他のブルーベリー観光農園作りを手伝う理由

大久保幸世氏(以下、大久保):続いてDさんですね。「ブルーベリー農園の中で競合とかち合って苦労したことはありますか」というご質問ですけど、何かありますか?

畔柳茂樹氏(以下、畔柳):あまりないというか、わからないと言ったほうがいいかもしれません。「お客さんを奪われちゃったな」ということはあまり感じないですね。僕はいつも周りに「ブルーベリー観光農園作りのお手伝いなんて、なんでやるんですか」とよく言われるんですけど、それは話が違っているんです。

全体の底上げなんですよね。ブルーベリーはまだほとんどの人にとって「ブルーベリー狩り? あるんですか?」という世界なんです。冬はいちご狩りだと思っている人は多いと思いますけど、夏といえばブルーベリー狩りだよねと認知されるようになったら、まだまだ需要はいっぱい増えると思うんです。

そういう意味ではうちが1ヶ所だけでやっていたらダメで、いくつもできて「あそこに行こう、ここに行こう」とならないと、ブルーベリーがいちご狩りのようなメジャー感はとれないなと思っています。いちご狩りをむしろ超えるくらいの勢いでいきたいんです。

大久保:例えばD社さんのように、いわゆるマーケットを独占するようなビジネスとか、メーカーとかネット菜園では競合を気にすることがありますが、どちらかというと業界全体でがんばらないといけないところがおもしろいですよね。

畔柳:まだまだ本当にマイナーな位置づけでしかないので、認知度を上げていかないといけないんですよね。シャインマスカットとはレベルがぜんぜん違いますから。

就農資金は無利子で借入可能

大久保:あとEさんから「最初の資金は銀行融資を使ったほうがいいんですか?」という質問が来ていますけど、いかがですか。

畔柳:もちろん使えるなら使っていただいたほうがいいです。農業はありがたいことにお金を借りるのが無利子だったりするんですよね。

大久保:えっ、無利子なんですか。マジですか(笑)。

畔柳:僕は借りる必要がなかったんですけど、今はちょっとだけ借りています。だって「無利子だから借りてください」という感じだから(笑)。

大久保:それなら確かに借りたほうがいいですね。

畔柳:「借りてください」という感じだったのでちょっとだけ借りましたけど、無利子ですよ(笑)。中には5年くらい返さなくていいという融資もあります。

大久保:とんでもないですね(笑)。

畔柳:条件次第ですけどね。経営が軌道に乗った5年後から返済してください、というものです。こんなに国がサポートしている業種はないですよね。だから先ほど「参入障壁があるんじゃないの」と言われた方に対しては「いや、活用してくださいよ。中に入っちゃえばすごく楽ですよ」という思いです。

大久保:それは公庫とか保証協会ですか。

畔柳:日本政策金融公庫の農業部門に行くといっぱいあります。なるべく若い人じゃないとダメ、などの条件はいろいろありますけどね。

大久保:創業融資はわりと優遇されているものの、無利子はなかなか聞かないです。あと農家が今減っていますからね。とにかく呼び込もうということなんでしょうね。

畔柳:そうですね。さっき日本政策金融公庫の方が僕のところに来て「最近ブルーベリー観光農園の融資相談が多いんですけど、なぜですか」と聞きに来ました(笑)。日本全国でいっぱいできているみたいですね。

大久保:その大元に「なぜですか」と来たんですね(笑)。

農園を経営する上で大事にしていること

大久保:あとFさんから「農園を経営する上で現在も大事にされていることは何ですか」というご質問をいただいてますけど、これはいかがですか。

畔柳:それは起業する目的というか、何のためにやっているのか、なぜやっているのかというところです。常にそこからぶれないことが大事かなと思っています。とかく売上に走りがちなんですけど(笑)、そこはなるべく自分を戒めて、設立の起源に忠実にありたいなと思っていますね。

大久保:なるほど。ちなみに畔柳さん、もしかして次にブルーベリーとシナジーが効きそうなことを始めるんですか。

畔柳:もう2~3年前から構想はあります。たぶん日本にはない、体験を売り込んだちょっと変わった飲食店のようなものをやろうとしています。ここでは省略しますけど、話すとすべての人が「それ絶対イケるよね」と言ってくれます。ただコロナになってしまったので、いつやろうかなという感じになっています(笑)。

大久保:じゃあブルーベリーで集客はできていて、ベースがあるから何かを足さなくていいわけですね。

畔柳:そうですね。本当に夏の3ヶ月しかやっていないので、年間でできるようなものがあるといいなとは思っています。

大久保:ちなみに3ヶ月間開いて、残り9ヶ月は何をやっているんですか? こういうトークイベントをしているんですか(笑)。

畔柳:本当にトークイベントをしていたり、今は集客にすごく力を入れているのでブログを毎日書いているし、SNSをやったりホームページを直しています。そうだ、今はセミナーをやっています。たくさん受けてくださる方がいるので、その動画を作ったり、意外にやることはいっぱいあるんです(笑)。農作業は常駐のスタッフが2人できたので、もう今までの3分の1ぐらいしかやらなくなりましたけどね。

大久保:畔柳さんのインスタを見たことがあるんですけど、写真がめちゃくちゃ貼られていますよね。SNSは一通りやっていますか。

畔柳:最近は動画のほうが圧倒的にみなさんにヒットするので、我々も撮っています。

就農時にかかる投資費用

大久保:Gさんからのご質問です。去年から関東と熊本で、米や野菜農業をやろうといろいろ動いているということです。「1人でやるには限界なので、このような農業セミナーに参加するなりコミュニティに参加して、情報収集したほうがいいでしょうか」ということで、何かおすすめの情報源とか場所を教えてください、というご質問でした。

畔柳:どうですかね……僕は自分のところ以外はあまり詳しくないんですけども。僕は自分を農業界のリーダー的な存在だとは思いませんが、そういうリーダー的な存在の方は何人もいらっしゃいますよね。例えば知り合いだと北海道の寺坂農園さん。

そういう方が何人かいらっしゃるので、そこでセミナーがあれば参加されたらいいだろうし。オンラインサロンもちゃんと調べたことはないですけど、農業系のものがあれば入ってみるのもいいんじゃないかなと思います。

大久保:やる作物次第なところですかね、ブルーベリーだと畔柳さんのところだし。さらにご質問で、これはみなさんたぶん聞きたいと思うんですけど「最低限の投資費用」……これはさっきの土地の広さ次第かなという気もしますが、どれくらいかかるんですか?

畔柳:本当にこれはどのくらい本格的にやるかに関わってくるので、副業でちょろっとやるのか、「これで生きていくんだ」という意気込みでやるのかでぜんぜん違います。僕の規模で言いますと、7,800平米くらいで、畑は5,000平米くらいなんですけど、1,300~1,400本ぐらいです。

投資は栽培で1,300万円くらいで、附帯施設で休憩施設とか駐車場を作って1,000万円くらいかかって、合計2,300万円くらいがスタートでした。

大久保:なるほど。それは売上からすると何割くらいなんですか。

畔柳:僕の計算上は、というか実績としてもそうなんですけど、投資回収は6年目でできました。投資回収してプラマイゼロになったのは6年目ですね。

驚くほど安い農地の価格

大久保:土地は買ったんですよね。それが6年で丸々手に入ったのはデカいですよね。あ、借りたんでしたっけ。

畔柳:土地は親から相続したものです。

大久保:それはアドバンテージですね、なるほど。

畔柳:ただ農地は死ぬほど安いですからね。大久保さん、農地の値段を知っていますか? 

大久保:いや、わからないです。Bさんは知りたそうですね。

畔柳:この前出張していろいろ聞いたんですけど、街でなければ1,000平米いくらだと思いますか?

大久保:1,000平米、いくらなんですかね……。

畔柳:1,000平米は広いですよ。それが本当に10万円くらいですから(笑)。

大久保:えー、マジですか(笑)。

畔柳:ちょっと街に近かったら30万円くらい。農地の場合は土地を買うのとぜんぜん違いますから、そこがコスト負担増になることは絶対ないです。それで諦めることはないです。そのくらい農業は優遇されているということですよね。要するに固定資産税がかからないように安くしてるんです。

大久保:それは不動産屋に行ったら買えるものなのか、農家に交渉しにいくのか、どうなんですか?

畔柳:不動産関係はよくわからないんですが、最近関東の方に聞いたら「けっこうネットで出回っていて、そこから買いました」という人が2~3人いましたね。たぶん何か条件があって、単純にお金を払えば買えますということではないと思うんですけど、最近は流通しているみたいです。ネットでいっぱい探せますね。農地ナビなどでいっぱい出てきます。

大久保:なるほど、ありがとうございます。

好きなことを仕事にするのが一番幸せ

大久保:あとこれもAさんから、「クマが出ないんですか」というご質問です。害獣とかクマは出ないんですかということですが、招かれざる客ですね。

畔柳:うちはイノシシだけですが、イノシシはブルーベリーを食べないので大丈夫です。クマは聞いたことないんですけど、サルとかシカが出るような所はけっこうあるみたいです。そういうところは電気柵で囲っていますね。クマはちょっと聞いたことがないです(笑)。

大久保:名古屋付近だと出ないということですね。わかりました。またBさんから、「ブルーベリーは傾斜地でも作れますか」ということです。斜めの所ですね。

畔柳:作れます……が、のちのち作業性がめちゃくちゃ悪くなります。よく過疎地で傾斜地にブルーベリーを植えているところがあるんですけど、お年寄りばっかりなので傾斜地がつらくてしょうがなくて、もう作業できないと言っていますよね。そのへんはよく考えたほうがいいかなと思いますね。

大久保:土地が安いですからね、条件のいい所を買ったほうがいいですもんね。なるほど、ありがとうございます。

Q&Aはだいぶ拾えたかなと思います。では畔柳さん、最後にまとめで、ブルーベリーをやりたいですとか、もしくはさっきの自分が好きなことができなくて迷っているような方にメッセージをお願いします。

畔柳:僕は最初からずっと言っているように、好きなことを仕事にするのが、一番幸せだと思っているんですね。ですから農業にあんまり関心がなかったら、別にブルーベリー観光農園なんてやらなくていいんですよ。それぞれ好きな道に進んでいただければいいと思います。

ただ自然の中で働きたいとか、農業に関心があるのであれば、有力な候補だと僕は思います。資本はそんなにかからないですし、面積もめちゃくちゃ広くないとダメということもないです。関心があれば、ぜひ前向きに考えてください。

大久保:ありがとうございます。そこそこ稼げて3ヶ月働いて、ほかの時間でほかのことをやってもいいですもんね。

畔柳:家族と一緒の時間を過ごせます(笑)。

大久保:なるほど、ありがとうございます。畔柳さんにあらためてお礼申し上げたいと思います。