうか?」というご質問をいただいております。こちらはいかがでしょうか?
堀内:これは確かに、スタートアップや起業家は24時間、身体は休んでいても頭は動かしていたり、休み関係なく働いていたり、実はフィンランドでも同じではあります。
私の周りの自分のビジネスを抱えている人なんかは、4週間ぶっ続けの夏休みを取ることはできないですけれども、ただ必要なこととして、1〜2週間まとめて取ったり、途中メールは見るけれどもできるだけ休みを大事にするという考えを、誰もが持って働いています。
フィンランド人を見ていて思うのは、オンとオフの切り替えがうまい。オフの時は徹底的にオフですけど、オンになった瞬間からの集中力がすごくて、こなしている量が本当に多いなと思うんですね。
ガッと集中してやって、うまくスイッチを切るところは切っていくというのは、どんな人たちでもやっているなと思います。
今井:ありがとうございます。メリハリをつけることによって、むしろ生産性を上げているという感じなのかなと認識をしました。
堀内:そうですね。
今井:ありがとうございます。
今井:では次の質問ですね。「日本では給料のために残業したいという方も一部いますが、フィンランドにはそのような方はいなく、ウェルビーイングの意味で自分の時間が大事と理解されています。日本でそのような文化を広めるために、大事なことやポイントを教えていただけると幸いです」。
ご講演中にも少し触れられていたかなと思うんですけど、よろしければもう少しおうかがいしてもよろしいでしょうか?
堀内:そうですね。もちろんフィンランドでも、週末とかに仕事をすると200パーセント、250パーセントの給料になってくるので、たまにそれを狙う人とかもいなくはないんですけれども、常にではないんですね。
やはり「休むイコール悪」という考えはなくて、休むことは人間にとっても大事で、その間、まったく生産性が0かというとそうでもなく、勉強する時間もみんな必要だし、家族と過ごすことで、家族との幸せが自分の幸せにもつながってくるし。
仕事だけが人生のすべてではないという意識をみんな共通して持っているなと思っていますから、家族と過ごすことはもう全然無駄な時間でもないですし、逆に、本を読む時間や大学で勉強する時間も、必要な時間です。
たまにはぼーっとして頭をリセットすることも、人間に必要だよねという中で生きているので、あまりお金のためっていうことは考えていないですね。
堀内:あともう1つ、あえて言うならば、これは言ってしまうとアレなんですけど、やはりフィンランドは基本的な生活保障がしっかりしているので、路頭に迷う心配があまりないんです。
教育の費用も大学院まで無料だったり、いざとなったら国が助けてくれるっていう絶大な信頼があるので、もちろん税金は納めないといけないですけれども、お金だけに固執することはしていないですね。
今井:ありがとうございます。国による保障もサポートとしてあるということで承知いたしました。それでは次で最後の質問とさせていただけますと幸いです。
堀内:はい。
今井:「とても魅力的な国、コミュニティだと感じましたが、今、日本にいて、フィンランドのコミュニティにつながりたいと思った場合、どういうアクションを取ればいいですか?」というご質問です。こちらはいかがでしょうか?
堀内:ありがとうございます。そうですね。私たち大使館としては今、フィンランドの発信は、FacebookやTwitterでおこなっているので、そこから収集いただければと思います。
コミュニティに関してはビジネスをされている方でしたら、ジェトロさんなんかも協力して下さって、フィンランドに関するビジネスのスタートアップのピッチですとか、いろいろなところで行われています。
フィンランドの大使館商務部なんかもいろいろなイベントも行っていますので、まず、そういった情報を収集していただければと思います。より具体的なビジネスアイデアがあるようでしたら、商務部にご連絡いただければ一番話が早いのかなと思いますね。
今井:ありがとうございます。お時間が過ぎてしまいましたので、Q&Aは以上とさせていただけますと幸いです。ご回答いただきましてありがとうございました。
堀内:ありがとうございました。
今井:また、参加者の方、最後までご視聴いただきまして、ありがとうございます。よろしければ堀内さま、最後に一言いただいてもよろしいでしょうか?
堀内:みなさん、今日は本当にありがとうございました。オンラインで大勢の方たちに聞いていただいてうれしく思いますし、フィンランドに関して興味を持ち続けていただけたら幸いです。
もちろん、今日は良いことを中心にお話ししましたけれども、抱えている課題で共通することもありますので、みなさんと一緒に地球規模でいろいろ考えていけたらいいのかなと思っています。引き続き、また、よろしくお願いします。
今井:堀内さま、ありがとうございました。セミナーは以上とさせていただけますと幸いです。
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