2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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司会者:お待たせいたしました。SESSION C「組織をつなぐ人事だからこそ持っておきたい『経営的思考』」を始めます。ご登壇いただくのは、AnyMind Japan株式会社CHRO 水谷健彦さんと、株式会社ディー・エヌ・エーヒューマンリソース本部本部長 菅原啓太さんです。それでは水谷さん、よろしくお願いいたします。
水谷健彦氏(以下、水谷):菅原さん、よろしくお願いします。
菅原啓太氏(以下、菅原):よろしくお願いします。
水谷:視聴いただいているみなさんもありがとうございます。お忙しい中時間を使ってご覧いただいていますので、聞いてよかったなという時間を届けられるように、私と菅原さんでがんばります。よろしくお願いいたします。
まず最初に、我々の自己紹介をさせていただければと思います。まず僕のほうからいきたいと思いますが、1973年生まれで今49歳です。
キャリアは若い時、リクルートやリンクアンドモチベーションといった、人材系の会社で働いていました。1997年なので25歳からですね。今は「株式会社リクルート」なんですけど、当時は「リクルート人材センター」と言って、人材紹介業をやっていました。
今でこそ人材紹介業って、採用手法としてはメジャーじゃないですか。でも今から25年前だと、当時は怪しさ満点だったんですよ(笑)。
菅原:そうなんですね。どう怪しかったんですか?
水谷:まず当時の採用手法は、リクルートの商品でいうと『B-ing』でした。『B-ing』という求人誌がコンビニにたくさん売っていて。
菅原:売っていましたね。
水谷:転職希望者は雑誌を買って応募する時代です。人材紹介は企業さんに対して「人材紹介というモデルがありまして、なんと最初にお金かかりません」というところから始まるわけですよ。それが怪しいんです。
菅原:ああ。「タダより怖いものはない」的なやつですよね。
水谷:そうです。会社の情報だけ聞かれて......みたいな。転職希望者に対しては、キャリア面談をして「いいところを紹介しますよ」という話になるんですけど、やはり『B-ing』のような雑誌を見て自分で応募するのがメインの世の中ですし、当時の新卒採用もそうでしたよね。『リクルートブック』が家に届いて。
菅原:そうですよね。あのハガキがいっぱい付いている分厚い本ですよね。
水谷:そうそう。その時代なので、ものすごく怪しかったんです。ただビジネスモデルをちゃんと説明して、『B-ing』だとどうしても取れない層や取れない企業に活用いただいていたのが25年前でした。
今でこそメジャーな手法になりましたが、僕自身はいい経験だったなと思います。僕は2001年までしかリクルートにいなかったので、あとから見ていたんですが、採用のメインストリームの手法が変わっていくのはとてもおもしろかったです。
水谷:そのあと2001年にリンクアンドモチベーションに入りました。人事系の方だとご存じの方が多い会社かなと思いますが、リンクアンドモチベーションは2000年に創業で、僕が2001年に入って、当時社員数は20名くらいでした。
菅原:創業間もなくの黎明期からということですね。
水谷:そうですね。2012年に退任しているんですが、社員数としては1,200名くらいまでになったんですよね。
菅原:おお。
水谷:すごく楽しかったですし、自分のキャリアにとってもとても大事な柱になるような経験でした。リンクアンドモチベーションにメンバークラスで入って、マネージャーになって、事業部長になって、取締役になってという経験をさせてもらったんですが、その時の経験で今のいろんな仕事をしているなと思いますね。人材育成とかモチベーションを軸に、組織の風土を変えていくような仕事をしていました。
ここまでが過去の仕事で、スライドの下にさらに5行あるんですけど、今すベて平行してやっています。2013年に設立したJAMが自分自身がオーナーの会社で、ベンチャーや成長企業に組織コンサルティングや管理職育成を提供する会社です。
水谷:今日の本題は青字になっている2021年。去年からAnyMind JapanのCHROと、AnyMind Group、HR全体のマネージングディレクター(Managing Director)という役割で(今日のこの場に)来ています。
AnyMind の会社紹介もさせていただいたほうがいいかなと思っておりまして、2016年にシンガポールで、日本人の十河宏輔という者が設立した会社です。なので日本じゃなくシンガポールから始まっています。
ビジネスとしてはデジタルマーケティングから始まっているんですけど、シンガポールのあとにすぐタイに支社を出して、そのあとインドネシアに出してという順番で、日本は実は7番目の進出なんですね。
今はもう本社は日本に移していますので、日本の会社に見えるんですけど。六本木ヒルズにオフィスを構えていて、(日本本社のメンバーは)350人くらいなんですけれども、実はさっき言ったように東南アジア中心に、タイやインドネシアなど13カ国・地域にも進出しまして、社員数はグループ全部で1,300人くらいになっていますね。
例えばタイには200人くらいいるんですけど、日本人がいるんじゃなくて、ほとんどタイ人なんですね。
菅原:現地のメンバーで。
水谷:現地の方々ですね。インドネシアも、インドもそうです。めちゃめちゃ多国籍な会社ですね。
デジタルマーケティングから始まったんですが、今の主業になっているのはインフルエンサーマーケティングや、D2C関連の事業。あとはパブリッシャーグロースという表現で、Webメディアやアプリの収益化、マネタイズの支援。これが3つの柱かなと思っています。みなさんよろしくお願いいたします。
水谷:では菅原さんもぜひ自己紹介をお願いします。
菅原:みなさん、今日はよろしくお願いします。ディー・エヌ・エーから来ました菅原と申します。私は1980年生まれで、今日は先輩である水谷さんを見習っていきたいなと思っています。
最初は30人ぐらいの小さいITベンチャーのエンジニアとしてキャリアをスタートしまして、2009年にディー・エヌ・エーにもエンジニアとして入社をしました。
そこから3年くらいエンジニアとしてやっていて、Mobageというゲームプラットフォームの事業責任者とか、あとは新規事業の立ち上げなどにもチャレンジをして、2015年からだいたい7年くらい人事をやってきております。
人事としては、ゲーム事業のHRBPをずっとやっていまして、そのあと2020年から、今3年目になりますけども、全社全体の人事責任者というかたちで、ディー・エヌ・エー全体を見ています。
「ディー・エヌ・エーって何の会社?」と聞くと、よく「ゲーム」とか「野球」が出てくるんですが、実はそれ以外にもヘルスケア事業、メディカル事業。あとはPococha(ポコチャ)を代表するライブストリーミング事業とか、多角的な事業展開をやっています。
そういう意味では人材もさまざまな人がいて、ゲームクリエーターもいれば、元プロ野球選手もいれば、製薬企業の出身の方もいるということで、多様なバックグラウンドを持った人間がわちゃわちゃといます。
みんなでいろんな事業をやっている。そういう会社の中で人事全体を見るという、なかなか刺激的な日々を送っています。今日はよろしくお願いします。
水谷:よろしくお願いします。菅原さんのキャリアで質問なんですけど、ディー・エヌ・エーさんに入社した時はエンジニアなわけじゃないですか。2015年から人事領域なんですけど、どういう流れでそうなったんですか?
菅原:ちょうど2012年の頃は、ディー・エヌ・エーが海外戦略をかなり強く押してた時期でして。「ゲームで海外に打って出るぞ」という時に、エンジニアの知識が必要な領域があって、「あいついいんじゃないか、こっち来い」ということで呼ばれたんです。
それでアメリカに行ったり中国に行ったりとかしていたんですけど、一通りそのプロジェクトが終わって日本に戻ったら、GitHubのアカウントがなくなっていたんですよ。
水谷:(笑)。なるほど。大事ですね、そのアカウント。
菅原:「これ、エンジニアできないな」と。どうしようかなと思っていたら、「海外での経験を活かして今度はMobageを見てくれ」ということだったので、じゃあしょうがないなということで、自然とエンジニアじゃなくなっていったんです(笑)
水谷:だいぶ仕込まれましたね。GitHubのアカウントをなくして、ポジションチェンジを促そうというやつですね。
菅原:(笑)。ただ、別にエンジニアも人事もあくまでも役割であって、目的としてはディー・エヌ・エーの(ミッションである)「Delight」を作ることです。
いろんな役割が必要な中で、自分のできることをやっていこうと。その中で今、人事にはまっているというかたちなのかなと思って、そこに拘りなく、目的に資する動きができているからいいのかなと、前向きになってやってきています。
水谷:なるほど。ご自身の希望で人事領域にというよりは、組織からの要請で人事領域に就いたということだと思うんですよね。
菅原:そうですね。
水谷:それから7年経験されて、今、人事の仕事に対してはどんな気持ちなんですか? 超おもしろいと思っているのか。
菅原:非常にやりがいがありますね。たぶん向いているんだと思うんです。
特にやりがいがあるのが、ディー・エヌ・エーって何か設備があってモノを作っていくというよりは、いろんな事業をやっていろんな価値を生んでいるんです。その源泉って「人」なんですよ。
水谷:そうですよね。
菅原:そこにアプローチできている。そこをしっかり支えることができているという、会社の根幹になるところをやっているので、その意味で非常にやりがいがある。
あと今までエンジニアをやってきたし、1社目の時は人も少なかったのでデザイナーとかもやっていたんですけど、そういう経験も活かして、例えばエンジニアの採用もするし、デザイナーも採用するし。
水谷:めちゃめちゃ活きますよね。
菅原:経験としては事業もやってきているんでそういうのもやっているし、器用貧乏なんでしょうけど、いろいろチョイチョイかい摘みながらやってきた経験が活かせているという意味で、向いているのかなと自分では思っています。
水谷:すばらしいですね。まさしくキャリアの作り方で言うと、リバーピープル(目標を決めずに、流れに任せながらキャリアを形成していく人)のど真ん中のようで、いいところにたどり着いていらっしゃる感じですね。
菅原:そうですね。このままいい感じで流れていければいいんですけどね(笑)。
水谷:(笑)。ありがとうございます。
水谷:では本題のほうに入って行こうと思います。今日は「組織をつなぐ人事だからこそ持っておきたい『経営的思考』」というお題です。経営的思考については「それって何ぞや」という話を軽くしてからいきたいんですよね。
「経営的な思考」って、逆に言うと「現場的な思考」の話(との違いから考えるとわかりやすい)と思うんです。その違いは、僕は視野の広さ、もしくは視界の高さなんじゃないかなと思っています。
その観点から言うと、人事の方々がわりと陥ってしまう罠が、「流行りのものに飛びついてしまう」。もしくは飛びつきたくないんだけど、例えば社長やボスから「これいいじゃん。取り入れようよ」と言われて、やらざるを得ない。視界が狭い中で動いてしまうと、僕はHRとしては良くないんじゃないかと思っています。
例えば、3年くらい前に「ティール型組織」という考え方がかなり流行りましたけど、あれはフィットする会社にはめちゃめちゃいいと思いますが、フィットしない会社にとっては、もう本当にダメになっていっちゃうものだと思うんですよね。
今で言うと「人的資本経営」と言われていて、今日もそのテーマなんですけど、これも「自社に合うものは取り入れるべきだし、合わないものは取り入れないべき」というものだと思うんですよ。このへんの感覚を持つべきだなと思っているんですけど、どう思われますか?
菅原:おっしゃるとおりだと思います。合うものを取り入れる、合わないものは取り入れない。その取捨選択する時の軸を何で決めるかと言った時に、その軸を持っている人事って強いと思うんですよね。
水谷:そうですよね。
菅原:その軸が「経営的観点」なのかなと思っています。
菅原:じゃあ「経営的観点」って何かというと、自社の目指すミッション・ビジョンみたいな話とか、自社の目指すもの、経営の方向性、経営戦略だったりすると思うんですけど。
それらと照らした時に、「これってうちにフィットするんだっけ、どうなんだっけ」と考えられるように、人事が経営者視点を理解しないといけないんだと思うんです。
水谷:そうじゃないと、いわゆる“ごった煮”になりますよね。
菅原:そうなんです。流行りのものに飛びついていくと、合うものも合わないものも全部になっちゃうんで、結局何がしたいのかわからない状態になっちゃうと思うんですよね。
水谷:なので今日は「経営的思考」という観点で、いろんな組織がありますが、例えばこの組織はこうじゃんとか、ディー・エヌ・エーさんはこうですねみたいな具体的な話を通じて、人事が持つべき経営的思考ってこうなんだなということを、理解していただければ思います。
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