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電通のトップコピーライター×コミュトレ「”言葉”は最高のビジネススキルである」(全5記事)

会議で質問することは、相手への「敬意のある興味」の表れ “聞きっぱなし”を脱出し、アウトプットの質を高める方法

ビジネスコミュニケーションスクール「コミュトレ」を運営している株式会社アイソルートが、株式会社電通のコピーライター・勝浦雅彦氏をゲストに招き、「仕事で自分の気持ちを的確に伝えるための姿勢」「言葉を使いこなす方法」「伝えるための準備の仕方」など、「伝える」をテーマにしたイベントを開催しました。本記事では、電通の入社試験を受けたという勝浦氏が、キャリア形成のアドバイスを贈りました。

一人でも観客がいると、演者のテンションは大きく変わる

勝浦雅彦氏(以下、勝浦):いわゆる収録された映像と、リアルのアーティストのコンサートや舞台の何が違うかというと、会場の反応なんですよね。

ある実験で、まったく観客が入ってない場合と、1人でも入ってる場合の(発信者側の)テンションの差を脳波や体温などの項目で科学的に調査したらしいんですが、一人でも他者が見ているだけで演者のテンションはぜんぜん変わるんですよ。「一緒に作りあげる」というつもりで、今後のセミナーや講演も聞いていくといいんじゃないかなと思いますね。

芳村瑞恵氏(以下、芳村):なるほど。

勝浦:「いいセミナーだったな」「自分もいろいろとアウトプット、エクスプレッションしたし、よかった」と思えるようになってくるので、結果的に自分に返ってくるんですよ。

芳村:参加しても、聞き手だからお客さんとして「おたく、何話してくれるんでっしゃろ?」という姿勢になってしまいがち。

勝浦:ちょっと引いた態度をとった瞬間に、こぼれ落ちてくるものがどうしてもあるんですよね。のめり込んでみると、見えてくる景色があるんだと思います。そこは、ぜひ意識していただきたいですね。

質問とは「敬意のある興味」

芳村:なるほど。最初に勝浦さんがお話ししてくださった、「相手のことを調べて、事前に質問を考えておく」というところにつながってくるお話ですよね。

勝浦:そうすると、聞きたくなりますからね。

芳村:ふだんのお仕事で、みなさんの一番身近だと会議のシチュエーションはあるあるかなと思いますね。会議に出たのに一言も発しないで会議が終わる、なんていうのは絶対にやっちゃいけないことだと、コミュトレでも口酸っぱくお伝えしてるんです。

勝浦:この本の中でも、「質問は敬意のある興味」と書いています。

芳村:敬意のある興味、すごくいい言葉ですね。

勝浦:うちの会社の新入社員によく教えることで、「クライアントのオリエンが終わった後に、絶対に質問をしなさい」と言っています。ちゃんと相手のことを考えて、調べて臨んで、なおかつ相手のオリエンを聞いた後に質問が浮かばないわけがないと言われているので、これはけっこう真理だと思いますね。

「必ず相手に質問する」という姿勢を持つことによって、結果的に相手への理解が深まります。「ちゃんとした質問をしよう」という意識になるからちゃんと見るし、一語一句聞き逃さないようにしようと思う。その意識で望むことは、自分の糧にもなりますからね。同じ時間相手の話を聞いていても、密度に差が出るわけです。

芳村:なるほど。このタイミングでみなさんから質疑応答をいただこうかと思ったんですが、今ので若干ハードルが上がってしまいましたかね。

勝浦:あぁ、確かに。

芳村:これで100件ぐらい来たらうれしいですが、時間も少し押してるので、2つか3つぐらいお答えします。今のを踏まえて、ぜひ積極的にご質問いただければと思うので、チャットに書き込んでいただけたらと思います。

以前はほとんどビジネス書を読まなかったという勝浦氏

芳村:今日は盛りだくさんでお話しいただきました。この本自体は『つながるための言葉』という、どちらかと言うとアウトプットのお話になるかなと思うんですが、「質問をする」というヒアリングの部分のお話もすごく聞けてよかったですね。

質問が来てますよ。これで1個も来ないとちょっと寂しいので(笑)。もしかしたら、事前に送ってくださってるのもあったかもしれないんですが。

勝浦:(視聴者コメントで)「コピーライターとして心がけて読んでいらっしゃる本のジャンルは何でしょうか?」というのがありますね。ジャンルとして何か規定したことは特にないですね。正直、小説ばっかり読んでいて。

芳村:もともと小説が好きなんですか?

勝浦:実は、ビジネス書を読んだことがほとんどなくて。「本を書く」って決めた瞬間に、ちょっと読んでみようかなと思って100冊ぐらい読んだんですよ。

芳村:「ちょっと読んでみよう」で100冊読むんですね。さすがです。

勝浦:それで結論としては、ビジネス書には新しいことが書いてないなと思っちゃったんです。だけど新しさがあるとしたら、今を生きている作者の感じ方とか、経験したことなんじゃないかなと思い至りました。

それこそ太古の昔のギリシャ時代から、人々の悩みや苦しみってあまり変わっていないから、本質的なものを捉えながら今の自分が言えることは何だろうな? と、やってきたことを絡めながら書いたのがこの本なので。

芳村:(『漫画でわかる! 「つながるための言葉」』の)勝浦さんのイラストの髪型は、漢字の「八」でしょうか? 髪、かわいいですね。

勝浦:あぁ。あれは結果的にバナナみたいになったんですが、特にバナナであることに意味はないので、今後は「八の末広がりの髪型」と言おうと思います。ありがとうございます。

うまく言葉にできない時は「紙」に書いてアウトプット

勝浦:続きまして、「女性向けのキャッチコピーはどのように意識されていますか? 作成する時に意識するポイントはありますか」。そうですね。自分が女性ではないので、本書の中にも「自分視点」と「他人視点」と書いています。

僕のTwitterで鬼滅の刃のコスプレをしたんですが、その時に、後輩に初めてがっつりメイクをしてもらったんですね。その時に「めちゃくちゃ女性って大変なんだ」「これを毎日やってるんだ」と思って。

なので、自分の経験から思った「自分視点」と、女性になりきるポイントの「他人視点(憑依)」を使い分けています。憑依とは、本当に女性になった気分で書くということです。自分視点と他人視点、つまり客観と主観を行き来しながらコピーを書いているということですね。

男性向けの商品だとしても女性になったつもりで客観的に男性を見る、ということも頭の中で考えてやることがあります。

僕も言葉がポンと出てこないことは多いですよ。というか、ほとんど出てきません。ウンウン毎回うなってばかりです。なので、これは考えたことをひたすらメモしたり、意識的に友だちや先輩や後輩に自分の意見をしゃべってみてください。とにかく言葉にしていくしかないです。

黙っていろいろ言葉を考えるのがいい時もありますが、結果的にアウトプットできなくなることが多いんですよね。だから、僕もなるべくアウトプットを紙に落としています。

ポイントとしては、モヤモヤして言葉としてパッと出てこないのであれば、紙に落として一回整理するのが大事だと思っています。

芳村:いいですね。私も映画や本とかを読んだ後、一言書き留めておくようにしてるんです。コミュトレの講義でも、みなさんにしゃべる機会が増えていきますので、「映画を見たら人に伝える」という機会を増やすのはいいトレーニングになっていきますね。

勝浦:そうですね。

読んだ本を「抜き書き」すると、内容を忘れづらくなる

勝浦:先ほど「ビジネス書を読んだことがなくて(本を書くと決めた時に)急激に100冊ぐらい読んだ」と言いましたが、その時に初めて抜き書きをしたんです。つまり、本の中で気になったところをどんどん箇条書きでメモしていきました。実はそれまで、抜き書きはあまりやったことがなかったんですね。

キャッチコピーではやっていましたが、本の文章でやったことはなくて。抜き書きをやる前は、本を読んでわかったつもりになっていても、すぐに忘れたり思い出せなくなっていくんですよね。なるべく抜き書きをするようになったら、言うべき内容を人前でぱっとしゃべれるようになりました。

そういった意味でも、「自分の思いを言葉にちゃんとしていく」というのは日々やるにしても、時々それを紙に落として、見つめてみるのが大事かなと思います。

芳村:そうですね。私も山を登ったりする時、帰ってきた後に誰かにしゃべることを前提に山を登ってますよ。「きっと今度の講義の冒頭でしゃべるなぁ」「会社で『今度山に行くんだ』って言ったから、週明けに『行ってきたよ』って言うな」とか。

だいたい私の場合、30秒バージョン、3分バージョン、15分バージョンみたいな感じで(エピソードをいくつか作っています)。たまに、甲斐駒ヶ岳ネタを冗談で「30秒バージョン、3分バージョン、15バージョンあるけどどれがいい?」と後輩に聞いて、無理やり聞かせてることもあります。

勝浦:おもしろい。

電通の入社試験を4回受けた勝浦氏

芳村:ということで、時間が来てしまったので、最後に勝浦さんからみなさんにメッセージをいただけたらなと思います。

勝浦:これも一応スライドがあるんですよ。

芳村:ちゃんと準備して、考えて準備してきてくださってるんですね。ありがとうございます。

勝浦:最後に1つだけということで、何を話そうかな? と思って。最近話すようにしていることがありまして、実は僕は今の会社を4回受けています。

新卒で今の会社を受け、第二新卒で受けて落ち、3回目はいろいろあって落ち、それでも諦めずに4回目を受けて内定。ここには語っていないドラマがたくさんあるんですが、それはいつかどこかで。

この話で何が言いたいかというと、学生時代に初めて触れた社会人が今の会社の先輩方で、そこで強烈に憧れを抱いて「いつかはここでコピーライターやりたいな」と21歳の時に思ったんです。そう思ったまま、大人としてずっと年数を重ねて、その思いが消えなかったですね。そしてずいぶん時間はかかりましたが、なんとか辿り着きました。

さっき、ちょっとかっこいいことを言っちゃいましたが、「就社」と「就職」と「就自」は違いますよと言いながら、僕の中ではどこかつながっていたので、やり抜いたということです。それも、1つの答えだったんです。

だから、この先いくら失敗してもチャンスがありますし、前を向いて動き続ける限り、みなさんのキャリアは「途中」なんです。もちろん、僕自身もこの先どうなるかはわかりません、同じように「途中」です。

1度の就職や転職で人生が決まることはない

勝浦:おそらくこの中には、いろんな年齢の方がいて、いろんなステータスの方がいて、「コミュニケーション能力を磨いて今の会社で上に行きたい」という方もいれば、「コミュニケーション能力を磨いて転職したい」「いずれはこういう仕事をしたい」とか、いろんな人がいるんだと思います。

そういう気持ちを持って動いたからこそ、コミュトレさんのメンバーになってらっしゃる方もいらっしゃるんでしょうし、あるいは興味を持って今日のセミナーに来てくれた方もいるんだと思います。

みなさんのキャリアは「途中」なので、これからも動き続けていただければと思います。1度の就職や転職と同じで人生が決まったりなんかしないので、ぜひ気を楽にしていただいて、今のキャリアや転職活動のチャレンジを楽しんでいただければと思います。というのが、私の最後の言葉でございます。

芳村:ありがとうございます。勝浦さんからのメッセージで、みなさんも心を動かされたものがいっぱいあったと思います。いっぱいメモを取りながら聞いてくださっている方も多くいらっしゃってありがたいですが、「これは心に響いたな」というのを一言メモっていただいて、今日は終わってもらえたらいいかなと思います。

勝浦:先ほどのブレイクルームでも、お友だちができた方もいらっしゃると思います。最後の最後に言うことじゃないですが、人生において仕事よりも遥かに大事なのは家族と友だちです。

この場で仲間や友だちをたくさん作ってもらって、それが後々人生の大きな実りになると思いますし、僕も結局それに助けられてここまで生きてますので、みなさんもそうしていただけるとうれしいです。ということでありがとうございました。

芳村:ありがとうございました。

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