パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり

斉藤知明氏(以下、斉藤):みなさん、おはようございます。Uniposの斉藤と申します。本日は「パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり」と題してウェビナーをお送りします。

本日のプログラムについて、まず「パーパスと1on1」について、集まっていただいたみなさまと考える時間を取りたいと思います。その後、ゲストの世古さんから、「パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり」と題したプレゼンテーションをいただき、次にディスカッションを行います。

ではさっそく、登壇者の紹介をさせてください。株式会社サーバントコーチ代表取締役、一般社団法人1on1コミュニケーション協会代表理事の世古詞一さんです。世古さん、よろしくお願いします。

世古詞一氏(以下、世古):ありがとうございます。株式会社サーバントコーチ代表の世古詞一です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。企業さまの人事コンサルティング、主にコミュニケーションに関わる部分のお手伝いをしています。

やはり今は1on1ミーティングのテーマが非常に多くて、その導入支援や社員のトレーニングなどを主に行っております。前職はVOYAGE GROUPという会社で、今はCARTA HOLDINGSという名前になっているんですけれども、創業から計8年おりました。

辞めてからも人事アドバイザーとして関わっているんですけれども、その会社が「働きがいのある会社」という調査で、3年連続で1位を取りました。どうやったら社員が働きがいを持てるのかと、私も加わって、いろいろな施策を講じてまいりました。

今日の話にもつながるんですが、やはり「対話の重要性」を非常に大きくクローズアップしていまして、1on1ミーティングもその時から行っておりました。今日はその知見もお伝えできればと思います。よろしくお願いいたします。

斉藤:よろしくお願いします。では簡単に私も自己紹介します。ファシリテートを務めさせていただきます、Unipos株式会社執行役員CPO、プロダクト責任者をしております、斉藤と申します。

在学時に起業したり、前身となる会社に入社後「Unipos」という事業を立ち上げて、子会社化をしたり。私自身が組織作りをした経験、また「Unipos」というサービスを通していろんな企業のみなさまのご支援をした知見から、本日はファシリテートを務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

社員が組織のパーパスに共感できないことで生じる問題は

斉藤:ではさっそく、今日のテーマである「パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり」について、参加者のみなさんと考えていきたいと思います

クエスチョンを2つ用意しております。1つ目が「社員が組織のパーパスや目指すものに共感できない状態だと、どのような問題が発生すると思いますか?」。いかがでしょうか? 今回のテーマについて、参加いただいたみなさんが課題に感じていらっしゃることや想起されることについて、まず伺いたいと思います。

(チャットを見て)「やらされ感が発生する」「自律的に判断できない」「離職率が高い」。

世古:まさに。

斉藤:続々といただいていますね。「受け身の組織なんじゃないか」「貢献意欲が低く、達成感が低下するんじゃないか」「生産性が低くなる」「成長の角度が低い」「働きがいのなさによる離職」「仕事が楽しくない」「バラバラに働いて、効率がむしろ悪くなってしまう」。なるほど。

いかがでしょう? 世古さん、気になるところはありますか?

世古:思ったとおりのことが出てきていますね(笑)。意外なものがないので、逆に変な自信がつくというか(笑)、やはりそういうところなんだよなって、改めて思いました。

斉藤:みなさんの実感値と、世古さんが今まで調べてこられたことが、かなり一致しているんですね。このコメントとかおもしろいですよね。「自浄作用のない組織になること」。自律とも近い話ですが、確かに目的がないと自己修正が効かなくなりますよね。

世古:北極星なんて言い方をしますが、どこを目指しているのかという軸がないと、そこに向けての自浄も起こりません。

斉藤:「トップの声が社員に伝わらない」。なるほど。共感できていない状態なんですね。「実際に自分ごととして捉えていない人が多いというのが実態のように感じています」という声もいただいていますね。まさに、それが現状を表していることかと思います。

最後に「帰属意識が低く、転職を誘発する」というコメントをいただきましたね。ではいかに最初の1on1を通して、パーパス起点の1on1で叶えていくか。詳しく深掘りしていきたいんですが、その前にクエスチョン2にいかせてください。

パーパス起点で起こる「費用対効果で測れない貢献」

斉藤:続いて、逆の質問です。「社員が組織のパーパスに共感できるとしたらば、会社にどのようなメリットをもたらすか?」。会社、チーム、個人、対象はどこでもかまいません。ぜひみなさんにもおうかがいしてみたいです。続々とコメントが来ていますね。

世古:「エンパワーメント」「任せられる会社」。確かに、そういうのを通じて業績が上がったり。

斉藤:自主性の高い仕事、組織の一体感と収益向上、エンゲージメント。「地位向上につながるんだ」って言い切ってくださる方も中にいますね。

イノベーション、業績向上。ジョブ・クラフティング。自律的に働き、アウトプットや質が向上する。ロイヤリティが上がる。費用対効果では測れない貢献が期待できる。目の前の目標だけじゃない、会社全体を見た、会社全体のパーパスを見た行動が生まれるんじゃないか......。

世古:そうそう。最近、「費用対効果で測れない貢献」で問題になることが多いですよ。

斉藤:費用対効果でですか?

世古:それをしても成果につながらないから、評価につながらないからとかいうことで行われない行動がある。そういうところで、「パーパス起点」という視点の重要性があります。

斉藤:共感を引き出して行動が生まれたけど、評価されないというのは悲しい話です。パーパス起点の組織は役に立ちたいという意識が生まれるんじゃないかということですね。

「自走し、最短で走れる組織になる」。「変化の先取り」、良いワードですね。「会社を良くする意見が活発に出てくる」「より良いことをやってくれるようになる」。

世古:すばらしい。

斉藤:このパーパスに共感している状態(が理想的なのですが)、すごく難しいものだとも思います。私たちも、この「パーパス」を掲げてやっていますけれども、言葉が難しかったり、なかなか主語が大きく、壮大なことを言っているなと感じたりすることが、自分自身でも確かにあります。

だからこそ1on1というクローズな場で話していく中で、どうすればパーパスへの共感を引き出せるのか。また、自分自身をパーパスに共感した状態に持ってこれるのか。ぜひ、世古さんにプレゼンテーションしていただければと思います。では、世古さん、よろしくお願いします。

「パーパス・ビジョン・ミッション・バリュー」の違い

世古:ありがとうございます。では、私から25分くらいを目安にお話ししていきたいと思います。よろしくお願いします。

そもそも今日のタイトルになっている「パーパス」とは何か。一般的には目的とか意味とか言われますが、組織の文脈の中で捉える時に、いわゆる「ミッション・ビジョン・バリュー」を掲げている企業さんが多いと思います。それらとの違いをあらためて考えてみたいと思います。

ミッションやビジョンとの違いで言うと、パーパスは「Why」です。何のために存在するのか。我々はなぜ存在しているのか。その企業が存在している意味のことです。

特に「(この会社は)社会的にどういう存在なのか」という、社会の文脈が非常に強い。社会の中でどういう役割で、どういう存在なのか。時間軸も「今」についてです。我々は今もこれからもこういう存在なんだという(今存在する意義について語っています)。

そしてビジョンには「Where」とありますけれども、目指すべきところ、あるべき姿、未来に向けての1つの像を指していると思います。そしてミッションは、パーパスやビジョンのようにあり続けるためには何をしなければいけないの? という、すべきこと、「What」を指していると思っています。

あとバリューと言われるのが、そのミッションを成し遂げるための行動指針や価値観です。「私たちはこういうものを大事にして、こういうことをやっていく」という部分です。

バリューがないと、「こういう世界を作るんだ」と言った時に、手段はなんでもいいことになってしまうわけですね。でもそうじゃなくて、「我々は誠実さを非常に重要にしながら、こういうところに進んでいくんだ」「そこに向かうための重要な手段はこうだ」と規定しているんです。

パーパスが必要とされている背景には「価値観」の変化が

世古:日本の会社では、今までミッションにパーパスを含んでいるものが多くありました。いわゆる「社会的にこういう存在なんだ」ということですね。最近はパーパスだけを作っている企業も出てきているんですけれども、わりとミッションの中に含まれている企業さんも多いです。

なので、今日はパーパスとは言っているんですけれども、ミッションとかも含めて考えてもいいんじゃないかなと思います。

ちなみに最近の例で、ソニーさんが2019年1月にあらためてソニーグループの中で「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスを、存在意義という方向で定義し直されました。パーパス&バリューというかたちで、同時にバリューも出されていましたけれども、このように最近再定義している企業も出てきています。

なぜなのかという背景について、「企業評価の変化」と言っていますが、企業を判断していく投資家 の評価基準が、特にシビアに変化してきています。

いわゆる株主至上主義のような利益だけを追っていく世界観から、持続可能にしていくためにどうしていけばいいんだという。みなさまがよく聞くSDGsやESGへの投資とか、その企業が社会的にどうやって持続可能にしていくのかというところが、非常に重要になってきています。企業として何をしていくべきなのか、どうあるべきなのかが、より見直されたりしているのが1つ。

年収が下がっても、社会的な意義を持つ会社で働きたいと思う人が増加

あとは「消費者・社員の価値観の変化」とありますけれども、消費者のところでも、人種差別に対する抗議運動など、世界的な企業の良くも悪くもある話を聞くと思います。

ナイキさんなどはあえて抗議をしていた人を起用したり。あるいは、グッチさんが2019年に人種差別を表現したようなセーターを出して、不買運動が起こったり。

そういったことに対して、企業の考え方はどうあるべきなのかが問われるフェーズです。それによって、消費者がブランドを支持するかどうか判断していく。このような「企業のあり方」が、非常に力を持つようになったというのが1つです。

消費者と言っているんですが、ミレニアル世代やZ世代などの若い層はそういった価値観を持ち始めています。同時にそういう人たちって、いろんな会社の社員であるわけなんですよね。やはり自分の会社がどういうあり方を持っているのかを非常に気にするようになってきているんです。

2016年にLinkedInさんが、アメリカの3,000人のビジネスパーソンに行った調査で、「社会に対してポジティブなパーパスを発信する企業で働くのであれば、年収が下がってもかまわない」と回答した人が49パーセントを示したんです。

要するに、年収が下がったとしても、社会的な意義の持っている会社で働きたいと言っている人が過半数いるということ。そのうち10パーセントくらいは「20パーセントから100パーセントくらい下がってもいいよ」と言っているんです。

そのくらい意識が変わってきているんです。(社会が豊かになり物が溢れ、)物欲が満たされてきた中で、より「意味」というものが重要になってきている。会社が社会にどのような影響をもたらしているかもそうですし、自分にとっての「意味」。シンプルに言うと、好きかどうかに対して正直になっている人が多いわけです。

「自分が会社を好きかどうか」に正直になってきている

世古:我々の頃はって言ったらあれですけども(笑)、昔はやはり妥協感みたいなものがありましたよね。

斉藤:妥協(笑)。

世古:「これだけ働いているしな」「これだけ給料をもらっているし」とか。いろんな利害関係の中で妥協もあったんですけど、「自分が会社を好きかどうか」に正直になってきて会社も嘘がつけなくなってきている。

「意味」でもっと言うと、この仕事をやる時の「意味」ですよね。「これをやる目的、背景は何ですか? 意味は何ですか?」これがないとやろうと思わない。

もっと言うならば、「私がこの業務をやることで、私にどんな意味があるのか?」「自分の将来にどうつながるか」「自分の成長にどうつながるか」。あるいは、「どういう貢献につながるのか?」とか。

そういうものが腹落ちできないと、自分で進んでどんどんやろうと、自律的に取り組むことがなかなかできない状況なんです。そういう価値観の変化は、みなさんもなんとなく感じていると思います。