米国株への偏重はもったいない

ナレーター:投資を始める若い人が増えていますが、米国株を購入する人が多いそうです。藤野さんはどう思われますか?

藤野英人氏(以下、藤野):アメリカ株に投資することに関しては、僕は非常にポジティブな気持ちでいます。若い人たちが日本だけじゃなく世界に目を向けていることは、とても良いことだと思いますね。

多くの若い人たちがアメリカのすばらしい会社や経営者に触れることができたら、「日本ってちょっと遅れているね」「もうちょっと変えなきゃいけないね」ということに気がつくと思うので、日本の改革がもっともっと進むことになりますし、世界で最も大きな市場であるアメリカに目が向くのは当然なことです。

なので、「藤野さんはアメリカ株への投資をどう思いますか?」と聞かれたら、「おお、いいじゃないか、やったらいい!」です。ただ、一方で、アメリカ株だけとか、アメリカ株偏重になるのはちょっともったいない気がします。

アメリカ株に投資をする時に、アメリカに住んでいるアメリカ人と日本に住む日本人だと、当然本国に住んでいる人のほうがより情報を持っていて、より投資をしやすいんですよ。逆に、僕らは日本語をしゃべって、日本の環境にいるから、日本の会社の情報が一番とりやすい。

日本人が一番儲けやすい場所はどこかと言うと、もちろんアメリカ株は全体で成長する可能性がありますし、そこに投資をすることは良いことですが、アメリカを除くと、日本はたぶん一番チャンスがあるところだと僕は思うんですね。

かつ、今は日本にすごく大きな変化が起きています。マザーズやジャスダックといった新興市場が2000年に生まれ、それから20年間かかって、日本に新しい起業家、新しい会社、新しい考え方、新しいビジネスが生まれて、大きく成長しているんです。

日本には、GAFAMのような大きな会社は出てきていないけれど、株価のパフォーマンスという面で見れば、実はGAFAMに負けない会社がたくさん出てきているんです。

インデックスファンドより、アクティブファンドを勧める理由

藤野:さらに、2020年、2021年、2022年の数年間で、若い人を中心に会社を作る、起業するという動きが起き、今も非常に進んでいます。優秀な人は大企業や官庁に行くべきで、起業したりベンチャー企業に行くのはデキの悪いやつだという考え方が、ちょっと前までありました。けれど今、ものすごく優秀で人格もすばらしい人たちが、どんどん会社を作り始めているという事実があります。

実際に官公庁に入る人たちを見ても、昔ほど、いわゆる最優秀校という人たちがそこに行かなくなった。そういう人たちが、今は起業するようになっています。岸田内閣がスタートアップに注力することを言っていますが、おそらくこれらの会社群が大きく成長してくると思います。

じゃあ、そういう会社群が勝ちやすい環境かというと、一方で、日本は大きくて古い会社がたくさんあって、なかなか変化しないし、変化しにくい。また、昔からのしがらみによって、なかなか変えられず、低成長の会社がたくさんあるんですね。これは新しい会社にとっては、とてもチャンスです。

その中で、どう日本株投資をしたらいいかということですが、古くて大きくて変化しない会社はどんどん小さくなっていくわけですから、市場全体を買ってしまうと、その影響を受けてしまうことになります。ですので、個別に「この会社は良いんじゃないか」という会社に投資をするか、そういう会社をピックアップする、アクティブの日本株の投資信託を選ぶといいなと思います。

要は、市場全体を買うインデックスではなく、良い会社をちゃんと選別して投資をするファンドに投資をする、投資信託に投資をするのは1つの方法ではないかということです。

アメリカ株はもちろん良いし、そこに投資することはすばらしいことですが、何に投資をするかを選んだら日本株にも十分チャンスがあり、アメリカ株よりも成長するチャンスがたくさんあるのではないかと思っています。

日本株セミナーで訪日する投資家の増加で生まれるチャンス

ナレーター:藤野さんは、ここ最近の外国人投資家のとある行動からも、日本株に期待を寄せているそうですね。

藤野:1つおもしろいニュースがあるんですよ。外国人投資家の日本入国ラッシュが続いているんです。なぜそれがわかるかと言うと、各証券会社が日本株セミナーというのを外国人向けに開いています。毎年やっていますが、円安ということもあり、今世界の投資家が日本に殺到しているんですよ。それが終わった後に、じゃあ、京都に行こうと。

当然彼らもサラリーマンの人が多いですから、出張申請をする時に、京都に行く名目が何か必要です。京都にはすばらしい会社がたくさんありますから、そういった名目もあって、今、多くの外国人投資家が京都に殺到しているということです。この動きはもっと続きそうなんですよね。

そして、行ってみると、「日本企業、意外と良いじゃん」となる。日本企業をしばらく見ていなかったけど、円安もあって利益も上がりそうだし、かつ技術力もあって新しいテクノロジーへの対応もできているから、「これは日本株投資じゃないか」と思う人が増えるかもしれないんですよね。

そういう面で見ると、日本の企業は今までにない、別の側面のチャンスがあるのではないかと思っています。

特に、円安によるインバウンドの効果は、投資家が来るだけでなく、今まで苦境だった観光産業や日本の流通業、そして消費の会社に莫大なインバウンド需要が生じる可能性があるところも、これからの経済の楽しみなところではないかと思いますね。