Z世代の2人の女性に聞く、理系選択のきっかけ

井上祐巳梨氏(以下、井上):記念すべきオープニングトーク「最強?! Z世代TALK!SDGs時代の理系選択」ということで、今日は大変豪華な2人に来ていただいております。私はモデレーターを務めます、一般社団法人STEAM JAPAN代表理事の井上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。では続いて、東大王の河野ゆかりさんです。よろしくお願いします。

河野ゆかり氏(以下、河野):よろしくお願いします。河野ゆかりです。

井上:Nexstar CEOの山本さんです。よろしくお願いします。

山本愛優美氏(以下、山本):山本愛優美です。よろしくお願いします。

井上:お二方それぞれに、今までどんなことをやってきて、今はどんなことをしているのかをお話をしていただきたいと思っております。ではさっそくですが、河野さんからお願いします。

河野:はい。よろしくお願いします。今、ご紹介に預かりました河野ゆかりと申します。スライドに書いてあるとおり、兵庫県出身の22歳。東京大学医学部医学科4年生で、医学の勉強をしています。もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、TBS系の『東大王』という番組に出演して、クイズをやっております。趣味は旅行したり食べたり、いろいろと楽しんでおります。

今回のイベントが「理系選択」というテーマですので、私が東京大学医学部にどういう経緯で進学したのか。そして今、大学でどういったことをやっているのかを、最初にお話させていただければと思います。

医学部へ進んだきっかけは、1本のドキュメンタリー映画

河野:私は中学3年生の頃に『明日の記憶』という映画を見ました。これは若年性アルツハイマーの患者さんの苦しみとか、そのご家族の葛藤に焦点を当てたドキュメンタリー映画です。これを見た時に、本当に自分のまったく知らない病気が世の中に存在して、そこにこんなにも「人の苦しみ」が伴うんだと気付きました。何か力になれないかなと思い、医学部を志望しました。

患者さんのケアでも力になれればいいなと思いましたし、アルツハイマーは、起源や画期的な治療法がわかっていない病気なので、そこにアプローチする難病研究の分野にも興味を持ちました。そういった経緯で医学部を志望し、中3、高1くらいから(本格的に)勉強して大学に入りました。

大学入学後、今は医学部なんですけれども、いろんな角度から医療を見たいなと思いました。もちろん学校で授業していただく医学の勉強もありますし、あとは大学にあるたくさんの研究室。東大はかなり研究にも力を入れていますので、そういった研究室に通って、最先端の実験に携わらせていただいたりしています。

あとこれはお医者さんになる上で必要ですけれども。病院に行って臨床医(の勉強をしています)。みなさんが病気をした時に、お医者さんが診察をする現場を見学したり、実習で少し関わらせていただいたり。そういうことを今までやってきて、これからもしていく予定です。

そして少し大学とは離れるんですけれども、医療ベンチャーでインターンをしたり、学生団体で医療系のプロジェクトに関わっています。具体的には、スライドの右上にある「DENGUE FEVER」というプロジェクトです。マレーシアのデング熱の罹患者数を減らせないかというプロジェクトで、(病気について)いろいろ調べたり、マレーシアの現地の人とも関わりながら進めていました。

専門でない分野にも興味を向けられる『東大王』の活動

河野:そして公衆衛生の面にも興味がありまして、途上国であるフィリピンに大学1年生の頃に行って、3週間くらいスラムに寝泊まりをしながら、現地の衛生環境とかを見てきました。今はコロナでなかなか渡航ができないんですけれども、少し情勢が落ち着いてきたら、また行っていろいろと衛生環境を改善できないかなと考えております。

そして、少し理系という面から外れてしまうかもしれないんですけども、大学では医学に拘らず幅広く活動していまして、先ほども言いました『東大王』に出演させていただいています。クイズに出る世界遺産であったり、美術、文学とかを勉強しています。時事も常に押さえるように心がけています。

専門分野とは違うんですけれども、いろんな方向に興味を持って、視野を広く保つという上ではすごくいい活動なのかなと思っております。そしてもう1つ、数学に関して少しお仕事をさせていただいていて、今、雑誌『Newton』に(記事を)載せていただいたり、本の執筆にも取り組んでおります。

もしかしたら見てくださっている方の中にも、医学部に少し興味あるなという方がいらっしゃるかもしれないんですけれども、(医学部のカリキュラムとして、私の場合)1年生から4年生まで医学の基礎的な勉強をしてきました。4年生の末に共用試験という国の試験がありまして、5、6年生で実習、そして6年生で国家試験を経て、医師免許を取得するつもりでいます。

医学部の進路は「病院のお医者さん」だけではない

河野:ただ医学部といっても、みなさんがイメージされる「病院にいるお医者さん」ももちろん選択肢としてあるんですが、他にもいろいろ(進路の選択肢が)あります。研究したりとか、それこそ医療のベンチャー企業を立ち上げて、何かサービスの面で別方向から医療を支えることも可能ですし、あとは製薬企業とかに就職するとかも、選択肢としてあるのかなと思っています。

あとは途上国医療とか、本当にたくさん選択肢があって、私の中でもこれからあと3年間かけていろいろ知って、さらにその時点で社会で何が求められているのかも総合的に判断して、進路を決めていこうかなと思っています。以上になります。

井上:ありがとうございます。今「河野さん、ずっと楽しみにしていました。医学部を志すまでの経緯を聞けてうれしいです」なんてコメントも、タイムリーに上がってきております。では続いて山本さん、どうぞよろしくお願いします。

中学校2年生の時に起業に憧れ、高校2年生で開業

山本:よろしくお願いします。山本愛優美と申します。さっき判明したんですけど、私も河野さんと同い年で、2001年生まれです。今は慶應義塾大学の環境情報学部に所属しています。

私の耳元でも光っていますし、画面でも見えるかと思うんですが、私は今、ドキドキに合わせて光る「e-lamp.」というイヤリング型のデバイスを作っています。今日はこのお話と、何でここまでこんな人生を歩んでいるのかを、お話できたらいいかなと思っています。

私は北海道出身です。北海道の帯広市で18年間育ちました。高校時代とか中学時代の写真があるんですけど、中学校の時はバスケ部に入っていて、高校生の時は書道部に入っていました。(スライドの)左上の写真は、書道パフォーマンスをしている写真です。

あとは英語ディベートをやっていたんですけど、下の新聞は、英語のディベート大会で全国大会に行ったときの記事です。あと右上(の写真は)は文集に「社長になるかもしれない」と書いたので、それが果たされたなと思って持ってきました(笑)。

私は中学校2年生の時に起業に憧れ、中学校3年生から4つの学生団体を立ち上げて、高校2年生の時に開業したという流れがあります。その憧れのきっかけは、これまでに2つありました。

経営者の叔父と、漫画の中の「高校生起業家」に憧れて

山本:1つ目がこの上の、テレビの取材していただいた時の写真です。親戚の叔父さんがスイスで日本料理店を経営していて、(叔父のことは)ずっと存在としては知っていたんですけど、初めてリアルで叔父さんに会った時が中学校2年生でした。その叔父さんに感化されて、「起業ってすごく格好いいな」と思いました。

あとはこの漫画をご存じの方はいらっしゃいますかね。私がこの世で一番大好きな『銀の匙』という漫画です。この漫画は北海道の帯広市を舞台に、高校生が青春をするというストーリーで、その漫画の12巻くらいでこの1コマがあるんですね。

主人公が学校の先輩と一緒に起業するシーンを見て、「高校生なのに起業している」と思って。叔父さんと出会ったのと漫画と出会ったのが重なって、私も「この地元で何か事業をしてみたいな」と思ってやり始めました。

ただ、仲間もいないしお金もないし、ぜんぜん信頼してもらえないので、最初はあまりうまくいきませんでした。高校に入ってすぐは学生団体をいくつか立ち上げて、地域の活性化だったりとか、教育について考えることをやったりしていました。

そこから高校2年生の時に開業したら「高校生起業家」と呼ばれるようになり、いくつかメディアに出させてもらって。その当時はマーケティングだったりとか、教育のプログラムを作ったりしていたんですけど、いくつか事業を進めるようになりました。

ムーブメントになった“商店街の文化祭”を企画

山本:私のお気に入りのプロジェクトの1つで、これ(スライドの記事)が高校3年生の時にやった、「超学校祭」と呼ばれるイベントです。地元に広小路商店街というところがあるんですけど、ここに学校の枠を超えて、12校の高校生が集まって、「商店街で1日、もう1回文化祭をしちゃおう」というコンセプトで開催したイベントになっています。

人口17万人の帯広市で、当日1万3,000人集まるというビックイベントになりました。自分のやりたいことを表現する場所として「文化祭」がすごく好きだったので、それが地域と結びつくかたちになり、すごく素敵なプロジェクトになりました。ちなみに、北海道で開催したこの「超学校祭」が、同じコンセプトで2年後に大分県で開催されていて、ちょっとしたムーブメントになったりもしています。

これ(次のスライド)が、大学1年生の時に作っていたプロダクトです。大学入ってすぐの時は、学べる恋愛ゲームを作っていました。大学を舞台にいろんな分野を専攻するイケメンたちが出てきて、そのイケメンと出会って恋をしながら学んでいくという(内容で)、4人のキャラクターがいます。

経済学、文学、科学、哲学のイケメンと出会うストーリーを、10ヶ月くらいで作って、ベータ版までローンチしました。すっごく楽しかったんですけど、これでは生きていけない気がすると考えて、サービスとしては一度クローズして、2020年4月からは研究を始めました。

「ときめき」で溢れる世界を作りたい

山本:私自身が今、すごく関心のあるテーマが、「ときめき」という言葉なんです。この「ときめきとは何だろう」を考えるために、学問的には数理心理学と感性工学を専攻しています。

この「ときめき」がこれまでどう使われていて、そこにはどんな経緯があるのか。いったい「ときめき」とはなんなのか、「ときめき」って増やせるんだろうか、と考えていました。今はそこから仮説として、この「e-lamp.」の存在によって人々の「ときめき」を増やせるんじゃないかと思ってプロダクトを作っています。

私のドキドキに合わせて光る「e-lamp.」というプロダクトは、けっこういろんなメディアにも注目していただいていて、雑誌だったりテレビで紹介をさせてもらっています。あとはときめきの専門家としてインタビューを受けたりもしています。

そんな私のビジョンは「『ときめきで溢れる世界』を作りたい!」に集約されます。さっきも言ったとおり、「ときめき」は私たちの生活にたくさんあって、いろいろな服を買う時の「ときめき」だったり、広告や歌の歌詞にも(「ときめき」というワードが)よく出てきます。

でも、そんな私たちをエンパワーメントしてくれる、このポジティブな言葉がなんなのかがまだわかっていない状況です。それを探究していきながら、一人ひとりの「ときめき」のあるものを大切にしていけるような社会を作りたいなと思っています。

「ドキドキの可視化」で作る、新しいコミュニケーションのかたち

山本:もうちょっとだけ時間があるので、今やっている「e-lamp.」についてもご紹介させてください。こちらは今年「未踏アドバンスト事業」(未踏性、市場性、事業性、開発実現性を備えたITを活用した革新的なアイディア等を有し、ビジネスや社会課題の解決につなげたいと考えている人材を、発掘・育成する事業)に採択していただいているんですけど、心拍フィードバックというドキドキを可視化して、他者に共有するということで、私たちの感情共有が促進できないかという仮説のもと、作っています。

「どういう仕組みなんだ」とよく聞かれるんですけど、耳のところにセンサーが付いているんですね。緑色のLEDが付いてて、それを皮膚に当てると血管の変化を読み取って、脈に合わせて光る仕組みになっています。

イヤリングとしておもしろいのが、今私は画面が見えているので(イヤリングが)光っているのを確認できるんですけど、画面を見ないと、(本人から)どう光っているかが見えないんですよ。なので、これを付けることで、自分では見えないが他者に(自分のときめきを)共有する。この体験の特徴があるイヤリングが、感情的なコミュニケーションにどう影響を与えるんだろうと考えています。

自分の思ったこととか考えたことを、伝えられないとか伝えきれないというコミュニケーションの課題を、みなさんもなにかしらどこかで感じたことがあるんじゃないかなと思っています。この伝えられない、伝えたいみたいな感情を「ドキドキの可視化」を通して伝えられるように、新しいコミュニケーションのかたちを提案していきたいなと思って、日々(プロダクトを)進めています。

もし興味がありましたら、ぜひ「e-lamp.」見てみてください。私も自己紹介をさせていただきました。ありがとうございました。

井上:ありがとうございます。山本さん、今、光ってますね。

山本:光っています(笑)。

井上:かなりドキドキ、ワクワクしている状態かなと思います(笑)。Twitterでも「山本さん、この間テレビで見ました。タイムリーにお話を聞けてすごくうれしいです」と(コメントが)きています。

山本:へえ! タイムリー。ありがとうございます。

井上:みなさんもぜひこのハッシュタグ(#StemGrlsFesta)を付けながら、感想や質問をしていただければと思います。