2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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ーーちょっと抽象的な質問になりますが、現代を生きる人にとって副業を持つ意味や価値とは何でしょうか?
黒田悠介氏(以下、黒田):人は、Aの活動、Bの活動、Cの活動と、活動に時間を投資して生きていきます。それが家庭と会社の人もいれば、地域とかコミュニティの人もいて、時間の投資をどうするかは非常に重要です。副業は、そのバリエーションを増やし、ポートフォリオを健全化してくれるものだと思うんです。
例えば仕事だけに時間を投資した人が必ずしも幸せになれないケースってあると思うんです。それはお金しか得られないとか、そこでの地位しか得られないなど、仕事から得られるものが限定的だからだと思うんですね。
じゃあ健全な人はどうしているかと言うと、仕事で得られないものを仕事以外の場で得ているんです。仕事以外の場にちゃんと時間的な投資をして、そこからポジティブ感情や安らぎ、貢献している感じ、承認されている感情などを得ている。なので、1つの時間的な投資でバランスを取るのは非常に難しいし、ほぼ無理ゲーだと思っています。
1つの活動でいろんなものを得ることはたぶんできないので、自分が幸せになるために必要なものをちゃんと得られるように、時間的な投資のバランスを取るという点で、副業は有効だと思いますね。
ーー『ライフピボット』で挙げられた「8つの報酬」のバランスですね。「スキルセット」「人的ネットワーク」「自己理解」「ポジティブ感情」「達成」「没頭」「意味」「金銭」の8つのバランスを取ると。
黒田:そうなんです。8つすべての報酬のバランスを取る必要はないので、自分が重視している報酬がちゃんと得られるようにポートフォリオ化する感じですね。
ーーバランスを取るためにピボットを繰り返していきましょうと。
黒田:そうですね。ピボットを繰り返していく。もしくはピヴォタビリティ(pivotability)をちゃんと持ち、ピボットしたい時にできるようにしておく。転職しなくてもいいし、起業や独立しなくてもいいので、ピボットしたい時とかしなきゃいけない時にできるように考えていきましょうということですね。
ーースタートアップからフリーランスになったり、大企業で副業をする人が増えると、「時間的な投資のバランス」を取れる人が増え、結果的に「幸せ」を感じる人も増えそうですね。
黒田:そう思います。PERMAモデル(ポジティブ心理学を創設したマーティン・セリグマン氏が提唱。ポジティブ感情・没頭・関係性・意味・達成の5つの英単語の頭文字)とかで、ウェルビーイングに必要な要素が説明されていますが、今はそれを満たしやすくなってきているのかなと思います。
一方で、企業側も人手不足が取り沙汰される時代です。一人ひとりが会社の中に閉じ込められていたら全体最適はできませんが、一人ひとりが複数の会社に所属したり関わることができるようになれば、人手不足も一定は補えていけると思うんですよね。
例えば、10社ぐらい会計のサポートをしているフリーランスの会計士さんとかがいますが、その人を1社で雇うとその1社でしか役に立てません。でも、フリーランスで10社に関わることで10社分の働きができるわけです。人手不足や労働人口の減少みたいな日本の状況では、なおさらいい流れではないかと思います。
ーーインタビュアーとして個人的にお聞きしたいのですが、黒田さんがディスカッションパートナーをされる時に意識していることはありますか?
黒田:相手の思考の枠組みみたいなものを見つけたら、その思考の枠組みの外側の話をしようと思っています。思考の枠組みの中ってその人はめちゃめちゃ考えていたり、当事者としてめちゃめちゃ取り組んでいたりするので、その外側には「こんな考え方がありますよ」と枠組みを揺らしたり溶かしたりする問いかけをします。
「こういう考え方はありますか?」とか「これについてはどう思いますか?」みたいなことを聞いたりしますね。それは、私の中でも学びになったりします。
ーー枠組みの外側の視点や考え方を提示して、その中で対話を重ねることで新しい気付きを得られるということでしょうか。
黒田:「自分が変われる」という自己認識や、自分の可塑性を信じているかどうかが重要だと思っています。私自身いろんな人と話す中で、自分の認識や考え方、行動が変わる経験をすごくしており、「たぶん何歳でもこうやって変わっていけるんだろうな」という感覚があるんですね。
これがないと、「今の会社で一生働くしかない」「フリーランスになったからには、もうフリーランスでやっていくしかない」といった謎の背水の陣みたいになったりする。
「まだ変化できる」という自分の可塑性を信じられるかどうかは、日々の自分がちょっとずつ変わっていることの自己認識だと思うんです。なので、いろんな人と話して価値観を揺さぶられたり、自分の行動が変わる経験をすることが大切だと常々思っています。
どうしても話が通じる人と会話をしがちですけど、話が通じない人と話さないといけないと思いますね。「また会いましたね」とか「世間は狭いですね」というのは、世間を自分で狭くしているだけなんです。
ーーそれがまた、仕事が生まれるというところにつながっていくんでしょうね。
黒田:人というか動物はそもそもルーティンで生きたほうが楽だし、予測可能性も高いので、できるだけ同じことを繰り返して生きていこうとします。でもそれだとピボットできないし、世の中が変わっても変われない自分になってしまう。
なので週に1回やったことのないことをやるとか、会ったことがない人に会うみたいに、「いかにルーティンを踏み外すか」を意識したほうがいいと思います。
ーーフリーランスや副業を続ける上でも大切なポイントですよね。
黒田:そうだと思います。ある意味大きな船に乗っていたらその船と一緒に進んでいける可能性があるし、スタートアップはスタートアップで業界の伸びと一緒にそのまま進んでいける可能性がある。どちらもその中でがんばっていれば報われる可能性はあると思うんですけど。
フリーランスや副業では、ちっちゃな船を自分で漕がなきゃいけないので、漕ぎ方を忘れないように、どっちに向かって漕ぐかを考えながら常に漕ぎ続けないといけない。自分が変化できるとか自分で進んで切り拓いていけるという確信、コンフィデンスみたいなものがやっぱり重要だと思います。
クリエイティブコンフィデンスみたいに、「自分はクリエイティブである」という認識があると、実際にクリエイティブになるという研究もあったりするので。そういうピヴォタブルコンフィデンスみたいなものがあれば、たぶんその人はちゃんとピボットできると思います。
ーーありがとうございます。最後にあらためてフリーランスや副業を目指す人に向けたメッセージをお願いします。
黒田:副業にしろフリーランスにしろ、それで成功しなきゃいけないと思わないほうがいいと思います。あくまでそれは実験であって、実験結果として何かが得られたらそれでオッケーだと思うんです。成功か失敗かみたいな捉え方ではなく、成功か学習かみたいな感じですね。
成功したらそれでオッケーだし、失敗してもそこから学びが得られるのでオッケーという感覚でやってほしいと思います。「ぜんぜんうまくいかない」という時も「今めちゃめちゃ学んでいるな」と捉えたほうがいい。自分を使った実験を楽しむ感覚でフリーランスになったり、副業したりしてみるといいのかなと思います。
最悪、元の会社に戻ればいいですし、副業だったら辞めればいいだけなので(笑)。許容可能な失敗の範囲内で健全な失敗をする。実験と捉えて、それを楽しむことかなと思います。
ーー貴重なご意見をたくさん聞かせいただきました。本日はどうもありがとうございました。
黒田:ありがとうございます。
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