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パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり(全5記事)

入社直後はやる気があるのに、だんだん仕事がつまらなくなるわけ 依存型から自律型へ組織を変える、「1on1」の9つのテーマ

近年注目を集める「パーパス経営」ですが、企業がどんなに社会的意義のあるパーパスを掲げていても、実際に働くメンバーが共感できなければ実現には至りません。そこで今回のUniposウェビナーでは、「パーパス起点の1on1」を通じて組織を成長させていく方法について、『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』の著者で、株式会社サーバントコーチ代表取締役の世古詞一氏が解説しました。本記事では、自律型人材を育成する上での「パーパス」の重要性と、1on1で対話すべきテーマについて語られました。

社員がパーパスに共感できないことで起こる問題

世古詞一氏(以下、世古):今日は、先ほどみなさんにも出していただきました「社員がパーパスに共感できないことで起こる問題」に絞っていこうと思います。

パーパスがないことで採用が難しいとか、新しい製品が生まれづらいとか、ブランドが毀損されるとか、いろいろあるかもしれません。その中で「社員が」ということで言うと、本当にみなさんがさっき出されたことがすべてだと思います。

やはり働きがいが低下していく。WhyではなくWhatで選ぶようになっているんです。パーパス起点でその会社につながっているのではなく、「業務自体が好きだから」、「なんとなく居心地がいいから」とか、あるいは「報酬が高いから」とか「この人が好きだから」とか、そういうものでつながっているんです。

これ自体は別に悪くはないんですけれども、例えばより報酬の高い会社があったら、すぐその会社に転職しますよね。その業務ができなくなったら他のところに行きますし、いいなと思う人がいなくなったら、他のところに行くかもしれない。「つながり」がどこにあるのか? というところですよね。

あとは社員エンゲージメントの低下。非常に似ていますけれども、やはり会社とのつながりですよね。社員エンゲージメントは、社員が自発的に組織に貢献していこうと思う意欲の部分なので、やはり組織とのつながりが見出せないとなると自発性も低下します。

同じ文脈です。自律性の低下は、自分で何かやっていこうという部分がないので、創造性が低下して、生産性も下がって、やはり離職などにつながります。みなさんのイメージどおりです。

自律型人材を育成する上での「パーパス」の重要性

その中で組織としてどうしていきたいかというと、自律型の人材と、それに紐づいた自律型組織が作れていけるといいですよね。

起点は自律型の人材です。自分でいろいろ考えてやっていく人が、そういうチームを作り、そういう組織になっていきます。パーパスを掲げることで、社員がそうなるといいですよね。

社会的にもVUCA時代で、とにかく正解がない時代です。その中で自律的にいろいろ考えてやっていかないと、正解が見出せない。リモートワークも増えていく中で、自律的でないとなかなか進まないものがあったり、エンゲージメントも育っていかない。

ジョブ型組織の中で、専門性が必要な仕事が非常に増えてきている。いわゆる上意下達で指示を出していたら、なかなか追いつけない。(社員からの)ボトムアップでいろいろ考えながら進めていくことが必要になっています。

キャリアの部分も(会社任せではなく)自分で考えなきゃいけなくなってきている。それぞれの人が自律的になっていかなきゃいけない時に、この「エンゲージメント」とセットじゃないと、自律型の人材はなかなかうまく機能しないんじゃないか、自律型組織にならないんじゃないかと思うわけです。

自分でいろいろ考えて進むんだけど、組織のベクトルとセットじゃないと「良いパフォーマンス」につながらないわけですよね。なのでエンゲージメントを高めるためにも、「どこを目指してやっていくの?」という組織のパーパスがないと、自律型組織にならないんです。

つまり社員の成長として自律型人材を育成する中で、より一層「パーパス」がないと、バラバラになってしまうということです。

優れたリーダーは「Why」から語る

パーパス起点のコミュニケーションというのを考えた時に、この「Why」が(重要になります)。会社・組織のWhyを考えていく時に、サイモン・シネックさんが「TED Talks」で話された、「ゴールデンサークル」という、非常に有名な伝説的スピーチもあります。

『WHYから始めよ!』という本の中でもいろいろ書かれています。優れたリーダーはどうやって行動するのか。優れたリーダーは「Why」から語ることで、しっかり相手に気持ちが通じるんだという話です。「なんで我々は存在しているのか?」から、自社と他社との違いを作っていくということが重要だと言っています。

例えばAppleさんだと、「美しいシンプルなデザインを作っていく(素晴らしいものを作り上げ、世の中に送り出すこと)」。そのためにユーザーインターフェースもすばらしいものにしくというHowが生まれて、iPadやMacといった製品で「What」につながっていくんです。

それをどういうものにしていくのか、あるいはどう届けていくのかがHowです。それは「こういう我々があるから」というWhyがあるから、という話になるんですね。

「Why」「What」と、脳の部位とのつながり

このWhyからWhatへの流れの中で私が言いたいことは、この本の中で「これは脳の部位と非常につながっている」という話をしているんです。

何かというと、この「What」のところが、大脳新皮質という高等な生物の脳にある、考える力や言語化を司る部分(とつながっています)。Why、Howは大脳辺縁系と言われる部分。直感とか、言語にはなかなかできないんだけど感じたりとかする部分になります。

(つまりWhatとWhy・Howは)ロジカルな言語を司る部分と、感情とか思いを司る部分の脳の部位に該当しているというんです。

私たちが業務の話をしている時は言語を通しているので、この新皮質の部分を使って、業務内容や製品・サービスについての方法論の話をしています。逆に感情とか、どう感じているかとか、どういうことを思っているかについての話というのが、なかなかできていないんじゃないかと思います。

こういった部分についての話をしていかないと、この「パーパス」が、それぞれの感覚の中になかなか落ちていかないんじゃないかと思うんです。

組織の中で行われる2つのコミュニケーション

では組織の中でどういう話が行われているのかというと、2つあるのではないかという話をよくしているんです。左側が「短期的な成果・目標・仕事に焦点」と言っています。目標達成をするための業務の話、実務の話ですよね。

右側は「個人の現状や気持ち・成長や将来に焦点」と言っています。例えば、スズキさんという部下の方がいらしたとしたら、そのスズキさんが今どんなことを考えているのか、感じているのか。スズキさん個人に焦点を当てた話です。

この右側の話をする場が、気がついたらどんどんなくなってしまっている。10〜15年前は飲みニケーションみたいなことがありましたが、どんどんそういうものがなくなっています。無駄な残業もしなくなって、いかに効率的に生産性高く目の前の仕事をやっていくかというと、やはり左側のコミュニケーションになってきているんじゃないか。

この情報のやりとりを、「情報交換のコミュニケーション」と私は言っています。仕事の案件に必要な情報をやりとりすることですよね。一方で、こっちは「人間の対話」と言っています。スズキさんがどんなことを考えているのか、感じているのか。スズキさん個人の話です。

「情報交換」は業務の話なので、例えばAというクライアントさんをスズキさんが担当していたとして、上司と話をした時に、上司は何を知りたいかというと、Aというお客さんの情報を知りたいんです。今どういうアプローチをしていて、どういう進捗で、これからどうしていきたいのか。

これはもし​​他の人が担当していたら、上司は他の人と話をしてAというお客さんの情報を知れればいいので、スズキさんは代替可能な存在です。

この時、スズキさんはいわゆる「リソース」なんです。成果を生むためのリソースという存在。もちろん我々はみな、人・物・金・情報という経営資源の「人」というリソースなんですけど、組織の中でそれだけの存在でしかないと、「これは私じゃなくてもいいんじゃないかな?」「私はなんでここでやってんのかな?」「私がやりたいのは何だったんだろうな?」って疑問が出てくるんですね。

自立型人材の育成は、本人が「どう思っているか」を語ることが起点に

これに対して「人間の対話」は、スズキさんじゃなきゃダメな話なんです。スズキさんにとっての意味とか考えとか、「こうしたいんですよね」という思いとか、「モヤモヤするんですよね」って感じていることとか。そういうことを話す場だと思っています。

「依存型と自律型」と言っていますが、「依存型」はいわゆるトップダウンで、上意下達の組織です。上から指示が落ちてきて、言われたことをやる流れになりやすい。ピラミッド組織のコミュニケーションは、基本的にこの構造をしています。

ここで「自律型」と言っているのは、上から言われたことではなく、自分がこう思うんだとか、考えるんだ、感じるんだというのを出していくことです。そうするとそこから新たな意味とか、新たな行動につながっていくんです。

自律型の人を育てていくためには、まず社員側から、「自分の思いを伝えていく」というアプローチが起点になっていきます。ここがないと自律型になりません。

いろんな企業さんで自律型人材の育成とよく言うんですけれども、実際に「自律型人材の育成ってどうやるの?」というのは、なかなか難しくて、まずは「本人がどう思っているのか、どう考えているのか」が起点にないといけません。それを種に、自律性を引き出していくんです。

そこで対話が必要なんですが、忙しい現場では、なかなかそういう話をする時間が取れないので、1on1が必要なんじゃないか、というわけです。

対話で行うのは、業務・組織・個人のつながりのすり合わせ

では、そもそも1on1で何を話せばいいのか。

私がここでよくお伝えしているのが、「マネジメントで必要な対話って何なのか?」ということです。そもそも何を話せばいいのか、上司も部下も認識していないケースが多いんじゃないかと思っています。これは私自身の問題意識としてずっとあって、つまりマネジメントで必要な対話の全体像が定義されていなかったんじゃないかということです。

 そこで、どういう時に社員のがモチベーションが高いのかを考えてみると、多くの人が入社当初の頃が高かったんです。なぜそうだったかというと、仕事(業務)を早く覚えて、個人として成長して、組織に貢献していこうと思っている。この3つの要素がつながっていたのかなと思います。

ところが、だんだん仕事がルーチン化してきて、仕事を覚えていくと、最近仕事(業務)がつまらないとか、個人としても成長の実感がわかない、会社も上司も何を考えているかよくわからない。先ほどの3つの要素が離れがちになっていきます。

これを対話によってつなげていくことが、上司と部下で話すべき「対話」の全体像なんじゃないかと考えています。

この3つの要素をレベルという概念でお伝えして、過去・現在・未来の3つの時間軸で切った9つのテーマについて話をしていくことが、上司と部下で話すべき対話の全体像です。詳しくは『対話型マネジャー』という本に出ているので、よろしかったら見てみてください。

対話ですり合わせる9つのテーマ

お伝えしたいことは、この9つのテーマのボックスを、深くすり合わせていくことです。ボックスと呼んでいるとおり、箱なので立体感があって奥行きがあるんです。

部下側には、内心で思っている、あるいは部下自身も気づいていない「隠れていること」があるので、それをいろいろ掘り出していく。そうすることで、深いレベルでのすり合わせが行われていきます。

もう1つが、各ボックス間をつなげるという考え方です。

これは「パーパス起点」ということでお伝えしたいんですが、例えばパーパスとか、ミッション・ビジョン・バリューとか「理念」とか、そういうものから「組織方針」みたいなものが作られて、組織方針から目標が作られて、業務に落ちていきますよね。

その業務を行っていく中での「業務不安」が起こった時に、(その不安を取り除くべく、)「この業務を行うことで、自分のこういう能力が開発される」とか「こういうスキルがつく」とか、そういう「パーソナリティ」につながったり。あるいは、「この業務は自分の将来にこうつながるんだ」という話がなされることがあるんじゃないかなと思うんです。

「つながり」ですよね。組織のパーパスや理念とのつながりに対応していくことで、間接的なつながりも見えてくるのではないか。逆に対話をしていかないと、つながりが見えてこない(のでずっと不安を抱えたままになってしまう)んじゃないかということです。

多くの企業では、組織レベルの話ができていない

いろんな会社さんで研修をやる中で、「この9つのボックスの中でどこの対話ができていますか、できていませんか」って、チェックシートを使って洗い出すんですが。

よくある形状はこれです。つまり理念・制度・カルチャーとか、組織方針とかの話ができていないという方が多いのです。目先の業務の話とか、その人のライフスタイルの話とか、そういう話はあったりもするんですが、圧倒的に組織レベルの話ができていない。

頻度はそんなに多くなくていいんですけれども、やはり意図的に話していかないと、なかなか難しいんじゃないかなと思います。

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