アウトプットが変わらないと人生は変わらない

山口:この本(『あらゆる悩みを自分で解決! 因数分解思考』と『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』)の共通点を一言で言うと「頭を使うこと」ですが、頭を使うことは目に見えないので、ブラックボックスなんですよね。例えば、みなさんが憧れている人がいて、「この人の頭の中、どうなっているんだろう」と思っても、頭の中は覗けません。

傲慢な言い方に聞こえるかもしれませんが、僕たちの書いている本は、その覗けない部分を少しでも見せてあげられたらいいな、自分たちなりに理解しているものを言語化して頭の中の見えないところを伝えていきたい、というところはあります。真ちゃんはどうですか?

深沢:まったく同じです。そういうところにも共感するんですけどね。拓朗さんの作っている本の中身や発言とかですごく感じます。

山口:これもたぶん最終的に真ちゃんと僕で共通するところだと思いますが、アウトプットが変わらないと人生は変わらないじゃないですか。みなさんもこの2冊の本を読むだけではやはり人生は変わらないですよね。

「それをどうやってアウトプットにつなげていくか」なので、本を書く上で楽しんで読んでもらって満足してもらうことも大事ではあるんですけど、やっぱり人生をいい方向に変えていただきたいなという気持ちはいつでも持っています。

アウトプットにつなげるために何をすればいいのかは、おそらくお互いに本の中でけっこう具体的に書いているんじゃないかなと思います。

深沢:なるほど。アウトプットするために何をしたらいいか。

読書を行動につなげるための「アクティブリーディング」

深沢:確かに先生はよく「アウトプットしましょう」と簡単に言いますよね。「そのために何をしたらいいの?」ということには、意外と答えていないかもしれない。

山口:そうですよね。

深沢:ああ、なるほど。そんな議題でいいですか?

荒尾:ちょうど具体的な行動のお話に入っていただいたところで、この本を読んで、仕事やふだんの生活でどういうふうに取り入れていったらいいのかの具体例や実践方法を教えてほしいです。

深沢:ああ、読んだだけで終わりじゃ駄目ですもんね。

荒尾:はい。

山口:(笑)。

深沢:「これを読んで実践しなさいと言われても、どうしたらいいの?」ということで、確かに大事ですよね。拓朗さんはどうですか?

『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』(日本実業出版)

山口:僕はこの本に実践していただけることをけっこう具体的に書いています。今日はこんな素敵な書店(代官山 蔦屋書店)でお話させていただいていますが、読書をする時の方法も書いているんです。

「アクティブリーディング」という方法ですが、本は受動的に読む楽しさもあります。私もそういう読み方をする時もあるんですが、例えば実用的な本やビジネス書、自分が身に付けたいなと思った本に関しては、少しアクティブに自分から働きかけて読書したほうがいいなと思っています。

目的を設定して読むことでの効果

山口:その1つの方法としては、読む前に目的意識を持つ。自分はこれを何に活かしたいのか。例えば「恋人との関係に活かしたい」「仕事で営業の成績を上げたい」とか、なんでもいいんです。みなさんにとっての目的をちゃんと設定して読む。実はこれだけでも「アクティブリーディング」なんですね。

脳には脳幹網様体賦活系という、意識したことに関する情報を積極的に取り入れる脳の自然なシステムがあります。そういうシステムをちゃんと使っていくことによって、いいインプット、つまり「営業の成績よくしたい」ということに必要な情報をこの本から得ることができるんです。

これは「アクティブリーディング」のほんの一部ですが、この本の中にも10個以上書いてあると思います。そういうことを本を読む時には実践していただけると、すごくいいかなと思っています。「アクティブリーディング」は能動的に読んでいくことです。

深沢:こっち(教育)の世界には「アクティブラーニング」という言葉がありますね。

山口:まったく一緒ですね。「アクティブラーニング」は話したり、書いたり、発表したりを学びに取り入れていくものだと思います。本を読む時は1人きりですが、1人の状態でもアクティブに読むということで、僕の場合だと読む時に気付きやキーワードを本の余白に書き込んじゃったりするんですよ。本はノートだと思っているので(笑)。

深沢:じゃあ、いろいろ書くんですね。

山口:本に鉛筆やペンで気付きを書いたり、もちろんマーカーを引いたり付箋も付けるのもいいと思います。これも「アクティブリーディング」の1つの方法です。

究極のアウトプットは、人に「教える」こと

山口:「アクティブリーディング」で言うと、アウトプットすると決めてちゃんと書くということですね。つまり「読んだことを部下に話す」と決めて読むと、吸収力や理解力がめちゃめちゃ変わるんですよ。

次の日の朝礼で部下に「『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』という本読んでさ」と話をするとしたら、絶対に中途半端な読み方にはならないですよね。朝礼で話をしている時に、「自分では理解したつもりだったけど、うまく話せないな」「部下からこんな質問が飛んできたけど、ぜんぜん答えられなかった」とか、またいろいろ気付くわけです。これは大きな学びのチャンスですよね。

だから、発表する時はうまくいかない時もあるんだけど、アウトプットでうまくいかない時もそれもちゃんと学びにして、「うまく説明できなかったということは、ちゃんと読み込めていなかったんだな」と、また戻って読んでいただく。そういうことを繰り返していくと、深い知識と強い知識ができていくのかなと思っています。

深沢:なるほど。ありがとうございます。今の話で個人的にすごく印象的だったのは、「アウトプットをゴールにする」ということです。実際に自分が教えられなかったり説明できなかったら、それはわかっていないということなのかな。

山口:そういうことです。究極は、発表するだけじゃなくて「教える」なんですよね。「教える」というのは、相手にできるようにする・できるようにさせるということなので、自分で本当に理解していないと教えられないですよね。

深沢:うーん。本当にそうだと思いますね。

山口:だから、「アクティブリーディング」は今日から取り入れていただけるんじゃないかな。

深沢:1つ出てきましたね。「アクティブリーディング」ね。覚えておきます。

説明できる状態になって、人は初めて「理解できた」と言う

山口:真ちゃんはどうですか?

深沢:まず、私も教育者・指導者なので、今の話にすごく共感しました。

山口:ありがとうございます。

深沢:お話を聞いてくださった方や指導させていただいた方が理解したかは、当然確認しなきゃいけないんですよ。その時にどうやって確認するか。例えば「理解できましたか?」と聞くと、100人が100人「はい」と言うわけです。

それを信じちゃいけない仕事なので、どうやって理解できたかを確かめるかというと、「理解できましたか?」「はい」「わかりました。じゃあ今から3分時間あげるので、前に出てきて説明してもらってよろしいですか?」と言うんですね。嫌そうな顔をするんですよ。

山口:そりゃあ嫌ですね(笑)。

深沢:嫌ですよね。それが仕事なんです。何がメッセージかというと、「理解できていないよね」ということなんです。つまり、「説明できる状態にして、人は初めて理解できたと言うんです」と指導します。私は今までの話の「理解力・理解とは何か」を十分に説明できると思うので、すごく共感しました。

山口:ありがとうございます。

問題解決できる人は、書き出した後に「つなげて」いる

深沢:今回お伝えした「因数分解思考」を実践する時、一番シンプルな方法は「紙に書いてください」ですね。さっきこの本を読んでいただいた方とお話をしていて、「すぐにこれ(紙に書くこと)をやってみたくなりました」とコメントしてくださった方がいたんです。それがこの本の役割かなと思います。

『あらゆる悩みを自分で解決! 因数分解思考』(あさ出版)

「片付けは何でできているのかな」「これとこれでできているな」「これはもうちょっと細かくすると何でできているのかな」「これとこれの3つでできているのかな」と書きます。

山口:なるほど。これは頭の中だけだと駄目なんですね。

深沢:頭の中だけは私でも無理です。書いていくとどんないいことがあるかというと、もちろん「自分が今考えていることは、こういうことなんだな」というのが目に見えるというメリットがあります。

深沢:もう1つすごくいいことがあって、書いているうちに「あれ? ここのここと、ここのここは、こうつながるんじゃない?」と見つけられる時があるんですよ。

山口:なるほど。

深沢:オンラインのみなさん、伝わりますかね。

山口:伝わっていると思います。

深沢:伝わっていると信じます!

山口:(笑)。

深沢:「原因と結果の関係」と言うのかもしれないですね。それがいわゆる今回の「悩みを解決する」「問題を解決する」という文脈において、とても重要になるんです。

だから「何個に分かれますよ」と書き出しただけじゃだぶん駄目なんだよね。みなさんもわかっていらっしゃると思います。それだけじゃ問題は解決できないわけです。じゃあ、問題解決できる人はそこから何をしているかというと、これ(つなげること)をしているんですね。

「これが解決できると、これが解決できる」「これが解決できたら、これも解決できる」「これが解決できるということは、こっちも解決できるじゃない」という絵を描く。

山口:因果関係が可視化されるわけですね。

深沢:そう。

モヤッとしたことを可視化するメリット

山口:真ちゃんの本の中で、結び付ける時に「だから」「したがって」という結び付きの接続詞というのかな、そういった言葉を使っているんですが、書いていくとその結び付きがわかってくるようになるんですよね。「これはこれの理由・原因だな」「結果だな」というのがわかったり。それは確かに書き出さないとわからないですね。

深沢:そうなんです。それをしないと、頭の中がわけわかんなくなっちゃうんですよ。その頭のわけわかんない状態を、たぶんこの表紙で表現してくれたんだと思うんです。

山口:モニャモニャってね。

深沢:きっとこれなんだと思うんですよ。違っていたらごめんなさい。

それをクリアにしていく、紐解いていくことが、今言ったことなんじゃないかな。だから、せっかく読んでいただいた方、あるいはこれから読まれる方は、そういうことを次のステップとしてやっていただくと、「因数分解思考」を体が覚えるかなと思いました。

山口:いいですね。書き出すことをみなさんもぜひやってみてください。ぼくももっと書き出そうと思いました。

深沢:あ、そうですか?

山口:うん。もちろんアイデアとかはよく書き出していましたが、ちょっとしたモヤッとしたこととかもしっかり書き出して可視化していく。それがすごく大事ですよね。ここ(頭)の中にあると、グチャグチャっとしたものに支配されている感じなんですよ。だけど、書き出しちゃうと「今度はこっちが操る番だ」という感じになれる気がするんです。

深沢:確かに、そうだと思います。

山口:可視化することによって、自分の人生をちゃんとコントロールできるようになるので、やっぱり「書く」は偉大ですね。

「明日からできること」への意識で組織は変わる

深沢:「書く」はすごくシンプルですよね。今日の話はすごくシンプルだと思うの。明日から誰でもできるはずなんですけど、やる人とやらない人がいるんです。

山口:(笑)。

深沢:その差なんだと思います? それを1日や2日やっただけでいいと思わないことですよね。こればっかりはね。

山口:そうですね。

深沢:「しばらく癖にしましょう。習慣にしましょう」という文脈になると思います。私は本業で企業さんにお邪魔してこういうことを指導しますが、研修で教えて終わりではないんですよ。研修のあと、「こういうことを続けてくださいね」と必ず案内するんです。

例えば今日の文脈であれば、「今日の研修が終わったら、終わりじゃなくてスタートです。明日から何をスタートさせるかというと、『書くこと』をスタートしてください。みなさんはどういうところで書くことができますか? 考えてください」。

「例えば、会議の時にホワイトボードがあればできる。会議でホワイトボードに板書する役割を明日からあなたが率先してやってみたらどうですか? そういうことをやる人とやらない人の差がどんどん広がっていくから、ぜひそういったことは明日からやってみてください」というメッセージを出す。

すると、うしろで聞いていた社長さんがすごく感激して、「よし、うちの会社は明日から全部ホワイトボードを入れる」となるんですよね(笑)。「お前ら、会議では『書く』をやるぞ」と言って、その企業・組織が変わっていくんです。これが私の仕事です。

山口:そういうものが変わっていくんですね。

深沢:だから私たち個人も、そういったところまでがんばっていけるとこの本を読んだ意味があると思うので、そんなところもちょっと意識してもらえたらうれしいなと思います。

少し面倒くさい「手書き」のほうがいい

山口:つなげるところまで書くということは、スマホやパソコンより手書きのほうがいいんですかね。

深沢:手書きのほうがいいと思います。

山口:ノートとかにね。

深沢:はい。

山口:ホワイトボードとか、ちょっと自由に書けるほうがいいですよね。

深沢:そう思います。これは私の感覚ですが、あまり便利なツールを使わないほうがいいのかな。

山口:それもすごくわかります。

深沢:ちょっと相反する矛盾なことを言うようですが、少しストレスがある面倒くさいくらいの行為をがんばってやるほうが、こういったテーマは力が付くんじゃないかな。

山口:そうですね。例えば、漢字で「理解」という文字を書いたとしたら、その「理解」という文字にもそれぞれ意味があるわけで、ちゃんと手を動かして書くことによって、体からも入ってくるというのかな。タイプする時には入ってこないものが、文字で書くと入ってくる感覚があるんですよね。

深沢:確かに。

山口:だから手書きはすごく大事ですよね。

深沢:はい。そう思いました