2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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市川祐子氏(以下、市川):残り時間も少なくなってきたので、事前にいただいた質問にお答えしつつ、まとめに入ろうかなと思います。
1つ目、「パーパスを目指す過程で、さまざまな苦境、修羅場に必ず遭遇すると思う。どう克服すればよいか」。
そうですね。私自身、化学物質過敏症というアレルギーの一種で、楽天が新しいオフィスに移転した時に、新しいオフィス自体は素晴らしかったんですけど、私には素晴らしくなく、体調を崩してで、辞めざるを得なかったんです。それがきっかけで今夢中な仕事ができたんで良かったんです。そのことをご存じでご質問してくださっています。(克服の方法は)「希望を捨てない」っていうことですかね。
さっきマズローの5大欲求で言うと、「所属」で幸せを求めないことですかね。あと、(田中氏が提案する不安5段階説では)一番下の「健康」が大事なので、健康不安がある場合は何かを変えたほうがよいということですね。変える場合は一番上の自己実現、パーパスに沿って人生を選択すれば良いかなと思います。
2つ目、ちょっと本格的な質問。「スズキトモ先生の提唱するDS経営っていう新しい資本主義のアカウンティングを、どうご覧になっているか」。
このDS経営の主旨は、(私の理解では)利益を重視する会社経営は、株主偏重なんじゃないか、従業員とかにもちゃんと分けよ、ということなんです。基本的な考え方は賛成です。けれども、解釈の仕方によるのかもしれませんが、株主利益偏重主義の結果、現金の使い道が配当ばかりになったために従業員の給与が増えてないじゃないかって言っている人がいますけど、それはちょっと正しくありません。
この本の第5章にもちょっと引用してるんですけど、この20年間、日本企業が何に1番お金を配分したか調べると、内部留保であって、配当ではないのです。答えは、(内部留保せずに従業員にも株主にも)分配せよということですね。私が役員を務めてるクラシコムなんかは粗利を基準に従業員への分配を決め、営業利益率の目標を一定水準に定め株主への分配を決める。そういう会社もあります。
市川:3つ目、「日本の社会的年金制度の維持のためにコーポレートガバナンスコードが必要ということを社員が理解すれば、自分ごととなり、もっと攻めの姿勢CGコード開示ができると思います」。
おっしゃるとおり。やらされ感満載で、いかにのらりくらりやるかに終始している。それは良くない。自分の会社を投資家目線で考えた時に何を開示してほしいのか。どうしたら儲かるかってことですか。儲かるために何をやってるか。先ほどでいうムーンショットでたぶん儲かると思うんですよね。
「ムーンショットで儲かるために会社として何をやってますか」、それを開示してほしいのが、長期投資家の言いたいことだと思います。
5番目、これは教師の方から仲山さんへの質問ですね。「自分はネコだと思うのですが、毎日の授業以外にたくさんの業務で、ネコの要素を深掘りする時間がぜんぜん取れてません。教員の世界でもネコやトラが生息できる時代は来ると思われますか」。
仲山進也氏(以下、仲山):「イヌ型組織」な学校って多そうですもんね。わかんないですけど、「忙しくてあまりネコ(自分のための活動)を深掘りする時間が取れない」のではなく、考え方を逆にして、普段やってる活動自体を「ネコ」的にやる。
一つひとつの業務を「イヌ」的(会社や組織のための仕事)にではなく「ネコ」的にやるっていうチューニングをすれば、毎日ネコを深掘れるようになると思います。「イヌ仕事だからしょうがない」って割り切らない。それが大事かなと思いました。
市川:6問目、「人事をやっています。社員から自分自身のパーパスやWillがわからない、見えていないという相談をよくもらいます。どのようなアドバイスをされますでしょうか」。
「自分がワクワクすることは何ですか」っていう質問がたぶん1番良いかなと思います。本にもユニリーバで行われているパーパスに関する研修で使われている4つの質問をを引用しました。特に「自分が本来ワクワクすることって何ですか」がいいです。パーパスとは、4日くらいかけて見つかるものらしいので、じっくり探すのが良いかなとおもいます。
仲山:僕からいいですか。やりたいことはわからなくても、いろいろなことをやると、「やりたくないな」っていうものがだんだん見つかっていきますよね。なので、やりたくないものを明確にしていく活動をまずはやっていくと、だんだんゴルフのOBラインのように「こっちから外側はやりたくない」というラインがはっきりしてきます。
すると、「この範囲内だったらやりたいと思えるな」というラインが逆に見えやすくなる気がしています。ピンポイントにやりたいことを探そうとして悩む人は、「正解にたどり着かないといけない思考」みたいなのがある気がします。
市川:確かに。正解を探しすぎなんじゃないですかね。そんなに簡単に見つからないような気がするんですけど、田中先生はムーンショットを見つけたのは何歳くらいの時ですか?
田中靖浩氏(以下、田中):ムーンショット、ころころ変わってるんですけど、小学校くらいの時からあったかな、ずっと。
市川:なるほど。小学校くらいの時の希望みたいなのが自分のムーンショットだって自覚したのは何歳くらいですか。
田中:小学校の時ってそういう自覚ないですもんね。なりたいって思ってるだけで。
市川:やりたいことって、わりと無自覚なんだと思うんですよ。
田中:市川さんと同じで、私も20代で大病して入院して、天井見つめながら「何やりたかったんだっけな」って考えたんです。そのとき「やりたいことをやってないから身体を壊したんだな」って思い当って。ここは原点に戻ろうと。だから「やりたいこと」に戻るきっかけは入院でしたね。
市川:まったく同じことを関美和さんもこの本のインタビューでおっしゃってました。そうそう、ピンチの時にチャンスがある。
田中:あとは「やりたいこと」をやる上で最近心掛けているのが「忙しいって言わない」こと。忙しいって、最高の言い訳なんです。他人に対しても、そして自分に対しても。
時間があればもっとできる人間なのに、忙しいからできていないっていう言い訳なんですよ。自分をごまかす言い訳であり、努力をしていない自分を肯定する言い訳なんです。「忙しい」って。
忙しいを言い訳にしているうちは成長できません。そういう人間が定年になった瞬間、たくさん時間ができるでしょ? 忙しくなくなったのに能力が低いままなんです。非常にまずい。
だから忙しいって言い訳はやめたほうがいい。うまくいってる時や乗ってる時って、仕事がたくさん来るに決まってます。そこで忙しいって言ったら、能力が止まってしまう。なんとか能力を高めて、短い時間でできるようにしないといけない。
「ごめんなさい、ちょっと仕事抜けられません」って言い訳をしていたら、抜けられないに決まってます。なんとしても会社を出て、外の世界に行くときは行かないと。それが仕事の能力じゃないですか。人間関係、業務処理力、全部ひっくるめて残業しないで会社を出られるようにならないと。
市川:なんとしてでもやりたいことをやらないと、って思う。
田中:私も自分で気付いたんです。ずっと「忙しい」を言い訳にしてたな、って。もう止めました。しなやかに生きてる人たちって暇そうにしてますもんね。私より10倍忙しいはずなのに。
仲山:暇そうにしてる(笑)。
田中:年を取ってもおもしろそうに仕事している人って実際暇そうだし、動きが早いんですよ。「こういうのどうですか」って言ったら、「明日行きましょう」って言うんですね。「そうですね、行きましょう」って、こっちも付き合うしかない。本当は忙しくて予定入ってるんですけど、それを全部ぶっ飛ばして。もう意地です。
それをやらないと、レベルの高い人とは付き合えない。がんばれば自ずとこっちも能力が上がってくる(笑)。今日の話に出たパーパスとかムーンショットを見つけるのが下手な人、やりたいことがわからない人は、「忙しい」からじゃないですか。忙しいって言い訳しているうちは見つからないのかもしれません。
市川:そうですね。だからパーパスやWillを見つけることにもちゃんと時間を取って、忙しいとか言い訳しないでやりましょうっていうことですよね。
田中:そう。めっちゃ自分の処理能力上げて暇にならないと。すべての自分の実力を暇になるために注ぎ込むって、妙な話ですけど(笑)。
市川:暇にして考える時間を取りましょうって感じですよね。
田中:そうそう。40代、50代は魂の自由を取り戻さなきゃいけないんですよ。そうしないと60代で本当に暇になった時にやることがなくなるんですよ。本当の孤独になっちゃんですよね。その点、今日のこのイベントに参加してる人って、前向きですごくいいと思いますよ。一番問題なのが「申し込んで来てない人」ですね(笑)。
(一同笑)
田中:もうこれ最悪。忙しいわけですよね。とりあえず申し込んでるだけ申し込んでるっていう感じでしょ。老後暗いっすね。今日参加してる人はバッチリ。それだけでもうオッケーオッケー(笑)。こういうことに時間使えるっていうのはすごく良いことだと思うんですよね。
市川:本当にありがたいです。
市川:では次の質問です。「米国の一部の州からESG反対の動きがありますが、こちらについてお考えを教えてください」。フロリダとかですね。
フロリダ州の法令に関する記事を読んだんですけど、「何言ってんの?」みたいなところと、「わからなくもないかな」みたいなところもありました。それを上回る極端な声、たとえば「ESG反対だ、地球温暖化ガス削減なんてやめろ」みたいな州もあるんですけど。
別に地球温暖化だけがESGじゃないんですよ。EじゃなくてSとかGもたくさんあるのでそれもESG投資としてあります。また、逆にすごい極端な環境アクティビストみたいな人もいるんですけど、それぞれいろいろな意見がある中で中庸にきっといくんじゃないかなと私はわりと楽観視しております。
お時間が過ぎてしまったので、ラップアップにいっちゃって良いですかね。
今日のキーワード、「時間がたっても使えるポータブルなスキル」を身に付けよう。横だけじゃなくて時間軸のポータブルですね。2つ目、「会社を離れても「無所属」や「孤立」に陥らないような生き方をしよう」それから「所属や肩書きに幸せを求めない」「費用対効果で考えることをやめて、ムーンショットをもとう」。
私ここに「夢中」を加えたいですね。「夢中でやろう」。「人格を家に置いてきて働くような会社に勤めてたら辞めよう」。
仲山:辞めよう(笑)。
市川:辞めても良いと思います!
仲山:さっきの「ルール変更」の話で、遊んでる子どもって同じ遊びをずっと続けてるとだんだん飽きてきて、ルール変更するじゃないですか。おもしろくするためのルール変更。
なので、ルールというものを、「この制服を着なさい、みたいに言われるやつね」と捉えている人と、「自分が夢中ゾーンにいつづけるためにチューニングを変えていくやつだよね」と思ってる人とで、10年先でも大丈夫な人と心配な人が分かれそうだなと思っています。
市川:こんな感じですかね。ありがとうございます。そうだ、大事なことを忘れてました。最後に、この本にもちょっとエッセンス的なことが書いてありますので、『ESG投資で激変! 2030年 会社員の未来』、まだ参加者の半分ぐらいの方読んでらっしゃらないそうなので、どうぞよろしくお願いします。
途中ちょっとお見苦しいところあったかもしれませんが、ご容赦ください。みなさまどうぞ健康には気を付けて。健康不安は乗り越えて、自己実現をしっかり手に入れられるように毎日がんばっていきましょう。ありがとうございます。田中先生、がくちょ、ありがとうございました。
仲山:ありがとうございました。
田中:ありがとうございました。まだ本を買ってない人は買ってください。
市川:よろしくお願いします。参加してくれた方ありがとうございます。
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