日本企業の会議でありがちな「検討します」問題

山本大平氏:山本大平です。簡単な経歴ですが、トヨタに大卒で入社しまして、ずっと新車開発のエンジニアをやっていました。叶えたいことがあって、テレビ局のTBSの採用を受けて転職しました。

その後、コンサルティングファームであるアクセンチュアに行って、そこで経営コンサルを学び、そのまま独立して、今はF6 Designという主にマーケティングに特化した経営コンサル会社を率いて支援しています。

本のタイトルは『トヨタの会議は30分』です。読者に一番伝えたかったことは、「疑って自分で考えようね」ということです。

執筆背景なんですが、そもそも現業で経営コンサルをやっていますので、マーケティング以外にも、組織改革や事改革のご相談を受けることがけっこうあります。まず、クライアントさんには「効率化・生産性を上げたい」というお悩みが多いというのが大前提です。

グローバルな企業さんともお取引をさせていただいている中で、日本の企業さんと世界の新興、進んでいる企業さんとのスピード感の違いを肌で感じる部分がだいぶあったんですね。

よく日本の会議でありがちなのは、その場で決めるのに「検討します」「確認します」と言うのが多いじゃないですか(笑)。でも、中国の企業やアメリカの西海岸系の企業ではそんなことはなくて、その場で合議形成を図って、ネクストアクションを決めるために会議が組まれていることがほぼほぼなんですね。

担当者間が出てくる会議で、9割方日本では「検討します」というのが多いと思うんですが、そこに大きな違いは感じますね。

9割方の会議は「30分」あれば収められる

(「1時間の会議が実は30分で終わる」ということについて)まず、定量値にこだわっているか? というところを大前提にすると、そこまでこだわってないというのが本質です。

とはいえ日本の会議って、なぜか1時間設定がめちゃくちゃ多いじゃないですか。最近、Teamsとかのオンライン会議でだいぶ減ってきてるようには感じますが、それでも半分以上はそもそも1時間設定ですよね。

じゃあ、実際に会議の場が30分で終わるのか・終わらないかというと、終わる会議もあれば終わらない会議もあります。これは極論を言いたいわけではなくて、経営コンサルをやっている中で、1時間の設定じゃなくでだいたい中央値が30分で終わるような会議で9割方収められる、という肌感があるんですよ。

コツはどういったところかというと、まずは意識改革だと思っています。「30分で会議はできない」と思ってる人がけっこういるんですが、クライアントには「1回(会議を30分で)やってみませんか?」、もしくは「1回ファシリテーションにやらせてみませんか?」という話をするんですね。

(会議が)1時間の設定だと、会社からしたら当然そこにタイムチャージがかかるわけで、大企業だと1人当たりだいたい1時間5,000~6,000円はかかるんです。(時間が)その半分だったら、2,500円浮くわけですよね。それが5人出たら、年間で(何円が浮くのか)と計算できるので、コスト削減にもなるんです。

1回やらせてみることが一番大事で、やらせてみてできなかったら、「なぜできなかったか」をもう1回PDCAを回すかたちで反省をさせていきます。

会議を30分で終わらせるための2つのポイント

(「会議が30分で終わるかは準備で決まる!」について)実は、会議を開催する前の準備の段階で、30分で終わるかどうかの運命がある程度決まっちゃいます。(ポイントは)2つあって、1つは「運営側の会議のプロデュース能力」、もう1個は「要約力」、まとめる力と言っています。

まず「プロデュース力とは」という話をします。よく日本でありがちなのは、何のアジェンダかもわからずにわーっと集められて会議をする、一番悪いパターン。こういうの、意外と多いじゃないですか。実際、たぶん3割ぐらいはありますね。

定例会はほぼそういう状態になっていて、「とりあえず出とこうか」みたいな人たちがわんさか出てきちゃうんですよね。じゃあ、会議でそういう状態になるのは誰が悪いのかというと、会議をプロデュースする運営側なんですよね。これで運命が7割決まっちゃうので、「この会議はまず何について話し合います」と(設定しておく)。

書籍の中にはお題を書きましたが、ある程度粒度が細かい状態で(会議のお題を)設定してあげると、呼ばれる側の数がもっと絞れるんですよ。「関係ない人をなるべく呼ばないようにしましょう」というのが、会議のプロデュース力でまず求められます。

今度は「呼ばれた側」に目線を向けた時に、実はこっちにメリットがあります。なんで呼ばれたかがより明確にわかるので、自分が何を用意していけばいいのかがある程度クリアになった状態で会議に参加できるんです。

あるいは明確になってない場合は、運営側のプロデューサーに「なんで呼ばれたんですか?」「何を求めてますか?」というのを、事前に電話して聞くなり、メールして聞くなりして確認しておく必要がありますよね。

そうするとお題が決まっていて、それに対して集められて、それに対してどういうアウトプットを各々が求められてるかがわかるから、当然ながら呼ばれた側は被りなく無駄がないですよね。

アジェンダがあって、それをクリアすることがゴールですから、30分で終わらすことができる。逆に言うと、運営側がお題の数が多すぎたら30分にまとまらないので、分けないといけないですから、別会議を設定すればいい。そういうやり方がプロデュース力というところにあります。

会議に招集された側にも「要約力」が必要

続いてもう1個、要約力です。これはリアルタイムで集められた場の話です。よーいドンで会議始まり、その中ではファシリテーターだけの要約力じゃなくて、招集された側も瞬時に情報を読み取って本質だけまとめる力を持っておかないといけないんですね。それがいわゆる、ビジネスシーンにおける必要な最低限のコミュ力。

よく採用要件に「コミュ力」って書いてあると思うんですが、たぶんそれ(要約力)のことだと思っています。言われたことに対して、自分のアイデアを被せてまとめて伝える力もそうだし、散在、抽象化されている情報を具体に集約する力も必要ですし、具体から抽象化への発想の導きも然りだと思うんですよね。

プロデュース力、プラス要約力の2つがあれば、無駄な会議は行われないし、無駄な会議時間の浪費も行われないだろうなと思います。

「定例をなくしていきたいんだけれども、どうしたらいいの?」という問い合わせは、クライアントさんからけっこうもらっていて。「なんで定例会をするんですか?」という本質に迫ると、結局「上司が知っておきたかった」「それで情報がシェアできると思った」というのが多いです。

ただ、これもわかりやすく改廃できる考え方の切り口があって。ちょっと古い言葉ですが、報告・連絡・相談の「ホウ・レン・ソウ」ってあるじゃないですか。定例会議であろうが、スポットで行われる会議であろうが、報告と連絡はぜんぶカットしていいと思ってるんです。

「報告」と「連絡」は会議でする必要はない

例えば、A代理店の代表が社長の前で営業の売上を読み上げるとか、これはもういらないと提言しています。

なんでかというと、報告・連絡はデジタルのチャットツールやメールやドライブとかがあるので、そこに営業成績の資料をポンッと入れて、「入れておいたから見ておいてくださいね。不明点や聞きたいことがあれば連絡ください。以上終了」で実はできるんですよ。

なので、相談というよりは実は定例会は報告・連絡が多いんですが、そこは1回スパッとやめてみたらどうですか。支障をきたす場合もたまにあるみたいなので、支障がある場合だけ復活させるとか、ある場合の定例だけを復活させるとか、そういったふうにすればよろしいじゃないですか。これはリスクゼロですよね。

だいたいそれでサジェスチョンすると、復活した試しがなくって(笑)。みんな「取りやめてよかった」「何のためにやってたんだ」という話にけっこうなっています。

会議の本質は「相談」する時間にある

あと、「相談」は会議の本質です。わざわざ多くの人が集まって議論しないといけない場を「会議」という定義をしてるんですね。何か問題が起きた時の問題解決の会議だったり、それに対して恒久対策と暫定対策をその場で決めないといけないから、わざわざ集まって議論する必要性があります。

呼ばれた部署側にとって、メリット・デメリットも、当然リスクが生じたりする方策もあったり、「いや、それは無理です」という場合もあるじゃないですか。そうすると、やっぱりリアルタイムで集まる必要があるんですね。

一方、テレビ局の番組制作である企画会議とかは、それこそ集まらないとアイデアの被せ合いにならないので、報告・連絡ではまったくないと思うんですが、そういった意味では相談をするために集まらないといけないから、やらないといけない。クライアントさんの前では、ホウ・レンの間にスパンッと線を引くように話をしています。

すばる舎から『トヨタの会議は30分』という本が出ております。会社員5年目までの若手の方に向けて執筆したんですが、どうやら蓋を開けて見ると多くの方に読んでいただいてるようで、大変ありがたいと思っています。

ここに書いてることはあくまできっかけにすぎないので、実はこの本も「口2耳8」でしか書いていないです。みなさんの想像の中で、「こうすればいいんじゃないか?」というのを付け加えて解釈していただければと思うので、よろしければぜひ書店でご購入いただければと思います。