2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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小田木朝子氏(以下、小田木):(人材定着が難しい“本当の課題”について)伊達さんの3つを聞いて、全体を俯瞰しながら話を進めてまいりましょうか。
伊達洋駆氏(以下、伊達):承知しました。
小田木:じゃあ、伊達さんもお願いします。
伊達:沢渡さんのまとめ方のうまさに驚いて、そのあとにうまくまとめられない感じなんですが……。
小田木:「ハードル上げやがって」と言っていいですよ。
(一同笑)
伊達:さすが作家だなと思いました。
沢渡あまね氏(以下、沢渡):ありがとうございます。そこを指摘されるとめちゃめちゃうれしいです。
伊達:私は物書きに向いていないことを、今から見せつけていきます(笑)。
小田木:(笑)。
沢渡:伊達さんには「さすが研究者」といつも思っていますから。
伊達:ありがとうございます。1つ目の課題ですが、基本は人材定着のためには周囲からの支援が必要です。ところが社会人になったあとに新しい環境に行くと、「一人前の人がやってきた」と思われがちなんですよね。
例えば、転職だと「即戦力」という言葉もあります。「一人前の人がやってきた」と思われるので、支援が必要にもかかわらず、支援があまり行われない。これが1つ目の課題です。
2つ目はなかなかやっかいで、新しい環境に移行してきた人に対して支援をどんどんしていくと、支援された本人は申し訳なさを感じるんですね。
沢渡:すごくわかる(笑)。
伊達:「やってもらってばかりで自分は大丈夫かな」という気持ちになってしまう。これが2つ目の課題です。支援は必要ですが、されにくいというのが1つ目。2つ目は、支援されてもたくさんされると申し訳なく思ってしまうことです。
沢渡:日本の職場の着任時の挨拶あるあるで、「わからないことだらけでご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」文化。
小田木:その挨拶、めっちゃあるあるですね。
沢渡:ここがすごくマインドやカルチャーを示しているのかなと思いました。
伊達:3つ目は「アンラーニング(学習棄却)」です。今まで学んだことを部分的に棄却する。新しい環境では違うことを学んでいかないとダメなので、場合によっては今までのやり方を捨てなければならない。これはすごく難しいんです。慣れ親しんだ方法や、自分がうまくいくと思っているやり方をいったん捨てる必要がある。
沢渡:今、人材開発や組織開発の領域でも「アンラーニング」は注目されているキーワードですが、オンボーディングの文脈でもアンラーニングを機能させる必要があるということですね。
伊達:そうです。
小田木:ありがとうございます。3つ出揃いました。
沢渡:さすが伊達さん、掘ってくるなぁ(笑)。ズドンと腹落ち。
小田木:みなさんも、「めっちゃ共感」「確かに課題だ」と思うものを、チャットで「沢渡の2」「伊達の3」という感じでリアクションください。
沢渡:僕、そういうの詩的で好きです。
(一同笑)
小田木:沢渡さん、伊達さん、全体を俯瞰していただいてどうですか?
沢渡:「伊達さんの1」が人気高いな。
小田木:「伊達さんの1」がけっこう共感がある感じですかね。
沢渡:「伊達さんの1」の、人材の定着の支援が必要なのに支援されない課題は、お互い悪気がなかったりしますよね。
伊達:そうですね。
沢渡:受け入れるほうは「一人前の人が即戦力で来たのだから、とやかく言うのはプロに対して申し訳ない」と思っている。着任した人も「中途で即戦力を期待されたのだから、周りにあれこれ聞くのは申し訳ない」とか。人には当然プライドがありますから、プライドが邪魔してしまって頼れないという問題もあるかと思います。
もちろん多少は悪意を持ったというか、「即戦力? 前の会社ですごいことやってきたんだって? お手並み拝見といこうじゃないか」と、人を舐めるような目で見る現場もあったりするとは思うんですが、お互いが悪気ない場合もあるのかなと思いました。
小田木:転職も異動もそうだと思いますが、「新しい場所でうまくやりたい」というのが当事者の正直な気持ちだと思うんです。
なので、うまくやろうとすればするほど、支援やレクチャーを受けながらオンボードしていくのが必要なんだろうけど、いろいろ支援を受けている中で「お役に立てなくて申し訳ないな」「自分、こんなにできなかったっけ」と、自己肯定感が下がっていくモヤモヤや苦しさが手に取るように想像できますよね。
沢渡:そうですね。
伊達:そのとおりだと思います。「地獄への道は善意で舗装されている」という格言もありますよね。
沢渡:いいことをおっしゃる。
小田木:メモしていいですか。
伊達:正確なのは調べていただきたいです。
小田木:ググってねと。
伊達:よかれと思ってやっていることが、実はよくないかたちになってしまっている。私が挙げた1つ目の課題は、それこそ小田木さんの著書の「助けを求める」というヘルプシーキングの難しさにも関連しているのかなと思います。
支援を求めると、「能力が足りていないんじゃないのか」と思われる恐れがあるわけです。そういうことを懸念して、なかなか助けを求めない傾向があるんですが、結局その態度は自分で自分の首を締めてしまうという、難しい問題を含んでいるなと思います。
沢渡:評価制度の問題もあるかもしれないですね。オンボーディングは文化の擦り合せなどもありますから、ある意味で中長期軸の行為でもあるじゃないですか。その支援がない状態で短期的な成果だけを求め過ぎると、本人もマネージャー側もプレッシャーに感じてしまう。「この人を早く一人前にしなければいけない」みたいなね。
伊達:思い出したんですが、数年前に「即戦力のためにはどうすればいいか」という取材を受けたことがあります。その時、最初に「即戦力は無理ですよ。基本的にどんな人でも慣れるまでには時間がかかりますよ」という話をしました(笑)。
沢渡:そうですね。
伊達:それこそ、沢渡さんが挙げられた用語のズレや仕事の進め方、期待役割は、環境によって違ってくるわけですよね。そういうものに慣れていく期間は、まったく同じような仕事に見える場合でも必要です。そうしたことをお伝えして、「これは企画倒れですかね」という雰囲気になったことがありました。
小田木:企画倒れ(笑)。
伊達:記事にはなりました(笑)。
沢渡:素晴らしい。
小田木:でも、まさに的を射た記事じゃないかなと思いました。即戦力を求めることを否定するというよりも、なるべく早くオンボーディングして、戦力になってほしいと思えば思うほど、支援が必要な期間を本人も周りも受け入れるというイメージですよね。
伊達:そうですね。
沢渡:中長期的なオンボーディング計画を作るのはすごく大事だと思います。私が企業にアドバイスする時は、「目安として3ヶ月のオンボーディング計画を立ててください」と言うことがあります。
例えば、ゼネコンのように1年、2年、3年かけてプロジェクトを組んでいくようなものは3ヶ月じゃ足りないかもしれないので、そこは業界や製品・サービスの特性に応じて変えたほうがいいとは思います。
3ヶ月くらいやってみると、大抵は四半期単位で仕事が一回りしたり、関わる部署とも一通り関わることができるのかなと思います。そういう中長期の軸でオンボーディング計画を立てていくのが、すごく大事なのかなと思いました。
伊達:そのとおりだと思います。新しい環境にやってきた本人にも、「こういうステップであなたは今から仕事や環境に慣れていきますよ」とステップを示していけるのは有効です。
ステップを示されると、「自分にもできるかもしれない」という気持ちが芽生えてくるんですよね。その自信が行動を起こしていくために大事なので、計画を立てて本人に共有していただければと思います。
沢渡:間違いないですね。
小田木:コメントでも「関心・関与と柔軟性が大事じゃないか?」「スキルは即戦力レベルでも、カルチャーギャップへの慣れは必要ですよね」といただいております。
沢渡:そうですね。テレパシーがない以上、ステップを示すことは大切。
小田木:まさにテレパシーがない状態(笑)。
沢渡:「現場の担当者同士のテレパシーに依存します。以上」みたいなね。
小田木:ありがとうございます。課題から、まさに「どうすればいいか」という話まで出つつあるかなと思います。
次のステップに進みまして、上手くオンボーディングさせるためのポイントを6ヶ条にしたいなと思っています。3つずつまとめていただいてもよろしいでしょうか。先ほど出てきた着眼点も含めて、ぜひ言葉にしていけたらいいなと思います。
沢渡:今回は伊達さんからお願いしましょうか。
伊達:順不同で挙げていきますね。
沢渡:絞るのが大変。
伊達:1つ目は体系的な支援が必要です。「体系的」というのを具体的に言うと、事前に準備された支援です。新卒の社員を受け入れる時は事前に周到に準備していますよね。その時のような、事前に準備した支援が有効です。
2つ目ですが、先ほどのような「支援されるばかりでは申し訳ない」という気持ちを、学術的には「負債感」と言いますが、負債感を減らしていかなければなりません。
例えば、新しい環境にやってきた人が周囲に対して貢献できるポイントを探り合う。「自分はこういうことなら周囲に対して役に立てる」ということを、本人だけではなくて、周囲の人と一緒に考えていくことが重要です。
沢渡:ほう! いいですね。貢献できるポイント。貢献実感。
伊達:そうです。貢献ポイントを探る。
伊達:3つ目はアンラーニングです。これは難しいですね。イベントなどで「アンラーニングをなかなかしてくれなくて困っているんです。どうしたらいいですか?」というご質問をよくいただきます。これまでの学びを棚卸ししていくことが大事になります。
「こういうふうに仕事を進めたほうがうまくいく」「こういう人に先に根回ししたほうがうまくいく」など、それぞれの人が仕事がうまくいくための持論を持っていると思うんです。新しい環境にやってきた本人が、そういう持論を棚卸ししていきます。
そこで棚卸しされた持論を周囲は尊重しましょう。アンラーニングは「棄却する」という意味を含んでいるので、否定する感じになってしまうと……。
沢渡:「ダメ出し」みたいなイメージでも捉えられやすいですよね。
伊達:そうなんです。「ダメなところ」と捉えないで、それはそれで貴重な学びの産物でもあるので尊重してほしいんですね。その上で、変えるべきところと変えなくていいところを、周囲の人と本人が一緒になって考えていきます。
沢渡:「対象者と受け入れる組織側にとって、なぜ準備が重要かを少し補足していただけるとありがたいです」とコメントをいただいています。
伊達:これは学術的にも研究されているテーマで、受け入れ方には「事前に準備されたものである場合」と「即興的なものである場合」の2つのパターンがあります。どちらのほうが適応がうまくいったかというと、前者だったんです。
理由の1つは即興的に受け入れると、必要な支援が提供されていないケースが出てくるんですね。もう1つは、事前に準備することによって、プロセスを示すこともできるようになりますよね。
沢渡:すごく腹落ちしました。ありがとうございます。
小田木:めっちゃ腹落ち解説。ありがとうございました。
沢渡:もう1つ私からもいいですか? 私は「人の受け入れの準備をするプロセスは、それ自体が組織開発だと思ってください」という言い方をしています。例えばみなさんも経験があると思いますが、人に引き継ぐために作った引き継ぎ資料は、新しい人に業務を引き継ぐだけでなく、その人の業務の属人性排除になったりするじゃないですか。
それによって、新しく引き継いだ人が休んだ時に引き継げたり、引き継ぎ資料を作ってプロセスを見える化する行為で無駄に気づいて、無駄なプロセスを削除できます。すなわち人の受け入れ準備は、「これから受け入れる新しい人のためにやる」というメッセージングだとうまくいかないんですね。
場合によっては、「なんで新しく来る人のためにそこまでチヤホヤしなければいけないのか」と思ってしまう人もいるんですが、そうじゃない。「これを機にチームや業務の属人性を排除したり、冗長性を高めていく。それ自体がチームの成長のプロセスです」という意味づけをしてほしい。
要は、チームが変化に強くなるんですよね。人が休んだ時の引き継ぎや冗長性の確保、または部署の組織体制が変更になった時に慌てなくて済む。「チームが変化に強くなるプロセスです」というメッセージングをしてほしいなと思います。
伊達:沢渡さんの3つに移る前に話し過ぎかもしれないですが、今の話でおもしろいことを思い出しました。今からややこしいことを言いますが、新しい環境に適応することはいいことばかりじゃないんですよ。
基本的には適応することは大事だとは思います。しかし、いい側面ばかりではありません。おもしろい研究があるんですが、お酒をたくさん飲む習慣がある職場に新人がやってきました。その新人はお酒を飲むことを強制されていないのに、お酒をたくさん飲むことを覚えるんですね。
沢渡:わかります(笑)。
伊達:これはよくないものが引き継がれている例です。適応においてはいいものも引き継がれますし、よくないものも引き継がれていきます。
伊達:ここで先ほどの沢渡さんの話につながっていくんですが、事前に受け入れの準備をすることによって、ふだんの仕事の進め方や自分たちの価値観が本当に適切なのか、効率的なのか、効果的なのか、ウェルビーイング的にいいのかを見つめ直す機会にもなります。
準備自体が組織開発や業務改善の機会にもなる。引き継ぐべきものを引き継いでいくことにもつながるので、準備は大事だなとあらためて感じました。
沢渡:めちゃめちゃ腹落ちしました(笑)。ありがとうございます。
小田木:頷きしかないですね。
沢渡:本当に。
小田木:メモがすごいことになって、枠を超えてしまいました。
沢渡:これだけで1冊出せそう。
小田木:もうかなり充足感たっぷりですが、沢渡さんの3つも聞きたいので次に行っていいですか?
沢渡:「『何で女性のためにわざわざ』という、よくあるイケていない女性活躍推進と一緒ですね」というコメント、うれしいですね。そうなんです。大義名分としては女性活躍推進や新人の受け入れでいいと思うんですが、そこから先の関連して解決するキーワードをきちんと意味づけしていくことが大事かなと思いました。ありがとうございます。
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