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法人営業「採用せざるを得ない提案書」作り方セミナー(全4記事)

今のお客さんは「ソリューションの提案」だけでは動かない 大型案件の受注も実現した、採用につながる「提案書の型」

法人営業コンサルタント ジャパンセールスマネジメント主催の「法人営業『採用せざるを得ない提案書』作り方セミナー」に、『法人営業はリーダーが9割』の著者で、元オムロンのカリスマ営業マン/営業部長の中村昌雄氏が登壇。マーケティングの原理原則や、「How」「What」と「Why」の違いなどが語られました。

意思決定に関わる人たちの思惑

中村昌雄氏(以下、中村):第2部のまとめ「複数人の意思決定プロセスを徹底的に追う」について、いかがでしょうか。お気づきのところがあれば、一言ずつお願いできればと思うんですけど。今度はさっきの逆で、モリイさんからいきましょうか。モリイさんは決裁者さんなので(笑)。

モリイ:そうですね。やっぱり決裁者のところに来る人は多いなというのはあります。

中村:(笑)。

モリイ:自分は逆に、中村さんも言われた技術担当とか、そっちに先に話をしてみるかたちで振りますね。

中村:そうですよね。ありがとうございます。直接お声が聞けて良かったです。イトウさん、いかがですか。

イトウ:今のお話は、私がトップを取ってもダメだった事例のまさに裏付けになったと思うんですけど。関係者の人たちの、それぞれの利害があるじゃないですか。

中村:そうですね。

イトウ:みなさんそれぞれ思いがあって、大義名分は会社のためだけど、実は例えばちょっと手柄を上げたいとかね。個人的なそれぞれの思惑もあるので、営業をやっていた当時は、そういうのにも注意しながらやっていたことを今すごく思い出しました。法人に当たる上では、やっぱりそういうのを考えていく必要があるとあらためて思いました。ありがとうございます。

中村:そうですね。人間模様がありますからね(笑)。ありがとうございます。ナクイさん、いかがでしょうか。

ナクイ:すごく参考になりました。私も決裁者さんとお話しすることが多いんですけど、その中で決裁者さんから、現場を仕切っている人が「ぜひに」と私を推してくださっているという話を聞くことがあります。

けっこう私に当たりがきつい人だったんですけど、実はそういうふうにしていただいていたということが何回かあったので、今のはすごく勉強になりました。

中村:ありがとうございます。サイトウさん、いかがです?

サイトウ:やっぱりどうしても「決裁者につながりたい」とか「決裁者につながれば」と思ってしまうところがあったので、意思決定にこれだけ周りの人が関わっているというのはすごく勉強になりました。

中村:ありがとうございます。決めつけではないんですけど、お客さんごとに、こういうところも注意してやらないといけません。お客さんごとに違いますからね。そこをどう見極めるか、情報を取っていかなければいけないんですよね。

何の情報を取らなければいけないかとか、誰に当たらなければいけないかとかも、現場ではお客さんごとに綿密に違って、営業部隊は一生懸命そこを考えている。そういう細かいところに難しさがあったりします。

「ソリューションの提案」だけでは採用されにくい理由

中村:それでは3つ目。「誰が見ても採用せざるを得ない提案を作る」ですね。採用せざるを得ない提案とは何かと、私、10年間ぐらい研究をしたんですよね。

おさらいですけれども、昔は「御用聞き営業」が流行っていた時があります。売る人のほうが強く、買う人が多い場合ですね。買う人が多いから、KPI的には、売る間口をどれだけたくさん作るかが戦略になっていた時代がありました。だから松下電機さんはナショナルショップを日本中のあちこちの町に作った。

あとは、2日に1回顔を出す営業マンより、毎日顔を出す営業マンのほうが売れるみたいな、御用聞き営業の時代がありました。

それから、「商品営業」。競合が出てきて、いい商品でないと売れないので、いい商品を作るという時代がありました。

いい商品を作っても売れないという時代になると、お客さんがやりたいことは、そもそも課題を解決したいんや、と。お客さんの課題を聞いて解決する提案をするという「課題解決営業」「ソリューション営業」というのが言われました。

もう長いこと言っていると思います。たぶん1990年代にはソリューション営業とか課題解決営業という言葉を使っていたので、20年か30年ぐらい言っているんじゃないかと思います。いまだに「営業とは、課題解決営業だ」という認識があると思いますが、今回私は「アカウント営業」という言い方をしています。

課題解決営業が流行ったのは、お客さんが課題解決の方法がわからなかった時代があるんですよ。「こんなことを言われたけど、どうやったらいいのかわからない」というところに、プロとして専門のメーカーさんが行って「こうしたら課題が解決できますよ」「ああ、そうですか」ということで喜んでもらう。

今は商品・サービスが世の中にたくさん出回り、ネットワークに常時接続して調べることもできます。自分が持つ課題に対する解決策、ソリューションにどんなものがあるかはだいたい知っているんですよ。どこがどんなものを提供していて、いくらぐらいかをだいたいわかった上で、「こういう課題があるんだけど」と話が来るんです。

購買活動の際、お客さんの57パーセントが、情報収集が終わってから企業に声をかけると言われています。そこに対して提案すると「やっぱりそうですか。安いほうから決めますわ」と言われたり、「あんまり変わらんのやったら、安心やから今までお付き合いしていたところと付き合います」となって採用されにくい。価格を下げて無理やりその商談を取っても、忙しいだけで利益が出ない、みたいになります。

マーケティングの原理原則

中村:アカウント営業とは、さっきも申し上げましたように、お客さんがやりたいことを一緒に実現するというやつですね。「お客さん、課題がありますよね。でもなんでその課題がそのまま課題としてあるんですか? そもそもお客さんがやりたいのはあれでしょう? それを一緒にやりましょう」とかね。

ソリューション営業は、顕在課題に対する解決策なので、ここに商談に入るとなかなか厳しいものがある。アカウント営業は根本課題。お客さんが本当にやりたいところを見据えて、「お客さんが本当にやりたいのはこれでしょう?」「そうだ。やり方はあるんか」「ありますよ」とか。

「お客さんがやりたいのはこれでしょう? 今これに取り組もうとされていますけど、これがやりたいんだったら取り組みはこっちのほうですよ」「え、これと違うの? そっちをやらなあかんの?」みたいなところを提案してあげるとか。

そうすると既存の売り込みをやっていたところと差がつくことになる。アカウント営業は根本課題を解決するお客さんとの関係性ということです。けっこう難しいんですけれども、こうしないことには入れませんし、こうすることで私は、時間はかかりますけど何千万円とか何億円の切り替えを実際にやってきています。

「アカウント」とは、こういう言い方はあんまりですけど、ググっても最近出てきます。ぽつぽつと「アカウント営業」という言葉が浸透してきている感じかな。アメリカで言うと「account based management」とかいう言い方になります。

アカウントは「口座」という意味もあるし、「責任を持つ」という意味もある。今「アカウントオブ何々」で「私は何々のお客さんの担当です」という言い方もあるんです。その会社さん全体に責任を持つような営業、という意味合いなのかなと思いますね。

「提案の価値 ー 支払う価値 = 感じる価値」とスライドに出ていますが、「マーケティングの原理原則」というのがあって、例えば、お客さんが100の課題を持っていると。そこに100の提案が来る。100の課題に対して埋める提案が100来たら、感じる価値はゼロということで、価格競争に陥ったりします。

でも100の課題のところに200の提案が来たらどうですか。「おお!」となるんですね。これが、さっき言った、想定していた姿より、もっと上の姿を提示されて、心が動いて行動が生まれるということになります。

「How」「What」と「Why」の違い

中村:では、200の提案とは何かという話を突き詰めなければいけません。これが足りなかったら落胆という話になります。これは見たことがあるかもわからないですけども、サイモン・シネックさんのTED Talksですね。3分ぐらい見ていただきます。

(サイモン・シネック氏の講演動画を視聴)

サイモン・シネックさんの「ゴールデン・サークル理論」ですね。「サイモン・シネック TED Talks」でググっていただくと出てくると思います。TED Talksになると18分ですね。1,600万回再生されています。

彼は、「これは心理学ではなく生物学です」と言っています。「脳の構造です」とも言っていますね。これはものすごく重要で、やっぱり「How」と「What」は特徴、メリットですよ。商品そのものです。

「この商品は、こんな特徴があってこんなメリットがあります」と言ってもノーと言われる。それより、ベネフィット、手にしたい未来ですね。「Why」。「今回は、なぜ私たちがこれを提供するのかというと……」という自社のスタンスで共感を得て、それから「こんな商品を出しました」と言ったら「じゃあそれをちょうだい」となる。今はこんな流れになっています。

大型案件の受注も実現した「提案書の型」

中村:提案営業って昔からあって、10年ぐらい前、私が部長の時に「提案書を作ろう」と言うと、みんなで提案書を書いてくるわけですけど、ひとくちに提案書と言ってもばらばらですよ。

「こういう提案書を作りました」「よし」と見た時に、「何やこれ。カタログを写しただけやんか」という提案書があったりとか。あとは「お客さんの課題はこれです」という提案書があるんですけど、「それ、ほんまにお客さんの課題か? お客さんがやらなあかんことは他にあるのちゃうの?」みたいなこととかね。

いろんなばらばらな提案書があったので、ストーリーを作ってこういう「提案書の型」を作りました。その型に沿って提案して、何千万円、何億円という切り替えがあって、実際に16億円の切り替えまでいった商談もあります。

ストーリーはこんなものです。

お客さんの「Why」に明快に合意する。お客さんのやりたいことにまず合意してしまうということです。「お客さんはこれをやりたいんですよね」「そうなんですよ。うちはこれがやりたいんです。うちはこれを目指しているんです」と、まずWhyに合意してしまう。

それから「うちの商品・サービスを使っていただくと、これが実現できますよ」「できるの?」「本当にできます。具体的にはこうやるんです。できるでしょう? 他のお客さんでも実例が出ています。実際にできます。これはお客さんがやりたかったことですよね」とつなげる。

けれども、さっき言いましたように、一方で失敗のリスクがある。初めて採用しようと思った時にはお客さんも心配なことがいろいろあるんですね。「あの人を説得しなければいけない」という心配もあるかもしれないし、「時間的に間に合うか」という心配もあるかもわからないし、「やったことがないから誰かにサポートしてもらわんことには。問い合わせ先はどうしたらいいんやろう?」とかいろんな心配があります。

それについては、障害はすべて取り除くことをあらかじめ提案の中に入れてしまう。ここまでの提案ができたら、採用せざるを得なくならないですか? これにノーを言おうと思ったら、どこに理由をつけてノーを言ったらいいのかがわからなくなるという話です。

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