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『元公安捜査官が教える 「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』出版記念オンラインセミナー(全4記事)

部下の本音を引き出すコツは「わざと間違った」質問をすること 元刑事が解説する、人間の心理を活かした「会話術」

警察学校を主席で卒業した元警視庁元公安捜査官の稲村悠氏が、著書『元公安捜査官が教える 「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』の出版記念セミナーに登壇しました。稲村氏の経験をもとにした“スパイのテクニック”を、「狙った相手の本音を知りたい」「ビジネスシーンで信頼関係を築きたい」といったビジネスシーンや日常生活向けにアレンジして紹介します。本記事では、相手の本音を引き出すための「会話術」や「仕草」のポイントを解説しました。

本音、嘘、秘密を引き出す「仕草」のコツ

稲村悠氏:いよいよ、本音、嘘、秘密を引き出す仕草ですね。1番目は「雰囲気を操る」。この中には「沈黙を操る」と「不満を示す」があります。2番目は「情報を操る」。これには「情報を多く見せる」と「少なく見せる」があります。抜粋してご説明していきますね。

まずは「雰囲気を操る」ですね。ちょっとスパイっぽくなってきました。「沈黙を操る」もスパイっぽいんですが、説明すれば「そういうことね」とわかってくれると思います。

相手がいて、あなたは相手とお話をしています。そして相手が「実は、その結果〇〇だったんですが……」と説明してくれました。でも、あなたが知りたいのは「その結果〇〇」の奥にある情報なんですね。だから、これではちょっと情報が足りない。ここで沈黙を使ってみてください。ちょっと黙るんです。

今、私が黙るとちょっと居心地が悪いですよね。この居心地の悪さを利用します。そうすると、相手は「あれ? 何か考えているのかな?」「沈黙の時間が嫌だな」と思い始めるんですね。

そして沈黙の嫌な空気に負けて、「それに加えてこんなことが判明しまして」といった核心の情報を出してくる。これが「沈黙を操る」です。これはたぶん、みなさんも意外に意識せずに使っているかもしれません。

「不満を示す」ことで、相手から情報を引き出す

あとは「不満を示す」ですね。これもすごく似ています。相手が「この前〇〇さんと話をした時に」と言った時に、こっちはもうちょっと情報を知りたいとします。そういう時には不満を示してください。

「ふうん。何かな……」と言うと、相手は心の中で「あれ、信じてない? 補足しなきゃ!」と思って、「〇〇さんはこんなことを言っていて」と、核心の情報をくれる。

これは取り調べでも、特に弁解の時によく使うんですね。また、スパイ事件では出しづらい情報を出す時に使えます。「稲村さん、僕はこれだけがんばって情報を持ってきました」なんて言われた時に、「ふうん。ちょっとねぇ……」と不満を示すんですね。そうすると、そのプレッシャーに負けて追加で情報をくれるんです。

相手を不安にさせて、補足する情報を自発的にしゃべらせるテクニックですね。その時に勝手に話す情報は、本来出す予定にない情報です。だから、非常に貴重なんですよね。優先度がぜんぜん違います。

つまりそれは、情報を出してしまった側が本来プロテクトしなきゃいけない情報なんです。それを引き出すためには、意外と沈黙や不満を示すやり方が使えるんですね。

これはぜひ、悪いことをした部下が弁解している時にやってみてください。「実はこうだったんですよ」なんて言っている時に、「うーん」と不満を示してみる。そうすると「いや、聞いてくださいよ」と言って、プラスアルファで情報をくれますから。

そのプラスアルファの情報は、だいたい「嘘で塗り固められているか」「非常に貴重な情報か」の二択なので、非常に判別しやすいんですね。

「情報を操る」テクニック

次は「情報を操る」ですね。これは「なんぞや?」ですよね。簡単です。情報を多く見せるんです。あなたが相手の方と、ある案件のことを話しているとします。でも、下準備があまりできていなくて情報があまりない。「今日取り引きなんだけど、あまり話はできないな」という時ですね。

でも、事業の内容などを詳しく知りたいので相手から引き出したい。どうしますか? こういう時は、わざとらしくドッチファイルを机の上に置いちゃったりするんですよ。ドン、ドン、ドンと、わざとらしく荷物を多く見せるんですね。「これだけ調べてきました」と。

今はだいたい、ZoomやGoogle Meetで会議をしますが、チラ見せで後ろに資料を置いておく。そうすると、相手は「お! この案件のこと、けっこう調べているじゃないか」という感じになる。そして、その情報量に合わせて自分も情報を出そうとするんですね。「詳しいことを話しても良さそうだ」と思ってくれる。

ただし気をつけなきゃいけないのは、自分が見せる情報量によって相手がそれなりの情報量をくれた時に、自分の頭の中で追いつかないと会話が破綻します。だから、そこはうまく調整してください。

なので、取り繕う技術も非常に重要です。わからなくなったら「はぁ」みたいに、不満を示してもいいかもしれません。そうすると、相手は不安になって情報を出すかもしれません。これは冗談ですけどね。こういう時は不満を示してはダメですよ。普通に、そのレベルに合わせた知識を入れておくのがいいと思います。

“余計な情報”を見せることで、相手から本音を引き出す

実はこれは被疑者の取り調べでもよく使われるんですね。というか、僕がよくやっていました。取り調べの時にわざとらしく、机の上にドッチファイルをボン、ボン、ボンと置くんですよ。

そうすると、被疑者は「ヤバいぞ。俺のことめちゃくちゃ調べてきたな。言い逃れは難しそうだな」と思うんです。すると意外に弁解せず、嘘をつかずにそのまま素直にしゃべってくれるんですね。

実はこれが、民間の不正調査でも非常に有効です。金融機関のある女性社員のことを調べていたんですが、その女性社員が数万円を盗んだのが防犯カメラに映っていたんですね。

ですが、その女性は数万円のうち、例えば5万円だとしたら「2万円しか取っていない」と言ったんです。3万円の誤差があると。防犯カメラに加え、被害者のレシート、領収書から5万円がなくなっていて。ATMの履歴を見ても5万円なくなっている。3万円の誤差を埋めたかったんですね。

そこで僕はどうしたかというと、情報を多く見せたんですね。その方の人事情報はもらえるので、その方の家をGoogleマップで見てみました。二世帯住宅で、親とおばあちゃんと一緒に住んでいて、軽自動車が2台停まっていたんですね。

「〇〇さん、僕はあなたのことを相当調べているよ」という雰囲気を出したいがために、「そういえば二世帯住宅に住んでいるんだね。軽自動車も2台停まっていて、なんでそんなにお金に困っているの?」と言ってみる。すると、「え? なんで知っているんですか?」と観念するんですね。これ、情報を多く見せているんですよ。余計な情報を多く見せるテクニックですね。

「無知のふりをする」ことで、情報を引き出せる場合も

逆に「情報を少なく見せる」のは、どうやっていくのか。これは、無知のふりをするテクニックです。これは日本で起きたスパイ事件の手口です。僕は日本で行われる外国の諜報事件を相当数見てきましたが、このパターンは非常に多いです。

「すみません」と声をかけて、会社の展示会で名刺交換をしたり、単に道を聞いたり、スパイはここから仲良くなって会食をするんですよ。特に、日本で活動するスパイはプロ中のプロです。頭もいいし、何ヶ国語もしゃべれるし、本当にプロです。

そんなスパイが会食中に「先生、教えてください」と日本人に言うんですよ。日本人は外国人に対してコンプレックスがあるので、「外国の人が僕に『教えて』と言っている!」と思ってしまうんですね。無知を装って、「教えることが心地いい」という心理を利用したテクニックを相手は使ってきます。

日本人はバンバン教えちゃうし、最初は当たり前のことを教えているんですが、そのうち相手もさらに巧妙になってきて、深いことを教えてしまうようになる。そこから金品の授受を行って、逃がさないと。ちなみに金品の授受の出だしは、ほとんどが「娘さんの入学祝い」「お見舞金」とか、もらっても抵抗のないものを渡すんです。これは一例ですけどね。

ということで、こちらが見せる情報量に、相手が出す情報を合わせさせるんですね。(こちらが情報を)多く見せれば相手も多く出してくるし、少なく見せることで逆に「教えてあげたい」という親切心を利用して引き出すことができる。このように、相手の性格に応じて見せる情報量を操るんですね。

本音、嘘、秘密を引き出す「話術」

いよいよ最後のパートになりました。「本音」「嘘」「秘密」を引き出す話術ですね。これもいやらしいんですが、本の内容を抜粋しているのでご容赦ください。お付き合いくださいね。

1番目が「引き出す話術『間違い』」。2番目が「引き出す話術『2つ前』」。3番目が「引き出す話術『第三者』」。「何だこれ?」という感じですよね。1番からやっていきましょう。

ここでクイズです。チャットに答えを打ち込んでいただきたいので、準備しながら聞いてくださいね。間違って退出しないでくださいね。

では、事例を紹介します。あなたは「部下の元気がないな」と心配しています。噂によると、元気がない理由は部下がXさんにパワハラされていることだと予想されます。答えはわかっているんだけど、どうやって聞くかというケースですね。

みなさんなら、元気がない原因をどうやって聞き出しますか? 1番、「最近どう?」と話しかける。2番、「君ね、最近Xさんと話をしないでしょう?」と単刀直入にいく。3番、「なんか最近元気ないじゃん」と言ってみる。

みなさんも「これかな」と思った番号をチャットでお答えください。ご自身の意見で「こういうのがあるんじゃないの?」というのがあれば、4番と入れて自由に書いてください。

ということで、諜報会議ですね。僕が現役の時は「諜報会議」とは言わず、捜査会議みたいなんですが「朝会」と言っていました。朝に会議をするので「朝会」ですね。

1分ぐらいお待ちするのでチャットに書き込んでください。3番がけっこう多いですかね。(視聴者コメントで)「『体調は最近どう?』と聞く」というのも入ってきましたね。おもしろいですね。「見当違いの意見を言ってみる」。なるほどね。「この前Xにこんなことされてさ」とか、同調する感じですかね。やっぱりみなさん意見がバラバラで、おもしろいですね。

やって良かったなと非常に感激しています。なんとなく、3番の「『なんか元気ないじゃん』と遠回しに聞いてみる」が多いですかね。我こそは! という方は、4番に入れていただいてもいいですよ。意外に、2番の単刀直入は少なかったですね。

「誤った推測」を前提に話すテクニック

というわけで、解説していきます。まず1番にした方。「最近どう?」と言われたら、おそらく「まあまあです」「ぼちぼちです」で終わると思います。次のステップに行かず、1回目で切れちゃう。

2番の「最近X君と話してないでしょう?」。これも部下の反応をイメージしてみてください。「いや、そんなことないですよ」で終わるかもしれません。もしくは「まあそうですね。最近はしてないけど、別にそんなことはないです」とごまかされやすい。

3番の「なんか元気ないじゃん」。これも同じで、ごまかされちゃいますよね。「いや、元気ありますよ」って一言。部下に接した時のイメージがわきますよね。

答えは、「お前、Xにキツく当たっているだろ?」と逆のことを聞いちゃうんです。実はさっき「間違い」というヒントが出ていましたよね。誤った推測を前提に話すテクニックですね。おもしろいと思った方は、リアクションボタンでパチパチしてもらうと元気が出ます。でも僕、リアクションボタンがどれだかわからないので大丈夫です(笑)。

ということで、「Xさんにキツく当たっているだろ?」と間違った推論をぶつけちゃうんですよ。あ、(参加者から)拍手マークが出た。僕これ、今まで生きてきた中で一番うれしいです。もっとうれしいこともいっぱいあるんですが(笑)。

「Xさんにキツく当たっているだろ?」なんて言うと、相手の人は「いやいや逆ですよ。最近Xさん、ひどいんですよ」と言うか、「この上司は何を言っているんだ? 俺のこと見てないのか?」とムッとすると思うんですよ。

その反応で、「俺の言ったことに対して言葉を発さなくてもムッとしたな」「『こいつ、なに間違ったことを言っているんだ?』という顔をしたな」と読み取ることができるわけです。

(こちらが部下に)「そうなの?」と聞くと、「実はカクカクシカジカ」と理由を話し始める。なので、最初にストレートじゃなくて、フックのパンチを打っちゃうんですね。これ、人間の「間違いを修正したい」という性分を利用したテクニックです。すごく使えます。

あえて間違った情報をぶつけることで、真実を引き出す

ではみなさん、イメージしてください。在宅が増えていると思いますが、最近電車に乗っている方はいますか? 電車に乗っていて、隣の高齢夫婦がスマートフォンを一生懸命見ながら、仲睦まじくしゃべっています。「ほほえましいな」と思いながら、あなたはYahoo!ニュースか何かを見ています。

するとおじいさんが画面にマリオを出して、奥さんに「このキャラクターの名前なんだっけ?」と聞いています。「ああ、これはキノピオですよ」と答える奥さんに、旦那さんは「キノピオっていうのか。良かった、ようやくわかってスッキリしたよ」と言っている。

みなさんはどう思いますか。「いやいや、マリオでしょ!」って思いますよね。これ、間違いを修正したい性分が働いちゃっているんですよね。

これは子どもにも使えます。子どもは質問してもあまり答えてくれないので、僕はこれを使うんですよ。「今日は何かあった?」と聞くと、「別に」と言いますよね。例えば、今日の給食がハンバーグだったとします。そこで「今日の給食は何だった?」と聞くと、「忘れた」と上を見ながら答えますよね。「この野郎」と思いつつも、最近冷たいなぁなんて思います。

こんな時には「今日ラーメンだったでしょ」と言ってみてください。すると子どもはムキになって、「違うよ! そんなんじゃないよ!」と言うんです。それで「じゃあ何?」と聞くと、「ハンバーグ」と返ってくる。答えがわかるんですよ。

このように、わざと間違ったことを言うんですね。これは使えるので、今日のオンラインセミナーが終わった後、誰かに使ってみてください。お一人の方は鏡に向かって言ってみてください(笑)。何か返ってくるかもしれません。ということで、「あえて違う情報をぶつけて真実を引き出す」でした。

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