会議術本の著者・榊巻亮氏が登壇

榊巻亮氏(以下、榊巻):今日はお時間を40分いただいていますけど、いろいろしゃべりたいことがありまして、情報は多めだと思います。聞いているばかりだとつまらないと思いますので、伝えられるところまでワッとお伝えして、ちょっとした演習も挟みながら、40分間お付き合いいただけるとうれしいです。

チャットに「ああ、わかる」とか、「今のはちょっとわからなかったな」とか、「これはやっている」とか、「すごく共感できる」というように感想を入れていただけると、こちらとしては「人としゃべっているな」と感じられて非常に助かります。

それでは、本題に入っていきたいと思います。今日は「会議が変わると組織が変わる!」と題していますけど、我々がふだん会議でやっていることを、いくつかコツとしてお伝えできればいいなと思っています。

「なぜ会議が重要なのか」をまず最初にちょっとお話しします。そしてケンブリッジという会社の中で定義している「会議を変える8つの基本動作」を、8つ全部はお伝えできないので、時間の流れを見ながら2つか3つくらいお伝えできるといいなと考えています。

さらに会議をうまくやる基本動作だけじゃなくて、我々は「広めて定着させる」ことがすごく大事だと思っているので、スライドの「広めて定着させる3つのコツ」も少しお話ししたいと思います。

40分、プラス20分くらい質疑にお答えするんですけど、合わせて1時間くらい終わった時に、「明日からこれをやろうかな」「これはやってみたらちょっとおもしろいかも」というものを、1つでも持ち帰っていただけるとありがたいです。

時間を使っていただいた分だけ、何かリターンがあるといいなと思います。「8つ知りたい」という方には……。別に宣伝するつもりじゃないですけど、この2つの本(『世界で一番やさしい会議の教科書』『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』)の抜粋になっていますのでご覧ください。

どちらでも大丈夫です。右のほうは小説仕立てで書いていて、左のほうはビジネス書っぽく書いていますけど、この中に8つありますので、読んでいただけるとうれしいです。あ、「持っています」という声もいただいています。ありがたいですね。今日はこのくらいのペースで、もう40分しかないのでワッとしゃべっていきます。

「ファシリテーション型」のコンサルとは?

あらためまして、榊巻と申します。普段何をやっているかと言うと、変革プロジェクトをお手伝いしているコンサルタントです。コンサルタントとしてお仕事をしているので、会議の専門家ではないんですけど、今日は会議の話をします。

なぜ、私が今日会議の話をするかと言うと、ケンブリッジというコンサルティング会社の立ち位置が影響しますが、コンサルティング会社はいわゆる「先生型」で答えを教えてくれます。

分厚いレポートを作って、「あなたの会社はこういうふうに変わっていくべきですよ」とか、「こうするべきです」とか、「こういうアクションを取るべきです」ということを教えてくれる。これが「先生型」ですね。なんとなくイメージできると思います。きれいな資料を作ってくれるようなイメージです。

我々はここもやるんですけど、どちらかと言うとこっち(「ファシリテーション型」)で、反対側の立場でお仕事をすることが多いです。どういう立場かと言うと、「やってください」じゃなくて「一緒にやっていきましょう」「変わるまで一緒にやりましょう」ということです。

「これが正解です」「こういうふうにしてください」という監査的な役割ではなくて、何がみなさんにとってベストか、「こういう段取りで、こうやって一緒に検討したらうまくできるはずだから、こういうかたちでやっていきませんか?」というプロセスの専門性を提供する立場にいます。これを「ファシリテーション型」と我々は勝手に呼んでいるんですけど、そんな立場で仕事をしています。

こういう立場で仕事をすると、お客さんと膝詰めで1日3~4回、会議を繰り返しながら物事を前に進めていくことになるんですね。そうすると、会議の質とか速度が、そのままプロジェクトの質と速度になっていきます。

なのでこの仕事をしていると、プロジェクトをうまくやるために会議の質を上げるのがすごく重要になるわけです。その中で培ってきた会議のファシリテーションの技術を、今日はちょっと実践的な立場からお伝えしたいと思います。

ですから今日私がお伝えすることは、大学で研究されたようなアカデミックな話じゃなくて、我々がプロジェクトの現場、ビジネスの現場で日々やっているファシリテーションの技術をお伝えすると捉えていただければと思います。

本業とはちょっと外れるのですが、我々はノウハウを相当オープンにする会社なので、会議の技術もみなさんにお伝えして、いいプロジェクトが増えるといいなという思いで、今日もお話しさせていただきます。

人は人生の「8年分」を会議・打ち合わせに費やす

最初にまずスライドの「なぜ会議が重要なのか」というお話をしたいと思います。

我々はたくさん打ち合わせをしますが、みなさんもたぶんかなりやっていると思います。我々は「生涯会議時間」と言っているんですけど、どのくらいだと思いますか? みなさんは一生涯のうち会議にかけている時間について、意外と考えないと思うんですよ。

会議と言ってもいろいろありまして、部長会議や役員会議もあれば、お客さんとのちょっとした打ち合わせとか、課内でのコミュニケーションもたぶん会議ですよね。2人3人集まってちょっと議論したら会議だと思うんですよ。

「みなさんはどのくらいだと思いますか?」というのを聞いてみたいんですけど、1日に何時間くらい打ち合わせをしているかを、本当に簡単でいいのでざっくりチャットに書いてもらえませんか? 想像でいいです。1日どのくらいの時間打ち合わせをしていますか?

1時間。2時間。3時間。5時間。なかなか。そうですよね。多い人は多いですよね。4時間。5時間。半日。1日(笑)。ひどい時は1日とかありますよね。ありがとうございます。やっぱりこうやってざっと見ると、3時間ぐらいがもしかしたら平均かもしれないですね。

いろいろな統計はありますが……。こんな設定はあり得ないですけど、例えば1日10時間、1日も休まず365日働くとしたら、1日3時間会議をする人で丸8年分になるらしいという統計があります。

なので、5時間と言っている方はたぶんもっとですよね。12、13年会議室にずっといる状態なんだと思います。

3時間で丸8年は、あらためて見るとけっこうすごい数字ですよね。寝る時間とかご飯を食べる時間は良しとしても、丸8年会議室に幽閉されて、8年会議しまくって、全部終わったら会議室を出てきていいよという感じです。それぐらい一生涯で会議に時間をかけているということです。

丸8年を投入する会議でビジネスパーソンがやっていること

こうやって数字を見るとけっこう衝撃的ですよね。ふだんちょっとずつやっているからあんまり気にならないんだけど、実は膨大な数字なんです。会議に8年も捧げていると考えると、ちょっとゾッとしますよね。

さて、こんな丸8年投入する会議で何を考えているかを思い起こしてみると、みなさんがどうかはわからないですけど、私たちが今までお会いしてきたビジネスパーソンたちは、だいたいこんなことを考えている方が多かったです。

例えば「しまった、パソコン忘れた!」とか。打ち合わせをしたいのに、ほとんど内職する気満々な方とか。「この話、俺に関係ないような気がするけど。でもまあいいか。座っていれば終わるし」とか。「何が決まったんだっけ? よくわかんないけど、あの人はきっとわかっているだろうから、俺がわかってなくてもいいや」というようなことです。

あと、考えているふりをして寝ている人。私はこれを見る度にすごいなと思うんですけど、どう考えても寝ているんだけど、話を振るとそれっぽいことをバッとしゃべって、また目をつぶって寝ている方がいますよね。最近はちょっと減りましたけど、昔は本当に多かったなと思います。さっき数字を言いましたけど、丸8年こうなっているとしたらこれでいいのかとやっぱり考えちゃうんですよ。

42%が会議後に「決定事項」を理解していない

また、おもしろい統計があるのでこちらも紹介します。

これは昔、『日経情報ストラテジー』という雑誌で取っていた統計です。わりとハイエンドな雑誌だったんですが、この統計がおもしろいんですよね。

「会議に参加している人の状態はどんな感じですか?」というデータを取っていて、「参加者が『何をどう議論して、どこまで決めるのか』を事前に十分理解できています」という人は10パーセントしかいないという統計です。

もう1回言いますね。会議が始まる前に、瞬間でもいいですよ、「今日は何を議論するのかな」「どこまで決める予定なのかな」ということをよく理解できている人は10パーセントしかいない。

緑の部分は、「どこまで決めてどう議論したのか、終わるまでには一応理解しました」という回答が47パーセント。衝撃的なのが、会議が終わっても「今日は何を議論して、どこまで決めたのかあんまり理解できませんでした」という人が42パーセントもいるんです。

ビジネス雑誌を読むような意識の高い人たちにアンケートを採ってこれですからね。いや、これはすごい。会議の始めに何をしたいのか共有しないのでしょうか。してなかったり、していたとしても何を言っているかわからないということなんでしょうね。

これをスポーツで例えると、またすごいです。監督に「グラウンドに集合」と言われてグラウンドに集合するわけですよ。何のスポーツをやるかぜんぜんわからないけど、なんかどうもスポーツをやるようだ。でも何をやるかはわからない。監督に「試合開始だ」と言われて、「全力で走れ」とか、「そこで手を抜くな」とか、「もっと集中して」と言われて、ひいこらいろいろやって試合終了。

その時に「結局今日、何のスポーツをやって、何点取って、勝ったのか負けたのかもわからない」と言っている人が42パーセントいるということですよね。これ、すごくないですか? グラウンドに集まった瞬間に、「今日は何のスポーツをやるかさっぱりわからない」という人が90パーセントいるということですよ。それじゃ、いい試合ができるわけないですよね。

グラウンドに集まった瞬間、バットを持ってくればいいのか、テニスのラケットを持ってくればいいのかわからないんですよ。しかも、終わった時に「勝ったのか負けたのかわからない」人が42パーセントもいるという統計です。これは別に僕が言っているわけではなくて、『日経情報ストラテジー』が取ったアンケートからするとこうなんですね。これをなんとかしたいんです。すごくもったいないなと思います。