2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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中野信子氏(以下、中野):みなさん、よろしくお願いします。中野信子といいます。
これからゲームをします。これから私が19個の数字を表示します。同じ数字は二度と表示されません。その数字を見て、みなさんには2つの選択肢があります。「運命」か、または「抵抗」。
ただし、「運命」を選べるのは1回だけです。「運命」を選ぶと、その人はそれ以降の数字に対する選択権を失ってゲームは終わりです。あなたが「運命」と言ったら、その数字がまさにあなたの「運命」です。
「抵抗」を選ぶと、その数字を捨てることになります。その数字は二度と手に入りません。でも、次にもっと良い数字が出る可能性があります。その数字に対する選択権が与えられますが、18枚目まで「抵抗」を選び続けた場合、必ず19枚目があなたの「運命」になります。ずーと「抵抗」し続けたら、最後の数字が自動的にあなたの数字になっちゃうよ、ということです。
19枚――これから私が提示する19個の数字のうち、一番大きい数字を選んだ人が勝ちです。もう1回ルール見たい人います? 始めてもいいですか? 質問ある人はいませんか? では「運命」と「抵抗」のゲームを始めます。
最初の数字は「7」です。「運命」を選ぶ人?
(会場挙手)
初っ端から「運命」選ぶ人? 本当? この後19枚出るんだよ? 勇気ありますね。「運命」2人で、手をあげてない人は「抵抗」でいいよね。
次、2番目の数字いきます。「13」。
(会場笑)
中野:残念でした。7を「運命」だと選んだ人、残念。じゃあこの「13」を「運命」に選んだ人? ......いないよね。19枚出ることがわかっていて、「13」を選べる人はなかなかいないんじゃないかと思ったけど、選んだ人は、少数や分数や、あるいは無理数、マイナスの数も考慮に入れて、深読みした、ということかな。
中野:次いきますね。3番目の数字は「1879」。これもありですよね。これが「運命」っていう人? 3番目に「運命」が来ちゃうかもしれない。
まだ3番目の数字ですけど、このゲーム、何かに似ているな、って思った人いませんか? ちょっと皆さんだとまだ若すぎるかもしれないけど、結婚相手を選ぶのに似てるんですよね(笑)。その人をいいと思って選んだら、次にもっと良い相手が来てしまった。ああ、先に選んだあの人が一番いいと思ったのにな……という現象によく似ている。
手を挙げた人がけっこういたと思うけど、覚えておいてくださいね。1879を「運命」と決めた人は、次の数字は選べません。他のみなさんは「抵抗」ですよね。
じゃあ、4番目にいきますよ。「9859」。
(会場笑)
中野:どうでしょう(笑)。3番目で「運命」を選んだ人は、残念でしたね。年収1,000万円の人だと思って選んだら、次は年収1億円の人が来た、みたいな。もう選べません。では9859を「運命」と思う人? また次に良い数字が来るかもしれないですよ。......でも選んだ人もけっこういますね。
さあ、どうでしょうか。5番目いきますよ。「19」。4番目の数字を選んだ人は可能性がありますね。19をもう「運命」って思っちゃえっていう人は?
(会場笑)
中野:いないかな? 次にいきます。「1033」。「運命」って思う人? まだ当てたいよね。サクサクいきましょう。
中野:6番目は「599」。「運命」の人? ......いないね。
次いきます。「4159」。だんだん9,000なんちゃらが一番良くて、もう望みがないんじゃないかという感じになってきたかもしれませんね。どうでしょう。
さあ、次にいってみます。「17,209」。9,000なんちゃらを選んだ人、残念でした。これを「運命」に選ぶ人? おっ、勢いよく手が挙がり始めましたね。「運命」に選んだ人は、もう次からは選んじゃダメですよ。
次いきます。次は、「74,413」。これを「運命」と思う人? そうだよね、選びたいよね?
次。「857」。もう聞くまでもないですね。次、「227」。このゲームは、本当は2人でやるとおもしろいんです。数字をまぜこぜにしながらね。次です。「151」。だんだん後がなくなってきました。一番最後まで「抵抗」し続けて大丈夫でしょうか? 良いところで手を打っといたほうがいいかもしれないです。
次、「73」。さっきの7万いくらを選んだ人は、ちょっと期待に胸が膨らんでると思います。「自分たちが勝ち組じゃないか」と感じると思います。
次、「31」。だんだん後がなくなってきます。あと残り4枚、選べるのは3回です。
次いきます。「704,551」。
(会場ざわつく)
がっかりする声も聞こえましたね(笑)。「704,551」が「運命」の人は? 待っていてよかったね。でも、もしかしたら、もっと良い数字が出てくるかもしれないよ。では次いきます。残っている人はどれぐらいいるかな? 「抵抗」を選んだ人。おっ、けっこう粘るね。では次の数字をよく見ててくださいね。
「1,004,119」。もう聞く前から手を挙げている人も(笑)。「運命」と思う人は?……けっこういますね。念のため聞くけど、もっと良い数字が来るかもしれないけど、いいですか? これ、何番目か覚えていますか? 17枚目です。選べるのは、もう今回と次の1回だけですよ。はい、もう締め切りです。
中野:次いきます。「9,001」。さっき100万見ちゃったから、これは選べないだろうね。一応聞きますけど.......いないかな。これが、18枚目です。最初に行ったこと覚えているかな。次が最後の1枚です。つまり、もう「運命」を選べるのはこれが最後です。ここで「抵抗」を選んだ人は、次の数字が自動的にあなたの数字になります。いいですか?
ではいきます。最後の19枚目。「3」。
(会場笑)
残念でした。最後まで「抵抗」を選んだ人いましたけど、しょぼかったね。「3」です。
これは本来、2人で好きな数字を書いて混ぜ合わせてめくっていくと、相手が普段どんなことを考えてるかとか、どんな数字が好きかとかがわかってなかなか味わい深いんですよね。本来は今日みたいに1対マルチでやるものではなく、1対1でやるとおもしろいゲームなので、よかったらやってみるといいと思います。
なぜこれをやったかを話す前に、勝った人がどれぐらいいますか? 自己申告になっちゃうけど、念のため後で教えてください。もしかしたら、ちょっとぐらい何かいいことがあるかもしれません(笑)。
これは「『運命』と『抵抗』ゲーム」というゲームで、ある小説の中に出てくるものを応用した遊びです。みなさん、やってみてどうでしたか。結婚相手を選ぶのに似ていると私もゲーム中に指摘しました。
中野:けれども、もっと言うならば、人生における選択に似ているといったほうがいいのかもしれない。例えば、どの大学を受験しようか決めるとか。あとは、今「親ガチャ」という言葉がバズっているというか、流行っているというか、よく聞きます。この言葉を不用意に使って炎上するという事象もしばしば見かけると思います。「毒親」という言葉なんかも定期的に聞きますね。
どんなレイヤーで考えてもいいんだけど……例えばいわゆる「親ガチャ」問題を適用して考えてみましょうか。私が提示した19個の数字は、まさしく、「運命」でしょう。親ガチャのようなものです。その数字そのものは、あなたが用意したわけではなく、19個の範囲内ですでに用意されてしまっている。最大も最小も決まっている。いつ何が現れるかを、あなたが操作することもできない。
その中から、自分で判断し、選ぶ権利だけが与えられている。隠された未知のポテンシャルのうち、ギャンブル的に最大を選び取るチャレンジをするのか、抵抗し続けて消極的に最小を選ばされてしまうのか。そういう話を今回はしていこうと思って、このゲームをやりました。
無意識に直感的に選んだ。でも、その判断基準すらも、ある範囲内で、その人の傾向というものが定まっているのだとしたら、どうでしょう。
「チャレンジさせられている」とか「選ばされている」という時点で、自分で選んでいるのではなくて、遺伝子に誘導されて選んでいるともいえる。生まれつき、選べる範囲というものが決まっているなら、それだって親が選んだのとさほど変わらないかもしれない。
数字たった19個という小さいスケールのゲームだけれども、どこか、人生とか世界そのものだとかに似た振る舞いを示すような感じのするゲームかなと思います。
中野:一度、決めてしまったものは変えることができない。絶望的なゲームだな、と思うかな?
今の若い人は、「間違えたくない」という気持ちが強いんだというのをどこかで聞いたけれど、みなさんはどうだろう? このゲームで一番大きい数を選べなくて、「間違えた」「失敗した」と思うかな?
でも、これって、大きいのが勝ちっていうルールも、一応与えられているものではあるけど、自分でその意味づけを変えてもいいんだよね。選んだ「運命」の意味づけをするのも自分なんだっていうこと。
与えられた数字の範囲や条件が示すものが広義の「運命」だとするなら、その影響や意味付けを自分で、広い意味で考えて選んでいくのが「抵抗」だということもできる。そうすると、自分の生きていることの意味をその瞬間ごとに更新していくのが生きるという営みそのものだといえるかもしれないよね。
その人の持っている遺伝的な素質が全てを決めるわけではない。環境、抵抗がぜんぶを変えられるわけでもない。私が言うまでもなく、そもそも実感として、なんとなくは皆さん感じ取っているものなんじゃないかな?
中野:導入がちょっと長くなりましたが、今日は「遺伝と環境の問題」についてお話ししていきますね。どちらかといえば、みなさんは恵まれているほうじゃないかなと思います。教育水準の高いといわれる私立大学に通えて、学費の心配もそんなにしなくて済む人がきっと多いんじゃないかなと思います。私はけっこう大変でした。学費が安い国立大学でしたけど、貧乏でね。大変でした。
それにくらべれば、たぶんみなさんはきっと恵まれているだろうと思います。少なくともここまでは、選んだ、あるいは、選ばされた「運命」については恵まれている人がそれなりの数いるんじゃないかな。
だけども、これからの人生の中で、もしかしたら、不本意な運命を選んでしまった、あるいは、選ばされてしまった、ということもたくさん出てくるんじゃないかなと思います。おそらくは、どこからどう見ても失敗してしまった、と思うことも、きっとあるでしょう。ないほうがいいと思うけれど、生きていれば誰にもそういうことはあるものだからです。
自分にはそういうことは起こらない、と主張するのは正常性バイアスにハマっていることに気づかない人か、どんな失敗をしても見えないところで尻拭いに奔走してくれるありがたい存在がいるせいで脳の成長が止まっているおめでたい人か。または他人に迷惑を掛ける元になりかねない危険な認知につながる誤ったオカルト的な信念を持っている人なのかのいずれかです。
あるいは、失敗するというのでなくても、こんなこともあるかもしれない。誰が第三者的にどう見ても成功しているのに、自分は自分をみじめに感じてしまう。がんばっているはずなのに、空虚で、自分がずるいことをしてうまくやっているような気がする。うしろめたい。
ちょっとしたことで、自分の浅はかさが見破られてしまうんじゃないか、いつも不安だ。自分に価値がないような気がする。自分で決めた道のはずなのに、これでいいのかどうか自信が持てない……。
中野:その時に、苦しい、と思うと思います。失敗しようが、成功していようが、自分の選んだ「運命」がこれでいいのかどうかわからない。そんな苦しさを味わう時がきっと来るだろうと思います。もう、そういう経験をしている人も、もちろんいるかもしれませんけどね。
でも、それまでに挫折を味わったことがなかったなら、なおさら、失敗があったら痛さを感じると思います。どう立ち上がればいいかもわからないし、どうリカバリーしたらいいかもわからず、方法の糸口さえ見つからないかもしれない。
もう失敗しちゃったから、あるいは、成功しても意味がなさそうだから、リセットしてしまおうか。自分なんてこの世にいてもいなくても変わらないんじゃないか。自分の存在に何の価値もないんじゃないか。
そんな気持ちになった時にこそ、このゲームのことをちょっとでも思い出してほしい。その、「運命」の数字にどんな価値があるかを決めるのは自分なんだと。
「抵抗」し続けたら「3」を選ばされちゃったな。将来、そういうこともあると思います。親ガチャも恵まれて、環境も恵まれてたのに、「3」を選ぶことになっちゃった。
そういう時にどうするか。誰かを恨みますか? 親とか? 親をコントロールしたであろう誰かとか? それとも「恨むなら、自分を恨め」ということになるんでしょうか? でも、恨んでも、事態が好転する可能性は極めて低いよね。
どうすればもっと自分が満足する、自分にとって最適な価値の生み出し方ができるのか?そのために、時間や労力や知恵、そのほかにも今みなさんが持っている力を使ってほしいと思います。
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