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仕事に効くパワーワード『よいアドリブはよいシナリオから生まれる』(全1記事)

自分のキャリアにつながる「よい偶然」を逃さない人の特徴 予測不可能な時代の「キャリア形成」に必要なもの

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」をテーマに、「よいアドリブ」とは何かや、リアルタイムでよいアドリブを展開するために必要なものなどが語られました。 ■音声コンテンツはこちら

「よいアドリブ」とは?

中村直太氏:グロービス経営大学院の中村です。毎週金曜日は、心に響いた言葉をシェアしながら、仕事やキャリアに役立つヒントを紐解いていきます。

今回の言葉は「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」です。みなさんはこの言葉、どのように受け取られたでしょうか。この言葉は映画プロデューサーの方が書かれた本を読んでいた時に、印象に残ってメモをしました。

「アドリブ」とはご存知のとおり、シナリオに書かれていない台詞や演技を即興で取り入れる行為のことです。シナリオに書かれていないことをその場の判断で行うため、当然うまくいかないこともあり、結果として撮り直しになることもあるようです。

一方で、アドリブでしか出せない偶然の産物があるからこそ、準備をした既定路線をわざわざ逸脱してまでアドリブを選択するのだと思います。その方いわく「よいアドリブには、偶然でいてどこか必然という要素が感じられる」とおっしゃっていました。

また、こんな表現でも言い換えられていました。「よいアドリブには驚きがありつつも、それがさも自然であるかのように感じられる」。まったく予定されていなかったけど、どこか予定されていたようでもある、そんな感覚を抱くアドリブは、よいアドリブであることが多いようです。

よいアドリブを生むために必要なもの

この文脈の中で語られた言葉が「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」です。アドリブをする側の視点から見ると、まずシナリオを理解した上で「シナリオから外れて演じても、十分によいシーンになる」という安心感・確信が持てる。だからこそ、アドリブにトライできる。質の高いシナリオが用意されているからこそ、それを超えていくアドリブが生まれるとも言えそうです。

グロービス経営大学院で、私が登壇させていただいているMBAのクラスでも、同じような感覚を持つことがあります。3時間のクラスを、受講生のみなさんと講師がインタラクティブなやり取りを通して作り上げていく。これがグロービスのクラスの特徴です。同じ科目であっても毎回異なるオリジナルなクラス展開になっていきます。まさにアドリブの世界といえます。。

もちろんその科目、そのクラスで学んでいただきたい重要なポイントがあるので、その学びを実現するための一定のシナリオはあります。ですが、そのとおりにクラスが展開することはあまりありません。なぜならそのシナリオを超えていくアドリブが、その場で生まれるからです。

だからといってシナリオが不要かというと、そうではありません。やはり質の高いシナリオは必要です。これは講師からしたら準備ということですけれども、それがあるからこそ、それを超えていくアドリブを当日リアルタイムで展開できるのだと思っています。「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」、これは個人的な体験からも腹落ちする言葉でした。

予測不可能な時代の「キャリア形成」に必要なもの

別の観点からも語ってみたいと思います。私は、キャリアについて考えるセミナーを7年ほどやっていますが、そこでの対話からさまざまなビジネスパーソンのキャリアの見方、キャリア観を学ばせていただいています。そこでは「これだけ変化が激しい時代において、キャリアの計画は不要ではないか」「偶然に身を任せたほうがいいのでは」という議論がよく出てきます。

キャリアは生き方を扱うものなので、考え方に正解はありません。ですが、それでも私はキャリアの計画は立てたほうがいいと思っています。その理由は「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」という考え方と、とても似ています。

「3年後の自分のキャリアも想像しにくい」という肌感覚や、あるいは「キャリアの8割は偶然によって決まる」というスタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した「Planned Happenstance Theory」は、偶然性を支持する根拠になることに疑う余地はありません。だからといって、偶然か計画の二者択一で、計画を捨てる必要はないと思います。

今の状況で考え得る計画を持ちながら、その計画に固執することなく、柔軟に偶然の出来事を取り込んでいく。例え漠然としていたとしても「いつまでにこういう方向感で、このくらいのレベルのことをやっていきたい」という計画があるからこそ、何でもない出来事をチャンスと認識することができたり、なんとなく気になったことに計画とのつながりを見出しアクションに移せるのではないかと思います。

言い換えると「よい偶然はよい計画から生まれる」。さらに言い換えると「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」ということだと思っています。

「よい偶然」を逃さない人の特徴

これまでキャリアカウンセリングやコーチング、あるいはキャリアに関するインタビューなど、キャリアに関連する具体的な話を聞かせていただく機会にたくさん恵まれてきました。初めはある出来事について「それは偶然です」と語られる方も、よくよく話を掘り下げて聞くと驚くほどしっかりとした計画をお持ちであることがほとんどです。あることをやるために2年前、3年前から実は考え動いていた……そんな話は珍しくありません。

それと同時に、その驚くほどしっかりとした計画にもとらわれることがない柔軟性が、計画に偶然を取り込むフックになっていることを実感しています。アドリブが大事な時代にこそ、そのアドリブの質を高めるシナリオが重要だと言えるのではないでしょうか。

まとめます。あらためて、今日の言葉は「よいアドリブはよいシナリオから生まれる」でした。この言葉は端的に、質の高いシナリオが用意されているからこそ、それを超えていくアドリブが生まれる、そんなことを教えてくれました。

「よいアドリブをするために、シナリオを考える価値がありそうなことは何だろうか」このように考えられるかもしれません。ピンとくることがあれば、ぜひ考えてみてください。今回も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。今日もすばらしい1日をお過ごしください。

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