データ利用規制後のデジタルマーケティングの行く先

荒木裕次氏:アカウントマネジメント第2Unitの荒木がお送りいたします。よろしくお願いいたします。みなさんも、ちょっとずつ環境が変わってきたと思われているかもしれませんが、2022年4月1日に日本でも個人情報保護法改正が施行されました。

これにより、諸外国で行われているデータ利用規制の流れが日本にもやってきて、正式に行われはじめたという状況になっています。ですので、データ1つとっても、これまで以上に取り扱いが難しくなっている中で、どうやってデジタルマーケティングをやっていこうかと悩まれているお客さまも、いっぱいいらっしゃるかなと思います。

今日は、弊社が提供できるデジタルマーケティングのソリューションについて簡単にご説明します。最終的に「CCCグループのデータって、こういうふうに活用すればいいんだ」と思ってもらえるように、なるべくオムライスじゃない、包み隠さないかたちで話せればなと思っております。……現場では失笑なんですが、こんな感じでがんばって進めていきますので、よろしくお願いします。

約4,000万人のユーザーデータを活かして、ネットメディア領域に進出

まず最初に、デジタル広告に関わる弊社のデータについてです。約7,000万人のT会員には、4,000万人ほどのネット連携者がいます。配信できる母数はこの約4,000万人が基準になりますので、かなりの母数に向けて配信できるとご認識いただけたらなと思います。

肝心かなめのデモグラ(デモグラフィック属性:顧客データ分析の切り口の1つで、年齢、性別、居住地、家族構成、職業など)や、情報の粒度はどうかというと、だいたい男女比半々ぐらいで、各年代別の構成比でもほぼすべての年代を網羅しています。どのターゲット層、どの年代にもアプローチ可能かなと思っております。

T会員のみなさまはかなり高い頻度で利用されており、ウィークリーベース、マンスリーベースでも、かなりの人数の方が使われております。ですので、さまざまなデータが蓄積されている状況です。そのデータ自体も、アライアンスを組んでいる多種多様な業種の企業さまで活用いただいています。

それらのデータを活用して、ここ1年から1年半ぐらいネットメディアの領域に関して、弊社はかなりがんばってビジネスを広げている状況です。既存の店頭媒体やダイレクトのメディア、eメールなどは引き続き今までどおりやっていくのに加え、外部メディアであるヤフーさんやGoogleさんと連携して、ブランドレベルのターゲティングの出稿を進めていこうとしています。

オリジナルのセグメントで配信できる強み

手前味噌ではあるのですが、弊社のデジタルメディアの活用方法が2つあります。1つは、弊社のT会員のデータを使ったセグメント配信が、ヤフーやGoogleでできるという部分です。

セグメントに関してはいろいろな切り方ができるので、ちょっと具体性に欠けますが、例えばTSUTAYAの購買履歴を使うと「邦画好きユーザー」と「洋画好きユーザー」といったセグメントもできます。

もしくは、Tポイント提携先の購買履歴を使ったセグメントです。例えば化粧品や日用品を買ったユーザーに広告セグメントを作って配信するといったケースです。

今お話ししたセグメントは、もともとヤフーやGoogleにはないものになります。ですので、ある種オリジナルのセグメントを作って配信ができるという強みがあるかなと思っております。

続きまして、購買検証ができるというところです。実際に作ったセグメントでGoogleやヤフーで配信をした後、広告の接触者のデータと弊社が持っている購買履歴のデータを連携するかたちで、実際に広告と接触して購買につながったかどうか、購買率が上がったのか下がったのかを検証できます。

アプローチ自体はオンラインで行っておりますが、実際に物を買うのはオフラインの場面になりますので、ある種のOMO(オンラインとオフラインを統合したマーケティング手法)のような取り組みができるのかなと思っております。そこも1つ、特徴として挙げさせていただいております。

特徴をまとめると、ターゲティングの配信の母数がかなり多いというところが一つ。年間で7,000万UUぐらいになるT会員の母数があります。それらと連携している部分でいきますと、ヤフーにおいては3,500万人、Googleにおいては1,000万人という母数で配信ができます。かなり大規模な配信ができるとご認識ください。

そして、配信後には実際の購買検証ができます。弊社では今、効果が顕著だったセグメントを次回以降も使って、引き続き広告配信していこうという循環型マーケティングを推奨しております。ここまでが、弊社のデジタルメディアのアセットの説明となります。

成果につながった、3つの広告配信パターン

ここからは、今日の本丸である「どういうふうに活用できるんだっけ?」というところについて、包み隠さないかたちでいきたいなと思っておりますが。(社名などは)だいぶ包み隠した状況で話が進んでいきますので、言ってることとやってることが違うじゃないかという話なのですけれども(笑)。簡単に説明していきたいなと思っております。

今回、弊社のデータを使った最もポピュラーな活用ケースを2つお持ちしているので、イメージしやすいかなと思います。

まずは、先ほどからもご紹介している購買履歴のデータを使った配信のケースです。指定の商品を購入されたユーザーに対してアプローチするというところが基本線かなと思っております。

だいたい3つのカテゴリーやセグメントを作るケースが多いです。例えば自社銘柄の商品を買っているユーザーに対して配信するのが1つ、あとは自社の商品と同じカテゴリーのユーザーに対して配信していくというもの。もう1つは、競合の銘柄を買っているユーザーをターゲティングして配信していくという3つのパターンです。

この3つのパターンでかなり成果が上がっておりますので、こうした活用ケースを念頭に置いていただいて、この後、実際の事例の紹介をしていきたいと思います。

広告表示された人、クリックした人の購買率もチェック可能

まず1つめなのですが、某製薬メーカーさまでの実施事例になります。商材は栄養ドリンクです。その栄養ドリンクに対して、先ほどの活用ケースでもご紹介した自銘柄の購買者のセグメントと、競合のカテゴリーの購買者という2つのセグメントを用いて広告配信をさせていただきました。

実際の結果は、広告接触者の購買率が広告の非接触者に比べて約1.3倍になりました。ですので、先方の某製薬メーカーの方と「オフラインの購買の促進につながった」ということで、お話をしております。

もう少し中身を見て分析したところ、全体としては1.3倍だったのですが、クリックした人がIMP(広告表示)だけ出た人よりも1.96倍の購買率があったことがわかりました。IMPだけの人、クリックした人の購買率も見られるところは、弊社のデジタル広告の特徴の1つです。

この結果が出た後、某製薬メーカーさまからは「年間で予算を用意するので、都度都度の購買検証も含めて広告施策をやっていきたい」とリピートのお話もいただいておりますので、かなり成功した事例かなと思っております。

映画配給会社やアパレル企業での高い費用対効果

続いての事例は、映画の配給会社さまです。商材は某映画のDVDのセルないしはレンタルです。この映画の商材に関しては、1作目ではなくて2作目の訴求でした。その前作の映画DVDをレンタルした人や買った人に対して配信した事例となります。

ですので、TSUTAYAで過去にレンタルしたことがある人とセル版を購入した人という同一のカテゴリーでも区切って配信はしたのですが、メインはレンタルした人とセル購入した人というところで配信させていただきました。

結果としては、この広告のROAS(広告の費用対効果)は440パーセントとなり、レンタルとセル共にかなり売り上げ好調な結果が出ました。ROASだけの話ではなくて、実際の広告の配信においても、CPC(クリック単価)ですとか、CTR(クリック率)について、かなり高いスコアが出ています。

この事例の他に、別の映画タイトルでも広告の配信をさせていただいて、購買検証を進めている状況です。こちらに関しても同様の結果が出ればと思っているんですけども、このように立て続けに出稿いただいているという事例です。

続いてはアパレル会社さまで、商材は新社会人用のスーツになります。新社会人用のスーツのセール告知を行ったのですが、このアパレル会社さまにおいては、過去1年間店頭で購入していない人をセグメントで除外し、20~30代のT会員を対象に配信させていただきました。

実際の効果に関しては、広告接触者の購買率が非広告接触者よりも1.98倍となっています。こちらも同様に、オフラインの購買の促進につながったということで、お褒めの言葉をいただいております。

実は他の年代にも(広告を)打ったのですが、特に新社会人用のスーツというところで20~30代の購買のリフトがかなり高かったという結果が出ています。ROI(投資利益率)の観点から見ても効果が高かったということで、こちらのお客さまにもリピートのご発注を3〜4回いただいております。

家電量販店アプリ会員の購買促進効果は652%

最後は家電量販店さまの事例で、商材はアプリ会員へのセール訴求です。対象は、この家電量販店の実店舗の商圏5キロ圏内に住んでいるアプリ会員で、かつT会員という方に配信させていただきました。

配信の結果、広告クリック者のROASが652パーセントということで、かなりの購買促進につながったという結果が出ております。当然クリックだけではなくて、IMP(広告表示)した人だけでもROASはかなり出てはいたのですが、クリック者のROASがかなり高かったというところで、お褒めの言葉をいただいております。

IMP者とクリック者で、平均的な購買単価がどうだったのかも調べさせていただいたところ、だいたい107パーセントぐらいの違いが出ました。クリックした人のほうが多かったというところで、金額にして1,000円から1,500円ぐらいの幅で、購買単価が上がった例になります。この家電量販店さまに関しましても、リピートの受注をいただいております。

以上が冒頭に申し上げた活用ケースを使った成功例になります。

車検データを使った乗り換え提案のアプローチ

ここからは、少しユニークな自動車のデータを使ったターゲティングの活用事例について説明していきます。弊社は、オートバックスセブンさまと合弁会社を作らせていただいています。お互いのデータを連携し活用しているマーケティングの会社で、ABTマーケティングといいます。

特徴的なデータが3つほどありまして、1つが車検のデータです。車検のデータを使って広告配信するというケースがなかかなかないので、かなりユニークなデータかなと思います。この車検のデータですが、車検の満了月から鑑みた乗り換え時期に対してダイレクトにアプローチが可能です。

例えば、乗り換え満了月の1年前や、1ヶ月前、3ヶ月前、5ヶ月前といった月単位での配信ができることも、特徴の1つとして挙げられます。

2つめが車両のデータというところで、オートバックスセブンさまで車検を更新されているユーザーさん、ないしは車を購入するユーザーさんに関しては、車両のデータも蓄積されている状況です。

ですので、以前乗っていた車が何だったかということや、今は違う車に乗っているといった変遷も見ることができます。そういったところでアプローチできるのも特徴です。

新車購入支援キャンペーンの広告配信の成果

最後にカー用品系の購買履歴を使った配信もできるということで、事例をご紹介します。

1つめが某自動車メーカーさまで、商材は「カーライフ応援新車購入支援キャンペーン」という、新しく車を購入する人に支援金を出すキャンペーンでした。

この自動車メーカーさまの車を保有していない、いわゆる他社の銘柄を保有している人に向けて(広告を)配信しています。車を買ったかどうかまでは追えていないのですが、まずはKPIとしてCPC(クリック単価)を基軸に見ていくご提案をさせていただきました。

実際の効果としては、他社でやっているCPCに比べて、1.2倍ぐらいの成果が出ています。CPC効率が上がったことで、多くのクリックを獲得することができています。クリック数をどれぐらい稼げるかにKPIをおいていたため、しっかりクリアすることができたという事例になります。

見込み客の発掘にも効果的

続きましても、某自動車メーカーさまの事例です。商材としては新車の訴求で、車検が1年以内に切れるユーザーに向けて配信したという事例になります。こちらも、他社のCPCの約1.2倍ほどの効果があったという結果になりました。

見込み客の発掘や、車検1年以内のユーザーに今まで広告を出したことがなかったけれども、しっかりCPCとして反応が出ていて、非常に良かったと考えています。見込み客の発掘をしたいという得意先の要望に対して、しっかりデジタル広告で応えることができたいい事例なのかなと思っております。

最後に、カー用品メーカーさまを広告主とした、車用のWi-Fiルーターという商材での広告配信事例です。実施のセグメントに関しては、カーエレクトロニクス購入者と非カーエレクトロニクス購入者に分けて配信させていただきました。

実際の効果ですが、他社に比べて、CPCでは約2倍の効果があり、リピートでデジタル広告の実施をいただいております。ターゲット層のカーエレクトロニクス購入者に対してとにかく安くリーチしたいという要件があり、それに約2倍の効果があったということで、得意先のご要望にかなったことがリピートにつながったと考えています。

ということで、弊社が持っているファーストパーティのT会員のデータを使って、効果的にセグメントを切って、デジタル広告を配信していけば、一定の効果を出せる。それを、この1年~1年半ぐらいの活動において弊社も効果を実感しております。

こういったシンプルな使い方をご提案していきたいと思っていますが、同様のセグメントに関しては、Googleやヤフーにおいても、ある程度再現できるのではないかと考えております。