2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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藤原:僕自身、「ジグソーパズル型からレゴ型へ」「情報処理力から編集力へ」という、思考方法の転換を目的にして、研修の講師を年間50〜60回やっています。
大手企業でも、最近は手を挙げて人事に応募させる公募システムだったり、副業オッケーだったり、かなり一人ひとりの社員の、キャリアや人生に対する「個人の意識」を目覚めさせようとしているんです。
今日はIT系のベンチャー企業の人も見ているかもしれませんが、これはもっと小さい組織であればもっとすぐにできると思います。例えば新規事業の提案も、リクルートで言えば「Ring」というイノベーショングループの制度があるんです。
大企業でさえも、「このまま人事がすべての社員の一生の幸福を抱えていくのはやばい」っていうことで(笑)、15年ぐらい遅れたんだけども、相当システムを変えてきていますよね。
どんな会社で働けば、僕が言う「100万人に1人の人材になりますか」と。1つ2つの足場はあるけども、3つ目にどういう掛け算をしますか。だから副業オッケーだったり自己申告だったり公募制にしたり、組織の枠組みを変えている。伝統的な会社でも、そういうことが俎上に上るようになっていますよね。
斉藤:俎上に上ってきて、実際に藤原先生がご講釈して、実際にその場を作られた結果、そこでどんな人たちが変わっていくんですか?
藤原:すごくいい質問なんですけども、僕は40代後半以上だと非常に変わりにくいと思いますね。45歳までの人は変われると思います。ちょっと思い浮かべてもらいたいんですが、自分の人生はまず100年あると思ったほうがいいんです。今日これを元気で聞いている人って、100歳まで生きますから。
藤原:100年生きると、“1回の人生”じゃ終わらないんですよ。1つのキャリア、1つのスキルでは絶対乗り切れないです。だから、1つの人生では生ききれないし、死にきれない。ということは、3つぐらい(のキャリアやスキルを)組み合わせる必要が出るわけです。
例えば僕であれば、営業という左足の足場があって、右足にリクルートでのマネジメントの足場があって、これで100人に1人(の営業スキル)、100人に1人(のマネジメントスキル)くらいだったから、(2つを掛け合わせることで)1万人に1人くらいの希少性が出た。
そこで40歳で僕は会社を辞めました。リクルートが嫌いで辞めたんじゃなくて、リクルートの人と一緒に、「僕のテーマ」で新規事業を立てて、リクルートと一緒にやりたかった。だからフェローという立場になって、年収が0~4,500万円の間でブレるような働き方をしたんです。
たぶんこれをご覧になっている35~45歳の方も、2つの足場があると思うので、あともう1つ、自分個人のキャリアと人生を豊かにするために(作ってください)。
とにかく何をもう一発、没入して1万時間をかけてマスターできれば、その3つの掛け算で自分の希少性がものすごく上がります。(何を掛け合わせれば)自分の付加価値が上がるのか考えるほうがいいと思いますし、会社としてもそういうことをプロデュースする時代に入っていると思いますよ。
斉藤:会社はリーダーになりやすい「環境」や、新しいキャリアや新しい軸足を作りにいくチャンスをどんどん提供してあげる。それが「学習する文化」を作るリーダーを生み出す支援になるんじゃないかということですね。
斉藤:石山先生はいかがですか。
石山:あえて藤原さんに異論を唱えたいんですけども(笑)。確かに35〜45歳はものすごく大事で、そこで変わろうと思ったり、いろんなチャレンジをするのはすごく大事です。でも「45歳以上だと変わりにくい」とは言うものの、でも変わりますよね、という話があって。
今、45歳以上の人たちの越境学習とか(よく言われるようになりました)。例えば50歳になって、「ずっと会社一筋で来て、自分は何もできません」とか「他の世界のことなんか何もわかりません」ということを言っていた人も、ちょっとしたこと(がきっかけで変わるんです)。
例えばビブリオバトルのような読書会に行ってみるとか、実はそういうことでも、絶対変わらないと思っていた人が「実は自分は意外にできるんだ」とか、「やれるんだ」(と気づく)。50、60、70歳でも、ばんばん変われる可能性があると思っているんです。
藤原:僕は本当にモードを変えた人も何百人も会っているんだけど、その人たちに共通するのは、1つは自分が勤めている会社がすごく調子が悪かったり、つぶれるかもしれない(という危機があったこと)。
僕の場合もリクルート事件がありましたが、会社に事件があったり、あるいはリストラされる直前までいったりした経験。
藤原:それか自分の病気。僕の場合も30歳の時にメニエール病になって、「ここから偉くなって、営業本部長から常務取締役を目指して、軍団を作って社長を目指すのはダメだな。やったら死ぬな」と思ったので、専門職になっちゃうわけです。自分の病気をチャンスとして、モード変更する。
あとは海外へ出ちゃう。海外に移住して、自分の生活のモードを変える。自分の世界観をいったんメタに引いて省みるんですね。その3つはきっかけになる気がします。それって存在そのものの危機なので、例えば50〜60代でも変わる気がする。
石山:そうですね。おっしゃる通りで、今藤原さんがおっしゃったのは「混乱するジレンマ」の話で、自分にとって重大なことがあると人は変われるんです。
今の日本の50〜60代って、日本全体が沈没しそうだから、もう全員混乱するジレンマということで全員変わっていいんじゃないかっていう気もしますよね。
斉藤:「79歳で参加していますよ」というコメントもいただいています。こういう場を自分を変える機会にしていただければと思います。
斉藤:今日のテーマである「学習する組織」。なぜ学び進化していく必要があるのか。どうやったらそうなれるのかというテーマです。その中で今日のキーワードは「危機感」と「学習する文化」になるんじゃないかなと思います。
危機感があるから会社としても学習をしていかねばならない。変化をしていかねばならない。戦略を立てて、それに従ってくれるだけでは困る。でも、じゃあ「明日からレゴ型の人材になってください」って言っても、なれるわけではない。
その学習するところ(の考え方)を、宝槻さんにひも解いていただきました。自分の意見を出す、意見を受け入れる。そういう機会を子どもの頃から得られているかというと、残念ながら今の日本はそうではない人たちのほうが多い。
そうした時に、この人たちが自分の意見を出す、自分の考えを話す、自分の考えを発信する、新しい軸足を手に入れるという機会を、会社として提供していくというのは、ある意味ジレンマだなと思ったんですよね。
危機感があるんですよ。会社が変わらないといけない。明日にもつぶれるかもしれない。でも学習する機会を提供しないといけない。これは長い時間をかけてやっていかないといけないテーマだと思います。
斉藤:今危機に瀕している企業のみなさんは、変わらないといけないという状況を踏まえた中で、この「学習する組織」のためにまず何からやっていかないといけないのか。これを今日の締めのテーマとして話せればなと思うんですが、いかがですか?
宝槻:僕は、「今の大人たちが発信したり語り合うことができないのは、そういう体験を学校とかでしてこなかったからだ」という色眼鏡で見ると、たぶん難しいと思います。確かにフォーマルな場では語り合ったりダイアログしたりした経験はないかもしれないけど、インフォーマルな場ではみんなやっているはずなんですよ。
斉藤:確かに。
宝槻:公園で、飲み会の席で、誰かの家に泊まりにいって夜な夜な語り合うようなことは全員やっているわけだから。そもそも人間は学習してきているし、語り合っている前提があるんです。
インフォーマルな場でみんながやっているようなことを、会社という公式な場の中でも自然に発生できるように、どうカルチャーを変えるかという視点で、自分の眼鏡を外してやってみたらどうなんだろうなと思います。
斉藤:ありがとうございます。(藤原さんは)いかがですか?
藤原:児童・生徒も学校には「わかるために行く」って思っているんだけど、これが勘違いなんですよ。学校の授業だけでわかるやつがいたら、それは天才です。「わかる」じゃないの。先生たちも確信犯で、わかったふりをさせるためぐらいで十分なんですよ。偏差値の高い子は、知識自体はもうオンラインでどんどんインプットしちゃえばいいわけですよね。
藤原:だけど、学校にはそうじゃない非常に大事な機能があるんです。それは企業でも学校でもみんな一緒なんだけど、やっぱり「学んでいる大人の姿」が一番教材として優れているんですよ。要するに、圧倒的に学ぼうとしている大人がそばにいると、そのオーラが感染して、学びたいっていう気持ちが起こるわけです。
例えば探究学舎だと、宝槻さんが一番おもしろがっているし、深掘りしているし、探究しているし、それをわかりやすくプレゼンしている。だから僕が見ていても楽しいし、恐らく巻き込まれる子どもたちも楽しいのね。
誰が一番徹底的に学ぶモデルになっているか。それがなければ僕はイノベーティブな組織なんて生まれるわけがないと思っています。僕は研修でもずっと言っているんですけど、「組織」がイノベーションを起こすことは絶対ない、あり得ないんです。
組織の中にいる、あるいはコミュニティの中にいるたった一人が革命を起こすんですよ。だから僕の近著のタイトルは『革命はいつも、たった一人から始まる』です。一人以上でも以下でもない。たった一人から始まらなかったら革命なんかないし、徒党を組んでイノベーションは起きないですよ。
AppleだってGoogleだってそうだった。たった一人に、もう一人がくっついて、2人のコンビがすごくうまくいった。それが1兆円になるか10兆円になるかはわからないんだけど、(革命が起きるのは)そういうケースです。
だからとにかく学んでいる大人の姿こそ最高の教材だということを、学校現場もわかる必要がある。企業でも同じことが言えるんじゃないの?
石山:そうですね。今、宝槻さんと藤原さんのお話を聞いていて思ったんですけども、昔の企業にはたばこ部屋(喫煙所)とかあったわけですよね。ふだんは真面目に仕事をしているのに、たばこ部屋に行くとなぜか急にみんな打ち解けちゃって、「実はこうなんだけど」とかっていう話ができた。
さすがに、健康経営の時代にたばこ部屋を作り直すわけにいかないし、オールド・ボーイズ・ネットワークというか、たばこ部屋でも男性優位な状況ができてしまい、ダイバーシティが重要な時代なので、それに頼っていては、ちょっとダメだと思うんですけども。
でもまさに藤原さんがおっしゃった通り、「学ぶのが格好いい」とか「こんなことを追究したいんだ」っていう、あんまり仕事と直接関係ない話を、会社の中で普通にできるようにしたいですよね。
「ちょっとさ、この前こんなところを学びにいってきてさ、こんなことをやりたいんだよね」って話せばいいんだけど、なんとなくそういうのは話しちゃいけないような雰囲気に、企業がなっているところがまずいんですよね。
斉藤:学ぶ姿勢を見せると考えた時に、今日この場だけでも2,000人のみなさんに参加していただいていていますが、すごくもったいないことだと思うんです。学ぶ姿勢を人事が見せられていない(のではないか)。
自分自身が(学んだことを)シェアする機会が、(他の社員を)触発するきっかけになる。だからこそこの場に限らず、自分自身が学んだものをどんどんどんどんシェアしていただきたい。
「こういうふうに思ったんだけど、まだそこから結論に至っているわけではなく、今ここを悩んでて」とか「これ、めっちゃおもしろかったよ」っていうのをどんどんシェアして、みんなとディスカッションしていく場を作っていく。
それが危機感のシェアにもなるし、自分自身が「学びたいな」「学ぶっておもしろいな」と思う姿勢を見せることで、(他の人が)「自分も学んでいこう」と思える、そんな場作りができるんじゃないかなって思いました。
斉藤:残り時間があと2分ほどになってまいりました。あらためて今日は「学習は戦略に勝る ー学び、進化する学習組織のつくりかたー」というテーマでお送りしてきましたが、最後に一言、みなさんからいただいてもよろしいでしょうか。藤原さんから。
藤原:情報編集力を上げないと、これからの自分のキャリアも、人生も開けないです。これはちょっと話せばすぐわかると思います。みんなと一緒の方向ではなく、「自分の希少性」というものを高めていく方向へ行かないと、どんどん価値を失います。
情報編集力を高めて希少性を磨きたいのであれば、もし興味があれば「朝礼だけの学校」(に来てください)。僕がやっているオンラインの寺子屋のようなもので、10代〜80代が300人ぐらいいます。
(情報編集力を高めるために)集まっていて、本当に日々お互いに学習しているので、300人の生徒が全員先生なんです。生徒イコール先生という位置付けでいます。
「目覚まし朝礼」という、400近くのコンテンツがあるんですけど、今日の朝は高校生があるプレゼンをしました。それをご覧になっていただいたら、「よのなか科」というものをやるとどんな高校生が育つかが、たぶんイメージできると思う。
最低でも、YouTubeの藤原和博チャンネルには登録してくれる? ありがとうございました。
(会場拍手)
斉藤:では宝槻さん。
宝槻:かなりいろんな視点が飛び交ったと思うんですけど、自分の中で納得したのは、最後のほうにあった「発信する」のくだりです。その中から、藤原先生が言った「一人の革新的なアイデア」をどう紡いでいけるかということなんだろうなと思いました。今日すべてが見えたわけじゃないんですけど、そういうことなのかなという学びがありました。
自分自身が発信して革新を起こす体験はあるんですけど、今度はそれをどう仲間の中に見いだすのかというのが、僕自身のこれからの課題になるのかなと思いました。ありがとうございました。
斉藤:ありがとうございました。
(会場拍手)
斉藤:では最後に石山先生。
石山:藤原さんと宝槻さんのお話をお聞きして、基本的にお二人ともおもしろがってやっているんですね。やっぱり学ぶのは単純におもしろいし、好奇心を満たされる。ジグソーパズルをはめるより、訳のわからないところへ行っておもしろがるのがいいのかなって、あらためて思いました。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
斉藤:難しいテーマでしたが、みなさんお付き合いいただきありがとうございました。
(会場拍手)
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