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関西ベンチャー学会 第2回女性起業家研究部会「苦難の連続、でも諦めない。」ウクライナ特別編〜女性×学生×外国人×社会起業のリアル〜(全6記事)

起業家が見るべきは「海外で同じような事業をやってる人」 IT起業家が考える「誰もやっていないアイデア」のリスク

ベンチャー育成を通して関西経済の活性化を図ることを目的に設立された関西ベンチャー学会。今回はダイバーシティ研究部会(女性起業家研究部会)主催で行われたセミナーの模様をお届けします。ゲストはウクライナ出身の学生起業家、株式会社Flora CEOのアンナ・クレシェンコ氏。本記事では、アンナ氏が日本だけでなく海外の市場調査を積極的にし続ける理由について語られました。

他の人が考えている「バイアス」に参加しないこと

湯川:ではせっかくなので、会場からも質問を受けたいと思います。実はここに高校2年生で起業をしたいという学生が来てますので……今高校2年生ですね。どうぞ。

質問者1:こんにちは。よろしくお願いします。さっそく質問なんですが、日本人ってバイアスを持つ人が多い気がするんです。日本に来た時にそれを感じましたか? どのような印象を持たれましたか?

アンナ:例えばどんなバイアスですか?

質問者1:例えば集団意識があったり、それこそさっきみたいに「グループで起業したい」って思うような感じであったり。多数派の意見に引かれてしまったり、少数派の意見を少数派と捉えてしまったり。

アンナ:個人としてできることは、そんなバイアスに参加しないことですね。あるいは、ぜんぜん意識しないこと。それさえできれば、そのバイアスはその人の問題だと思いますので。あまり自分の自由性を、そういう他の人が考えていることに絞られないようにしたほうがいいと思います。個人としてできることはそれぐらいだと思います。

質問者1:ありがとうございます。意識したいと思います。

アンナ:そうですね。実際に実現して、成功すれば、たぶん真似されると思いますので。

湯川:ありがとうございます。

大学院卒業後の今後の展望

湯川:今日は今まで学生の起業支援をしてこられて、いろんなインキュベーション施設にも関わってらっしゃる、関西ベンチャー学会会長の定藤(繁樹)先生にも来ていただいています。もしよろしければ、せっかくですのでここで一言いただいてもよろしいでしょうか? 

定藤繁樹氏(以下、定藤):どうもアンナさん、今日はありがとうございました。

アンナ:こちらこそありがとうございます。

定藤:アンナさんと私は大学も学部も一緒なので、ちょっと個人的なお話になるんですが。京都大学の法学部を出られて、今は経営管理大学院ですね。卒業された後、もちろんビジネスを続けていくとは思いますが、今後の展望について、ちょっと教えてください。

アンナ:弊社はもう資金調達もしていますので、日本で上場を予定しています。私はずっと日本にいますし、ずっと経営していきたいと思ってます。

定藤:ご創業は来年の3月ですか?

アンナ:ちょうど今年大学院に入りましたので、あと2年あるんですけど、難しくなければ10月卒業とかもう視野に入れています。できれば卒業したいと思います。

利用者は3ヶ月で1万人に

定藤:それともう1点。インキュベーションはPhoenixi(フェニクシー)さんに入っておられるんですが、これはいつ頃までおられる予定ですか?

アンナ:コホートメンバーとしての参加の期間の期間は半年だったんですけど、その後も卒業生が使えるいろいろな特典がありまして、事務所も使えますし、いろいろ今でもすごくお世話になっています。フェニクシーインキュベーションは、いろいろ人脈を作ることができて、本当にすばらしかったです。

定藤:それから......細かいことを聞いてしまいますが、男性の私はちょっと使いにくいんですけども、アプリの利用料いくらぐらいなんでしょうか?

アンナ:弊社のアプリですか? 個人には年間4,300円、法人の場合はもっと柔軟に、ご要望に対して提供しています。

定藤:今かなりのお客さまがおられるんですよね。

アンナ:今月で1万人になりました。

定藤:1万人、すごいですね。

アンナ:3月にリリースして、かなり良い勢いです。実は今、次のラウンドの調達中です。

定藤:おお、すばらしいですね。キャピタルからまた調達するということですね。ぜひがんばってください。ありがとうございました。

アンナ:ありがとうございます。

湯川:ありがとうございます。1万人! やりましたね。

アンナ:まあ(笑)。

シリコンバレーのトレンドをTwitterで収集

湯川:ここまでちゃんとスケールした、一番の転換点や理由は、どこをチェンジしたから良かったと思われますか?

アンナ:そうですね。勉強し始めたことですね。ただ日本の事例を見て、そういう交流会に参加するのではなくて。海外の本も買ったり、コースに参加したり。

あとは、その場の話かどうかわからないんですけど。実はテックにおいて、Twitterがすごく良いんです。特にTwitterって最初の頃はシリコンバレーのテックの人たちがかなり使っていましたので。今でもすごく相談とか、インサイト共有とかしてる人が多いです。

Twitterを使うほうが実はすごくおすすめですね。すぐに何が起こってるのか、シリコンバレーで何がトレンドになってるのかわかることもできますし。

だから、もっと自ら情報収集をがんばって、他の人の経験を理解してからやる。もっと積極的に、自分が専門ではない分野だからこそ、その分野のプロを見つけて、とりあえずコンサルをお願いして、いろいろ相談に乗っていただく。そういうやり方がおすすめですね。

アメリカの市場を見れば、日本の市場の動きを予測できる

湯川:やっぱりシリコンバレーを見ておくのは、今でもすごく大事ですか?

アンナ:まあシリコンバレーだけでも、ヨーロッパのスタートアップもかなりあるので。でも、海外を見たほうが絶対にいいです。結論として。

湯川:その心は? なぜ海外?

アンナ:もうすでに、あなたがやろうとしているものが、海外にすでにビジネスになっている可能性がすごく高いので、すごく参考になります。

アプリの市場でいいますと、海外の、特にアメリカの市場はたぶん日本の3年の先の将来にいる。アメリカの市場を見れば、日本の市場の動きを予測できます。

湯川:なるほどね。いや、「シリコンバレー、シリコンバレーって言うのもね」というのもあったんだけど、そういうことがやっぱりあるんですね。

アンナ:そうですね。シリコンバレーもいろいろあるので。せめて「自分がやりたいこと」について、海外にも同じような事業をやってる人がいないかどうかは見たほうがいいです。

誰もやっていないビジネスアイデアは、逆に怖い

湯川:最初のほうにも言ってましたよね。最初は自分のアイデアにすごくこだわってたけど、スタートした時にはそうではなかったと。アイデアはだいたい誰でも同じようなこと思いつくし、うまくいっていないのは99パーセントそのビジネスモデルの問題だからって。

アンナ:逆に今やろうとしていることが、もうすでに世の中の誰かがやっているのであれば、それは逆に良いことかもしれません。

湯川:ビジネスとして成立するから?

アンナ:誰かもうやってるし、ビジネスにもなってるし、たぶん成功するだろうという証拠にはなります。誰もやってないのであれば、逆に怖いかもしれないですね。

湯川:相当な問題があるかもしれない。

アンナ:非常にその可能性が高いです。90パーセント、あなたのアイデアの何かが違う可能性があります。

湯川:本当のマーケット調査という意味でも、そういうことも含めて競合調査をしておくことが大事ということですね。

アンナ:もちろんです。

湯川:ちなみに私は今、フリーランスのメンバーで集まってコミュニティを作って、みんなが食べていけるように、農業もしているんです。みんなでお米を作っていて、この間はじゃがいもがいっぱい採れたので分け合って。これはベーシックインカムのお米版だから、「ベーシックインコメ」と思っていて。(笑)。

商標登録を取ろうとしたらもう取られていたんですよね。「ああ、やっぱこういうダジャレって誰でも思いつくんだな」って、今週痛感したところでした(笑)。私ぐらいしかこんなくだらないことを商標登録しないと思ったら、されていた。やっぱりマーケット調査は大事ですね。

最初は日本語が話せず、コーヒーも買えなかった

湯川:残り30分となったので、ウクライナのことも少しおうかがいしようと思います。

私もニュースでいっぱい、最近のウクライナのことを見ているんですが、初めて直接お目にかかるウクライナの方がアンナさんで。今回起業までのお話をうかがっていて、まあとにかく私だったらもうやめるかなっていうぐらい大変で。

さっき「日本人も宇宙人ではありません」というお話があったけど、英語はぜんぜん通じないんですよね。ちょっと話したけれども、コンビニでコーヒーも買えなかったって。あれどういうことですか?

アンナ:私が日本語がしゃべれなくて、「コーフィー」って言ったら、誰もわかんなくて(笑)。「コーヒー」と言わなきゃいけないですね。

湯川:そうだよね。「コーフィー」って言ってもダメだもんね。「コーヒー」って言わなきゃ通じない(笑)。でも、すごいわかる。

コーヒーも買えないところからスタートして、さらに起業するというところで、いくつも大変なところがあったんだと思います。「一番大変な時に何を思い出しますか?」と聞きましたら、先ほどちょっと言った、16歳で空手の世界大会に出た時のことを話されていました。

16歳で、初めての空手の世界大会に出場

湯川:それまで練習していた場所と、その世界大会の会場はたしか違って、ウクライナ国内だったんですか?

アンナ:世界大会はパリでした。

湯川:ああ、そっか。16歳になった誕生日の次の日に出たんですよね。

アンナ:めっちゃ怖かったです。会場がでかくて、アリーナもサッカーの試合ができる新しいアリーナでした。私の出場するカテゴリが本当に朝早くて、とりあえず練習場所にずっといて、本番になってそこに入った時は、もうビビりました。

湯川:だってもう(フランスのサッカーのトップリーグの)パリ・サンジェルマンとかが試合をやるような場所でしょ? もう観客も何千人いますよね。その真ん中に、空手の会場がある?

アンナ:そうです。

湯川:わあ(笑)。周りを観客がバーッと取り囲んで、真ん中に。しかも初めての世界大会。

アンナ:初めてでした。

湯川:緊張するでしょ?

アンナ:白くなりました(笑)。

湯川:白くなりましたか(笑)。

大事な時は「信じていること」に任せる

湯川:そういう時はどうするんですか?

アンナ:選択肢がないので、とりあえずもう前へ進めないといけないですね。「すみません、今日は出場できないので、スキップします」とは言えないので。私の場合はかなり瞑想とか、目を閉じて自分と話すことが効くほうですね。

湯川:そういうもう大変な状況の時に、自分自身に集中する?

アンナ:自分自身と、今の目の前のやらなきゃいけないことにとりあえず集中して。スポーツの場合は、体はぜんぶ知ってるので、体に任せることですね。

起業の場合もたぶんそういう場面があると思います。チームとか、自分の経験とか、もう信じてることにひたらすら任せて、緊張せずにやらなきゃいけないことをやる。大事だと思います。

湯川:普通のようにやり続ける。ビジネスの場面で真っ白になったことあった?

アンナ:私はかなり、人の前でしゃべるのがうまくないので……。

湯川:本当に? ちょっと今白くなってる?(笑)。

アンナ:そんなに白くはないですけど(笑)。緊張はしています。でも、直接対応してる場面よりかは、節目とか、資金調達で忙しい時期とか、毎日緊張してる時期に、継続的にその課題と向き合って、自分と向き合って、正常な状態を維持するようにはしています。

湯川:あんまり浮かれたりもしないし、緊張しすぎないようにしている。

アンナ:そうですね。

「資金調達に失敗したら」という不安との戦い

湯川:やっぱり節目という意味では、特に資金調達が大きいと思います。最初にクラウドファンディングで集めたお金でこれだけ責任感を感じていたとしたら、今度の資金調達はまた桁が違うでしょ? どんな気分?

アンナ:疲れてます(笑)。やっぱり緊張していて、今の起業とまったく関係ないような考えですね。「資金調達に失敗したら、どうなるだろう」とか、「失敗すればこうやらなきゃいけない」とか。今とまったく関係ない話や思いが頭の中に浮かんでいて、それと戦わないといけないですね。とりあえずできることをやって、成果を目指す。

湯川:実際に起こってないことを勝手に想像してものすごく不安になるのは、「目に見えない」のが大きいですよね。

アンナ:そうです。それがすべて緊張の由来だと思います。

湯川:そういうのがないように「ぜんぶ可視化する」というのが、今日何回もキーワードとして出てきましたけど。今置かれている状況も、これからの可能性も、リスクも、いったんぜんぶ可視化してしまって。目の見えない不安のままにしないていうのを、すごく心がけていらっしゃるのかなと感じています。

アンナ:そうですね。冷静に可能性を考えて、そこにはやっぱり自分を信じないといけない部分が確かにありますね。

湯川:むやみにアイデアを信じるのではなくて、今までやってきた自分を信じるっていうことですね。

アンナ:そうですね。

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