リモートワークで問題となった「燃え尽き症候群」

オズとも子(以下、オズ):ではいってみましょう。

鹿嶋康由氏(以下、鹿嶋):(先ほどお話した)なぜ米とじゃがいもで社会が変わっているのか、を学んでいたと同時に、EQ(心の知能指数)を向上するステップみたいなものが世界的に、国連で定義をされています。なぜそんなものが出てきたかというと、原因はリモートワークです。

リモートワークをすると結局孤独な人たちが多くなって、どんどん仕事ができる、24時間働けるようになってしまうじゃないですか。インターンシップの人たちがどんどんうつ病になっていく、バーンアウト(燃え尽き症候群)になってしまうことが、2007年ぐらいに社会問題になっています。

それがイギリスのほうでは、EQとか心理学とかがすごく発達している国ですよね。

オズ:そうですね。EI教育も、公立の小学校とかで教えられてますね。

鹿嶋:それがイギリス発祥で問題になって、国連に情報が入ってきて、「Action for Happiness」という団体ができました。スイスに行った時にこのプログラムを知って、ここに写っている、神戸に住んでいらっしゃるナルミさんに紹介したところ、彼女がプログラムを紹介したんですけど「これすごくいいわ」と言っていました。

「Action for Happiness」というプログラムなんですけど、27万人以上のメンバーと、100万人のフォロワーがいます。イギリス発祥でこういうことをやっていかないといけないよね、とハッピーになるためのアクションを定義して、アプリを作って団体でやっているんですね。

「より幸せな生活への10の鍵」

鹿嶋:どんなことをやってるかというと、「より幸せな生活への10の鍵」を定義して、アプリでいろんなことをやっています。

10個あるんですけど何かギブする(与える)、関係を作る、運動をする、意識する、心を込めて人生を送る、試してみる。方向性(目標)を持って生きる、とつまずいたら押し返す、跳ね返る(レジリエンス)。あと感情はすごくあって、よいものを探すのが10の鍵に入っていたり、受け入れる、あるいは意味づけることが、幸せに生きるための鍵ですよ、とおっしゃっています。

英語でできたカレンダーが、今は毎月いろんな国に展開されています。彼女には日本語への翻訳を毎月やっていただいています。僕も毎月、デスクトップにこんな壁紙を貼っています(画面共有でカレンダーを表示)。

今日は10日です。読んでみると、「誰かに親切にすることで喜びを感じましょう」。このメッセージを心に留めて1日を過ごす。今月は喜びの6月ということになっています。

こうやって、毎日日めくりカレンダーのように、幸せに感じる瞬間、感情を呼び起こすような瞬間を味わうと、先ほどあった10個の鍵に照らし合わせて、テーマを掲げてカレンダーを作るのを、ナルミさんが毎月日本語への翻訳をやっていただいています。

モチベーションの哲学・仏教から学ぶこと

鹿嶋:実はここのスポンサーというか後援者としての一番トップにいるのはダライラマです。「あぁ、後援者がダライラマじゃん」と思ったのは後からですけど、彼も「幸福のための行動」の10周年の時に来て、祝ってくださっております。

今ちょうどチベット仏教を習っているものですから、ダライラマ先生は「よく学びなさい。自分が幸せになりたいと思うなら思いやりを学びなさい」と言われている。慈悲の心ですよね。

もしルールを作りたい、壊したい、変えたいならば、まずルールをきちっと学びなさい。なぜルールが生まれて、なぜそれがあるのか。社会があってそれ(ルール)を学んでいく。

「本当に困って、学びたい人にしか教えてはいけないよ」などもルールとして教えながら、チベット仏教を教えています。仏教そのものはモチベーションの哲学と言われていますので、学ぶことはものすごく多いなと感じています。

そんな心の言葉をかなり簡単に書いていただいている本があります。今ちょうど僕がいるここ大阪の、清風学園の理事長である平岡先生。ダライラマのいるチベットに行って、学生の頃に修行されて、チベット語もしゃべれる方から直接教えていただいているそうです。こんな本を出されています。

「すべてが因果の法則で生まれているので、ただ単に祈願しただけではだめですよ」と。「善行、いいことを積むことで、ちゃんと行動をしないと、なかなかうまいことにはなりませんよ」みたいな教えをすごくわかりやすく(説明した)本を、去年出されています。これはすごくおすすめの本になっております。

ビジネスの中になぜ「EQ」が必要か

鹿嶋:先ほどあった10個の鍵と同時に、私がやってるマネジメント3.0、マネジメントのリーダーシップの新しいバージョンでも、どうやってハッピーに生きるのかは伝えています。ビジネスの中でも、ものすごく重要になってきています。例えば感謝とかいろんな言葉を伝えるというのは、Action for Happinessと項目がかぶっていますけどね。

オズ:(「幸福の12ステップ」の項目が表示されている画面を見て)休息が入っているんですね。

鹿嶋:そうですね。食事も入っていたりね。

オズ:なるほどね。日本人は、休息が苦手な感じがしますね。

鹿嶋:瞑想も項目に入っていたり、いくつかありますよね。これらが、だんだんビジネスの中でも重要になってきているなぁと思います。問題になっている、「ビジネスの中になぜこのEQが必要か」という話で言うと、どうしたらよい個人になるのか、よい組織にしていくのか、つながりを生んでいくのかが、大事になってきますよね。

このEQ、Googleの中でもサーチ・インサイド・ユアセルフというプログラムが行われていて、自分の心をちゃんと見ていく、内観していくためにも、とっても大事な1つの要素になっております。

まず心、感情をきちっと扱っていく。その上で心を満たしていくマインドフルネス。これは脳科学に基づいて行われていると、よい心持ち、あり方で、よい感情を扱えるようになった個人が、いい自分を作れる。だからいいチームができれば成果が出てくる、というものです。

こういう今の感情、気持ちを言葉にするとか、それをもとに感じたことや浮かんだこと、疑問などを対話するのは、とっても大切です。みなさんにも後でやってもらおうと思います。

「心を扱う」マネジメントの重要性

鹿嶋:私がスイスに行ってロンドンで学んできたマネジメント3.0、マネジメントのリーダーシップのプログラムにも入っている感情EQを扱うモジュール。

どんなモジュールが入っているかというと、さっき話題に出た階層型と平等型、マネジメントがだいぶ変わってきているという話とか。複雑になってきた社会が、インターネットでさらに短く小さくなり、情報伝達もものすごいスピードになった地球において、生き方もダイナミックにどんどん変わってきていますよね。

その上でモチベーションとかエンゲージメントを考え直さないといけない。一人ひとりの心も重要ですし。その他いろいろありますけど、「意味と目的」とかさっき10の鍵の中にありましたよね。

「価値観と文化」、その上で「ワーカーハピネス」、どうやって幸せな従業員を作るんですかとか。EQ、感情知能は(項目一覧のスライド中の)ここにありますね。このプログラムが、これからのマネジメントに絶対欠かせませんよと。

その上で「リモートチームをどうしたらいいんですか」とか「よいチームミーティングをするにはどうしたらいいんですか」。「よい変革はどうしたらいいのか」とか、疑問はあるんですけど、この大きな新しいマネジメントでは必ず、いろんなものを扱わなければならない時代になったんです。

1個大きな位置を占めているこのEQ、こういうのがとも子さんがやってらっしゃるEI、心の教育なんかもビジネスの中に、がっつり入りこんでいるのが見えてまいります。おすすめはハートマークを押した項目ですけど、モチベーションだったりエンゲージメントとか意味と目的、チームをどうやったら作ったらいいのとか。

オズ:それは、どういう意味でおすすめか、何個か教えていただけませんか。

鹿嶋:そうですね。おすすめは、やっぱり心を扱うということですかね。自分の気持ちとか、気持ちを作っているその意味と目的とか(「意味と目的」の項目を指して)。チーム作りには必ず、心を通わせていく信頼関係の両輪みたいなものが必要で(「チーム!」の項目を指して)。

そうやっていくと幸せな従業員が生まれる(「ワーカーハピネス」の項目を指して)。それがベースとなっているのは知恵、感情を扱える個人(「EQ」の項目を指して)。その上で個人とチームの相互作用が生まれてきて(「個人と相互作用」の項目を指して)、チームが出来上がる。このへんが、日本のマネジメント研修の中ではあまり議論されてこなかった領域ですかね。

心の問題が成果につながることがわかってきている

鹿嶋:そういうところに着眼点を入れて、こんなところが今大切に実はなってきてるんですよ。ビジネスの中でも心の問題が成果につながることがわかってきて、それを扱うような社会に変わってきているんですよ、という紹介のためにポイントをつけさせていただきました。

オズ:なるほど。

鹿嶋:なので単純に心というよりは、どういう状況で……いろんな厳しい状況がありますよね。人間関係がうまくいかないとか、成果がでないとか、お客の心をつかめないとか、いろんなことがある。有効な方法原理として、「有効な方法」は状況とか目的に応じてとか変わっていくから、それ(状況や目的)に基づいてしないといけないとう、本質行動学の西條剛央先生の教えの中でも学べたと思います。