SNSの「一般人の投稿」も情報収集元の1つ

長田麻衣氏(以下、長田):次が「SNS」のお話なんですが、Z世代にとってSNSはすごく大事な情報源になっているんです。「新しいブランドや商品をどこで知るか」と聞くと、上位3位はSNSで、テレビ・マスメディアを抜いてSNSが上がってくるんですね。特に女性は、商品などについては7割くらいはInstagramで認知している。

情報収集では男女の違いが若干出ているんですけれども、わりと男性はTwitterやYouTubeとかマスメディアがメインになっているので、男女の差もありつつも、全体としてはSNSを中心に情報収集をしているというのがわかります。

情報収集の中でどういう情報を参考にしているかというと、1番は「インフルエンサーの投稿」になるんですが、2番目に「一般の人の投稿」が来ているところもすごく大事で、就活の話を聞いても、企業がオフィシャルで話していることよりも、どちらかというと従業員たちのTwitterや実際の投稿を参考にしていたりする。

実際に先輩がどういうふうに働いているかという、身近な人の情報のほうがリアルで信頼しやすいところがあるので、そこを重視しているところがあります。なので、消費行動や働き口を探すとか、そこを検討するに当たってもSNSはすごく重要な位置付けになっているのかなと思います。

Z世代は「失敗したくない」という価値観が強い

長田:次が「失敗したくない」というところ。これは消費の中でもすごく聞かれるんですが、「洋服は通販で買えるけど、失敗したくないから必ず試着してから買う」とか、失敗しないための情報収集とか、そのための行動をすごく入念に行っているということがいろんな側面で見られます。

クチコミや周りの評価がどうなっているかとか、信頼する人がおすすめしているかもよく吟味しながら、消費や就活も含めて選んでいるというのが見られております。

「失敗したくない」というのはすごくいろんなところで聞かれて、失敗しないための情報収集をがんばってやる以外にも、リスクヘッジのための生き方もしている。これは、以前お金の使い方を調査をした時の結果なんですが、収入源と決済方法を複数持って分散させていると調査結果で出ています。

ここに「失敗したくない」という価値観が紐付いているんですが、やっぱりずっと経済的な状況も不安定で、どうなるかわからない状況で生きてきたので、常に安定を求める。

「何かがなくても安定はキープできる」ということが価値になっていて、それを実現するためには2〜3つの収入源があって、どれかがなくなっても何とか生きていける、というポジションをキープする必要があると感じているのかなと思います。

これは働き方にも関係していて、例えば副業もすでに選択肢としてあるので、普通に入社するだけじゃなくて、副業で自分が収入源にできるものを確保するとか、そういうことも当たり前に選択肢に入っているというところも、見られるのかなと思います。

「誰かを否定しない笑い」が好まれている理由

長田:次が「固定概念に縛られない」というところなんですが、これは就活の中の採用のイベントとか、入ったあとの上司としてのコミュニケーションの中でもすごく大事なテーマかなと思います。やっぱり、彼らは固定概念に縛られすぎないというか、あまり固定概念を絶対としていないんですね。

その背景にはSNSの影響が大きいんですが、SNSを中心にいろんな価値観や生活の嗜好、多様な生き方があることが確認できて、それを知っているので、「全員が生きやすい世界を作っていく必要があるよね」というマインドを根底に持っているんです。

それがリアルでもSNSでも出てきていて、例えば好きな芸人さんを聞いても、「誰かを否定しない。誰かを下げて笑いを取るとか、負の感情を抱かせないような芸人さんが好き」というトレンドがあります。

それ以外にも、インフルエンサーや友だちが「多様性が存在していることをみんなに知ってほしい」ということを発信することが増えてきていて、それに触れる機会も増えているので、いろんな側面で多様な価値観があると認識しているし、みんなが共存できる世界を望んでいるというのが、いろんな面で見られるのかなと思います。

「固定概念」に関しては、家族のかたちに関しても見えてきています。例えば今までは、家族って親がめちゃくちゃ偉くて、親の言うことは絶対で、子どもはそれに従っていくという、カースト制度みたいな仕組みが多かったかなと思うんです。

調査の中でインタビューを聞いていても、そういうカースト的なかたちで家族が成り立っていなくて、サークルのような感じで、あまり「誰が偉い」とか「誰の言うことが絶対」という雰囲気を親も子どもも感じていないというのがあります。

良くも悪くも上下関係が薄れている

長田:この前のインタビューで、「自分の学校の話を親にも話すけど、逆に親から仕事の愚痴を聞いたり、仕事場の人間関係の相談に乗ることもある」と高校2年生の男子が言っていたんですが、そのぐらいフラットな状況で家族とも接しているというのが見られます。

家族だけじゃなくて、SHIBUYA109に来ている子たちに「何友だちなの?」と聞くと、「部活の先輩・後輩でめっちゃ仲いいんです」みたいな感じで、本当に友だちみたいな先輩・後輩の関係性を作っていることもあります。

良くも悪くも、年齢に関しての上下関係がなくなってきていて、「それぞれが得意なことを発揮することで、うまくいいチームになって行こうよ」というマインドがいろんなところで見られているかなと思います。

「今までこういうことが当たり前である」「こうするべきだ」ということを押し付けられることにストレスを感じていて、仕事場の中でも「今までこうだったから、いいからやれ」みたいな押し付けに関しては、「それって本当に必要なの?」と思っている。

例えばSNSの使い方なんかも、上の世代よりも自分たちのほうが上手なので、「そこは別に、得意な人が得意なものをやっていけばいいんじゃないか」と考えます。チームとしてフラットな関係でできることを望んでいたりもするので、そこは働く中でのコミュニケーションで変えていけるとよいのかなと思っています。

Z世代が関心を抱くSDGsの項目は「ジェンダー」の問題

長田:もう少し固定概念の部分でお話しすると、社会課題の意識に結びつくかなと思います。これは以前、どんな社会課題に対する関心があるかを、SDGsの項目に当てはめて聞いたものです。

その中でも「一番関心がある」とか「解決したほうがいい」と思っているものが、「地球の環境」よりも「ジェンダーの平等」が挙がるのが特徴になっております。なぜかというと、一番身近に感じるからというのが大きいんですけど、やっぱり日常生活の中でもジェンダーに関する違和感がすごく増えている。

それこそSNSの中で「こうあるべきだ」という以外の考え方がある中で、「女はこうあるべき、男はこうあるべきっておかしくない?」ということに違和感を感じることが、日常生活の中でも増えているというのが調査の結果からもわかります。

やっぱり彼らにとって、「多様性を受容していこう」ではなくて、「多様性って存在するよね」というところが根底にあるので、誰かを否定するとか、誰かの選択肢を狭めること自体が時代錯誤なんじゃないかと感じているのかなと思います。

特に人種や性差やセクシャリティとか、パーソナルな部分に関しての差別は絶対にあり得ないですし、そこに関しては、企業に対してもすごく敏感に見ているなと思います。ニュースでも多いですが、そういうことがあると企業としてのイメージが下がることにもつながるので、非常に注意が必要な部分なのかなと思います。

Z世代と付き合う上で大切なマインド

長田:彼らが一番大事にしていることは、「自分だけがいい」とか「誰かだけが得をする」ではなくて、みんなが生きやすい世界を作っていきたいということなんです。

人もそうだし、企業も、消費者としても、地球環境としても全員がWin-Winな関係を模索していきたいというところがあるので、搾取をするとか、誰かだけが得をすることに対して違和感があるのかなと思います。

同じ調査の中で、ジェンダーの観点で「違和感があること」を聞いた自由回答の抜粋なんですが、けっこういろんなシーンで感じているんですね。今回のテーマで言うと、真ん中の「バイト、仕事」の部分なんですが、例えば「男女で給料の差がある」「部長や社長が男性なことが多い」というところにも違和感を持つと出ています。

コミュニケーションの中でも、「男なんだからこういう力仕事はできるだろう」「女にこんなきつい仕事はできないだろう」みたいなことを言ってしまうのも、これはZ世代だからというよりも全員嫌だと思うんだけど、そこはかなり敏感に捉える人たちなので、やっぱりコミュニケーションはすごく重要です。

採用活動の中でも、「女性だからがんばれる」と言われることに対して、「女性だからがんばれるってどういうこと? そもそもそれの魅力がわからない」とも聞かれます。

良かれと思ってやっていても、彼らにとってはすごく違和感を感じているケースもあるので、今までどおりの伝え方というよりも、時代に即した伝え方にアップデートしていくことは引き続き必要なのかなと思います。

採用活動だったり、入社したあとのコミュニケーションの中でも、「女の子だからこうでしょ」「男の子だからこうでしょ」とか、それこそ「Z世代だからこうなんでしょ」みたいに、括って話すことにすごく違和感を感じるので、私たち上の世代はきちんと個に向き合って、かつ固定概念をいったん取り払う訓練をしながら、彼らと向き合っていくのが大事かなと思います。

それが働く環境としてもすごく大事だし、消費者やターゲットに向き合う中でもすごく重要なのかなと考えております。私からは、ざっとZ世代の価値観をお話しさせていただきました。ありがとうございました。

良かれと思ったことが、Z世代にとっては逆効果になることも

寺口浩大氏(以下、寺口):ありがとうございます。いろいろ(データや情報が)あった中で、おそらくかいつまんでご説明していただいたと思うんですけれども。

長田:すみません。ざっくりになってしまいましたが。

寺口:とんでもないです。我々もいろいろウェビナーをやっているんですが、さすが日々Z世代の方々に触れ合って、調べているデータと生の声はやっぱりめちゃくちゃ貴重だなと思って。

うちもけっこう気を付けているほうではあるんですが、今日の資料は採用チームにお渡ししたり、今日のウェビナーのまとめを伝えたほうがいいなと思いました。そう思っている視聴者の方々も多いんじゃないでしょうか。

今日はこのあと僕のプレゼンもあるんですけど、採用担当の方はふだんから大学生の方々と接しているので、なんとなく肌で感じるものがあるかなと思っているんですね。

でも、それでもこうやって形式知化するというのは、「自分はできるけど」ではなくて、今は全社採用していかないといけない。オンラインだと社風がわからないから、現場社員の方々にいっぱい採用に出てもらったり、経営メンバーや社長とかにプレゼンしてもらったりするというのはあるんですけど。

量的には協力してくれるようになっていても、逆に良かれと思って言っていることがめちゃくちゃ逆効果になっていて、僕らもクチコミを見ている中で、「これ、めちゃくちゃもったいないな」と思うことがいっぱいあるんですね。

なので、採用担当の方もこういう専門家のレポートみたいなものを、全社で勉強会や研修とか、積極的に面接に関わるメンバーに提供していけたほうが、もったいないコミュニケーションミスは減るんだろうなというのが僕の感想です。

長田:ありがとうございます。

寺口:ありがとうございます。長田さんには、このあとのパネルセッションでも引き続きディスカッションできればなと思っているので、みなさま楽しみにしていてください。