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会議が変わると組織が変わる!~隠れファシリテーターが会議を作る~ (全3記事)

最後に「30秒」、これをやるだけで会議の締まり方が変わる 誰でもできる、一番簡単で効果が出る「会議の基本動作」

成果を求める組織において、チームの能力を引き出すために必要なのが「ファシリテーション力」です。今回は株式会社SmartMeeting株式会社SmartHRの主催で、「チームの能力を引き出すファシリテーション」をテーマとしたセミナーの模様をお届けします。 登壇者は『世界で一番やさしい会議の教科書』『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』の著者・榊巻亮氏。 第2回目は、会議を変える8つの基本動作や、一番簡単で効果が出る基本動作の実践例などが語られました。

会議を変える8つの基本動作

榊巻亮氏(以下、榊巻):一般的な会議の雰囲気は、こんな感じですよね。

これは、市議会議員さんがどこかのホームページに上げていたもので、オープンになっているのでお借りしています。偉い人がしゃべって、みんなはずっと資料を読んで「はあ」と聞く。

僕らがやりたいのはこういう雰囲気なんです。

みんなが顔を上げて、議論を見える化しながら活発に議論をするイメージです。イメージで大変恐縮ですが、「会議に8年も使うなら、前者じゃなくて後者じゃないですか?」と思うんです。前者でも別にいいんですよ。別に悪くはないんだけど、どうせ8年使うなら、活発なほうがいいだろうなと私は思います。

こういうイメージで議論ができる会議をファシリテーションするために、ここからスライドの「会議を変える8つの基本動作」の話をしていきます。活発な会議にちょっとでも近づいていくための8つの基本動作のヒントをお伝えできるといいなと思います。「どうせ8年使うなら、いいかたちにできるといいよね」ということです。

みなさんは、ここに来てくださっていることも考えると、けっこう会議の本を読んでいらっしゃるのかなという気がしています。

会議術、会議本を開くと、だいたいこういう話が出てくるんですよ。「ロジックツリーで」とか、「フレームワークで」とか、「付箋でブレーンストーミングするんだ」と、いろいろ出てきます。私もまだ社会人になりたての頃は会議の本を読んで、こういうものを見ていました。「ブレストね。ああ、なるほどね」と思っていたんです。

でも結局ロジックツリーで会議を捌くことも、付箋でブレインストーミングすることもできませんでしたね。私は前職で建築会社にいて、「会議を良くしたいな」と思っていましたけど、これは1個もできませんでした。

会議の本に書いてあることは間違ってはいないと思うんです。だけどあまりにも高度過ぎて、なかなか入門としてはそぐわないものなんですよ。サッカーでいうとオーバーヘッドキック、テニスでいうとエアKをいきなり練習するイメージです。でもそうじゃなくて、もっと基本的に押さえるべきことがあると思うんですよね。

例えばテニスだったらラケットの握り方とか振り方とか、何なら靴紐の結び方も。そういう簡単なことをちゃんと押さえなきゃいけないのに、いきなりエアKを練習するようなものです。基礎ができてエアKじゃないですか。

だから基本動作が大事なんです。8つの基本動作を押さえるだけで本当に会議がぜんぜん違うから、そこだけまずやってほしいんです。難しいことはぜんぜん必要ない。だけど意外とやっていないんですよ。

一番簡単で最も効果が出る、会議の基本動作

我々は会議を「準備」「導入」「進行」「収束」と4つのパートに分けて、その中でそれぞれやるべきことを8つに分類して整理しています。

まず会議の準備をしますよね。今日どんなことをやってどんなふうに議論して、どこまで決めたいんだと導入します。

そして議論を進行して、みなさんから意見を引き出して可視化して合意形成をして、最後に収束、まとめをしておしまいという流れになります。その中でそれぞれ基本動作を大事にしていくというイメージです。そもそも4つにわかれていることをぜんぜん意識していない方もいますけれども、それを意識するだけでも随分違うと思います。

この中でそれぞれ①②③④⑤⑥⑦⑧と番号を振っているんですけど、会議ファシリテーションで言うと、どうしてもこの⑥⑦にイメージが行きがちというか、注目されがちなんですよね。

どうやって全員から主張を引き出すか、付箋を使うか、対話を促して合意形成するとか、どこに合意を持っていって落としどころを作るかみたいな話は、すごく目立つので目が行ってしまうんですけど、これはすごく難しいんですよ。

それよりはこっちの①②③④、カッコを付けていないところ。こっちが8つの中でも基本なんです。ここらへん(⑥⑦)こそがファシリテーションと思っている人もいるんだけど、そうじゃなくていろんなことがあるんですよ。

一番簡単で最も効果があるのは④だと我々は思っています。「決まったこと、やるべきことを確認する」。番号的には4番目ですけど、まずここからやってほしいです。

みなさんからすると「何言ってんの? 当たり前じゃん」と思われるかもしれないんですが、ここに書いていますよね。「わかるよ。確認するんでしょ。でも会議は1時間とか1時間半とか2時間しかやってないんだから、何が決まったかくらい、いちいち確認しなくたって頭の中で整理できてるよ」という人もいると思います。

ところが、思い出していただきたいんですが、「決まったこと、やるべきことを確認する」。これをやっていないが故に、あとから「え? 俺がやることになってたんだっけ? 営業部がやると思ってたのに私の役割ですか?」とか、さっきもちょっと出てきましたけど「結局何が決まったんだっけ? まぁよくわからないけどいいか」となってしまう

決まったこと、やるべきことがよくわかっていないから、「1週間前に議論して決まったはずなのに、またそれを議論します?」ということが出てきているんじゃないかなと思います。

なんで上の①②からじゃないかというと、一番簡単なのはこの④だからですね。本当は「収束」「導入」「進行」「準備」を①②③④と振りたいんですけど、流れがバラバラになってしまうので便宜上こうやって振っています。④が一番簡単で一番効果があると思っています。

「決まったこと、やるべきことを確認する」の事例

ここでちょっと事例をお話します。15年くらい前に、ある通信会社で商品開発プロジェクトのお手伝いをしていたんです。そこで新しいサービスを作っていくために、課題解決の議論を部長10人くらいと一緒にやっていました。

部長10人と私と、もう1人若手のAさんという1年目か2年目の方と12人で打ち合わせをしていて、そこでAさんは、すごく熱心にメモを取ってくれていました。

その時の内容がこんな感じです。

課題がこんなにいっぱいありますよねと。それぞれの課題について、どういう対応にするかを部長10人たちが話をして決めてくれているわけですよ。

ここは対応不要とか、ここは営業に連携かなとか、B案採用かなと部長たちがワーッと話した内容を、Aさんがメモをしてくれるんです。私はAさんと隣だったので、Aさんのメモをチラッと見るとすごい良さそうだから声を掛けたんですよ。

「いいですね。Aさん。ちゃんとメモしてくれていてバッチリじゃないですか」と声掛けたら、「いやぁそうなんですよ。聞いて書いておかないとわからなくなっちゃうので」と言いながらも、「このへんがちょっと不安だったり、ここもちょっと書いてみたんだけど、これで合っているかなと不安なところもあるんですよね」と言ってくれました。

それを聞いて僕はAさんに「じゃあ会議が終わった時に、決まったこととやるべきことを確認しましょうよ」とそそのかしたんですよ。

Aさんはめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていましたけど、僕が終わった時に手を挙げて「すいません。部長のみなさん、Aさんが決まったこと、やりたいことを確認してくれると言っています」と言って、無理矢理ねじ込みました。

30秒間の「決定事項」確認の効果

そうしたら部長たちが「いいよ。確認しなよ」と温かく言ってくださったので、Aさんは嫌な顔をしながらも渋々、上から「これがこう決まって、これは決まっていないという認識で、ここは営業に連携ということですかね。B案採用で合っていましたか?」と、時間にして30秒くらい、上からザーッと1時間半ほどの打ち合わせの結果を確認してくれました。

すると何が起こったかというと、Aさんが言い終わるか言い終わらないかくらいのタイミングで、部長たちが好きなことを言い出したんですよ。「A、それで合っているよ」という部長もいれば、「いやいやA、何を聞いていたんだ。ここは営業に連携という話じゃないんだ。こういう話でまとまったんだ」と言う人もいたんです。

「B案は採用になったわけじゃなくて、B案を有力候補として継続検討していくという話になったんだ」とか、いろんなことをブワーッと言い出して、僕とAさんを置き去りにして、部長たちでもう1回議論を始めて、「ここはB案採用ということで、結果的には決定でいいんですよね」という声が聞こえてきました。

「営業に連携するのは、誰々がやるということでいいんですよね」という確認をもう1回部長たちがしてくれて、再度1~2分議論が行われて白黒はっきりして、パタパタといろいろ決まって終わるという流れでした。

なんとなくイメージできますかね。Aさんが確認をちょっと入れたことで、決まっていなかったこと、フワッとしていたことがウワーッと浮き彫りになって、部長たちが最後に確認をしてくれて、全部落ち着いていくということです。

「確認しておけばよかった」をなくす

こういうことは、「よくあります」と言われます。どうってことない一幕なんですけど、ここにはめちゃくちゃ大事な教訓が隠れていると思うんですよ。1つは、「その気になれば誰でもできる」ということです。決まったこと、やるべきことを確認しているだけじゃないですか。

Aさんは社会人1年目でしたから、部長たちと比べて20歳くらい年齢が違うんですよ。でも日本語さえわかればできるんです。やってみるとおもしろいので、ぜひこの講演が終わったらみなさんの打ち合わせで決まったこと、やるべきことを5つくらい確認してみてほしいんですよね。

経験上、3つか4つは認識のズレがあったり、「確認しておいて良かった」となると思います。5つやってみて1個も揉めない、認識違いが出ないんだったら、みなさんの会議はスーパーだから確認しなくてもいいかもしれない。

だけど1個か2個揉めて、確認しておけばよかったとなるんだったらやったほうがいいですよね。1時間2時間の打ち合わせで30秒確認するだけなので、その時間を惜しむ意味はほぼないじゃないですか。なのにふだんほぼやっていないですね。これをちゃんとやっている会議や会社は相当少ないと思います。だけどやればそれだけ効果が出るということですね。

これが1つ目の基本動作です。すごい駆け足でお話しましたけど、ごくごく当たり前のことなんです。決まったこと、やるべきことを確認するだけでぜんぜん会議の締まり方が違うんですよ。これはぜひやってほしい。

試しに打ち合わせで、最後に決まったこと、やるべきことを5つくらい確認していただきたいなと思います。つい、忘れちゃうんですよね。

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