2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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古嶋十潤氏:さて、DXの実務を推進する中で、「顧客体験」というものは、みなさん一度ならずとも考えたことがあると思います。この点、それを良くするために、みなさんは実務でどのような取り組みをされているでしょうか?
昨今のDXのトレンドとしては、オンラインとオフラインをいかに統合していくかが多くの企業で重視されています。それを考える上で重要なのは、まずはビジョンを定めることです。経営戦略、事業戦略、プロダクト戦略、組織戦略など、何か始める上では、そもそもどういったビジョンで戦略を構築し、実務を進めていくかが、組織的に一枚岩になって実務を推進していく上では大事ですよね。
特に、昨今のDXの流れではデータを活用することが前提となっていますので、オンラインとオフラインの両方の体験を統合するようなビジョンが描かれることが理想かと思います。
そのビジョンをもとに、顧客にどういう体験を得てほしいか。認知から評価に至る、顧客の行動の流れの中で、どういったタッチポイントに顧客が接して、その中で顧客がどういう行動をして、どういう悩みやニーズを感じていて、それをサービス提供者側では「課題」として捉え、その課題を解決するためにどういう価値を提供していくか。こういった枠組みを整理するのが重要かと思います。
この点は、更に詳細に考察していく必要があります。例えば顧客の行動を認知から評価に至るまで整理し、その中でオフラインとオンラインでユーザーがどういうタッチポイントにどういう流れで接して、そこで実務がどう流れていくか。この「可視化」をしっかりとすることが、きわめて重要です。
なぜかと言うと、この可視化をすることによって、そもそもニーズや業務の流れをあらためて把握するだけではなくて、顧客のニーズがどこにあるのか、あるいはユーザー側が感じているペイン・課題がどこにあるのかに気づけるわけです。つまり、課題を「発見できる」ということです。課題に気づけるからこそ、解決策を考えられる。課題の質は、解決策の質に直結します。
本書でも繰り返し言っているんですが、昨今は課題の「解決」がもてはやされて、スポットライトが当たっていますけど、それよりも課題の「発見」のほうがはるかに重要です。それに気づくための1つの方法として、こういった「可視化」は、大変ですが極めて重要な作業かと思います。
私も日々、こういったことに取り組んでいます。私の実務ではAIやデータを活用する製品を開発しているんですけど、そのデータ活用製品は、いろんな企業がデータを使いやすくするためのソリューションなんです。
そのソリューションを作るからには、顧客の中でデータ活用がより進むプロダクトにならなければならない。そのためには、「そもそも、顧客の業務の流れってどうなっているのか?」「業務の流れの中で、どういう課題があるのか?」ということを理解しなければならない。
次に、課題の「起点」を考えることも重要です。例えば「個別の各担当者の方のタスク」であったり、「チームでの業務推進」、「データを活用するツール」、それから「データを格納している場所」などです。
さらに、「そこで具体的にどんな悩みが生まれているか」という軸で課題を洗い出します。
例えば、私の実務では、こういうマッピングをします。横軸にユーザー企業の業務の流れ、縦軸に課題が発生するポイントを示して、その中に具体的にどんな課題があるかプロットしていく。そうすると、どこでどういった課題が起きているか分かります。
この可視化ができると、課題というのは仮説なので、本当にこれが課題かどうかを実証していく土台にできるわけです。これを記録して可視化していくことによって、継続的にその内容を精緻化することができます。
こういった課題の議論って、場当たり的で散漫的になりやすいので、この作業によって、ちゃんと議論を積み上げることができる。あるいは、チームに新しく入ってきたメンバーに「私たちが作っているプロダクトって、こういう課題意識を持って作っているんだよ」という共有が高速化される。
さらには、自分以外のチームに「こういうことをやっているんだよ」という情報共有も高速化されるということで、良いことがけっこう多いかと思います。なので、こういった課題の「可視化」は、非常に泥臭い作業ではありますが、重要だと思います。
さて、課題の発見・解決策の考察が重要だと述べてきましたが、次は、これをどのように実現していくかを考えます。
私の書籍(『DXの実務』)の中で大事にしている図表がこちらです。
私の本の中では「コンセプトとメカニズムを接続させる」という表現をしているんですけど、コンセプトは、つまり戦略です。ビジョンを決めて、ビジョンに沿ったUXとバリューを定める。そして、そのコンセプトを、UXとバリューが実現されるために、技術、つまりメカニズムに接続させるということです。
ここでの重要な観点として、UXは高まっていくこと、かつ高まったことがデータとして計測されることが非常に重要かと思います。計測されるためには、当然データ化されることが必要で、この左から右に流れている矢印のように、UXが高まっている状況がデータとして捉えられて、KPIがPDCAを回しながら改善されていくことを目指します。
各タッチポイントから吸い上げられるデータが貯まっていき、このデータを使って、AIやエンジニアリング等でソリューションを作って、そのソリューションがバリューとして届く。さらに、そのバリューがタッチポイントを通じてユーザーに伝わって、UXが高まっていくという循環です。
この時計回りの循環を作ることが、実はきわめて重要かと思います。この循環がないということは、つまり仕事がやりっぱなしになっているはずなんです。
本当によくあるのは、施策を打ったけれどもやりっぱなしになって、誰も計測していないという状況。計測していないということは、仕事が戻ってこないわけです。戻ってこない仕事は、改善のされようがない。そうではなく、仕事がちゃんと戻ってくるように、データとして返ってくるように最初から企画・設計しておくことが、特にDXでは重要だと思います。
目線を変えると、経営という視点でもこの循環の枠組みは考えられると思っています。経営でもデータを集めてきて、データを分析する。その時に例えばAIを使って、AIの各種ソリューションを実装してみて、そのデータ分析によって課題を解決する。
経営における「課題解決」は、例えば経営や事業の意思決定をすること、売上を伸ばすこと、業務を効率化すること、この3つに分類できるかと思います。事業の売上が伸びたというような結果をデータとしてフィードバックするサイクルを作ることが、経営レベルの視点でも重要かと思っています。
これと同じようなモデルを、AIの部分でも考えることができます。AIはまずデータが必要です。そのデータはそのままでは使えないので、データを前処理します。
前処理されたデータを使って、データサイエンス、機械学習のアルゴリズムが学習して、そのアルゴリズムが機械学習システムに実装されて、例えばレコメンドエンジンみたいなかたちで顧客に提供されて、顧客がそのサービスを使った結果のデータが、フィードバックされて戻ってくる。こういう循環が生まれます。
しつこいですが、さらにデータサイエンスのアルゴリズムの部分でも同様のサイクルがあります。元を辿れば、アルゴリズムって数理モデルなんですが、この数理モデルは、新しくデータを学習して、学習した後に勾配降下法みたいなアプローチを用いて、パラメータが更新されて、最適化されていきます。
最適化されていくことによって、予測モデルの精度が上がって、例えばレコメンドエンジンの精度が高まっていく。さらに、そこからデータが集まってきて…ということを繰り返して、どんどん予測の精度が上がっていく、というモデルです。これも、ずっとサイクルが回っている一つの例です。
この仕組みを支えるために、いろんな関係者が巻き込まれてくる。ビジネス責任者、プロダクト全体を仕切るプロダクト責任者、Webアプリケーションのエンジニア、データパイプライン担当のエンジニア、データサイエンス担当、機械学習システムのエンジニアなどが協力して、こういった循環を作る。これが滞らないように回り続けるために、適切に人員が配置されて、DXが推進されていく。この意識と設計が重要です。
ということで、DXの推進においては、どの水準の活動においても「循環」を意識することが非常に重要かと思います。
これは私の書籍の冒頭でも図で示しているのですが、あらゆる視点から「サイクル」を描いて実務を推進するという観点が、非常に重要です。これが今日、一番お伝えしたかったことでした。
本日のまとめです。総括しますと、5つのポイントに集約されると思います。まず1つ目、DXは“UX”を起点にして行っていくと、より良い結果が出てくること。2つ目、DXはあくまでUX実現の“手段”であることを忘れないようにすること。
3つ目、DXを阻む3つの課題。この課題を解決するために、根本的に何に取り組んでいくべきかを考えることが非常に重要かと思います。
4つ目、課題の発見・解決は重要なんですが、そのために1つ、手間がかかるし泥臭いんですけど「可視化」をすること。私としては強くお勧めします。
最後にDXの実務においては「サイクル」を意識して物事に取り組んでいくこと。これがポイントかと思います。
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