2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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斉藤知明氏(以下、斉藤):続いての質問にいかせてください。
「お話ありがとうございました。社員側からの質問になります。自分の軸と会社の軸の合致度は高いほうがハッピーかなとは思うんですけれども、合致度の値はどれぐらい高いほうがいいのか。40パーセントぐらいでもいいものなのか、世古さんのお考えをお聞かせいただければと思います」。
世古詞一氏(以下、世古):なんとなくじゃなくて、そういう自覚ができているのが大事だと思うんですよね。「働く理由として、この会社のこういうところが合っているんです。一方でこういう部分は、私個人としてこう思っていたりもするので」と。
どっちかって言うと、個人の側のそれが見えてるとすると、マネージャーとしてはその変遷を定期的に聞いていく(ことが大切になります)。40パーセント合致しているものが、30、20になってきているのか、50、60になってきているのか、変わらないのか。
この辺りは、モニタリングという意味でも1on1が活用できると思うんですよね。40パーセントがいい・悪いと言うよりは、変化にどう対処していけるかだと思うんです。個人の割合も変わりますし、あるいは会社もやっていることが変わってくるかもしれないし。
そういう時に、「私、シンクロ率が下がってきました」という話があった時に、個人の問題もあるかもしれないけど、会社側がいろんなことを見直す機会にもなるかもしれないので、「『会社の考え方はどうなんだろう』と思う人がちょっと最近増えていますよ」という話を上に持っていってもいいですよね。
まずは自覚することが大事なことだと思います。それを軸に、いろんな対話が生まれていけばいいと思います。
斉藤:そうですね。社員サイドでこれだけ、「40パーセントが賛同できていて60パーセントが難しいです」って言語化されているのであれば、僕は感動しちゃいますね(笑)。「そんなに考えてくれているんだ」という気持ちになります。
世古:すごいです。定量化はいいんですよね。対話って空中戦になりやすいので、定量化することで、そこから議論が整理されたり始まったりしていくんです。40パーセントと言われると、その40パーセントは何なのか、60パーセントは何なのか、たくさんいろんな話ができると思いますね。
斉藤:世古さんの問いかけにもありましたね。「仕事をして充実感を持てている? 100点満点で言うと何点?」。これをすると変化も計測もできますからね。
世古:逆にこのまま問いかけてもいいですよね。上司側から「今、パーパスへの共感率は何パーセント?」「会社とのシンクロ率は今何パーセント?」と。部下からすると「ええ?」となるかもしれませんが、「うーん。最近は30パーセントぐらいですかね。入社したての頃はもう少しあったんですけども」となれば「何が起こったの?」と聞けますから。
斉藤:この間チームメンバーと飲み会をした時に「95パーシンクロしていますよ」って言われて、うれしかったです(笑)。
世古:すごいですね。
斉藤:大きいとうれしいはうれしいですね。
斉藤:続いての問いにいかせてください。「アウトソーシングという業態なので、いわゆるソニーさんのように自社の技術とか内製しているところに比べると、なかなか帰属意識を持ちづらいのかなと思います。そういう会社だとどういう進め方がありますか?」。進め方、パーパスの持ち方なんでしょうか? 世古さん、いかがですか?
世古:どうなんですかね。難しいですよね。他の会社に常駐している感じですよね。だからこそパーパスのようなものがないと、ばらばらになっちゃうと思います。
こういう業態だからこそ、こういうものぐらいでしかつながれないというものが、ひょっとしてあるのかもしれないです。だからいずれにしても、パーパスは非常に重要になると思います。
確かにアウトソーシングの企業さんに話をいろいろしたことも何回かあるんですけど、なかなか1on1のような話す機会が持てていなかったりするので。本部側から常駐先の人のところに行く人がいたり、今はオンラインもあるので、そういったものも使って定期的に1on1をしていく機会を持たれた方が良いと思います。
斉藤:そうですね。僕がぱっと思いついた企業はグッドパッチさんですね。アウトソーシングという形態とはちょっと違うかもしれないですけれども、彼らはもともとデザインエージェンシーをやられていて、代表の土屋尚史さんは創業当初からずっと世間から「デザインエージェントで上場なんて考えられない」と言われ続けていたにも関わらず、それをはねのけて上場した会社なんです。
グッドパッチさんはカルチャーへの投資が強いんです。彼らはミッションに「デザインの力を証明する」を掲げて、「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」という、まさにクリエイティブやテクノロジー、デザインの力が最も世界を前進させると信じているから、「僕らはそこで誰よりも前進させられる存在になるんだ」と掲げているんです。
これは1つの立派なパーパスの持ち方だと思っていますし、そこに共感した人が集まってきているので、素敵だなと思いますね。
世古:そうですね。「何をやる会社なのか」という本質を考えていく必要があると思うんです。そこがないと、いくら進め方とか運用の話があったとしても、本質的なものがないと見透かされてしまいます。社員は見ているので、「こういうことを掲げているけど、会社はやっていることが違うよね」と。
今の斉藤さんのお話だと、掲げたものがストレートに「何をやる会社か」を追求しているわけですよね。だからまずはそこをどう作っていくかなんじゃないかなと思いますね。進め方は、自ずといろんなアイデアが出てくるんじゃないかなと思うんです。
「どういう会社にしていきたいのか」が大事です。技術がなかったとしても、それは別の話かなと思います。
斉藤:その会社が存在している理由を言語化していけば、アウトソーシングであろうと、パーパスも自然と出来上がっていく。
世古:パーパスを作る必要があるんですけど、パーパスができて「そういうものをやりたいんだ」と、本質的にそう本当に思えるのであれば、進め方に関してはいろんなアイデアが自然と出てくるんじゃないかなと思います。
斉藤:ありがとうございます。最後の質問を1つだけいいですか?
世古:はい。
斉藤:今日の議論の根底の質問になるかもしれないんですけれども、「そもそもパーパスの設定が効果的であるケースとそうでないケースがあるんじゃないだろうか」という問い掛けです。
「『もっといい会社にしていくために自分も何かがんばりたい』と思っている人が1割、『もっといい会社にしていきたい思いはあるが、なかなか行動に移せない』が3割、『給料をもらえればいい。面倒なことはしたくない』が6割という会社においても、パーパスの設定だったり、そこを軸にした1on1というのは効果的だと思いますか」という問いですが、いかがでしょう?
世古:そうですね。1割3割の人はもちろん必要なんですが、6割の人に対してどうなのか。逆にこれはなきゃないで1割と3割の人が離れていく可能性があるんです
斉藤:困りますよね(笑)。
世古:だから設定は必要で、そういう人をできれば増やしていくという方向にしていきたいわけですよね。6割の人がいるかもしれないけど、さっきもお伝えしましたが、「期待しすぎないけど諦めない」というスタンスが大事です。「うちはこういう会社なんだから」ということは伝えてください。
世古:人間は変わることがあるんですよね。「いや、人間は変わらないんだ」と言う人もいますけど、その1人の状況はその人のライフイベントで変わったり、いろんな経験が増えていく中で、その会社で働いていて何かやりがいのある瞬間が、1個や2個はなにがしかあるんじゃないかなと思うんですよね。そういうことを通して変わっていく可能性もあるかもしれない。
その人がちょっとまた上の立場になってきたら、そういうことを考えるようになるかもしれない。なので、いずれにしても伝え続けていく、聞き続けていくということは必要なんじゃないかなと思いますよね。
斉藤:ありがとうございます。逆にパーパスがないと1割の人から辞めていってしまうと(笑)。
世古:もっと言うと、6割の人のためにやっているかもしれないんです。踏み絵にもなるというか、「違うのであればご退出ください」と言えるような会社になっていくといいんじゃないかなと思います。
斉藤:だからこそ(パーパスを)軸において、1割3割の人がもっと活き活きと働いてパフォーマンスを出せるような環境を作り、採用に力を入れてその濃度を高めていく。パーパスを軸にして採用に力を入れるのが基本ですね。
世古:そうですね。活き活きと働ける人が増えていって、6割の人の肩身が狭くなってくると、そこでいろいろ考えに変化が生まれるかもしれません。そうなると会社も活性化してきますよね。そういう意味でも、接点がないといけませんね。
斉藤:だからこそ、個人も選んで自分の中で言語化していく。自分の中で「この会社の理念に共感できるだろうか」と見ていかないといけない。社会の流れとして変わっていくのであれば、これは個人側にも求められますね。
世古:そうですね。メンバーが自律的になっていかなければいけないんだと自覚しなければいけません。どの会社へ行っても、結局こういうことがあるわけですから。
斉藤:ありがとうございました。本日は「パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり」と題してお送りしてまいりました。最後に一言、世古さんからお言葉を頂けますでしょうか。
世古:ありがとうございました。今日はパーパスの話ではあったんですけど、「パーパスを大事に」「パーパスの浸透が大切だ」という話は今ちまたにたくさんあるんです。でも「じゃあどうやるの?」という話が本当に少ないんです。
1回研修をやったりワークショップをやったりするんですが、本当は定期的に現場との接点をつなげていかなきゃいけないんです。
メンバーのパーパスへの共感の変遷を追っていく。どういう理解を示しているのか、どう思っているのか。そういう項目をモニタリングという意味でも、1on1の場はすごく有効に機能すると思います。
1on1は別にパーパスだけの話をするわけではまったくないので、あくまで「1on1があることで、こういうことにも活用できますよ」という話です。今どんどん「対話」の機会が減っているので、だからこそこういう1on1の機会を組織の中で作っていただけるといいかなと思います。
斉藤:世古さん、あらためて本日はありがとうございました。
世古:どうもありがとうございました。
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