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ミドルシニアのキャリア自律(全4記事)

キャリア相談がうまくいくのは「自分のプランが明確な人」だから ミドルシニアの自律を促す「モヤモヤする気持ち」の吐き出し

年間1万セッション以上の1on1を提供する「YeLL」では、その知見をもとに組織作りに関するセミナーを開催しています。今回のテーマは「ミドルシニアのキャリア自律」。本記事では、代表取締役の櫻井将氏による講演パートの模様をお届けします。ミドルシニアに向けた研修・サポートを行う中で、実際にあったキャリア自律の事例について語られました。

サポートしたい人の顔が思い浮かぶからこそ難しいキャリア研修

榎本佳代氏(以下、榎本):それでは櫻井さん、よろしくお願いします。

櫻井将氏(以下、櫻井):ありがとうございます。今篠田さんが(ミドルシニアのキャリア自律について)すごく概念的、抽象的にわかりやすいお話をしてくれたんですけど、私からは具体的な事例をお話ししながら、エールで実際にやってみて、具体的に何が起きているのかという、リアルな生々しいところをお伝えするのがいいのかなと思っています。

ここにいらっしゃる参加者のみなさんは、人事部とか人材開発系の方で、キャリア研修をやられてる方かと思います。たぶん、今が一番「キャリア研修どうしようかな」って考えていらっしゃるタイミングなんじゃないかなと思います。だいたい、秋ぐらいから研修をされる会社さんが多いのかなと。

一昨年、去年、今年、来年で、人事制度の変更がある会社さんも非常に多いんじゃないかなと思うんです。そこで「去年と同じ研修でいいのかな」「なにか新しくできることないのかな」なんてことを思われてる方がいらっしゃるんじゃないかなと思います。

あとよくおうかがいするのが、部門長や経営者の方になってくると、リアルに人が浮かぶ。「○○さんとか、○○さんとか」って名前と人の顔が一致して、「ああいう人たちサポートしたいんだよな」っていう思いをすごい持っているんです。

でも、その人の事情とか背景とか性格まで知っちゃってる上に、サポートが難しいんだよな、簡単じゃないんだよなって、肌感を持ってわかるという方もいらっしゃるんじゃないかなと。

事例から考える、ミドルシニアのキャリア自律の特徴

櫻井:今日来られている方の中には、研修会社さんの方もいらっしゃるようにお見受けしています。私もこの「YeLL(エール)」という事業に関わって5年ぐらい経ちますが、このミドルシニアの研修の話をさせていただいてから、ミドルシニア関連の研修をやられてる会社さんには、すごく強い思いを持っている会社が多いと感じています。

そういう思いがあり、真剣にやってるからこそ、このエールがやってる「1on1」にすごく価値を感じてくださってる会社さんがたくさんいるなと思ってます。

みなさん今なにかしらの施策を検討されているんじゃないかなと思っているので、そのヒントとなればいいなと思って、実際の事例をお伝えしながらお話をさせていただきます。

構成としては、最初にブレイクアウトで、どういうテーマで自分がこの話を聞きたいのか、課題の言語化をしていただきます。ちょっと意識を向けると入ってくる情報が変わるかなと思います。最初ブレイクアウトルームで、少し参加者同士でお話しする時間を設けようと思ってます。もしお話しできない方は、お名前に「ミュート」「耳だけ」とあらためて追記いただければなと思います。

最初に自分自身の課題の言語化をしていただいた上で、私から2つ事例を取り上げようかなと思ってます。1万名以上の会社さんで、ミドルシニア層が1,000人、2,000人いる中での大規模な取り組みと、もう少し小さい、1,000名以下の会社さんの中でやられてる取り組みの2つをお伝えしながら、個別具体の変化もお伝えしていこうと思っています。

先ほどの小林さんの本(小林祐児氏・『早期退職時代のサバイバル術』)はどちらかというと、データとか抽象側から見える示唆だったと思います。私からお伝えしたいのは、この具体的な事例を見てきた中で、そこから見える本テーマにおける「特徴」を少しまとめます。そしてもう一度ブレイクアウトルームで、みなさんに気づきとか学びの言語化をしてきていただくという流れで進めようと思っております。

1万名以上の会社の研修で起きたキャリア自律事例

櫻井:では最初に、ご自身とか自組織での、ミドルシニアのキャリア自律に関するお困りごとや課題感。またはこのパートで得たいヒントについて、グループのみなさんと話してきていただければと思います。では、ブレイクアウトルームをお願いします。

(ブレイクアウトルーム)

おかえりなさい。続いてお話をしていきます。2つの取り組み事例を少しお話しします。

1つ目。コンサルティングとかITソリューションをやっている、グループで1万名以上の会社さんで「YeLL」を導入いただいた事例です。

階層別のキャリア研修の対象者が、この会社さんに600名ほどいました。40代と書いてあるんですけど、正式には40何歳とか50何歳とか、特定の年齢に対する研修が行われていて、それが600人いらっしゃるということなんです。

このキャリア研修を受けられる方々に対して、50代の後半の方に関しては「YeLL」を必須にして、40代後半と50代前半の方は手あげ式で希望者で募って、300名集まりました。

まず人材開発部の方が「希望者のみと言ったのに、こんなにも手が挙がるのか」と驚いていました。驚きつつも、「ああ、やっぱりみんな話したいんだな」とお話をされてました。

この会社の課題感は、人事制度の変更でした。最近多いですね。人事制度の変更によって、シニア層に関わる制度が大幅に変わるというのがきっかけでスタートしました。

研修やキャリアコンサルティングが「単発」で終わる問題

櫻井:去年までもキャリア研修をやっていて、当日はみんなめちゃくちゃ盛り上がるらしいんですよ。「キャリアについて考えよう」って熱量がすごく高まるんです。でも一方で、研修が終わって現場に戻っちゃうと、やっぱり考える機会がないし、良い相談相手がいないまま、考えないということになってしまう。このような課題感がありました。

実はキャリアコンサルタントをつけたケースもあったんですが、単発になってしまった。先ほど篠田さんが言ったように、自分のプランが明確な人はキャリアコンサルタントとかキャリアアドバイザーに相談できるんです。でもまだモヤモヤした、キャリアに対して「よくわからないな」という状態では、わりと効果が出ないことがあって。

次にキャリアコンサルタントじゃない施策で何があるかな、ということで、「YeLL」を選んでいただいたっていうかたちになります。

通常だと研修のみで、キャリア研修を1日やって、あとは本人任せとなるところを。YeLLが入った場合は、キャリア研修をやって、隔週で30分、3ヶ月にわたって6回、1on1をするというアプローチをさせていただいたケースになってます。

だいたい希望者が手を挙げた時に、40代後半の40パーセントぐらい手を挙げて、50代前半の30パーセントぐらいが手を挙げたというかたちになります。

研修ごとに異なる研修会社だったので、若干伝えられているニュアンスが違うんです。50代後半の方に伝えられる研修と、40代の方に伝えられる研修は違い、コンテンツや研修会社が違ったんです。我々としては基本的にぜんぶ受けて、「YeLL」で伴走させてもらったというケースになってます。

50代後半の男性が気づいた、自分にとって大切な2つのこと

櫻井:生々しく具体を見るとおもしろいと思ったので、今回こちらに3事例持ってきました。

1人は50代後半の男性の方。「YeLL」の特徴として、6回セッションをしていくんですが、1回目はサポーターと呼ばれる聞き手と本人の方の相互紹介をしていきます。

2回目あたりから本格的に話していきますね。自分が漠然と考えていたこと、モヤモヤしたことをまず引き出してもらった。

3回目にもうちょっとだけ転機が訪れて。自分が思考や行動を束縛していた固定概念があった。ある種の切迫感みたいなものが自分の中にあったな、ということに気づき、こっから自由になれたように思える、ということが起きて。

だんだん3回目、4回目って続いて、5回目ぐらいになってくると、「この年齢になって、あらためて学ぶことにワクワクしている」という変化が起きている。この変化は、実は1個前にサポーターの体験を聞かせてもらったんだけど、この体験が参考になったから「なんで参考になったんだろう?」ということを、この方が4回目で、自分で2週間の間に。

隔週でやっているので、この2回の間に振り返りをしてきていました。そこから得た気づきを整理して、それを「これが私にとって大切なことだった」と言葉にしました。

1つは、「ご縁の大切さ」に意識を向けるということ。2つ目は、なにかの準備のためじゃなくて、興味のある分野とか学びたいことを、今の時期に学ぶんだということ。これが参考になったって自分で気づいていました。そこから2週間で自分で学び始めて、「学ぶ」ことにすごいワクワクし始めて。

最後は「雇用終了後もまだ選択肢があって、意外と希望でいっぱいなんだな」ということをお話しされていたケースがありました。

今の仕事とやりたいことを両立する道もあるという気づき

櫻井:これは50代前半の方です。自分の意識の上になかった、埋もれていた、自分の大切にしていることが、最初はうっすらとわかる。なんとなくしゃべってみたらちょっとわかったな、ぐらいだったと思うんです。

よく「YeLL」であるパターンは、キャリアに関してうまくまとまっていないモヤモヤした気持ちを持たれてることがすごく多いんですね。言語化できない、説明しろと言われたらわかんないんだけど、なんかキャリアに対するモヤモヤした不安とか、よくわからない気持ちがある。それをだんだん吐き出せるようになるのが、3回目とか4回目で起きていきます。

「自分が何を志向しているのかはまだ見えないんだけど。でも、今の仕事を捨てて次のステージに向かわなくても、両立できる道があるんだ」と。何かやりたいことがあったら、そこに今の仕事を捨てて向かわなきゃいけないと思っていたんだけど、「いや、捨てずに両立する道もあるんだ」っていうことに気づいた。

やりたいことをあげるだけじゃなくて、それを実現するためのアプローチを考えてみようということで、実際に考えて、最初の一歩をイメージしてみて、やり始めてみたということです。

「自分が大切にしていることとか志向していることの認識ができた」。ここがおもしろいなと思ったんですけど、「考えるだけでも自分の気持ちが晴れやかになるようなモノとかコト、領域があると、本業にものすごい良い影響が与えられるんだなということを実感した」っていうことで。

やっぱり自分がやりたいことを見つけて、副業とかなにかしらでちょっと学び始めてみたりすると、それが結果、気持ちのスッキリ感とかだったりするのかもしれないですけど、本業にも影響するようなかたちのケースです。

「過去の経験」を話せた経験が転機に

櫻井:後でまとめますが、50代、40代、30代ちょっと傾向が違うんです。これは40代後半の男性です。

この方は、実は独立を考えていたという話でした。そう考えていながら、最初は「明確じゃないんだけど、なんか気づきを得たいのでセッションに参加しました」という感じで始まったんですね。

転機になったのはたぶんここ(4回目)ですね。ここまでは、終わった後に独立の話はされてなかったんですけど、4回目で独立の話が出てきて。本当は持ってたんだけど、この話を会社の中でしちゃいけないと思ってたので、サポーターにもしてなかったんです。

周囲の人間には決して口に出せなかった「過去の経験」を、じっくり話せた。これがきっかけで、やっぱり独立したいって思ってたことを吐き出したんです。そして吐き出した結果、「ひょっとしたら今の仕事は自分に合ってるのかもな」って気づいたんです。

自分が深掘りでき、会社でやった360度評価を見直してみたら、客観的な視点でも自分の強みが裏付けされていた。あらためて「自分の強みが周囲に良い影響を与えてるんだな」って、自分で気づけた。

今まで「独立したい」と思っていたのは、何か現状を劇的に変化させたかったからなんだけど。そうではなくて、まずは今の職場の中で自分が小さな一歩から踏み出すほうが良いんだって納得できた。こういう変化が起きている。

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