「社会改革」と「産業改革」が進まないとどうなるのか

山口揚平氏(以下、山口):こちらは今後の4つのシナリオです。産業とか社会が変わるのか変わんないのかということで、なんにも変わんないとすると、左下の「封建的ヒエラルキー国家へ(トヨタ・金融庁)」という、まずいパターンになります。この場合日本はすごい階級社会になるので、自分が今どこの階級にいるか意識して、誰と付き合うか、どの階級に所属するかということを、意識して生活するべきだと思います。

右上ですね。社会改革が進んでも産業改革は進まないと言う可能性がすごく高いと思っています。僕はベンチャー側、新しい産業を作っていく側の業界にいる人間なんですね。

でも反対側は、ベンチャーの投資だったりとか、先ほどトヨタがEVに転換しきれなかった中で、大企業の動きの遅さを考えると、80年間それをやってきたのでしょうがないんです。1945年以降の更地から日本を作ってきた80年ですからね。

ちなみに、1945年の80年前が明治維新ですから、ちょうど80年周期でかなり大きく産業とか社会って動いていることがわかると思います。

社会の改革が進んだときに問われる「どこに住むか?」

社会の改革っていうのはどうやら進むかもしれない。と言うのは、地域のリーダーが出てきているからです。

地域のリーダーシップが出てきて、それぞれが独立していくわけじゃないんですけども、戦国武将が出てきて戦国時代に突入していくようなかたちで各地域の大名になっていくと。それぞれの地域がそれぞれの武器をもとにして、都市国家化を進めていく流れはあるかなと思います。

その時に、「いったいどこに住みますか?」っていうのが重要なポイントになります。左下は「誰と付き合うか」というのがポイントでした。ちょっと言い方は悪いんですけど、封建的な社会の中で自分の階級ってどこにあるのか、非常に品性とか教養とか人とのコミュニケーションとかが大事なのが左下ですね。

あまり起こらないんですけども、右下は産業の改革は行われて、社会は変わらない。そうすると対立に巻き込まれるようなかたちです。

外資とか、ベンチャーとか。昔「ハゲタカブーム」がありましたけども、そのような感じで、日本の産業が外資によって駆逐されるというような、ペリー来航のようなものです。

社会改革が行われないと、日本の産業は外資に駆逐される

今で言うとAIと量子コンピュータとロボティクスとブロックチェーンが「4大テック」と呼ばれるんですが、日本はこの4つ全負けをしている。今はGoogleさまにひれ伏しているわけですね。

価格.comとか食べログとか、もう使わなくなっちゃうわけです。「食べログを見るよりも、Googleマップで見た評価のほうがどうやら正しいぞ」ということになってきちゃっているわけです。

それがAI時代になってくると同じようなことが、全ての業種で起こります。Googleは地球全部を、5センチ単位でリアルタイムで把握しているわけですね。

どこに交通渋滞があるのか、どこのパーキングが安いのか、どこのガソリンスタンドがいくらなのか、どこのホテルの部屋が空いているのか、全部見ているわけです。

そんなことをやっているわけですから、10年後には、今日本がやっているDXなんてことは駆逐されて、全部持ってかれるんじゃないかなと思っています。

右上は更地になるパターンですけども、この場合はベンチャースピリットが高い人、曹操や織田信長みたいな人が活躍するんじゃないかなと思います。

「システム」の中で生きていく人は75パーセント

今は本当に民主主義システムとか金融システムとか住宅システムとか(さまざまなシステムがあります)。家の35年ローンを抱えて子どもがいて、扶養の家族がいてという大変な状況の中で、システムの中で生きていく人が75パーセントぐらいいます。

一方、「自然の中で生きようよ」とか、外資の金融に入ってぜんぜん桁の違うお金を稼ぐとか、システムの外で生きる人たちがいます。それが10パーセントから15パーセントです。

それから改革派が5パーセントいるわけですけども、一番きついやつです。今は暴露社会と言うのか、監視経済と言うのか、清廉潔白でなきゃいけない中で改革を進めていくのは、とてもハートが強くないといけないのかなと思います。

あとは5パーセントのグローバル派です。日本の外へ出ていくという人たちがいます。みなさんはどれを選ぶでしょうか?

今やるべきは「自分とは何か」と、内側の世界を見ること

ここからは「自分とは何か?」についてのお話をします。今ここに僕らがいます。そして五感がある。「五感の壁」と言っているんですけども、その五感を基軸にして、目に見える外の世界があります。

お金や家、ファミリーとか車とか。あるいはキャリアとか仕事とか、そういうのを「外在世界」と言うんですね。ほとんどが視覚なんじゃないでしょうか。メタバースとかになってくると、視覚だけじゃなくて聴覚とか触覚とかも取り込んでいくでしょうけれど。でもそれは外在世界です。

そして内側の世界。「目に見えない」と言えば簡単なんですけども、本質に迫る部分の「自分って何?」と考えると、なかなか難しいんです。

今、外の世界は混乱しているんですけども、今やるべきは外の世界にアジャストしていくことではなくて、「自分とは何か」ということや、「自分の中に何があるのか」をちゃんと知覚して、丁寧に整理して整えていくことが、今一番大事なんじゃないかなと思います。

つまり、「外の世界に向かうんじゃなくて内側の世界に向かおうよ」というのを提唱したいんです。本質から始まって、さらにそこから新しい現実、外の世界を作っていくような動きが、今まさに求められていることなんじゃないかなと思います。

それが「ジーニアス」に対して素直に生きること。「ジーニアス」は天才と言いますけども、もともとは霊性を意味する「Genius(ゲニウス)」というラテン語から転じた言葉で、「自分にとって自然な姿」という意味なんです。

「個性」「才能」と「天才性」の違い

ジーニアスファインダーというのは、「自分にとっての自然な姿とは何か、きちんと知覚したり棚卸しして整えて、それに素直に生きていこうよ」という考え方です。その方法をご説明したいと思います。

その人だけに備わるものを「天才性」と言っています。「固有の特性」と書いてありますが、よく「才能」とか「個性」とかと比べられます。

「個性」というのは、性質とかキャラクターといったものですよね。何が好きで、どういう外見が好きで、どういう外見や性格をしているのかとか。「どう変わってるの?」と、人との違いの中で浮き立つものを「個性」と言うんですね。

「才能」は人より優れた能力のことです。野球の才能だとか文章を書く才能だとか、カテゴリーが最初に存在していて、そのカテゴリーの中で自分が卓越しているといった、相対的な意味です。

才能も個性もどちらかと言うと相対的な概念なんです。才能は役に立つものだし、個性は役に立つかどうかはわからないけども、性質です。いずれにしてもこれは他者がいないと存在し得ないものです。

天才性はそうではなく、その人だけに備わるもので、比較対象ができないものです。誰々と比べてとかではなくて、その人自身が持っている、備わっているものをその人の「霊性」と言うんです。

自分のことを知れば人生が豊かになる

先ほど「Genius」というラテン語から転じてジーニアスだと言いましたけども、その人が持っている周波数とか、その人が持っている物事との距離感とか、知覚の解像度が高いとか、そういったところを「天才性」と言うんです。

自分の天才性を知ることは、「自分とは何か」を知ることとかなり近くなってくると思います。そこを知っておいて、それをより言語化しておくと、自分と他者を比較することがなくなってくるわけです。

ビル・ゲイツは良いことを言いました。「世の中で一番大事なことっていうのは人と比較しないことだ」と。SNSとかを見ると比較しちゃいますよね。なのでSNSは必要な時にダウンロードして使って、終わったら削除する。こういう習慣が大事だと思います。

外在世界にばかりとらわれると、自己肯定感を高く持てなくなるんですけが、自分のことを知れば人生が豊かになります。人生を豊かにする方法は「自分とは何か」を知ることしかない。自分にとって素直な、自然な姿を生きるしかないんです。

でもみんな「自分とは何か」に関してそれほど関心を持たないし、どうやって「自分とは何か」を知ればいいのかそもそもわからなかったりするわけです。そこに罠があるのかなと思います。天才性を知り、天才性に忠実に生きましょうというのが、ここでのメッセージになります。

人生の時間当たりの濃度は人によって違う

ここで「時間」の概念が出てきます。僕らが提唱している1つの有益な考え方として、今「生涯100年時代」と言われていますけども、19世紀のフランスの哲学者にポール・ジャネはこう言いました。「5歳の1年と50歳の1年は10倍違う」と。確かにそうだと。

これは5歳と50歳の人は濃度が違うんだと。価値が10倍違うわけですね。50歳は、49年間の記憶がたくさんあるわけですね。そこに意識が持っていかれてしまうんです。そうすると、自分の意識とか知覚の動きが緩慢になってくるわけです。認知が遅れてきて、認知症になってしまう。そうすると、人生は豊かじゃなくなるんですね。

人生とは時間の濃度にほかならないと私は考えます。人生の時間当たりの濃度は人によってぜんぜん違います。時間は1つの社会的な指標なんですね。時間は物理的に存在しているわけではない。

時間は、(物理学で)「エントロピー」という言葉で表されます。「時間が経つ」というのは、グラスの中にインクを垂らすとですね、ばあっと広がっていくわけですね。これがエントロピー、拡散効果です。

例えば「老いる」と文系では言うかもしれませんが、物理的な指標として存在しているわけであって、それは人間が作った指標なんですね。客観的指標です。時間が歪むということも、人によって尺が変わっていくので相対的にあり得るわけですね。

お金がそうです。お金も人が便宜的に生み出している指標です。だから僕らが苦しんで払う1万円と、前澤友作さんが払う1万円では、濃度が違うわけです(笑)。2,000億円持っている人と、200万円しか持っていない人の1万円の価値は、1万倍違うわけです。

時間も同じです。同じ1時間でも、1時間の濃度はまったく違うわけです。この「時間の濃度」を上げていくことが、200万円と200億円の違いです。

この時間の濃度(が高く)、わくわくして楽しくて自分自身を生きているという意識で動いている。そういった状況を目指しましょうということです。