なぜデザインを学ぶべきなのか?

大坪拓摩氏:デザインを学ぶと何がいいのかという話なんですけど、シンプルなんですよね。お仕事をやられている方であれば業績が上がります。

なんでかと言ったら、デザインのいいものと悪いものって売れ行きがぜんぜん違うんですよね。みなさんも例えば同じ金額で、きれいなものとそうでないものだったら、「同じ金額ならこっち」って選択を過去にしたことがありますよね。ビジュアルがいいものは選ばれやすい、業績が上がりやすいという事実があります。

あとは売上に寄与しなくても、ビジュアルが良かったりするとブランド価値を上げることができるんですよね。そうすると何が起きるかって言うと、その瞬間売上に差がつかなかったとしてもブランドイメージが上がるので、「またここの会社の商品を買いたい」とか、その瞬間じゃないけど「リピートするならこの商品」ってなったりするんですよね。

だから家の石鹸とか、イソップさんとかを使われる人って「イソップの何がいいの?」って聞いたら「ボトルがいい」とか言ってたりするんですよね。後々中を詰め替えたりとかしている人もいたりするんですけど(笑)。そういうおしゃれだったりデザイン的にセンスが高いと思われるものは、選ばれやすいという事実があります。

「特定の反応を引き起こすため」にはルールがある

あと評価がアップするっていう点では、さっき一番初めに見せた通り、デザインを覚えている人間からすると、きれいなものとそうでないものを作るのにかがる時間と労力は同じなんですよ。同じ時間でより高い結果を出せるんだったら、社会的評価だったり会社の中での評価が上がるのは当たり前じゃないですか。デザインを学ぶといろいろと得できるので、本当にいいんじゃないかなと思います。

「デザインセンス」って何かっていう話です。「ロジカルシンキング」って世の中的にすごく有名じゃないですか。あれとほとんど似ているなと自分自身は思うんですけれど。

何かと言うと、デザイン自体、そのデザインを見てくれた人の印象を決めたりするんです。「かっこいいな」とか「かわいいな」とか「きれいだな」とか「すてきだな」っていう印象を変えたり。

あとは見た人の反応ですね。買うとかクリックするとか手に取るとか、人に広めるとかシェアするとかSNSで投稿するとか、デザインはそういった反応を引き起こす仕掛けなんですよね。

よく多くの人が勘違いしてしまうのは、なんかデザインって見た目をきれいにするとか、そういうふうに勘違いしてしまう。確かに感性って千差万別で、今日来てくれているみなさんも、何をすてきと思うかとか何がかっこいいと思うか。そもそもかっこいいのが好きなのか、きれいが好きなのか、かわいいのが好きなのかってばらばらじゃないですか。

デザインをビジュアル要素で捉えるとものすごく難しくなるんですけど、「特定の反応を引き起こすため」だったら、ルールがあるんですよ。人に好きになってもらうためにはどういうコミュニケーションを取ったらいいとか、あったりするじゃないですか。あれと同じなんですよね。

デザイン5つの誤解あるある

なのでロジカルシンキングと同じです。「見た人の印象をこういうふうにしたいからデザインはこうする」とか、「こういう反応を取りたいからデザインはこうする」とか、「こういう展開を促したいからこういうデザインにする」って、答えは決まっているんです。

あとデザインが難しいってよく勘違いされてしまう方もいらっしゃるんですけれど、「デザイン5つの誤解あるある」です。

やっぱり「生まれつきの才能なんじゃないか」って勘違いされる方もいらっしゃいます。この中にもそう思っている方はいらっしゃるかもしれないですけど。あとはですね、職人とかによくあるあるあるなんですけれど、「見て覚えろ」とか、教われるものじゃないって思っている人もいたり。

あとはある程度年齢が進むと、「今から学んでも若者のデザインにはついていけないんじゃないか」っていう勘違いとか。あとは「今更学んでも、稼げないんだったら学ぶ意味はないんじゃないか」とか。

「流行り廃りについていくのは大変そう」っていう誤解をされる方がいらっしゃる。今日いらっしゃる方にもね、もしかしたら当てはまる部分はあるかもしれないですけど。

デザインセンスは練習すれば才能なんか要らない

これが誤解と言える理由について、例えば1個目の「生まれつきの才能なんじゃないか」っていうところで言えば、「センス」って直訳すると「感覚」ですよね。みなさんのお母さんとかって料理とかをしてくれましたよね。みなさんが小さい頃とか。いちいち全部計量カップとか、肉とかグラムとか量って作ってました? 作ってないですよね。

今料理できる人たちとかもそうかもしれないですけど、初めはクックパッドとかで分量をきっちり量って作るじゃないですか。慣れてくると量らなくなりますよね。あれ、なんでですか? 「どうやってそれができるようになるの?」って言った時に、みなさんはなんて答えます? 「いや、なんとなく。感覚」って言いますね。

感覚ってつまり、持ってない人からするとできている人はすごいってなるけれど、感覚を身につけた側からすると、初めは決められたことを繰り返して、慣れてきたら感覚ってなっただけなんですよ。

だからデザインセンスもまったく一緒で、初めのうちはルール通りやっていくレシピがあるんですけれど、レシピを何回も何回も繰り返して再現しているうちに、そのうち別にレシピなんか見なくても作れるようになるのがデザインなんですよ。まったく一緒です。ただ練習すれば才能なんか要らないっていうのが、デザインセンスに言えることです。

デザインは覚え方にもルールがある

あと2つ目。「教われるものじゃない」っていうことなんですけれど。これは感覚で覚えた人たちにあるあるなんです。確かに本人は感覚で覚えてきちゃっているんで、人に教えられないっていうケースがよくあるんです。

教え方がわからなかったり、覚え方が今まであまり再現性を持たせられてなかっただけで、実は覚え方にもルールがあります。ちょっとそのルールを細かく説明すると、さすがにこの時間だけで終わらなくなっちゃうんで、この本をぜひ読んでいただければなと思うんですけれど、ちゃんとルールがあります。

3つ目。「学ぶには遅すぎる」っていう方もいらっしゃるんですけど、デザインセンスは、さっき言ったレシピと同じなので。クックパッドって対象年齢とかないじゃないですか。「80代だったらもう遅いですよ」とかならないですよね。知識なので年齢は関係ないです。

なので、うちはデザインスクールをやらせていただいているんですけど、80代の方とかいらっしゃるんですよ。80代の方が遅くないならば、みなさんも全員遅くないじゃないですか。知識だから年齢関係なく、日本語が通じれば誰でもできるようになります。

時代の流行り廃りがない、結果を出し続けられるデザイン

あと「学んでも稼げない」ということも言われます。ただこれはありがたいことに、ちょっと意味がわかりにくいかもしれませんが、「デザインは学びにくくて稼げない」といろんな人が思ってくれているからこそ、覚えた側からしたら稼げるんですよ。

「参入障壁」っていう言葉わかります? 「始めるのはちょっと大変そう」ってみんなが思ってくれているから、できる側からするとものすごく簡単なんですよ。できるようになった後、他の人たちは難しいと思ってくれているので、ライバルが増えにくいんですよね。これがものすごく“おいしい”のはわかりますよね。だからデザインは稼げるんですよ。

次に「流行り廃りが大変そう」っていう話ですけれど、自分がこの本に書いてあることもそうですし、社員とかスクールで生徒さんに教えていることなんですけれど、流行り廃りは基本教えないです。むしろ流行り廃りを追っかけていると、自分がデザイナーとして稼げる波ができちゃうんですね。

このテイストやこのデザインは得意だけど、このテイストは苦手とかになると、稼ぎが乱高下しちゃうじゃないですか。トレンドと自分の得意・不得意が合わなかったらお金が稼げないっていう話になっちゃう。

でもさっき話していた通り、デザインっていうのは「特定の反応を引き出すための仕掛け」なんですよ。これに流行り廃りなんかないんです。人間心理なんて流行で変わらないですよね。例えばパートナーとか結婚相手とかがいたら、「去年は良かったけど今年はない」とかないじゃないですか。人間心理はそんな流行り廃りなんてないんですよ。

みなさんに自分がよくお伝えしているのは基本的に変わらない、人間心理に基づくデザインのルール。なのでみなさんも、やっぱりこの本に書いてある内容ですけれど、そういった時代によって変わらないものを覚えるほうに脳みそのスイッチを変えてもらうと、稼ぎ続けられますし、結果を出し続けられるって言えるかなと思います。

「デザイナー任せ」は、売上で損をしている可能性がある

あとデザインを学ぶといいことなんですけど、公私共にビジネスとか、お仕事とかプライベート共に得します。1個目。まずデザイナーになれるっていうところは当たり前ですよね。デザインを覚えたらデザイナーになれます。

2個目がけっこう重要なんですけれど、自分は今起業家を教えることとかも仕事でしていたりするんですけれど、起業家の人で「自分はデザインがわからないからデザイナー任せ」って言って、売上をすごく損している方がけっこう多くいらっしゃるんですよ。「自分はデザインがわからないんで、デザイナーに任せてます」って。

でも、さっき言った通りデザインは反応を変えちゃうので、デザイナー任せって要は売上をデザイナーに任せるっていう状態になるのが、わかりますよね。どこかにデザインを発注してデザイナー任せって、ものすごくリスクが高いのがわかります?

自分である程度デザインがわかるようになると、デザイナーを有効活用できるようになるんですよ。それって、ものすごくいいですよね。

学ぶ過程で、人に伝えるのがより上手になる

あとデザインは伝え方、要は相手にどういうふうに伝わるか、どういう印象を持ってほしいか、どういうふうに動いてほしいかっていう話なので、これを覚えていく、学んでいく過程で、みなさんは「人に伝えるのがより上手になる」という副次効果があります。

あとセンスを褒められることが増えますね。デザインって色とか大きさとか素材感とか、どういう「印象」を何を組み合わせるのかを学ぶんですけれど、それができるようになると、ふだんの私服の選び方とかも上手になります。

たまに友だちにもいると思うんですよね。なんか「この素材とこの素材は合わないよ」とか「この色とこの色は合わないよね」とか言う人がいると思うんですけど、デザインはそういうのを覚えていくプロセスなので、プライベートでそういうミスがなくなります。