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孫正義氏基調講演(2022年7月28日)(全2記事)

日本のビジネスパーソンには「ハイテク国家」のDNAがある 孫正義氏が描く「AI革命」で変わる日本の未来

7月28日、29日にオンラインで開催された、ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2022」。本記事では、孫正義氏の基調講演の模様を2回に分けて公開します。日本経済には「AI革命」が必要だと説く孫氏。さまざまな領域でどのようにAIが活用されているのか語られました。

日本で最もAIを実際の毎日の業務に活用している企業として

孫正義氏:私は今、一生懸命みなさんに啓発してますけれども、我々ソフトバンクグループも当然のことながら、率先してAIを活用しています。

おそらく日本で最もAIを活用しているのは、我々ソフトバンクグループではないかと思います。ただの研究じゃなくて、日常の業務に最も活用してるグループです。

ソフトバンクのグループ企業のユーザーを見てみると、まずモバイル・ブロードバンドのユーザーが5,700万人います。ヤフーのユーザーは8,600万人います。LINEは9,200万人います。PayPayも4,900万人。

もちろん重なってるお客さまもいますが、(日本の人口の)ほとんどの方が我々グループ(のユーザーです)。ソフトバンクやヤフー、LINE、PayPayだけではなく、数百社というグループ企業が日本にいます。

圧倒的な量のデータを徹底的に活用しています。例えば通信ネットワークの最適化、あるいはサポートの品質の向上など、さまざまなものにデータを活用しながら、AI利用をどんどん促進させています。

またヤフーも当然のことながら、インターネットの最先端企業として、広告の審査の自動化、商品のレコメンド機能をどんどんレベルアップしています。よりマッチングしたレコメンデーションができたり、検索結果をより最適化したり、さまざまなことに使っております。

もちろんPayPayも、QRコードを読み取って支払いをするというサービスを提供するだけではなく、不正検知のモニタリングなどを行っています。クレジットカードだとか、その他の支払い方法に比べて、ほとんど不正が出ないところまでAI処理で行えるようになりました。また、ユーザーのさまざまなデータの予測だとかチャットサービスだとか、いろんなものの自動化にAIを活用してます。

当然LINEも我々のグループですけれども、さまざまな予約の自動受け付けだとか、問い合わせの窓口の自動化だとか、いろんなものにAIを徹底的に活用していっています。

LINEだとかヤフーの親会社であるZホールディングスは、AIの人材をさらに今後5年間で5,000人増員するという計画をすでに立てております。また、5,000億円のAI投資を行います。そういう意味では、日本で最もAIを実際の毎日の業務に活用してるのではないかと思います。

「勘と経験と度胸」に頼った在庫管理をAIで変える

私は本当に申し上げたいです。この私のスピーチを聞いてる方、また、今回のイベントでさまざまなパートナー企業の方々が「DX」についてプレゼンをされますが、本当にDXを、そしてAI化を進めてほしいと思います。

いくつかの事例を紹介したいと思います。まずAIを小売に活用する例。小売は何で失敗するかというと、在庫管理で失敗するわけですね。

売り上げが立った。お客さんが来た。でも不良在庫を抱えてしまっていて、それを償却しなければいけない。例えば用意しすぎたおにぎりとかお弁当だとか、すぐ腐っちゃうものです。

なので需要を予測しなければいけないんです。天気予報とかいろんなものとマッチングさせながら、明日の仕入れはどうしようか。明後日の仕入れはどうしようということを前もって処理しなければいけない。

こういうものにAIを活用して未来予測をしながら、在庫管理だとか調達をする。そういう事例があります。ちょっと動画を見ていただきたいと思います。

(動画再生 「サキミル」紹介)

もしかしてみなさんの会社では、いまだに「KKD」に頼って商品の仕入れを行っていませんか? KKDとは「勘と経験と度胸」です。

明日のお弁当は何個仕入れたらいいんだ。そういう時に、ベテランの仕入れ担当の人が経験だ、勘だと発注の数量を決めたりしてるケースが残ってるんじゃないかと思いますね。残っているというより、ほとんどの仕入れ担当者はいまだにそういう状況じゃないかと思います。これでは不良在庫が出て当然ですね。

不良在庫をできるだけ減らす。これは地球環境のためにも、できるだけ減らすことが必要です。生ごみとかいっぱいありますね。食べられないで捨てられた食品が、半分ぐらいあるらしいですね。それだけでも大変地球環境を汚しています。

需要予測を正しくすれば、地球環境にもいい。もちろんみなさんの会社の利益にも、当然のことながら役立つわけですね。

ですから需要予測にAIを使ってない企業は、考え方を切り替えていただきたい。切り替えないと、ロスが発生します。会社の利益のロスが出るし、地球環境にもロスが出るということです。

AIは都市そのものを変える

最先端のインフラを常に享受できる、持続可能な世界が大事です。これも動画がありますので、ちょっと見ていただきたいと思います。

(動画 「WOTA」紹介)

ほんの数日前にもニュースがありましたね。インドのどこかの州の首相が、今水不足だけど我が町の水は大丈夫だと。我が町のこの川の水は十分きれいだと言いながら、川の水を記者の前で飲んで見せたら、腹痛を起こしてそのまま病院に運ばれたと。

ここの水は安全だ、大丈夫だと命がけで証明しようとして、かえって逆効果になってしまったなんていう話がありました。

これはもう徹底的にDXすべきことであり、またDXすることによって、次の命令セットがどんどん回って、どんどんAI化でデータが処理されて。だからこうしなければいけない、ああしなければいけないという意思決定がなされるようになるんですね。

AIは都市そのものを変えます。あらゆるDXで街全体がつながって、街全体に、1つのOSで構成されたオペレーションがなされるように、これからはなっていきます。こちらもちょっと動画を見ていただきたいと思います。

(動画再生)

会社とかその自治体だけの、縦のデータを持っていても、本当の意味では生きてこないわけです。データのやりとりがなされるようになって、より複合的に処理することによって、より的確な未来が予測できるようになります。

もし信号機がすべてAIのネットワークにつながったら

例えばいまだに必要のない交通渋滞があちこちに発生してるわけですね。例えば、もし信号機がすべてAIのネットワークにつながったらどうなるか。

例えば横に走ってる道路と縦に走ってる道路があって、横に走ってる道路はたくさん車が渋滞してると。縦に走ってる道路は、ぜんぜんがらがらで車が走ってないと。

にもかかわらず、信号機は決まった時間に、この横の信号機を赤にするわけですね。何分に1回、黄色にして赤にすると。それからしばらくして何分に1回青になると。決められた時間の刻みで、赤と黄色と青が変わっていくと。

こちらの縦の線には車なんて来てないのに、なんで縦の線を青にして、渋滞してる側の横の線を赤にするんだと。間違ってるでしょうと。間違ってるのに、機械的に決められたルールにしたがって、時間刻みで信号の色を変えるんです。誰がそんなことを決めたんだと。

混雑してるという状況は刻々と変わるわけですね。天気によっても変わるし、サッカーの試合があるとか、コンサートがあるとか、そういうイベントによっても混み具合はリアルタイムで刻々と変わるわけです。

ですから、縦と横の網が碁盤の目のようになった全体地図を見て、全体最適で、1番トラフィックが渋滞しにくいようなかたちで、信号の色をリアルタイムで処理する。そうすると、渋滞はおそらく半分ぐらい減るはずなんです。

渋滞している時に、CO2や排気ガスがどんどん発生するわけです。だから地球環境のためにも、よりスマートな都市にしなければいけない。AIを搭載してない信号機は全部なくして、すべての信号機をAIにつないで、AIで処理して意思決定する。

信号の色はAIで、リアルタイムで刻々と変えていく。人間がいちいち命令するとか、機械が決まった時間にどういうルールでやるなんていうのは、もうまったく古いやり方です。

サッカーのイベントがあるとか、天気予報がこうなってるとか、どこどこのGPSの車の動きがどうなってるという、全部のデータを網羅して連携しながら、都市のOSとして、都市全体をスマート都市にしなきゃいけないということです。

世界最先端のAI企業の3分の1の株主であるソフトバンクグループ

我々は社会を変えたい。ソフトバンクグループでも、各企業がAIをガンガン使っています。でも、日本は世界に比べて遅れています。世界はもっと進んでます。世界の進んだAIのユニコーン企業(※急成長中の候補企業含む)が、だいたい1,500社ぐらいあります。

この最先端の、空を飛んでいくようなユニコーン企業の1,500社のうち、約3分の1の470社超は、我々ソフトバンクグループのビジョン・ファンドが株主になってます。ほとんどの場合が筆頭株主か、それに近いポジションです。

世界最先端のAI企業の3分の1が我々のグループで、もう私は毎日のようにAI、AIって言って、いろんな企業のユニコーンの経営者からプレゼンを受けております。

そう来るのか、そんなことをやるのかという、驚くような話の連続です。これらの世界中のAIユニコーンの英知を、我々ソフトバンクグループのヤフーだとか、LINEだとか、ソフトバンク、Arm、PayPayなど、いろんな会社に持ち込んで、日本そのもののAIを進化させていきたい。それが我々の責務だと思っています。

ファックスをメモして電話で読み上げるなんて遅れてます。ファックスをEメールに変えたからDXだとは言えません。それは芋虫がさなぎになった程度だと。その程度で満足してはいけない。それをDXと呼ぶなということです。

私は10代の時にカリフォルニア大学のバークレー校で、Eメールを毎日使ってましたからね。もう50年前ですよ。

アメリカでEメールを毎日のように使ってたから、Eメールが大事だということは体で知っています。だから真っ先に我々が、日本でもEメールを社内に導入しました。

でもEメールにしたぐらいでは、もうまったくDXではないと。さらにデータをクラウド化して、マシンラーニング、ディープラーニングさせて、AI化させていくんだと。

日本のDNAはもともと「ハイテク国家」である

みなさん、日本のDNAはもともと「ハイテク国家」なんです。「電子立国」といって、日本は世界ナンバーワンのハイテク国家だったんです。

ですから日本の未来のためには、今、私が口から泡を飛ばしてるように、金融も医療も教育もモビリティも、ありとあらゆるものを、工場も全部ロボット化しなければいけない。(ロボット化と言っても)単にアナログ的なロボットが、ただガッチャンガッチャン、同じ時間に同じスピードでやっているのは、メカトロニクスにしただけです。

そのロボットにAIを搭載させて、目や耳を工場の中のロボットに入れて、それを自動的に連携させるんです。需要の多い時、少ない時に、いろいろ連携しあう。工場全体が無人化工場になるべきですね。これは本来、日本の得意なところのはずなんです。

すばらしいテクノロジーのDNAが、日本のビジネスパーソン、日本のエンジニアにはあります。今こそそのDNAを目覚めさせて、毎日のようにAIを使って、日本を最先端のDX国家、カンパニー群にすること。それを世界中に、日本から発信する。そうしなければいけないと私は思ってます。

我々ソフトバンクグループのZホールディングスだけでも5,000億円のAI投資をし、我々グループ全体を足すと、もっと多くのAI人材にもっと大きな予算をかけてやっております。

ただし、我々だけではもちろんだめなんです。我々も率先してやりますけども、日本のすべてのビジネスパーソン、すべてのエンジニア、あるいは教育者が、この「DX」に目覚め、AIに目覚めてほしい。芋虫のまま、さなぎのままでいないで、美しい美しい蝶になって、大空を羽ばたき駆け巡る。そうなってほしいと思います。

すべては情報革命で、人々に笑顔を、人々に幸せを提供するために、AIを活用していきたい、DXを行っていきたいと思います。我々もがんばります。みなさんも一緒にがんばりましょう。

いつからやるんですか? 今でしょ! ......って、誰かが言ってましたね。やりましょう、今から。よろしくお願いします。ありがとうございました。

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