男性が感じる職場での「生きづらさ」

敦賀和外氏(以下、敦賀):Lean In Tokyoで活動しております、敦賀です。よろしくお願いします。今回の調査は、今年の夏から2ヶ月弱ほどかけてオンラインでアンケートを行いました。実はLean In Tokyoでは、2019年にも同じようなアンケートを行っており、今回は3年ぶりの調査になりました。

前回も、男性の生きづらさをテーマにアンケートを行っているんですが、今回はそれに加えて、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)に絡めてアンケートを取ったのが新しさになっております。

今回、435人から回答を得ることができました。主な調査内容は、どのような場面で生きづらさを感じているのかと、あとは男性が職場において進められているDE&Iについて、どう感じているかを調査いたしました。Lean In Tokyoとして、なぜ男性の生きづらさを調査するのかと言うと、男性も女性も、性別に紐づく役割の固定観念を取り除くことが必要だと思うからです。

誰しもが自分らしく活躍できる社会の実現に近づけることが、結果的にLean In Tokyoとして支援をしている「女性が一歩踏み出す」ことをサポートできると感じており、国際男性デーに毎年さまざまなテーマでイベントをやったり、アンケートもやっていて、この調査もその一環となっています。

半数を超える男性が「男性への配慮はない」と実感

今回の調査のサマリーですが、男性だからという固定観念により、生きづらさを感じているのがだいたい64パーセント。差はあれど、64パーセントの方がなんらかの生きづらさを感じているという結果になりました。

これはどのような場面でかと言うと、「昇進に対して野心的でなければいけない」というプレッシャーを感じる時や、男性だからといって、「長時間労働や休日出勤を許容しなければならない」風潮が上位にきていました。

そのプレッシャーを感じる要因が、「社会全体の風潮」です。その次に、男性の直属の上司だとか、男性の同僚から、男らしさについていろいろ言われて、そこになんとなく居心地の悪さを感じている人がやはり多いと明らかになりました。

DE&I推進については、半数を超える男性が、男性への配慮がないと回答しています。DE&Iというと、女性に配慮しなきゃいけないとか、もしくはマイノリティの方への配慮をしなければいけないと主に感じていて、男性は、自分たちはその対象になっていないと感じていることが、今回の結果で明らかになっています。

「男らしさ」を求められない職場を望む声

他方で、「男性の多様性も尊重される」ことがその推進の中に含まれているのであれば、もう少し自分たちのモチベーションが上がると回答してくれた方がすごく多かったです。

もしも男らしさを求められないとすれば、「もう少し自分らしいワークスタイル・マネジメントスタイルになる」「私生活を重視した時間の使い方をする」「もっとやりたい仕事に挑戦する」という回答が、非常に多くなっています。

今回の調査は、20代から50代、まんべんなく回答いただいた年齢構成になっております。2019年は若干20代が多かったという結果になっておりました。

生きづらさを感じている割合なんですけれども、今回は60数パーセントで、2019年は実はもう少し多かったんですね。70パーセント以上あったんですけれども、今回は若干下がっています。

これがなぜかと言うと、いくつか要因は考えられるかなと思います。1つは、3年前と比べてコロナ禍もあって、もう少し働き方がフレキシブルになってきていることがあるかもしれません。

また、3年前に比べると、DE&Iや男性育休に関する制度進んできていて、そういう意味では、少し不便さ、居心地の悪さを感じる人は減っているということなのかもしれません。でも依然として高い数値であることには変わりはないかなと思っております。

「社会全体の風潮」からプレッシャーを感じている

年代別に少し見ていくと、またちょっと事情が違います。ここで見られるのは、若い人のほうが頻繁、もしくは、たまに感じる居心地の悪さの割合がすごく高くなっているのが、少し特徴的かなと思います。

20代・30代は頻繁に生きづらさを感じている方の割合が高く、て、年代が上がっていくと、感じてはいても、その程度は少し下がっています。総数としては、30代、50代が非常に多くなっています。

生きづらさの要因も、今回は1位から3位まで年代別に挙げてみました。先ほども簡単に申し上げましたけれども、昇進に対して野心的でなければいけないとか、あとはストレスのかかる業務は男性に割り振られがちであるとか。あとは、長時間勤務はやって当然みたいな風潮が、職場で残っているようです。

あとは、30代・40代は、特にやはり収入が高く安定的な職業を選ばなければいけないというプレッシャーを感じている方が多いですね。子育て世代ということもあって、やはり収入が高くなければならないと、自分でも、周りからも、もしかすると家族からも感じている年代層なのかもしれません。

誰からそのプレッシャーを感じるかについても聞いたんですけれども、それは半数以上が「社会全体の風潮」なんですね。そういうよく実態のわからないようなものからプレッシャーを感じているのは、もしかするとあとでディスカッションの中でも深掘りできるんじゃないかなという気がします。

配偶者や家族ではなく、同じ男性同士からプレッシャーを感じている

その次は、男性の直属の上司から、もしくは男性の同僚から同じようなプレッシャーを感じているという答えが非常に多かったですね。配偶者とか家族からではなく、同じ男性同士からプレッシャーを感じているのが非常に多かった。

このあたりも、今後の対策についてパネリストの方たちと議論していただくとおもしろいんじゃないかなと思っております。

DE&Iの話になりますけども、職場の中で70パーセントは推進されているとお答えいただいております。若干程度の差はあれ、だいたいの職場で今、推進されようとしていることが、今回の調査でもはっきりわかっておりますが、その印象について、ポジティブに考えている方も6割という意味では、高いんだとは思うんですけれども、どちらともいえないという回答も非常に多かったんですね。

自由記述の中にあった答えを少し、ピックアップをしているんですけれど、「あくまで株価対策のために進めていて、社員のことを考えているわけではない」と感じている方だったり、「やはりどこへ行っても女性に特化した取り組みばかり」と感じている方は、「どちらともいえない」と答えていることがあるのかなという印象を持っております。

DE&I推進で置き去りにされている男性社員

先ほどもちょっとサマリーで申し上げましたけれど、男性に配慮があるかについては、「いいえ」と答えている方が5割を超えていました。ここもやはり女性のみを捉えているというように思っている方とか、男性も含めてもらいたいと回答いただいている方が多かったのが、今回の注目すべき点かなと思っております。

本来のDE&Iの対象は、すべての方だとは思っているんですけれども、実態としてはそう感じていないとか、もしくは実態としても、やはり女性の方とか、マイノリティの方への配慮というのは、やはり優先的に行われていて、男性は少し置き去りにされているというか、主たる対象だとは捉えていない組織が多いのかもしれません。

その中で、男性も多様性が尊重されるとどのように考えるかという質問では、やはり、そうなればモチベーションは上がるという回答が多く得られています。自由記述の中にも、今回の調査について非常に前向きに捉えていただいている答えが多かったのは印象的でした。

「男らしさを求められなければ何が変わるか」については、自分らしいワークスタイル・マネジメントスタイルになるということが1番多かったんですけども、あとは、私生活を重視した時間の使い方をするとか、もっとやりたい仕事に挑戦するとかですね。そういう、やはり前向きなことに目を向けられるという回答が非常に多かったです。

年代の差からも考える「男性の働き方の多様性」

他方で、変わらないと思うという答えもけっこう多かったので、このあたりはもしかすると、まだ何が本当に自分にできるのかが読めないとか、あまりそこの必要性が、本当はあるけど感じていないという答えの方が、もしかしたら変わらないと思っていると答えていただいたのかもしれないと思いました。

年代によってもまた違いがあって、若い人たちは私生活を重視したいと思っているけども、40代になると自分らしいワークスタイルを重視しています。ここの年代の差もちょっとおもしろいなと思っております。そういうかたちで、今後のDE&I推進のあたり、男性の働き方の多様性ということに注目をして、これからのDE&Iを考えてみるというのは、1つのポイントかなと思っております。

今日はLean In Tokyoとしては非常に珍しいんですけれども、男性のパネリストの方にご登壇いただいて、その中でこれからのDE&Iについて、今回の調査を受けてどういうふうに考えていけばいいのか、今日の参加者の方も交えて議論いただけるといいんじゃないかと思っております。私からは以上です。

司会者:敦賀さん、ありがとうございました。

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